北の夕鶴2/3の殺人 (光文社文庫 し 5-5)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (387ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334707682

感想・レビュー・書評

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  • 別れた妻からの電話にただならぬものを感じた吉敷は、彼女を見送りに上野駅へ。発車する電車の中で元妻の姿を見かけたが、翌日、見送った彼女の服装そのままの死体が発見されたとの連絡を受け――!?

    吉敷シリーズ第3弾。
    こ、これは・・・島田荘司ファンとしての愛を試されているのか? と思ってしまった作品だった(笑)。

    前2作ではスマートで決して感情的にならなかった吉敷刑事が、この3作目にして、愛する人への熱い思いを全力でぶつけるのである。
    その凄まじさたるや、驚き。そこまでやるか、と思えるほどの不屈不倒ぶりである。この巻で吉敷のイメージががらっと変わること請け合いだ。

    それだけに、私としてはそんな彼の一生懸命さをどう受け取っていいものか少々戸惑ってしまった。どうして彼が、元妻の通子のためにそこまでするのかが、いまいちわからなかったのである。
    しかしここが島田さんの恐ろしいところで(笑)、とにかく吉敷刑事が一生懸命な様が熱く熱く書いてあるために、そう思っても口を挟めないのだ。つまり、頭ではそう思っていてもあまりの作者の熱意に負けてしまうのである。

    この本では推理もかなり奇想天外――というか、正直トンデモな気がするのだけど、とにかく吉敷刑事の熱意に押されっぱなしで、彼の情熱の前ではトリックのありえなさをつつくのがためらわれてしまう。
    読んでいてどうすればいいのかわからない。しかし、情熱は伝わってくる。いやはや、なんて本なのだ(笑)。

    というわけで、非常にファンとしての愛を試されているような気になった作品であった・・・(汗)。
    私個人としては、事件をエキセントリックにするより、二人の関係をもっと書き込んでくれたら、もっと読みやすかったかも、と思う。

  • 吉敷シリーズ。

    別れた妻・通子のために奮闘する吉敷が熱い。
    トリックは大掛かり過ぎてビックリというより唖然だけれど(笑)それでもグイグイ読ませる力があるのはスゴイよなー

  • 「ゆうづる九号」で発見された死体は、別れた妻か!? 吉敷は急きょ青森へ…。北国を舞台に、意表をつくトリックとサスペンスで描くロマンミステリー。(光文社サイトより)

    島田 荘司作品は多分一度も読んだことがなかったと思います。
    吉敷刑事といえばテレビで鹿賀丈史さんが演じているのを見たことがあったような気がしますが、ほとんど記憶にない。
    でもやっぱりイメージは鹿賀丈史さん。

    この作品、ぶっちゃけトリック大掛かり過ぎでしょ。
    っていうか、ほんとにうまくいくの?
    読んでいる間に、なんとなく想像はついていましたが、まさか本当にそうくるとは……。
    そして偶然の積み重ねに頼る部分も多いなあという印象がぬぐえません。

    後半は主人公の身体がボロボロになっていくのが読んでいて辛くなるほど。
    とにかくギリギリ間に合ってよかった。
    読み終わったときはグッタリでした(笑)。

  • 再読。
    島田荘司と言えば大胆な機械トリックですが、冷製に考えると無茶なトリックを力業で読ませるのはさすが。
    通子さんはほんと不幸体質だなあ

  • ミステリー好きの知人に勧められて読んだ。誰にも気付かれることなく出入りすることが不可能なアパートで起きた密室殺人事件の謎解きがメイン。義経の伝説などを絡めたミステリーで、一体これをどうやって解決するんだ…と気になり最後まで一気に読んだ。トリックには思わず木下大サーカスかよ!と突っ込みを入れてしまった。アクロバティックすぎだろ…。しかし解説によると、アクロバティックなトリックがこの人の特徴なので、そこを批判する奴はまだまだわかってないぜ、ということだ。すいません…。他の作品も読んでみたいと思います。

  • 渋い社会派サスペンスか、クールなハードボイルドかと思わせといてのど派手なトリックにやられました。

  • 刑事・吉敷竹史モノ。殺人犯として追われる別れた妻・加納通子の容疑を晴らすため、吉敷がボロボロになりながら奮闘する。島田作品では御手洗潔とこの吉敷竹史が2大シリーズ。奇想天外なトリックにエキセントリックな名探偵を配した御手洗シリーズに対し、吉敷シリーズは社会派の刑事物。私は、ミステリは「謎はすべて解けた!」みたいなスカッ感を楽しみたいので、社会派ミステリはあまり好きじゃない。だからこの吉敷シリーズは手に取るつもりがなかったんですね。でも、この「北の夕鶴」から「羽衣伝説の記憶」「飛鳥のガラスの靴」「涙流れるままに」とあともう1作(ネタバレになるので題名は伏せます)が、吉敷と通子の愛がテーマになったシリーズ中シリーズだと聞いたので、これを時系列で追ってみることにしました。この「北の夕鶴」は笑っちゃうような壮大なトリックが御手洗的で面白かったです。「あり得ないって」と突っ込んじゃいました。

  • 昔の作品の割には,読みやすく,スラスラ読めました。
    トリックはとんでもトリックでビックリしました。このトリックは金田一少年でもあったような??
    この時代には斬新なトリックでみなさん驚いたんじゃないかなぁと思いました。

  • 吉敷竹史シリーズ#3。吉敷竹史の前妻、通子が謎の殺人事件の被疑者に。休暇中の吉敷は前妻の容疑をはらすため、事件を独自に捜査する。
    前妻登場!吉敷のプライベート捜査!

    このシリーズでは珍しく、ハードボイルド。ケガが痛々しい。「鎧をきた幽霊」やら「夜泣き石」やら土俗的なものに彩られた密室のトリックは、なんじゃそれーと驚く。

    上野から青森まで寝台特急ゆうづる号。定期運行は1993年までとのこと。

  • 吉敷竹史シリーズの3作目。
    前2作と同じようなタイトルなので、奇想的なトラベルミステリーを期待していたが、メインとなるのは「寝台特急ゆうづる」内の事件ではなく、釧路に立つ「三矢マンション」での殺人事件。
    そこへ義経北行伝説と、主人公が元妻を追いかけるハードボイルド的な要素や、タイムリミットが加わる作品だった。

    期待していた作風とは違うとはいえ、途中までは結構面白く読んだのだが、やはりメインとなるマンション殺人のトリックと、元妻の秘密の真相などで冷めてしまった。
    (東北や北海道の風景描写も良かったのだが、さすがに北海道の寒さに対する認識が甘すぎるのではとは思った。地元の人はどう感じるのだろうか。)

    また、同じ島田作品の「異邦の騎士」との類似性を書いている人がいて、学生の頃に読んだ時にはとても良かった記憶があるが、ガッカリしそうで「異邦の騎士」を再読するのは悩む。

著者プロフィール

1948年広島県福山市生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃のデビューを果たして以来、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』など50作以上に登場する探偵・御手洗潔シリーズや、『奇想、天を動かす』などの刑事・吉敷竹史シリーズで圧倒的な人気を博す。2008年、日本ミステリー文学大賞を受賞。また「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾にて中国語による「金車・島田荘司推理小説賞」の選考委員を務めるなど、国境を越えた新しい才能の発掘と育成に尽力。日本の本格ミステリーの海外への翻訳や紹介にも積極的に取り組んでいる。

「2023年 『ローズマリーのあまき香り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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