孤独なバッタが群れるとき 『バッタを倒しにアフリカへ』エピソード1 (光文社新書)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334046095

感想・レビュー・書評

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  • 「バッタを倒しにアフリカへ」で、モーリタニアでの研究生活を中心に面白おかしく紹介していた著者が、アフリカに渡る前の研究の様子を、グラフも多目で研究内容を中心に紹介した本。これも十分面白く読めた。

    著者のバッタ愛がすごい。だからこそ、研究者にもなるという夢も実現したのだと思うが、昆虫好きの子どもに夢を与えられる本。(子どもにはちょっと難しいだろうが・・)

  • 孤独なバッタが群れるとき
    『バッタを倒しにアフリカへ』エピソード1
    著:前野ウルド浩太郎
    光文社新書1200

    感動しました
    本書は、農学部の学生が、紆余曲折を経て、前野ウルド浩太郎として、生まれ変わるまでの秘話である
    であると同時に、サイエンスのごとき科学雑誌のような雰囲気の書である

    図表や、写真や絵が満載されています

    学者とは、1000以上の卵や幼虫たちの大きさや色をはかったり、マニュキュアでバッタの目に塗ったり、夜通し触覚を触りつづけたり、頭脳以外にも、その体力を鍛える必要がある人種であると感じました。

    気になったのは、以下です

    ・いつの頃からか人類はこの生き物をバッタ(Locust)と呼び始めた
     その語源は、ラテン語の「焼け野原」からきている
     古代ヘブライ人はサバクトビバッタの独特な翅の紋様は、ヘブライ語で「神の罰」と刻まれていると言い伝えた

    ・世界的にバッタとの闘いは戦争とみなされている

    ・髪が女性の命なら、論文は研究者の命

    ・先生の采配に恐れおののいたと同時に、先生についていけば昆虫学者になるのも夢でない。やったことが形となり、世の中に発信できた充実感、努力が論文という形で実を結ぶ達成感は他の何物にも代えがたいことを知った

    ・いやぁ、僕はねぇ、虫を買ってるんじゃないよ。虫に飼われているんだよ
     師匠⇒弟子⇒孫弟子と世代を超えて伝わった相蓄積の謎への挑戦が始まった

    ・この先ずっと研究していくために色々とスキルを身につけた方がいいのではないかと考えていた
     自分には特別な技術もないし、装置も薬品もまったく使えない
     ただひたすらバッタを飼育するだけの私をあざける声も少なからず聞こえていた

    ・そうだ、自分は手法や技術を覚えるために研究したかったわけではない
     虫の研究がしたかったのだ
     突如、虫のことが知りたいという少年時代に思い描いた夢が蘇ってきた

    ・「繰り返し見続けることで、見えてくるものがある」この研究で得た教訓だった

    ・私は、王道から外れた邪道こそが発見を生み出す近道だと考えていた

     「非常識なことをやるためには常識を知っておかねばならない。不真面目なことをやるためには、真面目をしておかねばならない」との教えを頂いた

    ・私たち研究者は論文に自分の名前がある限り、発表論文の全責任を負い、その当時得られている証拠に基づきもっとも理にかなった結論を導き出している

    ・論文発表すれば、賞賛されるばかりでなく、批判の矢面に立つ恐れもあるため、ひじょうに勇気のいる行為だと感じている

    ・絶対にそうだ、そうに決まっている という先入観はとても危険で、誤解を招くことがある

    ・たとえ、どんなに長い間言い伝えられてきたことであっても、どんなに偉い先生の言葉であったとしても、それを鵜呑みにすることがいかに危険なことか

    ・この頃の私のキャッチフレーズは、「誰にでもできることを、誰にもできないくらいやろう」だった

    ・研究者になるためには、通常、大学や研究所がポストのあきができると公募し、わけこそはという者は履歴書や抱負を郵送し審査される。たった一つのポストに100人も応募してくるのはざらである

    ・それぞれの能力は厳しい淘汰の過程の中で洗練され、もっとも優れた部分だけが残ったはずだ。洗練されたものは美しいだけではなく、無駄を省き、余力を生む

    ・この「ウルド(Ould)」はモーリタニアで最高敬意のミドルネームで、「~の子孫」という意味がある

    ・良く言った!オマエはモーリタニアンサムライだ!今日からオマエは、コータロー・ウルド・マエノ、を名乗るがよい

    ・君が今まさに自然の中にいることがもっとも重要なことなんだ。昆虫のことを知るためには昆虫の生息地にくるしかない。君は、その暑さ、その風、その寒さを体験しなくてはいけない。そう、バッタを同じように。

    ・害虫も数を減らせば、ただの虫

    ・私は、もう昔の前野浩太郎ではない。前野ウルド浩太郎として生まれ変わり、フィールドという新天地に闘いの舞台を移した。

    目次

    「一杯のラーメン」を「まえがき」にかえて
    はじめに
    第1章 運命との出逢い
    第2章 黒き悪魔を生みだす血
    第3章 代々伝わる悪魔の姿
    第4章 悪魔を生みだす謎の泡
    第5章 バッタde遺伝学
    第6章 悪魔の卵
    第7章 相変異の生態学
    第8章 性モザイクバッタ
    第9章 そしてフィールドへ…
    おわりに
    謝辞
    新書版あとがき
    参考文献
    索引

    ISBN:9784334046095
    出版社:光文社
    判型:新書
    ページ数:412ページ
    定価:1060円(本体)
    発行年月日:2022年05月
    2022年05月30日初版1刷発行
    2022年06月15日2刷発行

  • あれ、この本、東海大出版で出ていた(らしい)やつだな、『バッタを倒しに〜』でモーリタニアのフィールド初日の様子はここにかいてある、と説明されていたな、と思い、手に取る。
    ※その時点では、表紙のキャラクター(!⁇!)には気づいてなかった。
    読み始めてから、作者のまえがきに納得。
    たしかに本書はこってり味。素人あてに広く浅く読みやすい作風だった『バッタを倒しに〜』とは対照的だった。

    でも本人が、疑問、実験の手順を考える、師匠に相談、思いつき、実験、結果、考察、師匠に相談、工夫、実験、考察、と繰り返す様子が本当にたのしそう。
    相変わらずユーモアあふれ、チャレンジ精神も旺盛、そして謙虚。
    研究者とはタフだなあと思う。

    師匠が、前野さんの論文へのライバルの反撃というか屁理屈に対して、「じゃあ次の論文で息の根止めて完全に沈黙させてやるよ」的なことを仰っていてカッコ良かった。
    そのライバルとも別に共同研究もしなくもないし、人間関係は良好ぽい。

    登場する先行論文がなかなか古くて(19世紀のものまで出る!)、このジャンルの歴史と、生物相手の学問の時間の流れをおもった。

    パナマ旅行、面白かった。
    バッタの餌やりは大変ですね。

    専門的な話が続くけど、論理は明快なので読むのには困らない。
    素人の私からみれば、へーー、こういうことを疑問に思うんだ?それで実験しても毎回この結果が出た理由はこれ、それともこれ?とずっと深みに入っていくんだなあ、果てしない…と思った。


    余談だけど、これを書くために、スマホの変換に、前野、といれただけで、ウルド浩太郎、とサジェスト欄に出てきてびっくり。すごいなあー。

  • 「バッタを倒しにアフリカへ」の前著。サバクトビバッタが大群になる仕組みを追求した記録。「バッタを倒しにアフリカへ」が万人受けするあっさりラーメンだとしたら、本書は少しとっつきにくいかもしれないけど病みつきになるこってりラーメンとのこと。地道で丹念な研究結果には、敬服しかない。

  • 「バッタを倒しにアフリカへ」の前日譚?的なかんじ。より研究内容も詳しく書かれている。

    おもしろく書いてあるけど、本当のとこは地味で投げ出したくなるような作業が大半なんだろうと思う。
    それでも続けられるのは、やっぱり新しい何かを見つけられた時の感動や楽しさがあるからなんだろうな。

  • これ凄く面白くて前半部分をじっくりと読んでしまい、後半が駆け足になってしまって残念Σ(ノд<)図書館本だからしょうがないけれど、余裕のある時にまた借りるか、購入するか悩むところだわ~( ̄~ ̄;)

  • アッサリ味の「バッタを倒しにアフリカへ」とは違って本書はコッテリ系だぞ、といきなり読者をビビらせる前書きに、恐る恐る読み始めたが、杞憂だった。
    とんこつ味や二郎系は苦手な自分だが、充分楽しく読めた。濃厚だけどクドくないし、臭くない。
    むしろ論理や論旨が明快で非常に分かりやすく、とても食べやすかった。いや、読みやすかった。

    他の解釈や異論反論が出ないよう、確実に抜け穴を塞ぐ精緻なロジックで実験と考察を重ねていく姿が素敵だ。
    まるで、良くできた推理小説を読むような爽快感と納得感がある。

  • 著者の「バッタを倒しにアフリカへ」の前段階、大学院受験に失敗してからポスドクとしてモーリタニアを訪れるまでが描かれている。何をきっかけ実験を計画し、どのように解析し、次の実験をどのようにデザインしたかを細かく、しかもある程度分かりやすい言葉で説明されている。この本を読んで、著者がいかに田中先生から大きな影響を受けたかが分かった。田中先生との出会いは運命的であり、著者の進路を明確に示してくれたのであろう。理系研究者としてのこの手の本、もっとたくさん世の中に出てきてほしい。

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1432592

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著者プロフィール

1980年生まれ。神戸大学大学院自然科学研究科博士課程修了。農学博士。
日本学術振興会海外特別研究員としてモーリタニア国立サバクトビバッタ研究所に赴任。

「2012年 『孤独なバッタが群れるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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