秘書綺譚: ブラックウッド幻想怪奇傑作集 (光文社古典新訳文庫 Aフ 9-1)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334752323

作品紹介・あらすじ

芥川龍之介、江戸川乱歩が絶賛したイギリスを代表する怪奇小説作家の傑作短篇集。古典的幽霊譚「空家」「約束」、吸血鬼と千里眼がモチーフの「転移」、美しい妖精話「小鬼のコレクション」、詩的幻想の結晶「野火」ほか、名高い主人公ジム・ショートハウス物を全篇収める。

感想・レビュー・書評

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  • コツコツ光文社古典新訳文庫の時間です

    うーんやっぱり古典は当たり外れが大きいなぁ

    「芥川龍之介、江戸川乱歩が絶賛したイギリスを代表する怪奇小説家の傑作短篇集。」とのことなんだけど、驚きみたいなんはなかったかな
    もっとじっくり読むとまた違うのかな?

    ただ短篇集は非常に多種多様だったのと、描写力も高く、詩的表現もあったりして
    怪奇小説の教科書、文例集みたいな感じがしました

    年内に怪奇小説を書く予定のある人には非常に参考になると思うのでお勧めです(そんな奴おらんわ!いや決めつけ良くないわ!いややっぱ少なくともそんな人はひまわりめろんのレビューなんか読まないわ!)

    • みんみんさん
      江戸川乱歩ベストセレクション1
      人間椅子でございます(。>ω<)ノ
      装丁に一目惚れです!!
      江戸川乱歩ベストセレクション1
      人間椅子でございます(。>ω<)ノ
      装丁に一目惚れです!!
      2023/10/23
    • 土瓶さん
      (・∀・)イイネ!!
      (・∀・)イイネ!!
      2023/10/23
    • ひまわりめろんさん
      Σ(゚Д゚)
      Σ(゚Д゚)
      2023/10/24
  •  1906年から1923年に書かれたアルジャーノン・ブラックウッドの短編を集めたアンソロジー。
     ブラックウッドといえば、どの作品だかもう分からないが(本書にも入っている「秘書奇譚」かもしれない)高校生の頃読んでひどく衝撃を受け、「これは凄いかも」と思ったことがある。しかし、その後創元推理文庫『ブラックウッド傑作選』を読んでみると、そんなにショッキングなところはなくむしろ「ふつう」っぽくてがっかりしてしまった。あの時の「衝撃」というのは、その短編では恐怖小説の骨格ばかりが肉を落とされて露出し、その小説システムの露見が極めてラジカルなものに思えたのだ。骨格が露出するとともに、登場人物はハリボテ人形のような無機質な存在と化してしまう。その非-人間化のプロセスに衝撃を受けたのかもしれない。そうした非-人間化は、やはり私の好きなE. T. A. ホフマンの幾つかの短編にも見られるし、それを突き詰めてあっち側に飛躍してしまったようなのが、カフカの作品と言えるかもしれない。
     本書で久しぶりにブラックウッドの怪奇短編を読んでみると、この作家の文章力はあまり良くないなと感じた。ちゃんと筋の通った文章ではあるが、何となく、リアルな描写という近代小説の必須な要素がしばしば置いてけぼりになって、小説と言うより神話的な語り口に見えてくるのだ。ラヴクラフトあたりと比べても、しっかりと描写を重ねていくところが物足りなく、一気に怪異の中心に飛び込んでしまうようなせっかちさが気になる。このせいで若い私に「骨格の露出」という印象を与えたのだろう。
     本書前半の方の幾つかの作品は現在から見ると「あまりにもオーソドックスなホラー」という印象があるが、まあ、そういうスタイルを築き上げた古典的作品であるのかもしれない。
     しかし特に本書後半はバラエティに富んだ感じがする。結構豊かな引き出しを持った作家だったのかも。あまり丹念に描写しない傾向が、ちょっと惜しい気がする。

  • ジム・ショートハウスが主人公なのは、空家/壁に耳あり/秘書奇譚/窃盗の意図をもって
    「小鬼のコレクション」この部屋では、小さくてピカピカ光るものがなくなる。後でこっそり返ってくるところが可愛らしい。
    ブラックウッド作品では、幻想と怪奇の「柳」が好きです。

  • 説明できないけど何だか気味悪い、どうにもあの家や部屋や人が、理由はわからないけど我慢ができないのよ、という感じは誰しもあると思う。ホラーというには大袈裟であり、江戸時代の小豆洗いのような生活に密着した、避けようのない恐ろしさ、そういう気張ってない日常的な奇怪さを感じました。ジム・ショートハウスという人物が出てくるのを集めたようで、この人がわざわざ厄介ごとに興味を示して向かってゆく描かれ方が、愉快な調子で良かった。後書きには、あたりはずれの多い万華鏡のような作者だそうで、うまいこという。

  • スタンダードな幽霊譚や幻想的な「転移」「野火」。どれも恐ろしい感じはしないのだけど、不思議と登場人物の表情や暗い風景がありありと浮かぶ。とりあえず、ジム・ショートハウスは怖い思いし過ぎだと思います。
    単純に私の感覚的な問題かもしれないけど「ホラー」という言葉には日本の小説がしっくりきて、「怪談」は欧米の古い作品がしっくりくる。

  •  ヴィクトリア朝時代の英国産まれの作家、アルジャーノン・ブラックウッド。掌編から長編まで二百篇近くの作品を著し、未だ邦訳されていない作品も多い多作の作家です。手掛けたジャンルもホラーからファンタジーまで幅広く、それは彼が好奇心旺盛で、あらゆるものに接する性質だったからとも。
     本書は、そんなブラックウッドの作品から『ウェンディゴ』など有名どころはあえてはじき、初期の作品であるショートハウスものなど11の秀作を選り抜いた短編集です。

     以下、なるべくネタバレなしの各話感想。
    ---------------------------------------------------------
    『空家』
     電報で呼ばれて叔母の元を訪れたショートハウス。心霊研究に夢中の叔母は近くにある幽霊屋敷を探索するつもりだった。そこの鍵を手に入れていたが独り身であるために、男手となるショートハウスを呼んだのだ。はたして、幽霊屋敷で二人を待ち受けていたものとは――。
    (実体験を元にした、廃墟での肝試しを文学的に表現するとこのような感じになるという見本のような作品。)

    『壁に耳あり』
     紆余曲折を経て、アメリカの都市で素寒貧状態になっていたショートハウス。その後に運良く職と金を得た彼は、かろうじて住めるくらいに荒れた部屋を借りて住むことに。その後に数日経ったある夜更、隣室を誰かが訪ねてきて、それを誰かが出迎える音を聞く。はて、隣は空き部屋であるはずなのだが――。
    (これもアメリカ在住時代の実体験を元にした作品。そのためか、行間から当時の様子が生々しく伝わってくる気がする。)

    『スミス -下宿屋の出来事』
     同じ下宿の住人であるスミス氏は、全てが謎で、どこか邪悪なものを感じさせる人物だった。ある晩、彼の部屋の前を通りがかった時、ぼそぼそとした会話のようなものと、何かが部屋を動き回っている音を耳にした私は、好奇心から耳を澄ましていると――。
    (オカルティズムをテーマにした作品。現象に色々と見当はつけられるが、あえて固有名を使用しない方が読者の恐怖や不安を煽ることがよくわかる。)

    『約束』
     深夜まで勉強に励んでいたマリオットを訪ねたのは、かつての学友であるフィールドだった。ささやかな食事で歓迎するマリオットに対し、沈黙を続けるフィールド。やがて眠そうな様子を見せた彼に、マリオットは快く寝床を提供するのだったが――。
    (ジュブナイルな怪談話。日本の古典怪談にも類似の話があるのだが、タイトルを失念して思い出せない。)

    『秘書綺譚』
     秘書のショートハウスは、雇い主から彼のかつてのパートナーへ書類を渡す仕事を任される。いかにもな屋敷でいかにもな使用人に出迎えられ、不穏さを感じながらも仕事を終わらせ、早々に退散しようとしたが、帰りの汽車に間に合わないという事態に陥り、急遽彼の屋敷に一泊することに――。
    (ブラックウッドお得意の展開になると思いきや、その予想を覆される、捻りの効いた怪奇譚となっている。)

    『窃盗の意図をもって』
     ショートハウスに説得され、私は彼とともに、黒魔術の実験場と噂される場所で一夜を過ごすことになる。闇が濃くなり、徐々に眠気が二人を襲う。はっと気がつくと、ショートハウスの姿は消えていて――。
    (刺激は弱いが、コンパクトにまとまった創作怪談。)

    『炎の舌』
     セシリアとハロルドは、人を褒めるより、意味も意図もなく貶す方に舌が回るカップルだった。そんな二人に訪れた「報い」とは――。
    (表題は新約聖書に由来するもので、地上に顕現した聖霊の一つの姿である。そして炎は浄化と破壊のシンボルでもある。つまり表題は、カップルに対する報いとその原因に対する掛詞[ダブルミーニング]となっているのだ。)

    『小鬼のコレクション』
     ダットンは、ふと誰かに見られているような気がした。誰かがすぐそばで自分を見ている。アイルランド人の「この大部屋じゃ、ちっこくてピカピカ光るものがよくなくなる」という言葉の真意とは――。
    (ブラックウッドによる妖精譚。古き良き日常系ファンタジーの一幕と言ったところ。)

    『野火』
     ヒースで起きた、奇妙な連続不審火事件。現場である荒野を訪れた画家のヒースは、そこに歓喜を覚えて身を委ねる――。
    (「火」をテーマにした幻想譚。ブラックウッドのオカルティストとしての一面が存分に活かされている。)

    『スミスの滅亡』
     原油で財を成し、自身の名をつけた町まで作り上げたスミス氏と出会ったのは、私が仲間とともにキャンプをしている時だった。彼はただならぬ感情に取り乱したような顔をしていて、何かに怯えて逃げているようだった――。
    (結末にて「滅亡」の真意がわかる、世にも奇妙な物語。)

    『転移』
     わたしが家庭教師を務めているフリーン家の屋敷の庭の片隅には、木も生えず花も咲かない場所があり、そこは「禁じられた片隅」と呼ばれて避けられていた。教え子のジェイミーは言う。「あいつは空腹なんだ」と――。
    (吸血鬼の要素を交えた怪奇譚。その結末は妖しくも美しい。)

  • これって、キング?

  • 最初の作品『空家』の幽霊屋敷の古典的な怖さがすごかったです。
    土地の持つ負の力や街が所有者に最後の力を振り絞るかのように姿を現す話等、怪奇ものと言っても様々なものがありました。
    どことなく怖い、そんな話が濃い密度で詰まっている本。

  • 2019.01.30 図書館

  • 作者の分身ショートハウスもの4篇を含む計11篇。50年前に庭師長が首を吊って死んだといういわくつきの納屋で一夜を過ごす「窃盗の意図をもって」(1906)。滅びる瞬間に幻となって町全体が姿を表す「スミスの滅亡」(1919)など後半の話の方が面白かった。正直それほど怖くないと思っていたら最後の「転移」(1911)で吃驚。獲物を狙う「地面」と、人の生気を吸い取る伯父、異様な笑い声をあげる少年の三すくみに『シャイニング』とか色々連想してしまった

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著者プロフィール

1869年、英国ケント州に生まれる。20歳からの10年間をカナダとアメリカで、牧場、金鉱山、新聞社などさまざまな職を経験したのち帰国。1906年に小説家としてデビューし、『ウェンディゴ』(アトリエサード)『心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿』(東京創元社)『ケンタウルス』(月刊ペン社)『人間和声』(光文社)など数々のホラー、ファンタジーを発表。1951年歿。

「2018年 『いにしえの魔術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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