日本人は、なぜ同じ失敗を繰り返すのか 撤退戦の研究 (知恵の森文庫)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334784379

感想・レビュー・書評

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  • 昭和史研究の第一人者「半藤一利」と経営戦略の第一人者「江坂彰」が太平洋戦争の失敗の本質を議論し、日本企業との共通点を分析した作品『日本人は、なぜ同じ失敗を繰り返すのか 撤退戦の研究』を読みました。

    「半藤一利」作品は今年の4月に読んだ『歴史のくずかご とっておき百話』以来ですね。

    -----story-------------
    昔の大儲けを忘れられないトップ、何にでも手を出すトップ、熱意だけで勝てると思っているトップ…。
    日本企業の低迷と旧日本軍の戦略思想には共通した敗因がある。
    ソフトパワーの軽視と、過去の成功体験の復讐―。
    昭和史と経営戦略の第一人者が、太平洋戦争の失敗の本質を分析し、今も続いている日本人の「弱点」を突く。
    -----------------------

    歴史に学ぶことって多いと思うんですよね、、、

    本書によると「賢者は歴史に学び、愚者は体験に学ぶ」とのこと… 歴史を愉しみつつ、仕事にも活かせるヒントの詰まった作品でしたね。

     ■はじめに…賢者は歴史に学び、愚者は体験に学ぶ 江坂彰
     ■第1章 なぜ同じ失敗を繰り返すのか―成功の復讐
          ・大惨敗はありえなかったはずのミッドウェー海戦
          ・ミッドウェーまでは日本のほうが戦力が上だった ほか
     ■第2章 なぜ情報が軽視されるのか―精神主義の呪縛
          ・ノモンハンで技術革新より精神論を学んでしまった陸軍
          ・マネー敗戦も負けるべくして負けた ほか
     ■第3章 平時のリーダー、戦争のリーダー―撤退戦の研究
          ・無能な指揮官、四つのタイプ
          ・山本五十六には戦時のリーダーとして絶対に必要な資質がなかった ほか
     ■第4章 組織を伸ばす人事、潰す人事―戦略なき膨張
          ・参謀重視の伝統が無能なリーダーを生み続けた
          ・スペシャリストを重視する企業が勝つ ほか
     ■第5章 負けると分かってなぜ戦うのか―魔性の歴史
          ・日本が太平洋戦争に突入していった四つのポイント
          ・日本は、戦争に突入しない選択もできた ほか
     ■おわりに…歴史が教えてくれること 半藤一利

    成功体験の積み重ねが成長に繋がるんだ… という意識を持っていましたが、過去の成功体験が裏目に出る(本書では「成功の復讐」と呼ばれています… )ことにも気付かされましたね。

    印象に残った言葉を備忘録として書き留めておきます。

    「失敗に学ぶアメリカと成功体験に寄りかかる日本 (江坂彰)」

    「成功体験が、かならず次の失敗を招く (江坂彰)」

    「無能な指揮官、四つのタイプ
     第一 自分が指揮する権力と権限の両方を持たないタイプ、したがって責任も取らないタイプ、これが非常に多い
     第二 まったく権限はもたなかったが、責任だけは取ったタイプ
     第三 権限と責任の両方を持ったタイプ、本当の名将だが、ほとんどいない
     第四 権限だけもって責任を取らないタイプ、これも多く、トップだけでなく、参謀に山ほどいる (半藤一利)」

    「戦史に学ぶリーダーの六つの条件
     第一 権威を明らかにすると同時に責任をしっかり取る
     第二 組織の目標を明確にするための決断をする
     第三 焦点の場に位置せよ
     第四 情報を自分の耳で確実に聞く
     第五 規格化された理論にすがらない
     第六 部下に最大限の任務遂行を求める (半藤一利)」

    「会社を潰す経営者、六つのタイプ
     第一 目的がはっきりしない官僚的経営者
     第二 時代性のない経営者
     第三 問題を先送りする経営者
     第四 部下の人気取りばかり考えている経営者
     第五 運の悪い経営者
     第六 いまだに「全員頑張れ」と言っている経営者 (江坂彰)」

    全てが素直にそうだなぁ… と言えることばかりではないですが、仕事のヒントやマメ知識となる情報でしたね。

  • 歴史の大家による、日本人の失敗の繰り返しの研究

  • 史実を他メディアを基に確認する必要はあると思うが、今の時代の企業経営、組織運営において参考になる本ではあると思う。己を知り、相手を知り、大局観を持ってスピーディーに決断を行なっていく事がリーダーには求められる。

  • これからの製造業の戦いが「ガダルカナル」とは、、、。本書執筆後12年経った今、現実になってる。

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    いまの若い人は、のんびりしているようで、シビアなところは本当にシビアです。自分の上司が能力のある人間かどうか醒めた目で見ている。その評価に落第すれば、もう相手にしない。表面は取り繕うかもしれないが、心の底をのぞけば軽蔑があります。110
    ――――――――――――――――――――――――――――――○
    確信犯はヒトラーとスターリン以外にもいる。じつは、チャーチルもルーズベルトも確信犯だった。好戦的で、最初からやる気満々でした。ルーズベルトは、日本を無条件降伏まで追い込むつもりだった。さすがにそれを聞かされたチャーチルはびっくりしますがね。良い悪いかは別に、確信犯だからこそ、大戦略を立てられる。(…)日本の重臣たちの誰一人として、対米戦争開戦には積極的には判を押していない。そんな状態からは大戦略は生まれません。196
    ――――――――――――――――――――――――――――――○

  • 「撤退戦の研究」と言う割に「撤退戦」に関する記述は少ない。内容も,帝国陸海軍の高級将校の判断や資質を徹底的に批判し,米軍の戦略や軍事システムをほぼ無条件に賞賛する記述がほとんどで,読んでいて退屈に感じた。確かにわかりやすく,世間話に使うのに丁度いい程度なんだろうけれど,あまりに話が一方的に過ぎる感がある。少なくとも「撤退戦」の内容に期待していた自分にとっては残念だった。
    「日本軍の失敗を活かして日本の経営に役立てないと未来の日本はない」というのがこの本の主張であるが,申し訳ないけれど,どうもこれでは「後知恵の言った者勝ち」で終わってしまっているように感じるのだが…。

  • 2007.1.20 購入

  • 株で最後に儲けて笑う人は大局観を持って
    投資している人。この本は日本の軍部(海軍・陸軍)の失敗を通して日米の大局観・
    視野の広さと思考の柔軟性の差を検証した
    もの。大局観を育てるのに役立つことが散りばめられています。

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著者プロフィール

半藤 一利(はんどう・かずとし):1930年生まれ。作家。東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「文藝春秋」「週刊文春」の編集長を経て専務取締役。同社を退社後、昭和史を中心とした歴史関係、夏目漱石関連の著書を多数出版。主な著書に『昭和史』(平凡社 毎日出版文化賞特別賞受賞)、『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫新田次郎文学賞受賞)、『聖断』(PHP文庫)、『決定版 日本のいちばん長い日』(文春文庫)、『幕末史』(新潮文庫)、『それからの海舟』(ちくま文庫)等がある。2015年、菊池寛賞受賞。2021年没。

「2024年 『安吾さんの太平洋戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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