- Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334764067
作品紹介・あらすじ
昭和二十三年六月、入水した太宰治と山崎富栄。天才作家と日本初の美容学校創立者の令嬢は、どのように出会い、恋に落ちていったのか…。いまだ謎に包まれる情死の真実とは!?二人の生涯、太平洋戦争、恋と創作の日々、残された家族の思いを、徹底した取材で描き、スキャンダル「玉川上水心中」の真相にせまった、愛の評伝小説。第29回新田次郎文学賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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太宰が水商売風の女性と玉川上水道で入水自殺をしたという私の勘違いも甚だしい。山崎富江さんは語学にも堪能なキャリア・ウーマンの美容師だった。しかも夫は三井物産に勤務する有能な男性で、婚礼後わずか10日でマニラへ単身赴任し、そこで彼は戦死を遂げている。彼女はうら若き未亡人でもあった。
山崎富江さんの父・晴弘氏はお茶ノ水美容洋裁学校を創設し、これからの女性も仕事を持つべきだと自ら熱心に指導し、自分の娘富江にも技術を伝授している。富江さんは卒業後、美容学校で指導者となり、その後東京や鎌倉で腕の良い美容師として評判を取っていたのだ。松本さんは、なぜその富江さんが女給まがいに(差別的ですが当時の新聞記事のまま)おとしめられて報道されたのかを富江さんの綴られた日記などを取材して執筆している。
読み終えて、富江さんの小説でありながら、本当の主人公は父親の晴弘だったように思えて仕方がない。彼は他にも娘や息子を戦争でなくし、太宰を自殺にそそのかせた娘の父親として汚名を着せられ、その後の人生を歩んでいる。津島家と美知子夫人に遠慮し、墓碑に富江さんの名前が刻まれたのはだいぶ後になってからという。
(2010、7、14)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
夜を徹して読了。涙がこみ上げてくる力作評伝小説。太宰治とともに入水自殺を遂げた山崎富栄さんの生涯を軸にして描かれている。ファンではあるけれども作中の太宰には腹が立って仕方がない。視点は客観的で、その上胸がキュンとなるくらいロマンチック。富栄が亡き夫とデートしたシーンには涙した。太宰と富栄の距離が縮まってゆくシーンも臨場感がありかなりドキドキ。富栄さんを亡くされたお父様の寂寥感には涙がとまらない。きちんとした家庭に生まれた優秀なお嬢さんであった富栄さんが天才作家と情死するとはやりきれない結末だ。名作です。
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。「山崎富栄」。太宰と最後のひと時を過ごし、共に入水心中した彼女のことを私は勘違いしていたようだ。スキャンダラスに二人の死を書いた本、様々な映像化作品から彼女を「気の強い、太宰を死に引っ張った女性」と思っていた。しかし、こんなにも才能豊かで、思慮深い、魅力的な女性だったとは。順風満帆に見えた彼女の人生を次々と不幸がおそう。太宰と出会い、愛人という許されぬ恋とは知りながらも見付けた幸せ。「ここに本当の恋」があると見せつけてくれた。彼女を知った今、無性に太宰作品を読み返したくて仕方が無い。
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山崎富栄と太宰治が出会ってからの時間が、予想以上に短いことにまず驚く。
激変する時代の変わり目の必然だったかのような二人の出会いと死が側で見ていたかのように蘇る。 -
松本侑子 著「恋の蛍 山崎富栄と太宰治」、2009.10刊行、2012.5文庫。昭和23年6月13日、玉川上水に入水、その6日後の19日、投身現場から1000m下流で発見される。愛人との情死事件により、太宰治という名は知れわたり、本は飛躍的に売れた。この本は、山崎富栄の方に焦点を置いて書かれています。美容学校校長の令嬢で才媛、外国語が堪能で、結髪・着付けなど高度な技術をもつ職業婦人。絞殺して無理心中とかいろいろな中傷にさらされましたが、喀血する晩年の太宰につきそい、結核の感染もおそれず、献身的に看護して、代表作「人間失格」の執筆を支えたのは紛れもない事実に違いない!
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山中先生おすすめ
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これはもはや小説の域を超えてると思う。参考文献の数しかり、取材者や取材地の多さしかり。
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太宰治は、なぜ、元有名美容学校の
娘山崎富栄と入水自殺したのか?
太宰の作品と照らし合わせながら
紐解いています。