屍蘭 新装版: 新宿鮫3 (光文社文庫 お 21-18 新宿鮫 新装版 3)

著者 :
  • 光文社
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334767341

感想・レビュー・書評

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  • 新宿鮫、第三弾。今回の容疑者はサイコな中年女性。鮫島大ピンチの局面をどう潜り抜けるか。犯人の大胆な殺人。読み応えがあり、面白かった。

  • 新装版『新宿鮫』第三弾。鮫島の刑事生命に最大の危機が訪れる…

    今回の鮫島の敵は警察組織でもなければ、暴力団でもなく、運命に翻弄され続ける女性たちである。エステサロンの経営者・藤崎綾香、看護婦・島岡ふみ枝…前二作とは異質な敵と刑事生命を賭けて闘う鮫島。

    警察組織をも揺るがす重大な秘密を握った鮫島の孤独な闘いとそれを陰ながら支える桃井課長の関係が非常に良い。

    『新宿鮫5 炎蛹』まではノベルズ版で読んだのだが、文庫の新装版が月一冊ペースで刊行されるのを知り、再び読んでみることにした。

    第一作の『新宿鮫』が、真田広之主演で映画化された時、光文社文庫から『シナリオ 新宿鮫』が刊行されたが、今ではお宝かも知れない。

  • 休業日に入手した本を、入手した日から早速紐解き始め、頁を繰る手が停められなくなり、素早く読了に至った。
    少し「訳アリ」な鮫島警部が、事件の解決に向けて奔走する<新宿鮫>シリーズの1冊だ。最近、シリーズ各作品をランダムに読んでいる。本作は、大胆なアクションが入る動的な感じというよりも、密かに悪事を重ねる人達の思惑を挫こうと奔走する様子の静的な感じと言えると思う。シリーズ各作品では、そういうように動的なモノも静的なモノも入り混じっていて、それらは各々に面白い。
    物語は西新宿の高層ホテルの1階に在る珈琲ラウンジから起こる。
    鮫島は盗品等を売買する故買屋の三森という男を見張っていた。ラウンジに現れて、何者かと話し合っていた。
    鮫島の大学の同期に滝沢という男が在る。国税庁に査察官として勤めている。通常、国税庁の査察官は警察に表立って協力を要請しない。が、滝沢は非公式に鮫島に申し入れた。追っている事案に関与しているらしい三森の人物を特定したいというのだ。鮫島は三森を知っていた。そこで、決まった事務所を構えるのでもなく、ホテルの喫茶室のような場所に現れて用談をしているという三森を探し出して、滝沢と共に見張ったのだった。
    やがて三森が去ると、滝沢は三森を静かに追って去った。三森と会っていた男がエレベーターに向かう。その男と言葉を交わす男が在った。鮫島と面識の在る浜倉という男だった。浜倉はコールガールの元締めであった。数人の女性を抱えて管理売春をしていることになる。暴力団等との繋がりは無く、独立的にそれを行うという男だった。
    鮫島は浜倉と言葉を交わした。浜倉が言葉を交わした男が、鮫島が新宿署に来る前に退職した光塚という元刑事だと知った。更に、ホテルの上階に在る高級エステサロンの仕事をしているということも知った。そして浜倉の近況を聴けば、或る病院に苦情を申し入れようとしているという話しだった。浜倉の下で仕事をした女性が、内縁の夫との間に子が出来たことで仕事を退いていた。その女性が腹痛を起こし、近くの病院に駆け込んだところ、緊急手術と称して子を堕胎されてしまった。供養をしたいから遺体を引き渡すように申し入れても、処分したとの一点張りだった。浜倉は、それでは余りにも酷いと、苦情を申し入れるというのだった。そんな話しを聴いて、鮫島は浜倉と別れた。
    やがて浜倉が死亡したという情報が入った。発見された遺体は、他殺か病死か判然としない状態であった。遺体を解剖すると、白血病や癌の患者に発生する場合が在る、血栓が方々に発生する状態だったという。浜倉はその種の症状を患っていた訳でもない。関係者に話しを聴こうにも、表に出し悪い仕事を手掛ける浜倉の関係者を見出すことは難航した。
    こんな状態から起こった事案に、鮫島は関与して事案の謎を解こうとする。妙な横槍も入りながら奮戦し、恐るべきことが進行していて、関連して次々と人が死ぬ事態にもなってしまっていることを知るのである。秘密めいたモノを持つ高級エステサロンの女性経営者を核に進む事態に、鮫島は如何に向き合って行くのか?
    という物語である。1993年頃に登場で、既に読了という方も多い作品であるとは思ったが、“ネタバレ”を避ける程度に内容を振り返っておいた。何か妖しい感じが立ち込める中で展開する物語だ。
    この<新宿鮫>シリーズは、“山脈”のように、秀作が連なっていると思う。「今更…」かもしれないが、愉しんでいる。

  • 2014/11/30 46読了

著者プロフィール

1956年愛知県名古屋市生まれ。慶応義塾大学中退。1979年に小説推理新人賞を「感傷の街角」で受賞しデビュー。1986年「深夜曲馬団」で日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞、1991年『新宿鮫』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞長編部門受賞。1994年には『無間人形 新宿鮫IV』直木賞を受賞した。2001年『心では重すぎる』で日本冒険小説協会大賞、2002年『闇先案内人』で日本冒険小説協会大賞を連続受賞。2004年『パンドラ・アイランド』で柴田錬三郎賞受賞。2010年には日本ミステリー文学大賞受賞。2014年『海と月の迷路』で吉川英治文学賞を受賞、2022年には紫綬褒章を受章した。


「2023年 『悪魔には悪魔を』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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