創作者の体感世界 南方熊楠から米津玄師まで (光文社新書 1295)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334102227

感想・レビュー・書評

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  • 作家や芸術家を深く知ると「この人はもしかして発達障害だったのではないかな」と思うことがよくある。

    発達「障害」、発達障害の「診断」という言葉には抵抗があることは言っておく。「障害」という言葉には定型発達者の傲慢が感じられる。あくまで脳のクセのようなもので、病気ではない。だから「診断」するものでもない。ただ今のところ「発達障害」という言葉しかないので仕方なく使う。

    だからこの本が出て、目次を見たとき、南方熊楠、宮沢賢治、石牟礼道子らには「やっぱりそうか」と思ったが、小津安二郎や与謝野晶子などは「えっ、そうなの?」と感じた。発達障害の当事者である著者なので、もちろん私なんかよりその視点は鋭いわけだから、私が気づかなかったのだろう、と思いながら読み始めた。
    はじめは「ほうほう、そうかそうか」と読んでいたのだが、だんだん、自分も含め、大抵の人にはこういう傾向があるよな、と思うようになった。
    もしかして私も発達障害かも、とチェックリストを確認すると、ASDにはわりと当てはまる。
    読み終わって、発達障害的傾向は誰にでもあり、まさに「スペクトラム」で、切り分けられるものではないと感じるに至った。生きていくのが辛すぎるほどその傾向が顕著な場合「障害」認定するというだけ。(辛さを与えているのは私たちなのに、「障害」とするなんておかしいとは思う。)歴史に残る芸術家や作家は自分の作品に対するこだわりが尋常でないから名作になっているわけで、そういう人達に発達障害的なものがあるのは当然である。
    著者は当事者だからその特性を敏感に感じるし、より心に響くのだろう。
    そして、この本に取り上げられた人々は、当然著者の好きな作家やアーティストなのである。当時は分からなかったけど、この人は発達障害だったでしょう、なぜなら…、という本ではない。だったら最果タヒや米津玄師ら現代の人を入れなくても良いのだ。あくまで当事者としてこの人のこの表現にグッときた、ということ。そしてその理由を当事者と研究者の視点で解説してみた、という本。
    私なら水木しげるやグレン・グールド、エミリ・ディキンソン、バルトーク、アンデルセンなんかを入れるなあと思ったが、それはそれらの人々が好きだから。
    定型発達ってなんなんだ。全てが定型発達の人もいないじゃないか。全て定型発達だったら、この世は面白くもなんともない。極めてつまらない。そもそも発達障害の人達の生き辛さを緩和することは、発達障害の人だけが得することではない。
    生き辛さが芸術や研究成果に昇華された、と美談にしないこと。

  • 筆者に読み解かれた天才たちには、一目置いている&気になる方が多数。彼らに対してどのようなことが述べられているか知りたくなったので読みたい

    #創作者の体感世界
    #南方熊楠から米津玄師まで
    #横道誠
    24/2/15出版

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    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/572916

  • 特に納得がいったのは「空気が読めない」という現象はスペクトラム状の問題である事。ふつう定型発達者は、読めた空気を「あえて」無視するような「こだわり」を発揮しない事だ。

    著者が当事者なだけあって、発達障害者の特性を16人の創作者のエピソードや創作物を例にとって分かりやすく解説してくれている。まず発達障害者のことを知りたい、理解したいと思った時には最良の1冊かもしれない。

    16人の創作者の中で米津玄師さんのみが、明確に発達障害の診断を受けている人物らしい。そのせいか米津玄師さんの章では、著者が語る時に私や私たちという主語が自然に使われた様に感じた。それぐらい慎重で誠実に、意欲を持って書かれた勇気の書だと思う。

  • 南方熊楠の歴史的検証に触れて他の批評に興味を持ち。

    大凡は名前を存じている作家群を、発達障害の当事者批評として読み解くといったもので
    一部「名前だけは」といった対象については肉付けとしての批評が覆いかぶさり、それ以外でも牽強付会に過ぎないかといった面もあるが
    文芸・サブカル批評の一つの指針としては興味深い。

  • 書店でなんとなくタイトルから気になったので購入。所々強く共感する部分があり、こういった本をあまり読まない自分もサクサク読み進められた。創作を志すひとにはオススメ!

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著者プロフィール

京都府立大学文学部准教授。1979年生まれ。大阪市出身。文学博士(京都大学)。専門は文学・当事者研究。単著に『みんな水の中――「発達障害」自助グループの文学研究者はどんな世界に棲んでいるか』(医学書院)、『唯が行く!――当事者研究とオープンダイアローグ奮闘記』(金剛出版)、『イスタンブールで青に溺れる――発達障害者の世界周遊記』(文藝春秋)、『発達界隈通信――ぼくたちは障害と脳の多様性を生きてます』(教育評論社)、『ある大学教員の日常と非日常――障害者モード、コロナ禍、ウクライナ侵攻』(晶文社)、『ひとつにならない――発達障害者がセックスについて語ること』(イースト・プレス)、『解離と嗜癖――孤独な発達障害者の日本紀行』(教育評論社)、『グリム兄弟とその学問的後継者たち――神話に魂を奪われて』(ミネルヴァ書房)、『村上春樹研究――サンプリング、翻訳、アダプテーション、批評、研究の世界文学』(文学通信)が、共著に『当事者対決! 心と体でケンカする』(世界思想社)、『海球小説――次世代の発達障害論』(ミネルヴァ書房)、編著に『みんなの宗教2世問題』(晶文社)、『信仰から解放されない子どもたち――#宗教2世に信教の自由を』(明石書店)がある。

「2024年 『発達障害者は〈擬態〉する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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