ワトソン力

著者 :
  • 光文社
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感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334913656

感想・レビュー・書評

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  • 自身は推理力は無いのに何故か周囲の人々の推理力を飛躍的に高める『ワトソン力』を持つ、捜査一課刑事・和戸宋志(わとそうじ)。
    そんな和戸が何者かに監禁されているシーンから始まる。自分を監禁した者は、自分の『ワトソン力』を必要としているからではないか…そう考えた和戸は、これまで彼が巻き込まれ『ワトソン力』によって周囲の推理力を高めて解決した七つの事件を振り返った…。

    和戸自身は何もしない、ただその場にいるだけなのに周囲の人々の推理力が飛躍的に高まる『ワトソン力』という設定が面白い。

    彼が振り返る七つの事件はクローズドサークルものばかりでこれまた楽しい。
    雪の山荘もの、嵐の孤島もの、停電によって閉じられた地下室、果ては飛行機内やバスジャック中の車内まで。
    危機的状況のはずなのに、殺人現場で居合わせた者たちがいきなり推理合戦を繰り広げるのは『ワトソン力』によるものか。
    七つの事件は短編だけに軽めではあるが、トリックや謎解きは結構練られていた。現実的かどうかは置いておいて、パズルとしては楽しめる。

    そして、これまで周囲の推理合戦を見守るだけだった和戸が監禁者が誰かを必死に考えるのだが、そこにもきちんとしたロジックがあって面白かった。やるじゃないか、和戸。
    最後にある人から和戸にある提案がされるのだが、それが実現したらなかなか楽しそう。

  • 笑いもある本格推理の一冊。

    面白かった。

    タイトルの“ワトソン力”の意味に意表を突かれながらも本格推理ワールドへ瞬く間に惹きこまれる。

    ワトソン力によって繰り広げられる推理合戦はまるでシーソーゲームを観戦しているかのよう。

    自信満々の推理にはすかさず反撃あり。

    新しい推理が出るたびに思わずほぉ〜と言いたくなり、突飛な推理には笑いながらもいいね〜と手を叩きたくなる。

    和戸の飄々としたキャラ、複雑な推理、映像で観たらもっと笑って楽しめそう。

    この構成といい最後に魅せる壮大なワトソン力といい大満足の大きな拍手。

  • 捜査一課刑事の和戸はある日何者かに連れ去られ、地下室らしき一室に監禁された。自分から一定の距離の範囲内にいる人々の推理力を飛躍的に向上させるという特殊能力「ワトソン力」を持つ和戸は非番の時に出くわした事件の関係者が監禁に関わっているかもと考え7つのクローズドサークル事件を回想していく。関係者達が即席探偵になって犯人を推理していく過程はコミカルだがその分都合良過ぎに収まった感がちらほら。「雪の日の魔術」とか力技が過ぎる。「探偵台本」「不運な犯人」が個人的にはまとまっていたと思う。監禁事件の結末はきちんと誘導された所に収まったので読後はすっきりでした。

  • ワトソン力という設定が面白過ぎる。そして、そのワトソン力を遺憾なく発揮した7つの事件プラス1。まさに推理合戦の短編集だが、この稀有な設定のおかげでス披露される推理の論理性が際立っているように見える。リアリティは感じないがパズルとして非常に秀逸であり、この手のものが好きな人間には堪えられないハイレベルの展開であった。幾何学的な美しさを持った推理ばかりであり読んでいて非常に楽しかった。

  • 自分は全く推理しないで、他人が謎解きするストーリー。着眼点は面白いなぁと思いました。
    思ってた内容とは違ってましたが、読みやすくて、手軽に読むにはちょうどいい作品でした。
    少し強引な展開が多かった気がしますが、楽しむことは出来ました。

  • 宝石ザ ミステリー3(2013年12月)赤い十字架、2014年夏(2014年8月)求婚者と毒殺者、2014年冬(2014年12月)雪の日の魔術、2016(2015年12月)雲の上の死、ジャーロ63号(2018年3月)暗黒室の殺人、66号(2018年12月)探偵台本、67号(2019年3月)不運な犯人、の7つの短編に書き下ろしのプロローグ、インタールード1、2、エピローグを加えて2020年9月光文社から刊行。周りの人の推理力を飛躍的に高める特殊能力者の警視庁捜査一課和戸宋志のストーリー。設定がユニークで、すぐに犯人推理が始まる展開が面白い。書き下ろし部分をつなげると和戸の拉致事件の話になっており、この挟み込みで、サスペンス色が増している。杉田比呂美さんのイラストも楽しい。

  • 和戸宋志には、不思議な能力があった。
    彼の周りで謎が起こると、その時彼の周りに居合わせた人々の注意力・観察力などがにわかに冴え渡り、誰もが探偵の如く推理を始めるのだ。
    彼自身が名付けたその能力=「ワトソン力」のため、和戸の勤務する警視庁捜査一課は検挙率十割。もちろん、それが和戸の力の作用だとは誰も知らない。

    そんな和戸が非番の日にたまたまぶつかった殺人事件でも、居合わせた容疑者全員が「ワトソン力」の影響を受け、それぞれが推理を繰り広げ…


    大山誠一郎さん、初読。
    タイトルと装丁のイラストで興味を持ち、読みたいと思っていた本。
    そりゃもう、宮部みゆきさんや若竹七海さんのミステリのテイストを期待したわけです。

    勝手に始まる推理合戦というストーリーの都合上、途中からは会話文中心になることもあり、理詰めの推理なのに、テンポ良くあっけらかんと事件は解決。
    お疲れ気味の時、気分転換に良いという感じ。

    自分のブクログ本棚のカテゴリでは、ミステリは『日常ミステリ』と『ミステリ&警察もの』にざっくり分けているのだけれど…
    殺人事件もあって警察官が登場するのに、ノリは『日常』っぽい。

    最近は、ファンタジーやSFのスパイスがかかった物語で、しかもミステリ仕立て…なんてのも多くて、カテゴリ分けに悩むなぁ。

  • 杉田比呂美さんの絵が好きなので、杉田さんの絵が表紙を飾っている本は思わず手にとってしまいます。

    自分自身で推理することはできないが、身近にいる人間の推理力を高めることができる能力を持つ、和戸(わと)。

    和戸自身が、自分の能力を「ワトソン力」と呼んでいて、事件に巻き込まれ、周囲の人間が推理を披露するたびに「どうやらワトソン力が発動したようだ」と分析しているのがシュールで面白い。
    妙に冷静な和戸が、コントっぽいんだよな。ムロツヨシっぽいというか。

    発生する事件や推理自体は、ご都合主義というか、あまりときめかなかった。
    でもワトソン力という発想は面白いし、私も発動されていみたい。
    ラストでは、今後に続きそうな感じで終わっていたけど、シリーズ化するのだろうか。

  • ワトソン力すごい!検挙率10割って!100%って!
    本人が直接活躍できないのは可哀想だが、きっと同僚たちはなんとなく気がついているだろう。
    和戸がいないと冴えないな…と。
    読みやすく、短編なので空いた時間に1話ずつ楽しめた。
    最後のお誘い!光文社の雑誌ジャーロで第2シーズンを書いているらしい。早く単行本にならないかなと今から待ち遠しい。

  • 周りの人間の推理力を抜群に高めるワトソン力を持つ主人公。誰が探偵役なのか、そして犯人なのかカオス気味な、多重解決型ユーモアミステリ。
    クオリティは高いが、事件は小粒。続編が出るならば読みたい。

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著者プロフィール

1971年、埼玉県生まれ。京都大学推理小説研究会出身。サークル在籍中は「犯人当て」の名手として知られた。2004年、『アルファベット・パズラーズ』でデビュー。13年、『密室蒐集家』で第13回本格ミステリ大賞を受賞。18年刊行『アリバイ崩し承ります』は「2019本格ミステリ・ベスト10」国内ランキング第1位に、20年には連続ドラマ化され、大きな反響を呼ぶ。著書に『仮面幻双曲』『赤い博物館』『ワトソン力』『記憶の中の誘拐 赤い博物館』、訳書にエドマンド・クリスピン『永久の別れのために』、ニコラス・ブレイク『死の殻』がある。

「2022年 『時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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