三人の悪党: 長編悪漢小説 (光文社文庫 あ 29-1 きんぴか 1)
- 光文社 (1999年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334728441
感想・レビュー・書評
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『 三人の悪党 』を読んでみると、主役となっている3人は悪党とは言い難いと思った。
何だかとてもお人好しで、人に利用されたり嵌められたりして苦汁を飲まされた者たちだ。
その3人が、嵌めた奴らに意趣返しを行う痛快な物語が綴られている。
主人公の一人「ピスケン」は、本名の阪口健太とピストルの名人と云うことから名付けられたあだ名だ。
弱小組織に所属する「ピスケン」は、一人で敵対する組の事務所にトラックで突っ込み、親分を射殺してしまう。
親分殺害で名を挙げた「ピスケン」は、懲役13年と6ヶ月と4日の刑期を務めあげ、出所の時を迎える。
刑務所の鉄扉の外には、各組の親分衆を筆頭に若手の組員がずらりと並び、出所を出迎えてくれるものと想像していたのだが⋯
自衛隊のダレ切った現状に嘆き、純粋に防衛に携わる者として上層部に抗議の意志を示すためのクーデターを起こすが全く相手にされず、失意のもとに自殺未遂を起こした軍曹こと「大河原勲」。
身長も体重も頭の大きさも足の大きさも、際立った図体で周りの者を威圧する風体だ。
そんな「大河原勲」と「ピスケン」の浅田節を交えたやり取りは、笑いを誘う。
東大出の元政治家秘書「広橋秀彦」は、大物政治家の収賄の罪を被らされる。
大物政治家の愛娘と結婚し、子供も成したにもかかわらず、あっさりと引き離され、初めて孤独感に苛まれる。
「ピスケン」と「大河原勲」とは、全く性格も知識も社会性も次元が異なるのだが、何故か3人はウマが合い、お互いの意趣返しに協力し合う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これはこれで楽しめたんだけど、やはり浅田次郎さんの作品となると自分の中で期待が高くなってしまうのだなぁ。他の作品と比べてしまって、☆3つ。
シリーズもののようなので、続きもいずれ読んでみようと思います。 -
セリフのテンポが良い。
独特の言葉回しでグングン話が進んでいく。
話の設定と展開の仕方が上手いです。
また、短編の連作なので、1話のボリュームが重すぎずすっと読めます。 -
少々思想が一定のベクトルを指していますが、浅田先生らしいといえばそうなるか、という話。その辺りは差し引いた感想はドタバタ喜劇かな?
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軽い読み口。声を出して笑ってしまった。純粋すぎて不器用な3人のはみだし者が、それぞれの裏切られたものに復讐する話だけどカラッと笑えてたまに切ない。
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本を読んでて声を出して笑えるのは本当にこの人ぐらいなんじゃないかと思う。この人の描写はすばらしい。
痛快でテンポよくさくさく読める。
あーおもしろかった。 -
登場人物のキャラクターはおもしろい。が、もう少し物語のうねりのようなものが欲しい。
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著者の『プリズンホテル』のようなドタバタコメディを期待していた。
だが、少し期待を裏切られた。
笑える訳でもない。
泣ける訳でもない。
中途半端な作品という印象。 -
阪口健太、通称ピスケン。敵対する組の親分を殺り13年刑務所で過ごす。大河原勲、通称軍曹。湾岸派兵に断固反対し、単身クーデターを起こした挙句、自殺未遂。広橋秀彦、通称ヒデさん。収賄事件の罪を被り、大物議員に捨てられた元政治家秘書。あまりに個性的で価値観もバラバラな3人が、何の因果か徒党を組んで彼らを欺いた巨悪に挑む!
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懲役を終えたばかりのヤクザ、時代錯誤な元自衛官、自ら濡れ衣を被った大蔵省上がりの議員秘書。
世が世なら大物になったであろう3人の男達が、世直しか憂さ晴らしか巨悪に挑む。
大好きな「プリズンホテル」を彷彿とさせる軽快なテンポと笑いが小気味良いです。
もっともこちらの方が先ですが。15年以上前に書かれた作品ですが、今の世相にも合ってるなぁ。