バッタを倒すぜ アフリカで (光文社新書)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334102906

作品紹介・あらすじ

自分の婚活よりバッタの婚活!? 日本、モーリタニア、モロッコ、アメリカ、フランス――世界中を飛び回り、13年にわたり重ねてきたフィールドワークと実験は、食糧危機の原因となるバッタの大発生を防ぐ可能性を持っていた! 現実を舞台にした異世界転生ストーリー、ついにリブート! 新書大賞受賞、25万部突破の『バッタを倒しにアフリカへ』刊行から7年。画期的な研究内容がベールを脱ぐ。

感想・レビュー・書評

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  •  本書は、研究者と芸人を足して2で割ったような著者による、学術書もどきの「バッタもん」ではなく、学術性の高い「バッタ本」でした! ご存知『バッタを倒しにアフリカへ』の続編です。

     思えば3月、「4月の続編出版情報を知り、読むなら今でしょ!」と焦って前作を読んだのに、何で読むのが今になった?(それ治んないよ。病気!)と、反省と自戒の念を込めて読み始めました。
     
     新書で600pの分厚さと、表紙写真のバッタのコスプレが2人になって、興味が更に増します。
     率直に言って、この方(著者)は、学術的な研究成果をどうしてこう面白いネタとして読ませることができるんでしょう?これも才能ですかね。

     失敗をものともしない、この悲壮感のない前向きな姿勢はどこからくるのかと、つくづく感心します。もっとも、こうでなくては研究者は務まらないのでしょうがね。間違いなく知的好奇心の塊のような方です。

     失敗から原因究明・思考・工夫し、改善して次の段階に、という地道な作業こそが研究の醍醐味だと熟知しているからこそ、労を厭わないんですね。諦めない、ブレない姿勢に天晴れです。

     そもそも学校や家庭で、大人が子どもに失敗を極力避ける指導をするのとは真逆ですね。ある程度はリスクマネジメントも必要でしょうが、若い世代の人たちが学ぶべき点が多々ある気がします。
     「エキスパート(専門家)とは、その道の全ての失敗を経験した者を云う」という、まさしく名言通りです。

     余計なお世話ですが、婚活のエキスパートにならないうちに、良き伴侶と結ばれることを願います。

  • 前作『バッタを倒しにアフリカへ』から7年(ひまわりめろん的には2ヶ月)あの男が帰ってきました!

    そして気になる表紙のライダー2号はもちろんあの人でした!

    そしてそして今作はなんと600ページの大ボリューム!それもそのはずバッタ博士の壮絶なる生き様を描いた前作では「論文発表前に内容を明かすことはできない」ことからほとんど触れられいなかった肝心の研究内容ががっつり盛り込まれています

    つまり今回は前作より増し増しの夢を追う男の生き様とバッタに関する学術的内容の2本立てってことです

    そりゃあもう面白いに決まってるじゃん!じゃんじゃん!

    でもって夢を追いバッタを追った男の物語は最後に「挨拶」と「お礼」の大切さで締められていました
    そんなところも好感度増し増し
    世界の共通言語「笑顔」で「挨拶」と「お礼」を忘れずに!

    • ひまわりめろんさん
      一Qさん

      わいは前野ウルド浩太郎さんの新発見が分かりやすく解説されている今作の方がより面白かった!
      早く入るといいの〜
      一Qさん

      わいは前野ウルド浩太郎さんの新発見が分かりやすく解説されている今作の方がより面白かった!
      早く入るといいの〜
      2024/06/02
    • ひまわりめろんさん
      本とコさん

      なんかすみません( ̄ー ̄)ニヤリ
      そして超面白かったの絶対読むべし!
      本とコさん

      なんかすみません( ̄ー ̄)ニヤリ
      そして超面白かったの絶対読むべし!
      2024/06/02
    • 1Q84O1さん
      ひま師匠

      入るの楽しみに待ってます!
      ライダー2号も気になるしw
      ひま師匠

      入るの楽しみに待ってます!
      ライダー2号も気になるしw
      2024/06/03
  • 【感想】
    あの「バッタ本」が帰ってきた。
    バッタを追いかけて地の果てモーリタニアに単身乗り込み、現地での奇想天外な生活をユーモラスな語り口で綴ったエッセイ、『バッタを倒しにアフリカへ』の続編である。

    本書はシリーズ2作目だが、実は前作はサイドストーリーで、本作がメインストーリーである。というのも、『バッタを倒しにアフリカへ』では、筆者が研究のメインテーマとしている「バッタの繁殖活動」についての論文がまだ発表できておらず、研究の話に触れることができなかった。したがって並行して進めていた研究やモーリタニアでの珍プレイ、研究者としての就職話を中心に話を進めていた。対して本書は論文が掲載された後の出版であるため、ようやっと研究員・前野浩太郎としてのストーリーが展開できるというわけだ。
    そのため、前作よりも学術的な話がかなり多くなっているが、安心してほしい。前作と同様に「珍道中」の話は依然健在だ。今回はモーリタニアだけでなくモロッコ、アメリカ、フランスにも飛び、フィールドワーク以外の研究にもスポットを当てている。その道すがら出会った現地の人々との愉快なエピソードや文化の紹介は欠かしておらず、アカデミックな解説の間の清涼剤として抜群に機能している。

    無収入、先行研究の乏しさ、研究者としての経験の浅さ、そして異国の地の予測不可能さ。まさに困難だらけの13年間であったが、最終的に筆者の研究をまとめた論文は、ネイチャー、サイエンスと並ぶ権威を持つPNAS誌に掲載された。バッタ研究に人生を捧げたチャレンジが、ようやく実を結んだのだった。

    書きっぷりはおバカかもしれないが、読んでいて何ともアツくなる一冊だった。おすすめである。

    ――「すでに対バッタ研究所のレジェンドたちが、それぞれの研究を推し進めてくれていたおかげだった。ゼロからスタートせずに済んだのだ。ただ、彼らの偉業に甘えたままでいるわけにはいかない。レジェンドたちが半永久的に残る知のバトンをつないでくれたのだ。次の世代として自分も何かチャレンジし、究極の新発見を成し遂げたい。出身研究室の伝統も受け継ぎながら。さらには、ウバロフの遺志を受け継ぎながら。人生を歩めば歩むほど、色んな想いを抱くことになり、志が大きくなっていく」

    ――「様々な「モノ、コト、ヒト、オモイ」が同じ時代に集結し、私は恵まれた。その結果、おそらくは、人類史が始まって以来、初めて訪れたサバクトビバッタの野外での繁殖行動を解明するチャンスを逃さずに、ものにすることができた。「アフリカでバッタを研究するために人生を全フリすると、どのような末路を辿るのか?」という疑問に答えるべく、人生を捧げて人体実験してみた。辿り着いた先に待ち受けていたのは、憐れな成れの果てではなく、不格好ながらも我が人生を誇りに思える達成感と、もっとうまくやれていたのになぁという後悔だった」

    前作:『バッタを倒しにアフリカへ』のレビュー
    https://booklog.jp/users/suibyoalche/archives/1/4334039898
    ――――――――――――――――――――――――――――

    本書は600ページ弱の大著であり話が多岐に渡るため、バッタの生態研究の部分を中心にまとめを作った。

    【まとめ】
    0 本書の構成
    アフリカで研究を始めてはや13年。ようやく極秘裏に進めていたメインの研究成果を論文発表することができ、学術的要素をふんだんに盛り込んだ本を執筆できる準備が整った。
    そのメインの研究とは、サバクトビバッタの繁殖行動について調査したものだ。具体的には、バッタの雌雄がいかにして出会い、結ばれ、産卵しているのか、その一連のプロセスを明らかにしたものである。

    ただ、その内容を一冊の本にしてもまったく面白くないため、バッタの繁殖行動以外の裏話を盛り込もうと思う。私の研究ぶりは「ノンフィクション・異世界転生」である。フィクションを超える予想外の出来事が日々起き続けており、一部の読者のハートをがっちりわしづかみできるに違いない。そんな異世界転生ストーリーを「婚活」「仕事」「旅」の3本柱で支えたのが本作である。


    1 バッタの繁殖行動
    モーリタニアは世界有数のバッタの発生源だ。私は2年間にわたってモーリタニアに滞在し、バッタがいつどこで何をしているのか、その生態を探ることで、バッタ大発生のメカニズムを解き明かそうとしていた。バッタの繁殖行動はいまだ世界的に研究がなされていないテーマである。

    モーリタニアの砂漠では、昼はオスだらけなのに、夜になるとカップルだらけになっていることを観察できた。そして朝になるとほとんどのバッタがいなくなっている。とすると、メスはオスと同居せずにどこかで別居しており、交尾・産卵するためにオスの集団を訪れ、翌朝までにカップルを解消して、どこかに移動しているのかもしれない。私はこれを「集団別居仮説」と名付け、人生をかけた研究テーマとした。


    2 過去のバッタ学
    バッタ研究の第一人者であるウバロフは、同種内のバッタに見られる連続的な3つの型を「相」と名付けた。バッタは両極端の相、すなわち孤独相から個体数の増加と共に群生相へと変異する。中間型は、孤独相から群生相、またはその逆へと変化する途中である転移相とみなす。トビバッタは幼虫でも成虫でも混み合いに反応し、群生相的な特徴を発達させるが、隔離されると孤独相化が進む。そして、これらの変化はリバーシブルであることが、今日では知られている。
    現在、ウバロフの相説は「相変異」と呼ばれ、バッタ大発生の謎を解く重要な鍵であると考えられている。

    ウバロフの死後、バッタ関連組織は次第に廃れた。衛星やコンピュータを用いた個体群動態研究の流行はいっときあったものの、フィールドワークに重きをおいた研究は見向きもされなくなった。


    3 レックという繁殖場と別居の関係
    生物の繁殖システムに関する研究を読んでいくと「Lek(レック)」という言葉が出てきた。鳥類、哺乳類、昆虫などのオスの集団であるレックは、メスがやってきて、1匹または複数の人気の高いオスと交尾し、子孫を残すための精子だけを得て、去っていく交尾の場としてのみ存在する。レックの発生理由ははっきりわかっていない。
    レックによる繁殖方法は、私が砂漠での観察で得られたサバクトビバッタの繁殖方法と合致している。

    先人の研究をさらに読んでいくと、「実効性比」と呼ばれる用語が登場した。
    例えば、雌雄それぞれ50匹ずつ、計100匹の生物がとあるエリアにいるとする。繁殖期になったら、何カップル誕生するだろうか?単純計算では50カップルになるが、実際にはそんなにカップルは誕生しない。その理由は「実効性比」によるものだ。ある時点で、繁殖可能なメスのオスに対する割合は1:1ではない。すでに交尾して配偶子を作りかけているなど、交尾ができない個体も含まれているからだ。こうした要素を考慮したうえで、「繁殖に関わることができる雌雄の性比」を「実効性比」と呼ぶ。
    傾向として、オスはメスよりも一度交尾してから次に交尾できるまでの時間が短い。このような雌雄間の繁殖に関わる違いによって、実効性比はオスに偏る傾向にあり、メスの数が少なく、オスがあぶれている状態になりやすいというのだ。交尾相手を巡るオス間の競争が激しくなると、メスに交尾を迫る際のハラスメントも激しさを増すという。

    交尾できる状態を time-in(入場中)、できない状態を time-out(退場中)とする。交尾できる time-in の状態にある個体の全体の集団を交配プール(mating pool)と呼ぶ。先述した実効性比は、交配プールでのメスとオスの数の比、すなわち time-in の状態にあるメスとオスの個体数の比のことになる。
    交尾可能な生理状態(または齢)に達した個体は、まず time-in 状態になって交配プールに入場し、交尾すると time-out になり退場する。交尾とそれに続く繁殖の過程(動物によっては子の世話などが含まれる)が終わると、time-in 状態に戻って交配プールに再度入場することになる。したがって、実効性比は時と共に変化する。
    交配プール内で雌雄の出会いが生まれるわけだが、交尾相手をお互いに探し出すのは時間もかかって大変だ。そこで、探したり探してくれたりする時間を短くするために、待ち合わせ場所としてヒルトッピングを使ったりフェロモンを使って一方の性を誘引したり、運よく出会えたら選り好みせずに速攻でカップルになったり、圧倒的な魅力で異性を有無を言わさず惚れさせたりする技が知られていた。

    おそらく、バッタで観察できたレックらしきものは time-in 状態に当てはまるのではないか?サバクトビバッタが他の昆虫と違うのは、群生相化すると群れる習性があるため、集団で別居している可能性があるということだ。メスたちがあっちこっちに散らばって単独生活をしているのではなく、混み合う性質があるため、おそらくはメスだけで群れているはず。先人たちの報告のおかげで、雌雄の集団別居が現実味を帯びてきた。

    モーリタニアの砂漠で、レックに飛来したメスを採集し解剖したところ、ほとんどのメスは産卵直前の大きな卵を持っていた。ごくわずかだが、卵を持っておらず、卵母細胞長が短い個体もいた。こやつらは、産卵直後の個体だと解釈すれば、つじつまが合う。
    今回、レックが観られなかった砂丘エリアでも調査したところ、密度は低いものの、全体の約9割がメスだった。
    また、別のエリアにいた数万匹にもおよぶ大規模なバッタ集団を確認したところ、性比がほぼ10割に迫る勢いでメスだった。解剖してみると、いろんな発育段階の卵母細胞を持ったメスが混じっていた。つまり、まだ卵を作っている最中である。

    レックにはメスとオスが time-in、time-out する。その時間帯を観察してみると、昼過ぎからレックに入るメスの数が増加し、夕方には性比はほぼ等しくなった。
    また、カップルになっているオスの割合が夕方以降に高まるが、これは夕暮れ後に、交尾できないオスが、夜間のねぐらとなる植物に移動したため、オスの数が減少したことに起因する。カップルが成立し、産卵したあと、カップルは別れ、雌雄はそれぞれ別の場所に飛んでいくのを目撃した。

    やはり、「集団別居仮説」は正しかった。メスが別居して、メスだらけで集団を形成していたのだ。別居することで、メスは過当競争状態のオスからの不要な嫌がらせ(セクハラ)を受けることなく、必要な時だけオスと交尾し繁殖できる上、たくさんいるオスの中から好みのオスを選ぶことができる。オスとしても繁殖の準備が整ったメスに巡り合うことができる。
    すなわち、別居とは、雌雄が物理的に距離を取ることで、平和的に性的対立を解決し、ベストカップルを誕生しやすくした自然の営みなのである。

    バッタのカップルが別居する理由として考えたのは、1つ目が「逃避能力が低下するため」である。バッタの交尾は、オスがメスの背中に飛び乗りマウンティングし、腹部先端の交尾器をメスの腹部先端の交尾器に結合する。交尾が終わると、交尾器同士の結合は解かれるものの、オスはメスの背中にしがみついたまま、他のオスに交尾済みのメスをとられないようにガードし続ける。オスがメスにオンブしてもらう形になるため、メスは飛んで逃げることができず、天敵から襲われやすくなる。
    2つ目は、メスがオスの交尾を拒むためである。産卵直後で腹部が凹んだメスはオスの交尾を強く拒絶する。メスはオスと同居していると性的な干渉をはねのけることができないため、別居しているのだ。

    ところで、集団別居はメスには明確なメリットはありそうだが、何故オスもこのシステムを採用しているのか?
    それにはバッタの受精方法が関係している。メスの体内には受精嚢と呼ばれる、交尾したオスの精子を貯蔵する袋のような器官がある。精子はメスの体内で長期保持され、産卵するたびにその精子を小出しにして受精卵を生産している。1匹のメスが2匹以上の複数のオスと交尾する場合、いったいどいつの精子が受精に使われているのかというと、サバクトビバッタの場合は、一番最後に交尾したオスの精子が受精に使われることが報告されている。
    そのため、オスがレックを抜け出してメスだらけの集団を見つけて交尾しまくったとしても、その交尾したメスがレックにやってきて他のオスと交尾したら、抜け駆けは台無しになる。また、レックにやってくるメスは産卵直前であるため、交尾~産卵までの間に背中に乗ってガードする期間が短くなり、再び他のメスと交尾できるチャンスが高まる。結果的に、レックに留まったほうが交尾相手に巡り合いやすくなるのだ。

    これらバッタの繁殖方法の研究結果に基づくと、バッタ防除の効率を上げることができる。オスの集団を見つけても即座に農薬を散布せず、そのまま放置プレイをしつつも場所だけは把握しておき、夕方以降、産卵直前や産卵中のカップルが密集してきた時点を見計らって防除するのがよい。このほうが、農薬を撒く範囲を限定できる。おまけにオスが足かせとなり、メスの機動力は著しく低下している。日暮れ以降、カップルは集団で産卵し始めるが、その間、その場にじっと留まっている。日中、活発に飛び回っているバッタを対象に、空中から農薬を散布するよりもはるかに効率的だ。


    4 ティジャニ
    この本の影の主役は、ドライバーで相棒のティジャニだ。本の表紙で一緒にバッタコスプレをしている人物である。ティジャニは豪快で人間味溢れる行動を繰り返し、ときにはめちゃくちゃなことをしでかして私を混乱に陥れる。しかし何故か憎めないのが彼だ。ティジャニの逸話を紹介したら本の全てが持っていかれてしまうので、スピンオフとして一章にまとめることとする。

    ・ティジャニは14歳から車を修理するメカニックとして工場(ガレージ)で働き始めた。腕が相当良く、修理を依頼しにくる人たちはティジャニをこぞって指名し、他の職人に仕事が来なくなった。そのため経営が悪化し、工場長は怒ってティジャニをクビにした。

    ・その後バッタ防除センターでドライバーとして就職すると、車や通信機や電気系統や施設の水回りの整備も手掛け、一目置かれるようになる。おまけにフィールドでの料理も上手い。ドライバーとしての腕もよく、今では大臣クラスの偉い人が視察に来るときは、ティジャニをドライバーとして指名するまでになった。

    ・給料を二重取りしたり、ちょくちょく金を無心しようとしたりする。相当な浪費家。「金がほしい。働かずに金を稼ぎたい」とのたまう。以前タクシーレンタルサービスの会社を興そうとして、初期費用の50万円を筆者から借りた。事業はその後、雇ったドライバーに車を持ち逃げ未遂&壊され、頓挫した。

    ・家を建てようとするも、職人に資材を盗まれたり警察から税金を巻き上げられたりと散々な目に合う。結果7年がかりで400万円ほど使って(半分ぐらい自力で)完成させた。筆者はお祝いでエアコンを買わされた。

    ・筆者は蔓延するコロナ対策のために、ティジャニに外出を控えるように伝えた。現金100万円を渡し、食糧を買い込んで近隣の住民の人に配り、みんなで自宅待機するよう要請した。
    ティジャニはその100万円を現金で住人に配った。結果「あいつは金持ちだ」と目をつけられ、家のバイクや置いていた現金を警察に盗まれた。ティジャニは結局コロナに罹った。

    ・ティジャニの娘のトゥハナが語学学校に行くための費用(24万円)を筆者にねだり、カンパした。

  • 新作『バッタを倒すぜ アフリカで』出版しました! - 砂漠のリアルムシキング(2024-04-15)
    https://otokomaeno.hatenablog.com/entry/2024/04/15/223205

    「バッタを倒すぜ アフリカで」前野ウルド浩太郎さん バッタ博士、夢実現の続編 : 読売新聞(2024/05/10)
    https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/interviews/20240507-OYT1T50062/

    <訪問>「バッタを倒すぜ アフリカで」を書いた 前野ウルド浩太郎(まえの・うるどこうたろう)さん:北海道新聞デジタル
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1025621/

    バッタを倒すぜ アフリカで 前野 ウルド 浩太郎 | 光文社新書 | 光文社
    https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334102906

  • 前作は「バッタを倒しにアフリカへ」の続編。

    著者の研究が成果を上げて多方面から称賛されていて、前作から読んでいる身として嬉しくなった。

    今作は前作よりもバッタ研究をメインにしているものの、話題はあっちこっちに飛ぶ。読むにあたりそれが読者にいいか悪いかになるけれど、それは著者もことわりをいれてるし、それが面白い本なのです。
    バッタ研究に関しての努力や工夫はもちろん、生活や人間関係もバラエティ豊かで楽しげに書かれていて600ページのゴツさ驚いた読み始めが嘘のようにサクッと読めた。

    その中の1つに、日頃から常々思っている「人生なにが役に立つかわからない」というのを説得力を持って教えてくれる場面がよくあり感心しつつ学びにもなる。
    ただ、同じように生きるには自分には勇気や器がまったく足りないし無理だ。

    誰にでもおすすめできる本だけど、どちらかといえば学生や若い方にお薦めしたい。

    きっと得るものはたくさんあると思います。

  • バッタを倒すぜ アフリカで
    著:前野ウルド浩太郎
    光文社新書 1305

    おもしろかった
    バッタ博士は変な人である
    モーリタニアの所長からもらった、ウルドをミドルネームにつかい、現地の民族衣装で授賞式にのぞむ
    砂漠にバッタが棲んでいるのも、変だが、空を黒くして跳ぶのは、バッタじゃなくてイナゴなんじゃないの?
    モーリタニアも、モロッコも人懐っこいイスラムの国、日本が日出ずる国であれば、モロッコは日沈む国というのもいい。

    気になったのは、以下です

    ・この本は、すなわち、異世界転生モノ的に、アフリカのバッタの繁殖行動を明らかにしようとする研究者の活動話を大国柱とし、それを、「婚活」「仕事」「旅」という裏話の三本柱で支えたものである

    ・モーリタニアは世界有数のバッタの発生源、「フロントライン(最前線)」であり、バッタたちとの激戦区として有名である

    ・データをとらないと研究者として死ぬ

    ・これから私がすべきは、自分というフィルターを通じて、調査対象である自然現象を数字に変えてデータをとり、それに基づいてどのような傾向があるのかを統計解析し、グラフや表を作成し、その結果を基に考察する、ということである

    ・自分が研究する際には、四つの「はかる」を大切にしている
      図る⇒計画
      測る⇒長さ
      量る⇒重さ
      計る⇒時間

    ・バッタの野外調査がほとんどされてこなかった理由の一つは、バッタが灼熱地獄のようなサハラというバリアの中に巣食い、研究者を寄せ付けなかったからだろう。バッタに接近するためには、まず、灼熱のサハラを攻略しなければならない

    ・野外で得られたデータには、「たまたまだったんじゃないの?」という疑惑が常につきまとう。
     そのとき、たまたま風が吹いていたから、たまたま鳥が飛んでいたから、と、いくらでも別の解釈ができてしまう
     再現できるもの、だけが科学として認められる

    ・自然科学では、データを収集する前に、既知の情報や予備的な観察、実験を基にして、まずはすべきことがある。それは、仮説を立てることである

    ・巨人の肩の上に立つ

    ・自分に足りないものを補うことができれば、自然と成長でき、仮説検証と論文発表に挑むことができる

    ・なぜ銀行を襲ったのかと聞かれた、ウィリー・サットンは、「そこに金があるからだ」と答えた
     なぜ、ラバーのオスは、丘に集まるのか?なぜならば、「そこにメスがいるからだ」
     私たちも同じのはず、「なぜ男はナイトクラブに行くのか そこに女がいるからだ」

    ・砂丘エリアを超えるとき、1冊の本をいつも思い出す 上温湯隆氏の「サハラに死す」だ。

    ・私はずっと風を待ち望んでいた。風は時に大雨をもたらす。大雨さえ降れば大量のバッタが発生し、一気に研究を進めることができる

    ・「前野さん、何か問題に直面したら、その問題を紙に書き出してみたらいいですよ。頭の中で整理できて、次に何をしたら解決できるのか、思いつきやすくなりますよ」

    ・アフリカでは、「欲しいものは即買いせよ」が鉄則だ。おなじ商品に出合えない可能性があるため、一気にまとめて買う必要がある

    ・組織の長たる者「リーダ:引っ張っていく者」のごとく、メンバーを率いていかなければならないわけだが、リーダーが一番がんばらないことには、誰もついてこないとのこと

    ・繁殖期に別居する動物では、繁殖活動に参加する数が多いほうの性が互いに競争して自分の魅力をアピールし、少ないほうの性が優先的に交尾相手を選ぶ傾向があるようだ。
     大概、数が圧倒的に多いオスの集団では、メスにパートナーとして選んでもらうために、オス間で何らかの抗争がおこなわれている
     別居することで、メスはオスからの不要な嫌がらせを受けることなく、必要な時だけオスと交尾し繁殖できる上、たくさんいるオスの中から好みのオスを選ぶことができる。オスとしても繁殖の準備が整ったメスに巡り合うことができる

    ・乾杯は、宴会が始まる前のささいな出来事だが、フランス人は丁寧に時間をかけ、すべての参加者同士、一人残らず乾杯をしてから一口目を味わう

    ・実はサバクドビバッタのメスは、オスと交尾せずとも単為生殖でも排卵し、子孫を残すことができる

    ・モーリタニアは、イスラムの教えにより、持っている人が持っていない人に分け与えるのは普通のことで、素直に喜んでもらえる。あげたくなければあげなくてもいいし、あげたい人があげればいいだけで、あげなかったからといってとやかく言われず、非常にスムーズに世の中が回っているように思う

    ・何かをやり遂げた者は、常に3つのものに恵まれていたという。天の時と、地の利と、人の和である

    目次
    まえがき
    第1章 モーリタニア編―バッタに賭ける
    第2章 バッタ学の始まり
    第3章 アメリカ編―タッチダウンを決めるまで
    第4章 再びモーリタニア編―バッタ襲来
    第5章 モロッコ編―ラボを立ち上げ実験を
    第6章 フランス編―男女間のいざこざ
    第7章 ティジャニ
    第8章 日本編―考察力に切れ味を
    第9章 厄災と魂の論文執筆
    第10章 結実のとき
    あとがき 名前とお礼と挨拶と
    参考・引用文献

    ISBN:9784334102906
    出版社:光文社
    判型:新書
    ページ数:608ページ
    定価:1500円(本体)
    発行年月日:2024年04月
    2024年04月30日初版1刷
    2024年05月15日2刷

  • 表紙のコスプレが二人に増えていた。
    出てくる食べ物が美味しそうでうっとりした。ティジャニのタクシープロジェクトや自分で家を建ててしまうエピソードが楽しかった。
    前作のノリはそのままだけれど、今回はしっかり学術書だった。
    集団別居仮説。面白かった。

  • 手元に届いた時、前作よりめっちゃ分厚くなってて一瞬怯んだんだが今回もひどく面白いぞ。

    コータローもすっかり歳を重ねたハズだが語り口は変わらず軽妙。前回は控えられてた研究内容も読者に分かりやすく噛み砕いて説明してくれてるので万人がおいてけぼりを食らわない工夫されてる。

    コータローの人となりが存分に見える本当に素敵な本だと思う。血族みんなエリートでスマートな家系とかじゃなく、私のような至極普通のご家庭で育ったコータローが一研究者として生きていくまでがすんごくよく見える本だと思う。

    研究や、海外生活、文化など以外にも生きていくのに大切なことや進路に迷ったらとか、失敗したり、嫌なことがあったり、バカにされたりしても大丈夫だよって背中を押してくれる事があちこちに繰り返し書かれているよ。

    バッタを倒しにも面白い。
    バッタを倒すぜも面白い。

    それにしてもティジャニにお金渡しすぎw

  • バッタを倒しにアフリカへの続編
    前作が非常におもしろかったので迷わず購入

    前作より専門性(研究に関する内容)が重圧になっているので
    その辺りは人を選ぶかもしれません。ただ、著者の健在の文章力でそのあたりはカバーされ、約600ページあっという間に読み切れると思います!

    私も大学院まで進学し、単著での論文執筆までは至りませんでしたが、研究に携わった経験があります。後半論文執筆時の前野氏の苦悩や、研究に関する様々なしがらみ共感できる部分が多かったです。

    前野氏も断っているように、話がぶっ飛びまくりで、
    最後まさかの夢の話になりますが、これが結構しみました。

    小学生には少し難しいかもしれませんが、中学、高校生あたりの子供には夢の考え方の一つとして、読んでみてもらいたいなと思いました。

    私も学生時代にこの本に出会えていたら、研究に対するアプローチの仕方の幅がもう少し広げられれたのかなと思います。仮説をたてて最もらしい証拠を集めていく、この当たり前のプロセスが当時はなかなかできていませんでした、未熟。

    最後にもう1人の主人公と言ってもの過言ではない、ティジャニは今回も健在です。なんならパワーアップしているので、前回ファンになった人はその部分だけでも読む価値あると思います笑

  • 最高でした!!
    環境や健康に配慮したバッタ防除に結び付く世界初の発見とは、めちゃくちゃすごい!
    それをこんなに解りやすく、ユーモアを交えて笑わせながら読ませるとは、恐るべし…。

    前作に続き、サバクトビバッタの繁殖活動の重要な発見に至るまでを、研究のみならず、各国での暮らしや人間模様も交えながら綴られています。

    ある仮説についてや、論文が国際ジャーナルに受理されるまでの長きに渡る研究の裏側。
    モーリタニア、モロッコ、フランス…と、世界での奮闘とご活躍。灼熱の地でのフィールドワークは過酷すぎて、「よくぞご無事で!」という思い。

    新たな事実を見つけ、明らかにすること
    研究へのモチベーションの維持
    研究を共にする者への心配り
    逆境にあっても継続する力
    不測の事態への対応力や楽しめる能力
    …どれを取ってもすごいと思う。

    本書は知的好奇心を満たしてくれますが、ある意味では冒険書のようでもあり、著者の人間的魅力と笑いが溢れていておもしろい。
    “あとがき”を含め濃密な内容に感心しきり。

    今後の更なるご活躍と続編が楽しみです。


    『論文は半永久的に残り、受け継がれ、知の結晶として積み上がっていく。色んな大きさ、形、色があるだろうが、確実に折り重なり、すそ野に、高みに加えられていく。論文は研究の証となり、歴史をつくっていく』

    『世界中で、毎日のように発表される多くの論文の一報一報には、研究者一人ひとりのドラマが隠されている。様々な想いが「知」に形を変え、半永久的に受け継がれていく。(中略)よそでは味わえない興奮や感動に全身が痺れ、快感に酔いしれることができるのが研究の醍醐味の一つだ。』

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著者プロフィール

1980年生まれ。神戸大学大学院自然科学研究科博士課程修了。農学博士。
日本学術振興会海外特別研究員としてモーリタニア国立サバクトビバッタ研究所に赴任。

「2012年 『孤独なバッタが群れるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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