虎を追う

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334913052

感想・レビュー・書評

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  • 30年前に起きた『北蓑辺郡連続幼女殺人事件』。
    逮捕された亀井戸健、伊与淳一は、死刑判決を受け収監されているが、
    亀井戸が喉頭癌のため獄死した。
    当時栃木県警捜査一課にいた星野誠司は、
    この事件には真犯人がいるのではとずっと思ってきた。
    刑事を引退した今、事件を調べ直したいと思った星野は、世論を動かすことが必要であると認識し、
    孫である大学生の旭とその友人・哲に協力を仰ぐ。
    “星野班”はSNSや動画投稿サイトを使い、
    “冤罪事件の真相解明をリアルタイムで見せる”という形で拡散することに成功。
    新たな証拠・証言を見つけ発信していくうち、
    「虎」と名乗る男から真犯人しか知り得ない情報を含んだ小包が届く―


    三十年前の幼女連続誘拐殺人事件で、死刑囚となっていた犯人が
    獄中で病死した事をきっかけに、
    当時捜査本部にいて、疑問の数々を抱いていた元刑事・星野が
    大学生の孫・旭とその友人哲の協力でSNSやYouTubeを駆使し、
    世論を巻き込みなど今の時代を上手く反映していた。
    星野に協力する記者やテレビ局のプロデューサーも頼もしかった。
    SNSで忘れられていた事件がどんどん大きく広がって行く様に
    臨場感と高揚感を感じました。
    幼女誘拐殺人事件なので、何度も描かれている犯人のモノローグには、
    やはり読むのがとても辛い部分もありましたが、
    この部分で犯人の異常性を凄く感じると共に、
    犯人に対して嫌悪感や憎しみをドンドン抱くようになりました。

    いつもの櫛木さんの作品は、もう腹立たしい人が余りに多く登場して、
    嫌な気持ちになるばかりでしたが、
    本作は、犯人の悪に対する星野班の善。
    星野班の活躍やメンバー皆が良かったです。
    特に大学に入って目標を見失って何となく日々を過ごしている旭と、
    人との関係が上手く築けず家庭の問題もあり引きこもりがちの哲。
    無気力だった二人が新しい進路を見出して行った…。

    エピローグでは、やはり背筋が凍る思いをさせられました。
    やっぱり、こういう子供が出てくるよね。
    こういう人間は一定数いるのでしょうね。

    • やまさん
      しのさん
      こんばんは。
      やま
      しのさん
      こんばんは。
      やま
      2019/11/09
  • 幼女連続殺人事件の主犯の死刑囚が獄中で病死した。当時から違和感を感じていた元刑事・誠司は、従犯の死刑執行を停止させるべく、真相をつきとめてゆく。

    怖い。怖すぎる。犯人の行為がむごすぎる。
    それでいて、誠司たちがSNSやメディアを巻き込んで世論を味方にしていくところがスカッとします。
    ミステリらしくコツコツと被害者家族や関係者に会いに行き、少しずつ犯人に近づく。それに呼応する犯人の大胆な行動にええっ!とか、ヒヤッとしました。
    結末はある程度予想がつくところと、意外なところが混ざっていて、フィクションとして引き込まれていきました。ただ、犯罪の様子はむごすぎるので、嫌な人はめちゃくちゃ嫌な作品だと思います。

  • 奥歯を噛みしめながら虎を追った。

    圧巻だった。

    嫌悪感に何度も襲われその度に奥歯をギリギリ噛みしめるほどの怒りがわく。なのに手はページをひたすらめくり、目は文字を、心は“虎”という真犯人を追い続けた。

    警察が追うありきたりな設定ではない所、ネット社会を良い方向に駆使して追っていく所がこれまた良い。

    やっとたどり着いた真実に安堵しつつも歪んだ自己顕示欲の塊でしかない虎の姿、方向を誤り見失った正義、それぞれに言葉を失くす。

    そしてエピローグに再び奥歯を噛みしめる。

    櫛木さんにがっつり心を喰われた、そんな時間だった。

    • あいさん
      こんばんは(^-^)/

      凄く面白そう!
      読み応えありそうだなぁ。
      嫌悪感に襲われるんだ。
      私はどう思うだろう。
      こんばんは(^-^)/

      凄く面白そう!
      読み応えありそうだなぁ。
      嫌悪感に襲われるんだ。
      私はどう思うだろう。
      2019/11/22
    • くるたんさん
      けいたん♪これ、めちゃくちゃ嫌悪感たっぷりなのにすごい読ませてくれる作品!
      なんかね、許せない犯罪、宮崎勤事件系だから、ちょっとね。
      でも誰...
      けいたん♪これ、めちゃくちゃ嫌悪感たっぷりなのにすごい読ませてくれる作品!
      なんかね、許せない犯罪、宮崎勤事件系だから、ちょっとね。
      でも誰が 虎なのか知りたくてね、冤罪などを絡ませてあるし、悔しいけど読みたくなるのよ。

      もし気分が乗ったら、読んでみてね♪♪
      2019/11/22
  • 『北蓑辺郡連続幼女殺人事件』、亀井戸健と伊予淳一の2人が犯人として死刑判決を受け拘置所に収監されていた…事件捜査にあたっていた星野誠司は2人の犯行に疑問があり上司にそれを訴えたがその声は届かず…退官した30年後、亀井戸健が獄中で病死したことが契機となり、事件を調べ直すことになった。孫の旭とその友達の哲にインターネットを通じての協力を依頼、それが反響を呼び、真犯人と思われる「虎」が接触を図ってきた…。幼い子の暴力シーンは読んでいて辛いし、「虎」の正体がなかなかつかめず焦れましたが…引きこままれるように読めました!愛情の歪みみたいなものを常に感じさせる内容でした。櫛木理宇さんらしいエンディングで、胸がザワつきました。

  • 連続幼女殺害事件,主犯の獄死。元刑事が冤罪事件の真相を暴く。挑発して"虎"からきた小包は,犯行を裏付ける証拠。保身より自己顕示欲の強い真犯人で良かった。この大事な転機から虎を追いかけるミステリー始動。

  • 死刑が確定している幼女連続殺人事件について、元刑事が調べなおしていく。

    ネットを活用した、現代ならではの物語。

    ただ、事件が残虐かつ悪質で、読んでいてきつかった。
    真相を追う側が全面的にいい人たちだったので、なんとかバランスがとれているものの、途中まではかなりつらい。

    事件の詳細が明らかになっていく後半は、おもしろくなり、引き込まれる。

    ただ、読後感は苦め。

  •  冤罪をテーマにした物語。私はこの小説を読むまでは恥ずかしながら、三浦和義のロス疑惑を冤罪だとは知らなかった。私以外にもそうい人はいると思う。一度捕まった人は世間からは犯人だと思われてしまう。それが冤罪だったとしても。
     冤罪は絶対あってはいけない。捕まっている時の大切な時間は返ってこないし、その間、その人も家族も世間からは犯人と思われ、酷い扱いを受ける。また、冤罪とわかり、釈放された後も疑惑が残り、周りからはグレーの烙印を押され、辛い人生を送ることになるだろう。

     さて、30年前に起こった連続幼女殺人事件。この事件に疑問を持った男がいる。当時、この事件に携わった元刑事の星野だ。
     犯人とされ、死刑判決を受けた2人の男たち。主犯である男は勾留中に病死。もう1人は死刑執行を待つばかり。
     星野は警察を退職した後、どうしてもこの事件が気にかかり、知り合いの記者や孫の手を借り、事件の真相を追う。もし、冤罪だったならば、やってもいない人を死刑にさせるわけにはいかない。死刑執行前に証拠を集め、無罪にすることはできるのか。
     ネットや週刊誌を駆使し、犯人に迫る中、犯人だと思われる人物から当時の事件の証拠品が届く。また、彼らを嘲笑うかのように、幼女誘拐事件が起こる。

     読み応えのある物語だった。犯人とされ、病死した男の人生はあまりに切ない。また、ラストには新たな予備軍が。こうした犯罪はなかなか無くならないんだろうな。

  • ❇︎
    虎を追う/櫛木理宇

    冤罪ではなかったかと心にずっと引っ掛かりが
    残っていた30年前の事件を、警察官を引退した
    元刑事が周りの協力を得て再捜査を行なう。

    主犯は病死し、残された従犯は無罪を主張するが
    再審請求を認められず死刑執行までの時間を
    過ごしていた。

    本当に冤罪だったのか、真犯人は一体誰か。

    ネット社会の現代を舞台にして、警察権力を
    持たなくなった元刑事が事件の芯にせまる。

    題名『虎を追う』その理由がわかった頃から、
    さらなる展開が待っていました。

    現代的な内容なだけにリアリティーがあり、
    読み応え充分です。



  • 初見の作家さん。

    幼い子供が誘拐され惨たらしいやり方で、命を落とす描写は非常に胸糞が悪い。やめてくれー!。それなのに先の読めない展開が気になって気になって、ページを捲る手が止まらない。
    すっかり本の世界に入り込んで、出てこられない。

    大学生の息子とその友達がSNSや動画サイトを使って世論を動かしていく様は、うーん、こんなスムーズにいくかな?ちょっと出来過ぎなような。。。と思わなくもなかったが、それを差し引いても虎の正体や事件の真相が気になって仕方なくなるので、面白く読めた。

  •  400ページを超える作品なので中だるみや迷走を心配したが、全くの杞憂であった。ネット戦略とその結果の拡散を丁寧に描きながら、最後までスピード感を維持しており、最後まで一気読み。人間関係がパズルのピースのようにピタッとはまっていき解決に至る道筋は読み応え十分であった。劇場型犯罪の小説はいろいろあるが、本作は劇場型捜査であり、ネットの使い方も斬新だ。
     残虐シーンをあそこまで描写しなくてもいいのではないか、との思いはあるが、そこに湧き上がる嫌悪感や恐怖感などを感じることによる「星野班」への共感は十分に伝わった。逆にネットの負の側面の描き方があっさりしているように感じたが、あまりそこを突っ込むと迷走しそうな気もするので、これでよかったのだろう。ただし、エピローグは蛇足のような気がする。犯罪の負の連鎖なのかもしれないが、小説の中だけでも終わりは気持ち良く終わりたい。いずれにしても読み応え十分の意欲作であった。

    #虎を追う #NetGalleyJP

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著者プロフィール

1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、二冠を達成。著作には「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ、『侵蝕 壊される家族の記録』、『瑕死物件 209号室のアオイ』(角川ホラー文庫)、『虎を追う』(光文社文庫)、『死刑にいたる病』(ハヤカワ文庫JA)、『鵜頭川村事件』(文春文庫)、『虜囚の犬』(KADOKAWA)、『灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』(ハルキ文庫)など多数。

「2023年 『ホーンテッド・キャンパス 黒い影が揺れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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