海馬の尻尾 (光文社文庫 お 37-6)

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  • Amazon.co.jp ・本 (621ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334790653

感想・レビュー・書評

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  • 反社会組織に属する及川頼也は、アルコール中毒であり「良心がない」。
    そんな彼が若頭の勧めで精神病院に入院し、八週間の「治療プログラム」を受けることになる。医師たちに反発する頼也だったが、院内で出会う人々によって少しずつ変わっていく。

    「人間は誰もが皆、俺と同じように生きていると思っていた。苦労を避けて快楽を選ぶ。懸命になるとしたら、どうすれば自分が得をするか、痛い目を見ずにすむかについてだけ。人を言いなりにし、自分が上に立つことばかり考えて、邪魔するヤツは蹴落とす――誰もがそう考えていると思っていた。」

    荻原さんの文章の感じが好き!
    コピーライターだったからなのか、スッと頭に入ってくるフレーズが多いと思う。
    今回はハードボイルド。かっこよくて楽しかった。

    頼也が【恐怖】を思い出すときの描写。
    「突然どこかから、俺の頭の中に冷却水が注ぎ込まれた。昨日、刺された時と同じ感覚だ。脳味噌から漏れたそいつが背中にも流れ落ちてくる。背骨が氷柱になった。心臓が早鐘のリズムを刻む。なんなんだ、この冷たさは。心臓の速さは。」

    頼也が入院してからしばらくダラっと話が続くけれど、終盤一気に話が展開する。
    結末ははっきりしなくて、読者に委ねる感じ。
    梨帆にまた会えたかな。


    「俺には無鉄砲がある」

  • 600ページ超の長編。荻原さんらしくない冗長さでなかなか先に進めなかったが、残り200ページを切ってからは好テンポでラストまで一気。原発事故や海外派兵の問題を絡ませ、人命より経済が最優先される近い将来の日本という背景は、何やら今の状況に似たところがあり怖いと感じた。

  • ものすごくよかった。主人公が徐々に変わっていくところ、ところどころ笑ってしまうところもよかった。しばらくしたらまた読みたくなるだろうなって本。

  • やっぱり荻原さんは、ただの良い人のお話よりこの様なはぐれ者が主人公の方が断然面白い。これだけの長編だが一気に読みました。どんなに長くなっても良いから、途中で終わらないで最後まで書いてハッピーエンドで締め括って欲しかった。それでも久しぶりに堪能しました。梨帆ちゃんがんばれ!

  • 子供の頃虐待されたからか、怖いもの知らずのヤクザものとなった及川頼也。人を追い詰めることに異常に興奮を感じるせいで敵対する組の緒方を殺してしまう。それと前後してカシラからアルコール依存症の治療を受けるように言われ精神科に入院することに。反社会性パーソナリティ障害との診断だったが、同じく精神科に通うリホや、同室の辻野たちとコミュニケーションを取るうちに共感性を取り戻す、そして院内の闇に気づいて、という話。荻原さんにしては、やな表現も多いけど、途中からジェットコースター並みに話が転がり始めて面白くなる。ラストはスッキリしないけど、面白かった。精神の病とはこんなに名前があるもんなの?と驚いたけど、これは視点の違いもあるんじゃないか?という気もします。脳の働きは面白い。

  • エピローグを、、

    ぜひエピローグを 欲を言えば続編を、よろしくお願いいたします。


  • 前半は痛々しい描写が多く、想像するほど胸が痛む。
    最初こそ主人公のことを軽蔑していたが、ページを捲るたび徐々に主人公の根本的な人間味に惹かれていく。

    天使と悪魔のようなリホとの出会いから、
    お互いが歩み寄ろうと必死で、
    いつしか見返りを求めず人のために生きる道を選んだ男の姿は本当に格好いい。

    読み応えがとてもあった。

  • もっとSFチックだと思ってたら違った。フィクションではあるもののけっこうあり得る気もする。

  • 三年前に懲役を終えたばかりの及川頼也は、若頭に「アル中を治せ」と命じられ、とある大学病院の精神科を訪れる。医者らを拒絶する及川だが、ウィリアムズ症候群の少女が懐くようになり…。ハードボイルドの筆致で描く、脳科学サスペンス!(e-honより)

  • 荻原さんってこんな感じだったか。期待しすぎていたかな…。

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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