カンタン刑 式貴士 怪奇小説コレクション (光文社文庫)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (393ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334743796

感想・レビュー・書評

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  • 複数の名義を使い分けて様々なジャンルで多くの作品を残したという
    清水聰(1991年没)の、SF&怪奇小説でのペンネーム=式貴士。
    寡聞にして存じませんでしたが、
    最近調べ物の途中で目的を見失い、迷子になったところ、
    たまたま「カンタン刑」という奇妙なタイトルを発見し、
    気になったので買ってみました。
    グロテスクな奇想に満ちたSF&ホラー系作品集であります。
    表題作は、凶悪な殺人犯に死刑より重い罰を与えることが裁判で決定し、
    その「カンタン刑」の、とんでもなく非人道的な内容が綴られていくのだけど、
    受刑者が八人も人を殺して平然としているヤツだというんで、
    読者は刑の描写のえげつなさに吐き気を催しつつ、
    彼に同情する気はまったく起こらず、
    良心の呵責は覚えずにページを捲っていけるのでした(笑)
    ――が、残念ながら読み進めるとどんどん飽きてきまして。
    多分、アイディアは奇抜で面白いけど、文体が合わないからだと思う次第。
    神は細部に宿ると言うけれど、あまりにギッチリ描き込まれ過ぎていて、
    黙して語らぬ余白の美が存在しないかに見えるのがキツイんだなぁ。
    ただ、春日井健の歌を題材に――とリクエストを受けて書かれたという
    女性芸術家とモデルになった少年の話「マイ・アドニス」は、まあまあ好み。

  • 横溝正史よりは江戸川乱歩よりの、あるいは耽美派の川端文学の香りのある恐怖小説というべきか。

    式貴士という名前に聞き覚えはなかったが間羊太郎という名前で以前犯罪アンソロジーを読んだ事があり、それでタイトルの面白さも相まって手にした一冊。カンタン刑というユニークなネーミングだけれど、内容はかなりグロ。しかも全編に流れるトーンがちょっと古い文学の香り十分。人を選ぶので万人向けではないけれど、乱歩以外にも例えば、平山夢明氏などが好きな人にははまりの一冊だと思われる。

  • 著者自身が呼んだ、グロテスクロマン短編が不思議な読後感でよかった。
    グロ、少年愛、猟奇、サディスティック様々。
    何十年も前に書かれたと思えない。

  • 表題作で描かれる刑の凄まじさもさることながら、「鉄輪の舞」の結末の惨たらしさたるや。もし4、5年前に読んでいたら恐らく狂喜乱舞して「傑作だ×3」と連呼していただろう。

    惜しむらくは、現在の自分ではこの猟奇、淫虐、残酷、変態―そういったもの全てが、刺激が過ぎるようになってしまったこと。

  • すっげ…

  • 小学生の頃に、妙に残酷な事件に詳しい子がいた。彼は様々な拷問方法や稀代の連続殺人犯の話を、機会があるたびに私たち生徒に聞かせ、その感想を楽しむ露悪的とでもいうべき趣味を持っていた。
    おそらくそのような人物は、全学校の小学校六年生の中に1人はいるだろう。
    彼らを「悪意」という名のやくざ組合の鉄砲玉と例えるなら、この小説の作者は間違いなく大親分である。

    というか、後ろに感想を書いている平山氏がまさに社会の歯車として使い潰されんときにこの小説を読んで瞠目した、との旨を記しているんだが、この作者はどう贔屓目に見ても太宰あたりと同じ乳母日傘のボン(今でいうところのマンションを何棟かもっているエロ漫画家の類い)だと思われるのだがどうだろうか

  • エロスの減刑
    黎明期

  • 奇妙奇天烈!すごい…の一言に尽きます。お亡くなりになられているのがなんとも惜しい…もっと早くに出会いたかった。。。そしてジャケが素敵!

  • 大変面白かった。エログロナンセンスの極み!

    ・カンタン刑……想像を絶する地獄のような刑罰!オチとなるやり取りが何ともシュール。
    ・首吊り三味線……「カンタン刑」に続く猫虐待描写に、式貴士は猫嫌いなのだろうかとぼんやり思う。愛と狂気は表裏一体なのか。謎めいたオチがたまらない。
    ・涸いた子宮……おぞましいラストが夢に出てきそうだ。
    ・ヘッド・ワイフ……この話はそう言えば既読であった。狂気、だけど平和なハッピーエンド。
    ・おれの人形……恐ろしい支配と隷属の形。
    ・マイ・アドニス……主人公の思いがもたらした悲劇なのだろうか。切ない。
    ・血の海……大抵のグロは大丈夫なのだが、何だかこの話は気持ち悪くなった。というか厳密に言えば殺人や解体などの描写がない分グロではないはずなのに。リアルに想像してしまったせいだろうか。
    ・アイス・ベイビー……結末の切なさはたまらないものがあるが、設定やIBを選ぶ場面などの描き方はシュールで面白い。

    *****
    以下、余談。
    新品の在庫がないので、Amazonの中古を探した。あるショップの出品者コメントに妙なことが書いてある。「状態は良いのですが、裏表紙にあるものが貼りつけてあります。本来こちらで剥がすものですが、本書の内容から鑑みるに、逆にそれも含めて面白いかもしれませんので、貼りつけたまま送ります」(うろ覚えですがこんな感じ)。一体何だろうかと興味を引かれ、値段が安かったこともありあえてそのショップで購入した。ところがそのコメントのことを忘れており、読み終わってから「あるもの」の存在に気づいた。なるほど面白い。本の内容の面白さに加え、プラスアルファのブラックジョーク。

  • 綾辻さんのエッセイより。
    たまらん。気持ち悪い。オゲェーッ!
    でも大好きだッッッ!!!!!
    解説に平山さん。ラブ。

  • 複数の筆名を用いて、ミステリ評論、児童向け読み物、
    官能小説、占星術研究などの多彩な仕事を遺した作家・式貴士。
    その特徴的な短編作品の中から選ばれた十二編と、
    原作を式貴士が担当した劇画作品一編を収録。

    表題作の「カンタン刑」を初めとして、
    収録作品のすべてが、奇想としか言いようのない
    突飛な状況設定について描かれた物語である。

    どの作品にも一応の主人公(語り部)は存在するが、
    名前すら明かされない場合がほとんどで、
    そのせいもあって、彼らが主人公なのではなく、
    突飛な状況設定それ自体こそが実の主人公なのだ、
    と言っても差し支えないほどに、
    どの作品も、奇抜なワンアイデアありきの作品となっている。

    「こういうことが起きたらどうなるだろう」
    という思考実験の過程を書き記しただけのような小説であり、
    人間ドラマや凝ったプロットなどはほとんどない。
    人間は常に、奇怪な状況という主人公に振り回される
    物語上に配置されたただのアイテムのひとつに過ぎない。

    だが、それでいてどの短編も、人間の愛や欲望、
    そしてそれらに溺れた人間たちが現出せしめる狂気、
    といったものを鮮やかに描き出すことに成功している。

    これは、物語の核をなすアイデアが秀逸であることの現れだ。
    ただ一風変わっているというだけではなく、
    その状況の下では、人間は真の姿を暴露せざるをえない、
    というような実に巧妙な状況設定なのだ。

    そのような設定をたくさん考え出したというだけで
    式貴士という人は充分に凄い才能である。

    もちろん、設定を思いついたことだけが凄いのではない。
    その設定の中で、真の姿をさらけ出す人間たちを
    しっかり捉え、文章に写し取ることができる才能、
    それをも兼ね備えていたことが、
    式貴士を式貴士たらしめた要素なのだと思う。

    文章にはやや日本語としておかしいところがあったり、
    女性の言葉づかいがワンパターンだったりと
    個人的に気になるところもいくつかあったが、
    そういった細かい瑕疵は無視できる程度のもの。

    ただ、凄い、ということは理屈では理解できるのだが、
    いかんせんワンアイデアのみの作品群なので
    その凄さはこうやってここにでも書いておかないと
    おそらくすぐに忘れていってしまうだろう。

    小説としての面白さは弱い。
    やはりアイデアの凄さが光っている。
    冴えたアイデアの数々を、ぜひ味わってみてほしい。

  • ところどころしょうもないネタ(親父ギャグなど)もあるけど、とにかく作者の発想が面白いので楽しく読めた
    特に「アイス・ベイビー」の世界観が好き。色々驚かされた
    「マイ・アドニス」は、最後のシーンを映像で観てみたいなぁと思った

  • 初めて式さんの書物を読みました。ビリビリに痺れました。ジュルジュルと涎を垂らしながら、バクバクと鼓動を鳴らし、果てのない夢想を夢み、そして一人で××しました。SFだったんですね。うん。さすがですよ。エロ・グロ・ナンセンスばんざーい。

  • 読み始めて4ページで読んだことを後悔したのはこれが初めてだったわww最初の○キ○リのくだりは吐き気がすごかった。解説に「正常な神経の持ち主、Gの嫌いな人、食事前の人は絶対にお読みにならないでください」という注意書きがあったけど、読む前に知りたかったww

    全編を通してエログロで気が遠くなるような話ばかりだったけど、「涸いた子宮」みたいなSFテイストの話は面白かった。

  • 高校生の頃、この作者の作品が友達の間で、ちょっとしたブームになってんだけど、今回、すごい久しぶりに読んでみた。
    いやぁ、やっぱ凄い(;_・)
    エログロ全開で、突っ走ってる・・・。
    高校生の時は、勢いだけでこの作者の作品を読んでたけど、歳とってからじっくり読んでみるのも良いかも。
    ただ、内容が内容だけに、好き嫌いがハッキリ分かれそうな作品。

  • 広く一般の人には勧めません、なにせ気持ち悪い話が多いので。
    高校生の時にたまたま地元の図書館で見つけたので読んでみましたが、たぶん自分では怖くて買えないわ。

    表題の「カンタン刑」はバーチャルにいろんな環境に置かれるという刑罰の話ですが、あまり想像力豊かに読むと具合悪くなりますー。

    一番手に入りやすそうな最近のもので紹介しました。

  • かなり前に発売されたものですが、別段それほど違和感もなく。
    そういう落ちなのか、という短編ばかりでした。

    題名になっている短編は、世にも不思議な~で
    似たような物語を見た気がします。
    元ネタはここなのか、というのをちょっと知りたかったです。
    が、もしもこれが元ネタでも、映像化される分
    まだ良心的な刑罰だった気も…。
    想像だけはしてはいけません、な話でした。

    そういう落ちあり!? と思うのは、バックシート・ドライバー。
    散々してきた挙句、目的が『そこ』とは…。
    それよりも、加担していたのが赤ん坊もなのか、を
    かなり知りたいです。
    見た目は子供、頭脳は大人、なのでしょうか??

  • 死刑より怖いカンタン刑。
    カンタン刑って何だかふざけた名前だな、とか思って読んでいたら一気に引きこまれてしまった。

    もともとはSM作家として活動していたそうで、内容的はちょっとエロい。そしてちょいグロな短篇集。
    著者が既に他界されているのが残念でしょうがない。

  • ジャンルとしてはSFなのだと思うけれど、ホラー色のかなり強い短編集。
    一番恐ろしいと思えたのは「鉄輪の舞」。「自分がこんな目に遭わされたら」で怖いのは、なんといっても「カンタン刑」ですけどね。「鉄輪の舞」で描かれる心理面の恐ろしさ、ってのは格別です。
    別の意味で怖いのは「アイス・ベイビー」。こういうの、いつかは実現されてしまうんじゃないか、と危惧する気持ちがほんの少しありますよ……まさかとは思うけれどね。未来には何が起こるか分かりませんから。

  • 表紙と題名に惹かれて衝動買い。
    解説を見たら結構昔の人だった。
    「カンタン刑」は以前、世にも奇妙な物語で似たような話を見たことがあったので最後の××落ちが途中でわかってしまった。
    あと、「ヘッドワイフ」も以前マンガで見たはず。
    全体では最近にはない怪奇小説でおもしろかったです。

  • エログロ好きにはお勧めかも。不思議な世界。

  • 久し振りのドハズレ。
    読み進めるうち嫌な予感がしたけどその通りやった・・・。

    アイデア全てが中高生並。話の展開もオチもイラッとしました。
    こういう類のしょうもなさは山田悠介以来。
    読む価値無し。

    09.04.28

  • ただひたすら嫌悪。
    視覚、触覚、味覚、嗅覚。あらゆる感覚に訴えて嫌悪感を催す怪作。
    言葉にここまで犯されるとは。
    うかつにも電車内で読んでしまえば嘔吐の危険あり。
    もしくは電車の窓に頭を突っ込みたくなるやも。
    とにかく、お気をつけあれ。


    式 貴士(しき たかし)
    東京都出身の作家。SF作家、官能小説家、占星術師。
    式貴士でSF、間 羊太郎で推理小説評論や子供向きの生活雑学やクイズ本、蘭 光生で官能小説、小早川 博で雑学、ウラヌス星風で占星術、と他分野で活躍した奇人。内容の割りにドライな文体が特徴。蘭光生名義では団鬼六、千草忠夫と共に「御三家」と評されていたポルノ界の巨匠。

    (収録作品)
    カンタン刑
    首吊り三味線
    かわいた子宮
    ヘッド・ワイフ
    おれの人形
    マイ・アドニス
    血の海
    アイス・ベイビー
    メニエール蝉
    塵もつもれば
    鉄輪(かなわ)の舞
    東上線見聞録
    仕置猫

  • 2008年2月16日読了

  • 恥ずかしながら、著者のことは、全然知りませんでした。大分前に書かれた作品なのに新しい感じがします。あと何作品か読んでみたいです。

  • うーん。全体的にどの短篇も不完全燃焼な感じ、あるいは寸止めで終わったような感じがなんだか。エログロもそこまででもないし。

  • 久しぶりに読んだ…懐かしいというか、こんなにも、うひゃーな話だったかなあ。当時はそんなに厳しい話だと思わなかったんだけど、あれから年取って、いろいろ理性とか常識とか身にまとってしまったのだろうか。でもマジキツかったです。面白いというか、刺激が強いというか、特別な印象強い作品集だけど、人にはオススメしません…つーか、怖くて勧められないよ(笑)特にGB嫌いの人には吐き気を催すこと請け合いなので、絶対に手に取られませんよう。

  • 平山夢明が推薦していたので購入。
    短編集なんだけども、一つ一つのオチが弱いような気がしないでもない。エログロナンセンスが苦手な人にはお薦めしません。

  • グロイ…!とにかく最後までエログロナンセンスでした。表紙買いしてみたけど私には刺激が強すぎでした。それでも最後まで読めたからよかったかな。
    ホラーはサイコ系が好きです。

  •  21世紀の今、こうして新しい入れ物で式貴士作品が読めるなんて!感激。 収録された作品のいづれもエログロで猟奇的で、モラルを鼻で笑うかのごときえげつなさ。精神的にダメージ大。時代を感じさせる古臭い部分がない訳ではないがそれすらも作品のスパイスになっている。読書することによって打ちのめされる作品というのも、そうそうないんじゃないかな。目を背けたいのに、でもつい見て読んで強烈な個性にシビれてしまう、奇妙な魅力がある物語ばかりだ。 印象強く残ったのは、自分に少しでも想像力があることを恨みたくなる、虫嫌いな人間が読んだら決して脳みそに刻み込まれて忘れられないえげつなさ全開の「カンタン刑」。とにかく気持ちが悪い。そして気持ち悪いが褒め言葉になっている作品だ(笑)。「涸いた子宮」は作者がいう「グロテスクロマン路線」の作品。前半から一転して不気味な後半、そしておぞましいラストが印象的。あの音が…耳にこびりついて離れそうにない(涙)。ちくま文庫『監禁淫楽』で読んで、あまりにもテーマのまんまで打ちのめされた作品「おれの人形」も、今回久しぶりに読んだら…相変わらず打ちのめされてしまった。絶望的に壮絶なのに、作品として絶妙に巧い。「マイ・アドニス」は、竹宮恵子さんの挿し絵を見たかったな。女性の情の怖さがいかんなく描かれている恐怖小説「鉄輪の舞」も、やっぱり怖かった。真綿で首を絞めるかのように、ひたひた恐ろしさひた寄せてくる。さらり描かれているけれど、その情景を想像するだに身の毛がよだつ。愛憎が女を鬼に変えてしまうのだわねえ。それにしても怖いよう! 収録されて初めて「アイス・ベイビー」が読めたんだけど、カニバリズムに人身売買(?)などあまりにも非人道的な行為がてんこもりで、思わず眩暈が。まんま血の海、血まみれの真赤な世界を描いた「血の海」も鮮烈。高橋葉介のマンガを思い浮かべてしまったわ。  いくつものペンネームを使い分けた作家にふさわしい、バラエティに富んだ短編集。解説にもあったけど、今の時代の方が式作品は受け入れられるかも。筒井康隆作品がお好きな方は、お好きかもしれない。ま、読んで気持ちが悪くなっても、私は責任は取りませんが。

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