- Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334754020
感想・レビュー・書評
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哲学史の教科書でプラトンの教説とされているイデア論。
それをもっともまとまった形で示している著作。
ソクラテス最期の日、肉体と魂とが切り離される死の直前という舞台設定にふさわしく、
魂が対話の主題として扱われる。
「魂と肉体」という対比を軸として、思考と感覚、不変と変転、絶対と相対、イデアと事物、真の原因と自然学的な原因など、さまざまな対比が重ねられて語られる。
この対比によって、いわゆるイデア論が図式的に提示されている。
魂についての論証は、当時の自然学の知見を意識して行われているので、今日の我々にとっては説得的ではない。
また、対話相手の提示する話も、それを承けたソクラテスとのやり取りも、他のプラトンの中長編と比べると少し精彩を欠く印象を受ける。
中期プラトンの考察をもっとも整った形で受け取ることができ、
これを読まずしては他のプラトンの著述の理解も浅くなるかもしれない重要な著作ではあろう。
しかし、魅力的な論敵を欠き、プラトンの他の著述に含まれるような奥行きや豊かさを感じない議論に少し興醒めな読後感を覚えてしまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ソクラテスの弁明に大変感銘を受けて、こちらも手に取った。正直に言って弁明の時の極めてロジカルなソクラテス像よりもまるで弁論術のような論理展開だし、死後の世界の描写には首を傾げざるを得なかった(弁明のソクラテスなら、知らないことは知らないと行ったであろうから)けど、魂の不死・不滅、ひいては人間の生きる意味に対して真っ向から取り組む姿はやはり胸を打つものがある。
しかし、論文としてよりもどうしても物語として読んでしまう自分としては、人間の俗の中でいつもソクラテスに寄りそうクリトンに一番グッと来ちゃうんだな、困ったことに。 -
・ソクラテスは死なない。いや、彼の言論を信じるのなら、ソクラテスという生命を宿した肉体は埋葬され滅んでも、彼自身という「魂」は不死のままありつづけ、私たちと共に「知を愛し求める哲学」を遂行していると考えなければならない。
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これまでプラトンの著作を有名どころから色々読んできた上で、これがあのイデア論か!と思った後に、ついにソクラテスの死の場面が描かれて、なんだかショックを受けてしまった…。
論理展開は?と思うところや時代背景の違い、おそらく今よりもっと神話が思考と切り離せないくらい身近であったころということで、違和感があって、ついていけなかった。
小説的に読んでしまった。
残りの作品と国家論、解説書を読んでいきたい。 -
ユングは「夢はあるがままの姿で、内的な真実を事実を表現する」(みすず書房 ユング夢分析論)と言っている。そしてプラトンで語られていることは、夢で捕らえようとすることと似た印象を受けた。
少し混乱。森の中。
他の訳も読んでみよう。
この本は注釈がちょっと自分には向かなかった。光文社古典新訳の他のではあまりこんな風に感じなくて、むしろいいなあと思っていただけに残念。
対話に参加するための注釈であるだけでない、注釈者の意図を持ったものが多くて。一度注釈に目を通してしまうと、思考が中断されてしまって本文に戻りにくかった。授業などでプラトンやソクラテスについて学ぶと言う目的には良いのかもしれないけども。 -
「このようなことを呪い歌のように自分自身に謳い聞かせる必要があり、それゆえに、私はもう長いこと物語(ミュートス)を語ってきたのである。」p.114
「人間の言葉(ロゴス)は十全な真理に達するほど信頼できるものではありえない以上、哲学の探求は自己反省を加えながら、生ある限り続けられなければならない」p.313