世話を焼かない四人の女

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334913014

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。登場人物がよい!

    この本ではポジティブに描かれているし、私も斎木さんいいな!と思ったけれど…
    なかなか現実社会の中では理解されにくい人たちだよね。

    読んでみると、そんな人たちの味方になれる。そんな本。

  •  男優先の風潮が根強く残る日本社会。その中で、女が1人の人間として自分の足でしっかり立って生きていくのには覚悟が必要だ。
     もちろん不安や悩みは絶えない。それでも、他人は他人、自分は自分と割り切り胸を張って生きる女性たちを描いた群像劇。
             ◇
     彩明ホームは東京都内にある中堅住宅メーカーだ。その彩明ホームの総務部長を務める水元闘子。社内で数少ない女性管理職だが、やっかみもありいろいろ煩わしいことが多い。

     社会の要請を鑑みて、闘子が障害者枠採用を提案し会社は了承。3人が途中入社の形で採用されたまではよかった。
     ただ彼らを引き受ける部署がない。男性管理職は誰もが消極的だ。結局3人とも、闘子の総務に配属となった。

     そして今日、一流商社から転職してきた女性を総務で面倒見ろとのお達しが。ICUを院まで終えた才媛なのだが、やはり男性管理職どもは引き受けたがらないということだ。

     ストレスの溜まる会社勤め。けれど闘子には週に1度だけ、別の顔になれる日があった。
    (第1話「ありのままの女」)全4話。

         * * * * *

     『敬語で旅する四人の男』のスピンオフ的な作品ですが、本作の方が格段におもしろいと思いました。

     登場する4人の女性主人公たち。
    ・中堅住宅メーカーの管理職、闘子。
    ・宅配便会社のドライバー、千晴。
    ・ベーカリーショップのアルバイト、日和。
    ・清掃会社の社長、ひと美。

     誰もが毅然とした態度を崩しません。更に、人間関係を円滑にするべく愛想を振りまくというようなことをしません。
     特に日和を除く3人は指導的立場にあるのだけれど、相手が誰であれ必要以上の世話は決して焼かない。そこがいい。

     なぜ世の男どもは、女性に世話女房的な役割を期待するのか。上司であろうが部下であろうが同僚であろうが、女は男の活躍を支えるのが当然だと思っているようなところはまったく気持ち悪い。

     本作の主人公たちはそんな社会に対し思うところはあるようだけれど、好んで波風立てることはせず、かと言って媚びることもせずに、自分のなすべきことを淡々とこなします。なんてカッコいい!

     また、本作の魅力の1つがサブキャラです。『敬語で〜』でもジョーカー的な役回りだった斎木匡(31)が本作でも随所で登場します。しかも、かなり重要な役柄です。これはうれしかった。作者の麻宮さんがいかに斎木というキャラを気に入っているのかよくわかりました。

     特に最終話では斎木に加えて、ガールフレンドの望月アルエまで登場します。
     ああ、まだ交際続行中なんだ。斎木はアルエに愛想を尽かされてないんだとわかったのもうれしかった。
     さらに、ひと美社長がアルエに斎木とのつきあい方をアドバイスする場面。作品のまとめにもなっていて、読後感をいっそう引き立ててくれています。

     とにかくよくできた短編集だと思いました。

  • タイトルにあるように、「四人の女」がそれぞれ主人公の四編からなる。
    「敬語で旅する四人の男」とタイトルの雰囲気がが似ているなあ、と思っていたら、なんと、斎木匡(さいきたすく)君が登場するのである。
    独特な個性を持つ彼と、四人の女がどうかかわって行くのかも興味深いところ。
    個人的に“世話を焼かない”の意味…というか意図がつかみ切れなかったのが残念。(作品が残念なのではなく、私の理解力が)

    だが、世の中の勝手な基準に立ち向かい、自分の生き方を舵取りしていく彼女たちには、頼もしさと共感を覚える。
    そんな彼女たちだから、斎木くんとなんだか通じられたり、接し方が分かったり、彼のすごいところに気づいたりできるのだろう。

    『ありのままの女』
    水元闘子(みずもととうこ)47才
    住宅メーカーの総務部部長。女性管理職は何かと叩かれるので、オンナを感じさせないよう、白髪を染めない。

    『愛想笑いをしない女』
    榎本千晴(えのもとちはる)29才
    宅配便のセールスドライバー。仕事は正確だが愛想を振り巻くのは苦手。
    毎回嫌がらせをしてくる客に悩まされ、ある日、新しい所長が来て、職場の雰囲気も悪くなる。
    女だからとナメられている。

    『異能の女』
    石井日和(いしいひより)29才
    パン屋でバイトをしている。
    異常に感覚、特に嗅覚が鋭く、時にそれは弱点にもなる。
    ある日、自分の本当に作りたいと思った“ドイツパン”を焼く。

    『普通の女』
    会沢ひと美(あいざわひとみ)56才
    年下の女と失踪した夫の後を引き継ぎ、清掃会社を立て直す。
    毎日、従業員のトイレを清掃している。


    “余計な世話を焼いて変えようとしてはいけない”
    …ここかなあ…

  • 斎木さんイイなぁ。
    トーコさんもカッコいい。

  • 裏の顔を持つ住宅メーカー総務部長、2トントラックを乗りこなす宅配ドライバー 、“敏感すぎるセンサー”に悩むパン屋アルバイト、逃げた夫に代わり経営者となった清掃会社社長――わたしを幸せにするために働く女性たち。頑張りすぎるあなたの背中をやさしく撫でる、新時代お仕事小説。

  • 世話を焼かない女たちは、みな不器用である意味とてつもなく愛情深い。

  • 世話を焼かない四人の女
    麻宮ゆり子

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    「敬語で旅する四人の男」の続編のような感じで、登場人物が被ってるので、なんだか嬉しくなった。しかも斎木さんが大活躍してる!

    斎木さんの上司水元さん。彼女の名は闘子、お姉さんが魂子、しかもお母さんは玲子って...。女性だからと元夫や職場の男性に見下されてきた。障害者特別枠ってとてもいい話だけど、総務だけが受け持つって大変。週末ママもいい感じだったのに唯一の家族の猫が旅立ってからというもの夜は猫探しで昼は会社という忙しさ。
    トーコさんは特別枠の人達だけじゃなく、人の個性や良さを見つけられる人のよう。
    盗まれた個人情報がどこから流れたか、機器に強い斎木が頼まれ見つけるという難技披露。

    トラック運転手の千晴。世の中、クレームはするけど良かったことの報告は特別しないって言うのは何となく納得。そもそも私はクレームもしてないけど、ありがとうを伝えたり、良いレビューをしたり、褒めるっていいことだと改めて思った。
    所長(上司)はお気に入り以外を差別する人。盗難事件起きなくてもいずれみんな去って行ったかもしれないけど、人を見る目を養うって言うのも結構難しいな。

    パン屋さんに務める日和。感覚がとても敏感でやけに鼻が利く。これ私も似てて、香水(柔軟剤やシャンプー)の香り、大きな音(人のくしゃみや大きな笑い声)が結構苦手。ついでに眩しいのも苦手だし、人には言わずに苦労してる人って結構いると思う。最近ドイツパン屋さんにも行くようになったので、フランスパンとは違う味わいでそれはそれで好き。という共通点があったから楽しく読めた。他のパン屋さんがダメって言うんじゃなく(実際他のパン屋の方がみんな行ってる)、美味しいものはいっぱいあるといい。

    清掃会社の社長が失踪し妻が次期社長になる。斎木さんの気になる女性アルエさんの働く職場。掃除って深いなぁって、滅多に掃除をしない私は口を挟むなって?確かに綺麗なトイレを汚そうだなんて思わないけど、汚いとそもそも入りたくない。
    会報誌に書きたいと清掃について行く斎木さん。独特の観察眼で色々見つけてしまうのが彼のすごいところ!

    女だからと見下されてるというお話が多かったけど、苦しい時もみんな頑張って前を向いて、ひたすら自分のやり方を信じてるのが、全然男も女も関係ないよなって気持ちになった。

    2022/12/12 読了 (図書館)

  • 私が好きな本の種類ではあるけど、独特な人たちがいっぱいでてきた。
    最初の話がいっちゃんおもろかった!

  • 図書館で借りたもの。
    裏の顔を持つ住宅メーカー総務部長、逃げた夫に代わり経営者となった清掃会社社長…。個性豊かな4人の働く女性たちを描く新時代お仕事小説。

    働いてる人ってすごいな。
    きらきらしてるよ。
    専業主婦の自分がとんでもなく怠け者に思えるね!(それはそう)


  • 「普通」という得体の知れない基準に引き寄せて考える人。周りの人に合わせられないのはわがままだからがまんしろという頭で考える人。そういった個人差のわからない鈍感な人たちには、永遠にわかってもらえないことだろう。酒が飲めない人に「それならノンアルコールビールを飲めばいい」と勧めるのと同じようにーそういう問題ではないのだ。
    世の大半を占める人と同じことをやって、彼らのやり方に自分を合わせていたら、私の場合、消耗するだけの人生を歩むことになる。(本文より)

    今でこそ個性を尊重しようだとか、差別や偏見を無くそうとかいう呼びかけがされてるけれど(実際それが実行されているかは別問題だが)、↑↑↑上のような事は過去にたくさん経験して来た。「普通、女性は花が好きでしょ?」「女のくせに惣菜コーナーに嬉嬉として走る姿にガッカリした」「普通、妻は早起きして家中の掃除を済ませ、朝食の用意をしてから家族を起こすものでしょ?」
    普通って? 女のくせにって?

    そんなモヤモヤを持つ者にとっては「わかる!わかる!そうだよね〜!」と読み進められてしまう本。世の中にはいろんな人がいる。みんながある意味「変わり者」。男だから女だから、多数派だからという括りは外して、その人そのものを見ないとね〜と思った。

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