森のなかの海(下) (光文社文庫)

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  • 光文社
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感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334737412

感想・レビュー・書評

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  • 下巻は時代背景などの話もあり少し時間がかかってしまった。
    だが、知らない間にページが進み時間が随分経っているという感覚だった。
    落ち着いた良い時間を過ごすことができた。

  • 深いストーリー、泣けた。

    希美子に家や財産を託して亡くなった西岡カナ江とその若き日の恋人、室谷宗弥、そして二人の息子である典弥の数奇な人生が明かされる。宿命としか言いようがない、家族としてはある意味不幸な人生を生きながらも、それぞれがとても人として深いものをもっていたことが救いだと感じた。

    そして、希美子や、やさぐれ気味の震災孤児たちの再生に、知性と寛容さ、人間の幅を感じさせる希美子の父や、個性的ながら姉想いの妹の存在も大きいと思う。
    知性と教養のある人は、魅力的だな。。

  • お父さんが一番好きでした

  • 宮本輝の小説を読むと、いつも「人生」ってことを考えさせられる。そして、「豊かに生きる」ってことに憧れさせられる。言わずもがなだけれど、ここでいう「豊か」というのは、物質的な豊かさをさすのではない。

    現在、38歳。

    自分の人生の長さを知ることはできないけれど、日本人の平均的な寿命から考えれば、人生の折り返し地点あたりにいるのかなぁと思う。歩いてきた道を振り返ってみれば、世のため人のために何ができたかと言う軸から考えると誇れるものはないけれど、自分が自分に向けて言うのであれば、「なかなか良い人生を送っているね」と言える。幸せだなとも思う。

    でももっとこの先に何かあるんじゃないか、
    「豊かさ」や「幸せ」の定義をもっと拡げられるんじゃないか、
    そんなことをたくさん考えさせられる。

    宮本輝の小説は大好きです。

  • なんでしょう、これは。
    読者アンケートの結果が悪くて、連載を打ち切りになったのでしょうか。

    上巻は、ちょっと上手くいきすぎな感はあったけれども、震災から立ち直るための居場所づくり(主人公である希美子や、彼女が引き取った少女たちの)は地に足がついたものだった。
    親の愛情に恵まれなくて、自分勝手だったり、気が短くて飽きっぽかったりした少女たちを、仕事を与えることで生活習慣や一般常識を多少とはいえ身につけさせた。

    しかし下巻にきてその流れは失速。
    希美子に山荘を遺した老女の人生の謎を追う方が主眼になっていて、10人もの少女を預かっているのに、その書き分けもほとんどできていない。
    実の息子二人はもっと影が薄い。

    小学生の息子と、未成年の少女たちを預かっておきながら、下関に行ったり吉野に行ったり。
    その間家の様子を気にかける風もない。

    そして、これが作者は書きたかったのだろうけれど、戦後、日本の教育の不毛のせいで、古き良き日本が失われてしまったこと。
    それを取り返すには教育を変えねばならないことが、これでもかと主張される。
    その説に全くの反対ではないけれど、登場人物たちがあまりにも声高に主張すると、こちらとしては引いてしまう。

    結果、阪神大震災はただのネタ振りとなり、希美子の家族は単なる賑やかしとなってしまった。
    だって少女たちが成長するところを書いていないんだもの。
    数々の伏線が回収されないまま放置
    上巻が面白かっただけに、残念でならない。

  • 阪神大震災キッカケの物語。 人生はどう変わるの分からない...何かを無くして何かを得られたと思った時、また何かを守るとなると、強く生き幸せを得られるのか…。豊かに生きることは物質的なものではない事を、この本を読んで思う。 戦争時代背景、結婚離婚、家庭問題など多岐にわたる事を考えさせられた良本。 この本を読むと、「豊かさ」や「幸せ」の定義をもっと拡げられるんじゃないかと考えさせられる。 そして、家族環境って人格を形成する上で、大きな影響を与えるものであろうと強く思う。いや本当に良い本を久しぶりに読んだ。

  • 大震災、不倫-離婚など大物のラインに加え、時代的な恋と家同志の結婚など大柄な話題を進めつつ、震災孤児を預かったり、お屋敷を受け継いだり、伏線としてはこれまたしっかりとしたラインを組み合わせて進む物語。物語を通じて、時代背景から大震災時に発揮される国家観、教育観、男女の仲や若者の将来や家族のあり方など多方面に渡るテーマを丁寧に語らせている。中でも希美子の父の考え方がおおらかかつしっかりとしていて共感が持てる。こうやるには財政面や社会的な立場もあるとは思うが。
    また忘れてはならないのが、森のあり方や描写である。様々な樹木や植物に加え、森のあり方について羨ましい環境が描写されている。

  • 後半色々明らかになってくると面白い。
    PC黎明期の空気感も新鮮

  • 宮本輝の作品は久々。いつも裏切らない。阪神大震災をきっかけとして人生が大きく変わる主人公。形は変われどこんなドラマは、いくつもあったんだろうな。

  • 山暮らしに憧れさせられる。
    私には無理と知ってはいても。。
    上の方が好き。
    下は 典弥ばっかり。
    息子2人の描写がも少し欲しかったなー。
    料亭の夫婦の、落ち目も知りたかった。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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