崩れた偽装: ベストミステリー短編集 (光文社文庫 あ 2-58)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334764920

作品紹介・あらすじ

総合商社の秘書課長・悪田に突然かかってきた電話。柴崎さよ子と名乗った女は知られたくない過去を握っていた。女を殺害した悪田はとてつもない「アリバイ作り」を思いつく(「あて逃げ」)。老若男女あらゆる主人公たちが思いめぐらす殺人の「偽装工作」。それが崩れるまでの人間模様を鋭く描いた倒叙ミステリーの傑作短編集!文庫未収録の作品「哀れな三塁手」も特別収録。

感想・レビュー・書評

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  • 呼びとめる女
    小説現代 1968年1月

    囁く唇
    小説新潮 1968年1月

    あて逃げ
    小説推理 1976年9月

    逆さの眼
    小説新潮 1968年9月

    扉を叩く
    小説現代 1966年5月

    赤い靴下
    推理ストーリー 1966年2月

    パットはシャム猫の名
    小説推理 1975年2月

    哀れな三塁手
    週刊サンケイスポーツ特集号 1966年1月

    解説 山前譲

  • 倒叙ミステリーっていう見たいだけど、こういうの。
    なんともスッキリしない感じがする。
    計画段階から読んでるからあとで見破られるにしろ殺人は実行できたんだしなーって。

  • 倒叙推理もののノンシリーズ短編集。
    倒叙ものとは、刑事コロンボや古畑任三郎のように、犯人の視点で事件が描かれる作品。
    登場人物の言葉づかいに少し違和感も感じたけど、作品の発表年が、1960~1970年代だそうなので、時代のギャップもあるかな。
    でもトリックはとても面白く読めた。
    倒叙ものなので、「あ~それやったらダメ!犯行バレる!」と読みながら犯人応援してしまったり。(でもなぜバレるのかはわかってない…)
    久しぶりに鮎川さん読んだー。

    収録作品:呼びとめる女 囁く唇 あて逃げ 逆さの眼 扉を叩く 赤い靴下 パットはシャム猫の名 哀れな三塁手

  • 『呼びとめる女』
    同僚の戸沢敏子に万引きの写真をネタにゆすられる豊玉信弥。水上の土地を売ると嘘をつき彼女を誘いだし殺害し、彼女のアパートで新聞を使いアリバイ工作をするが。郵便受けの招待状の秘密。

    『囁く唇』
    過去の自分を消すために戸籍を買った竹岡新一。会社の同僚の美津子と恋におちるが、上司から持ち込まれた縁談を受け入れてしまう。美津子を殺害する新一。カバンを使ったトリック。美津子が使っていた高級な口紅の秘密。

    『あて逃げ』
    大学時代にホストのバイトをしていたことを隠すために当時の客だった柴田と付き合う悪田。上司の娘との結婚が迫るなか柴田を殺害する悪田。ニュースでみたアイドルのあて逃げ事件の犯人と名乗り出てアリバイを作るが。真犯人からの強迫。真犯人を殺害する悪田の部屋におちるある物。

    『逆さの眼』
    大学教授の太郎は妻が浮気をしているのを知る。自宅での浮気に腹をたてて心中に見せかけて殺害する事を決意する。コップに入れたら青酸カリ。コップがどちらの物か分かるようにイニシャルを入れておいたが。

    『扉を叩く』
    女優の奈美は昔のヌード写真を婚約者・飛鳥田に見せると元恋人の志熊に脅される。志熊の部屋で彼を眠らせアリバイを作り殺害する。犯行時間のごまかし。犯行直後に叩かれた扉。凶器の包丁を持ったまま扉の前に行ったことで滴る血。

    『赤い靴下』
    自分に精子がないと診断された敬三。妻の美矢子に妊娠を告げられ彼女を責め自殺に追い込んでしまう。新たな恋人にも妊娠を告げられ検査すると、誤診である事が判明する。診断を下した友人の医師・竹野に対する殺意。

    『パットは猫の名前』
    突然社長令嬢との縁談を持ち込まれた卓三。元モデルの恋人・美絵子を殺害する計画を立てる。心中を装い遺書を書かせる。パットと呼ばれる自らのアダ名を猫の名前とするトリック。妻の浮気調査を探偵に依頼する男。

    『哀れな三塁手』
    元プロ野球のスター選手で夫の鰍沢を愛人・樫山と殺害する怜子。自殺に見せかけて崖から突き落とすが、樫山のコートのボタンを鰍沢が飲み込んでしまう。慌てて鰍沢のコートのボタンと樫山のコートのボタンを入れ換えるが。

  • どんなに入念に準備しても、予期せぬ事態や些細なミスによって犯行が発覚する。全てが思い通りに行くことなど世の中には無いと教えてくれているかのようだ。

  •  電車や病院で読むのにちょうどいい短編集。どろどろしていないし、犯人は初めからわかっているから、アリバイがどこから崩れるのかなあと安心して読める。
     女性の登場人物の言葉づかいがていねい。これが普通なのかもしれないけれど、関西人でがさつな私としては違和感がある。けれども黒柳さんのしゃべり方に似ているから関東では普通なんでしょう。

  • 動機はほぼ同じだが、アリバイのパターンは各話でがらりと変わる。短編らしく、短い中にもシンプルでキレのいいアリバイばかり。場所や小道具のチョイスなど、さり気に見えてしっかり練ってあるところがいい。完璧に偽装したつもりでも、完全犯罪とはいかない。そんなアリバイ偽装の穴も同時に組み込んであるのが、いかにも本格の鬼って感じ。

  • 2012/11/24読了

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著者プロフィール

鮎川哲也(あゆかわ・てつや)
本名・中川透。1919(大8)年、東京生まれ。終戦後はGHQ勤務の傍ら、様々な筆名を用いて雑誌へ短編を投稿し、50年には『宝石』100万円懸賞の長篇部門へ投稿した「ペトロフ事件」(中川透名義)が第一席で入選した。56年、講談社が公募していた「書下ろし長篇探偵小説全集」の第13巻「十三番目の椅子」へ応募した「黒いトランク」が入選し、本格的に作家活動を開始する。60年、「憎悪の化石」と「黒い白鳥」で第13回日本探偵作家クラブ賞長編賞を受賞。受賞後も安定したペースで本格推理小説を書き続け人気作家となる。執筆活動と並行して、アンソロジー編纂や新人作家の育成、忘れられた探偵作家の追跡調査など、さまざまな仕事をこなした。クラシックや唱歌にも造詣が深く、音楽関連のエッセイ集も複数冊ある。2001年、旧作発掘や新人育成への多大な貢献を評価され、第1回本格ミステリ大賞特別賞を受賞。2002(平14)年9月24日、83歳で死去。没後、第6回日本ミステリー文学大賞を贈られた。

「2020年 『幻の探偵作家を求めて【完全版】 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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