戦争と平和3 (光文社古典新訳文庫)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334754327

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  • 結ばれた恋人たちを待つ、思いがけない試練。
    幻滅から再び立ち上がる若者たち。
    戦争はまだ、終わっていない。

    いくつもの「その後」と「予感」が休みなく紡ぎ合わされ、人々の運命はどこまでも遠くへ運ばれてゆく......ようやく後半へ。

  • 文学と歴史の板挟みにあった人間がどう手探りしたか,を知る上では参考になる作品だと思う。当時のロシアの貴族社会,フランスとの距離感,ナポレオン戦争の詳細など。

  • 3巻は戦時ではなく、それぞれの理由からモスクワに集まった主人公たち(20代前後の貴族の子息令嬢)の人間関係と人生の岐路、とりわけ誰を結婚相手とするかという問題について描かれる。

    登場人物はおおよそ以下の通り。

    ─アンドレイ・ボルコンスキー
    幼い息子を遺して妻に先立たれ隠居を志すが、ナターシャに出会い一念発起、プロポーズ。優秀な実務家だが、少し上から目線。
    ─ピエール・ベズーホフ
    育ての親から莫大な遺産を相続。一時放蕩生活を捨てて宗教と社会貢献にのめり込むが、思うように行かず、再び元の生活に戻る。妻エレーヌのことは、軽薄な社交家だと嫌悪している。
    ─ニコライ・ロストフ
    財政の傾いた実家を支えるべく裕福な令嬢との結婚を期待されるが、孤児の従妹ソーニャと人生を共にすることを決意する。熱血タイプでややお人好しなところがある。
    ─ボリス・ドルベツコイ
    世渡り上手な出世頭。父を亡くし、未亡人の母を助けるため、裕福なジュリー・カラーギンとの結婚を決意する。
    ─ナターシャ・ロストフ
    ニコライの妹。純愛に基づく結婚を夢見る17歳で、美貌と愛嬌を持った華やかなキャラクター。アンドレイのプロポーズを受ける。
    ─ソーニャ
    ナターシャとニコライの従妹で、ロストフ家に暮らす。ナターシャの真面目で良き友人。
    ─マリヤ・ボルコンスキー
    アンドレイの妹。厳格で偏屈な父に縛られ、鬱屈とした日々を送る。「神の遣い」と呼ぶ、貧しい巡礼たちとの密かな交流を、唯一の楽しみとしている。
    ─エレーヌ・ベズーホフ
    ピエールの妻。類稀なる美貌と社交力の持ち主で、知的な集団の中心と見られている、フィクサーのような存在。


    戦場のシーンが多かった1巻や、ナポレオンとアレクサンドル皇帝がついに相見えた2巻に比べると、3巻は恋愛や結婚といった身近なテーマが中心で歴史的なイベントや登場人物が少なく、1巻や2巻ほどの壮大さは感じなかった。
    史実に基づいた物語であるならば、ここまで恋愛模様を複雑にする必要があるのかということにやや疑問も抱いたが、巻末の解説によればこれは物語後半に向けた布石ということなので、今後を楽しみにしたい。

  • 第2部第3~5編を収録。舞台は戦場から貴族社会へと移り、青年たちの恋愛と結婚についての騒動が描かれる。

    人生の新たな局面に取り組むアンドレイとピエールだったが、虚飾に満ちた社会にぶち当たり、それぞれに行き詰まっていく。直接からむ場面は少ないものの、この二人の友情は強いものに育っており、アンドレイが旅立つ際、ピエールのことを「黄金の心の持ち主」と言って評価するのが印象深い。

    本巻で最大の見どころはナターシャがとる行動とその顛末。オードリー・ヘップバーンの映画ではナターシャの行動が唐突で意味不明に思えて、彼女が軽率で悪い女にしか見えなかったのだが、原作ではそこに至るまでの状況の経緯や心境の変化が克明に描かれており、彼女の若さやボルコンスキー家の対応の酷さなども考えると、この流れでは仕方ないよなぁとようやく納得した。

    ロストフ家の財政危機のなか、ニコライに迫られる「愛していない金持ちの女か、愛している貧乏な女か」という究極の選択がシビア。また、ボリスやアナトールのような、ピエールやアンドレイとは全く異なる価値観や行動原理を持つ人物が幾人も登場し、その豊富な人物群や人間観察の鋭さが、非常に興味深かった。孤独なマリヤさんの信仰心と現実との葛藤も心に残る。

    第2部の終盤では悲劇のような重い結末のなかに、思いがけない新しい関係が生まれ、かすかな希望の兆しが感じられた。大彗星を見上げる美しいラストにしばし呆然とする。

  • 第三巻では戦争は小休止し、もっぱらモスクワおよびペテルブルグを舞台にした人間関係の描写に重きが置かれている。主役はやはりナターシャだろう。行動自体は俗っぽいといえば俗っぽいのだが、やはりいつの時代でも人の心は移ろいやすいもの、ということなのだろうか。加えてますますフリーメイソンにのめり込んでいくピエール、カタブツなのか思い込みが強すぎるのかよく分からないアンドレイを中心に話は展開していく。

  • 2022/01/09

  • 華やかな上流社交会で繰り広げられる、人々の付き合いの中での人間関係や登場人物の気持ちの変化が面白く、絶妙な物語展開に引き込まれた。

    「自分にはかかわりのない事柄については、冷静なる観察者であるべきなのだ」p68
    「私は自分がこの相手より上だと意識しているので、そのせいで相手よりはるかに劣った振る舞いをしてしまう。こちらが無礼な言動をしても相手は寛大に聞き流しているのに、こちらは逆にますます相手を見下すという始末だ」p72
    「(狩猟犬)私なんかの出る幕かね! あんたがたの犬ときたら、犬一頭の値が村ひとつというような、何千ルーブリもする奴ばかりじゃないか」p239
    「敵の砲火を浴び、何もできない状況の時に、兵士たちは懸命になって自分の仕事を探そうとする。何かで気を紛らわしていた方が危険をやり過ごしやすいからだというのだ。ピエールには、すべての人間がこの兵士たちと同じ方法で人生をやり過ごそうとしているように思えるのだった」p328

  • 『戦争と平和3』のあらすじ

    【平和】4⃣
    ■ピエールとの話し合いを経て心境の変化のきざしを感じたニヒリストのアンドレイであったが、ひねこびた楢の木を見てはそれをわが身と重ね合わせ、自分はやはりこのまま何も望まずにひっそり享年を終えるべきだと確信する。しかし所用で訪れたロストフ家で出会ったナターシャの、人を感化させずにはいられない若さと輝き、そして例の老木が初夏に端無くもみずみずしい若葉を甦らせた様子を見て、人間同士が互いに良い影響を与えあうことの大切さを思い知り、もう一度しっかり前を向いて生きていこうと考えを改める(そんなアンドレイを今は亡きリーザの肖像画はなんだか楽しそうに見つめている)。アンドレイはさっそくペテルブルクに居を移し、皇帝の右腕、スペランスキーの知遇を得、立法関係の要職にとりたてられた。
    ■ペテルブルクでは今やフリーメーソンのリーダー格となったピエールだったが、組織のために良かれと思ってやったことが裏目に出たりして憮然とした日々を送っていた。しかし、最初に自分をフリーメーソンに勧誘した例の老人バズデーエフ氏から助言を得て、再びしっかりした目標を定めることができた。あわせてしつこく許しを求めてきたエレーヌとの同居を、善行のためと割り切って再開した。
    ■12月31日のペテルブルグ。皇帝も出席するほどの壮麗な舞踏会が開かれ、そこでこの物語の主要登場人物たちも再び顔を合わせることになる。………ナターシャは紳士たちからひっきりなしにダンスに誘われ最高に幸せなひと時を過ごした。………アンドレイはナターシャに再会し彼女からあふれ出る魅力を再確認した。………エレーヌの美しさは抜きんでており舞踏会での人気を独り占めしていた。………逆にピエールにとってはそれがショックで気分は沈みがちであった。
    後日、アンドレイはナターシャにプロポーズ。ナターシャは感動のあまり泣きながらそれを承諾する。ただしアンドレイの変人の父、ボルコンスキー公爵の思いつきにより結婚は一年後に延期される。アンドレイはその一年間を、療養をかねて外国で生活するため一旦ナターシャの元を離れる。
    ■母親(イリヤ・ロストフ)からのたっての願いで、ニコライが戦地から呼び戻される。実家の傾いた財政状況を立て直して欲しいというのだ(戦地といっても仏露の講和によりほとんどやる事などないし)。しかしそうは言われて帰ってはみたものの、ニコライは財務表などさっぱり理解できておらず、早々に今回の帰省を休暇と割り切って狼狩り(親狼1頭と仔狼2頭とを、人間20名と犬130頭を挙げて追い詰め、そしてブチ殺す遊び!)などに打ち興じる。実はロストフ家の破産はすでに時間の問題となっており、母親が密かに目論んでいたのは、ニコライと大金持ちの令嬢との結婚による一発逆転の秘策に他ならなかった。
    だがそのことをほのめかされたニコライは反発。逆にソーニャへの想いが一気に燃え上がりついに彼女にプロポーズした。……実家の家計の立て直しより愛を選んだニコライに失望し、何の罪もないソーニャを逆恨みする母親とロストフ伯爵。万策尽きた彼らは(……といっても彼らが浪費癖を改めていればそもそも財政難には陥らなかったのだが)モスクワの屋敷と郊外の領地を手放して現金に換えるため当地に旅立つ。
    ■ペテルブルグで不実な妻エレーヌと暮らすピエールは目標を見失っていた。すなわち希望の光であったフリーメーソンにせよ、自分が中心にいるところの社交界にせよ、かつて憧れていたナポレオンにせよ、ことごとく今のピエールの目に付くのは嘘と欺瞞であり、少しでも良くしようと彼ひとりが尽力してみたところで結果は虚しく終わるだけなのだ。環境を変えてみようとピエールはペテルブルグを去りモスクワを生活の拠点にする(エレーヌも後から追いかけてくる)。しかしところ変われど品変わらず。ピエールは、内から彼を苛む激しい無力感を抑えておくために今宵も飲酒に走るしかないのであった。
    ■”禿山”から変人ボルコンスキー老侯爵(最近ますます変人の度合いを増している)と、聖痴愚のうたがいがあるその娘マリア(父の奇行による最大の犠牲者)、そしてマリアの侍女で美人のマドモアゼル・ブリエンヌもモスクワにやってきた。一方、モスクワで金持ちの結婚相手を血眼で探すボリス・ドルベツコイはマリアと、マリアの昔の親友ジュリー・カラーギンとを天秤にかける。ぎこちない恋の駆け引きの末、ボリスが選択したのはジュリーの方であった。
    ■超男前かつ悪党のアナトールも父からの命令で結婚相手を探すためモスクワに来ていた(ただし、不良仲間のみ知る事実だがすでにアナトールはポーランドで極秘結婚していた)。アナトールは妹のエレーヌ(こいつも悪党)とドーロホフの協力を得て、ゲーム感覚でナターシャをたぶらかし、誘拐、結婚しようとまでたくらむ。美しく、健康的で、歌がうまいが頭は悪いナターシャはまんまとだまされ、アンドレイに婚約破棄の手紙を書き送ったうえでアナトールと駆け落ちしようとする。異変に気付いたソフィアは身を挺してすんでのところでアナトールの悪事を阻止する。一世一代のロマンスが阻まれたうえ愛するアナトールを悪しざまに言われ、ソフィアらに当たり散らすナターシャ。しかしピエールの登場で自分の愚かさにやっと気づかされ、絶望の果てに自殺未遂までひき起こす。ピエールは血眼になってアナトールを見つけ出し「ああ、とことん卑劣な、心のない一族だ!」、鬼の形相で詰め寄ってモスクワから追放、次いでやっと帰国したアンドレイを見舞い、最後にぼろぼろに傷ついたナターシャを慰めて愛の告白さえする。
    一方、ナターシャを失ったアンドレイはドライな風を装っているが胸の内は………。しかし変人ボルコンスキー老侯爵と聖痴愚のうたがいがある妹マリアのふたりだけは、アンドレイの婚約が反故になってニヤニヤが止まらないのであった。

  • あまり戦争の描写はなく、ロシアの貴族たちの生活を今回は描いている。大きな流れとしてはアンドレイ公爵はナターシャと出会い婚約する。しかしアンドレイの父の反対もあり、結婚は1年後となる。その間に遊び人アナトールがナターシャを誘惑、ナターシャはアンドレイとの婚約を破棄してしまう。最終的にナターシャは、アナトールにも欺かれてしまう。様々な調整役をしていたピエールが立派だった。
    物語の最後にはナポレオンがロシア遠征を決意した「ナポレオンの彗星」が出てくる。戦争が激しくなってくるのかなぁ…

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