オリヴィエ・ベカイユの死/呪われた家 ゾラ傑作短篇集 (光文社古典新訳文庫)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334753122

感想・レビュー・書評

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  • ゾラは初めて読んだ。上手いし面白い。「居酒屋」「ナナ」もいつか読みたい。

  • 「オリヴィエ・ベカイユの死」がポーの「早すぎた埋葬」と似ているのは偶然なのだろうが、同時期に西洋では「生きたまま埋葬されるかもしれない」という恐怖が共通認識として広まっていたというのは興味深いことだ。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記はこちらに書きました。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=5318

  • 「居酒屋」も「ナナ」も読んだことのないゾラ初心者ですが短編集だから入りやすかったです。以下個別に。

    「オリヴィエ・ベカイユの死」
    都会へ引っ越してくるなり病気で3日間寝込んだあげく死んでしまった主人公。しかし意識はハッキリあり、若くて可愛い妻が嘆き泣いているのや、近所の世話焼きおばさんと、イケメン男性が葬儀の手配をしてくれているやりとりなどは聞こえている。最初は肉体が死んでも霊魂的なものが残ってる状態なのかなと思って読んでいたのだけれど、結局墓場で主人公は蘇ってしまった。いわゆる「早すぎた埋葬」というやつです。主人公が死んでるうちに、残された妻はイケメンとくっついてしまうという想定内のオチではあるのだけれど、あまりにも主人公がヘタレすぎて、むしろもともと好きでもないのに結婚させられた若妻のほうに同情してしまい、あんまり可哀想だと思えないあたりが逆にミソでしょうか。

    「ナンタス」
    貧乏だけど野心家の男ナンタスは、不義の子を身ごもったのを隠蔽したがってるご令嬢と偽装結婚することに。金銭的バックボーンを得たナンタスはめきめき出世、欲しかったものをすべて手に入れるのだけれど、偽装結婚の妻だけはいつまでも冷淡、いつのまにか彼女を愛するようになった彼の思いは受け入れてもらえない。ラストは、間に合うか、間に合わないかハラハラ。まさかのハッピーエンドはビックリだけど後味がよろしくて好き。

    「呪われた家――アンジェリーヌ」
    継母に殺された少女の幽霊が出るというお屋敷のゴシックホラーちっくな小品なのだけれど、オチであっさり現実に連れ戻されます。

    「シャーブル氏の貝」
    シャーブル氏45歳、その美人妻22歳、結婚4年目だけど子供ができない。どうしても子供が欲しいシャーブル氏は「貝類をいっぱい食べなさい」というテキトーな医者のアドバイスを真に受けて、妻を連れて海辺の町へバカンスに。なんていうか今風にいうならこれ一種の「妊活」ですね。そこで偶然出会ったイケメン好青年と夫妻は親しく交際するのだけれど、わかりやすいフラグが最初から立っています(笑)案の定、どんどん接近していく美人妻と好青年。しかしシャーブル氏は妊活(貝を食べる)に必死で全く気付かない。オチもわかりやすく想定内なのだけれど、それでシャーブル氏が幸せなら別にいっか、という感じで悲壮感がない。ありふれた筋書きにも関わらず、風景描写が美しいのとシャーブル氏が憎めないキャラなのとで非常に楽しく読めてしまいました。

    「スルディス夫人」
    才能はあるけど貧乏、でもイケメンな画家スルディス。画材屋の娘で親の遺産を受け継いだけれど不器量なアデルは、経済面での安定を提供するかわりにとスルディスに逆プロポーズ。偽装結婚というほどではないけれど、一種の契約・共犯関係で結ばれた二人の不思議な夫婦生活が始まります。才能はあるのに自堕落なスルディスを上手くコントロールして画家として成功に導くアデルはある意味良妻。しかし容姿に対する劣等感から夫の浮気を容認しているも、心の中は泥沼。表面的には嫉妬の素振りすら見せない妻に旦那は旦那で無言のプレッシャーを感じて抵抗できず、この夫婦の奇妙な心理の移り変わりがとても面白い。愛し合ってもないけれど憎み合っているわけでもなく、お互いの才能は尊敬しあっている、けれどどちらかが一方を侵食せずにはいられない。アデルの存在感がとにかくすごくて、なんていうか、迫力がありました。

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