彼女はひとり闇の中

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 442
感想 : 56
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334915148

感想・レビュー・書評

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  • この作品にはとあるトリックが使われています。


    一流大学の慶秀大学の学生守矢千弦は大学で幼なじみの朝倉玲奈と再会します。
    玲奈は千弦にとって、とても大切な友だちでした。
    玲奈とは学部も違い入学してから会う機会があまりなかったのですが、突然玲奈に話したいことがあると言われます。
    しかし玲奈は、その日の夜、夜道で何者かに刺されて殺されます。

    千弦は玲奈のことを思う余り、自分の身の危険を考えず、自分で犯人を捜そうと、まずは玲奈のゼミの准教授の葛葉智人49歳のところへ行きます。
    千弦は葛葉が怪しいのに気づきますが、千弦は探っているうちに何者かにスタンガンで撃たれるという危険にさらされます。
    すると今度は葛葉が「一緒にスタンガンを撃った犯人を捜そう」と言ってきますが、スタンガンを撃った犯人と玲奈を殺した人物は同一人物ではないのか…?


    この作品には謎の多い人物ばかり出てきて登場人物のとっている行動がよくわからず理解に苦しみました。
    主人公の探偵役である千弦でさえも、怪しいと疑っている「先生の家に行ってみたい」と葛葉に言いうのはそこまで危険をおかして怖くないのかと不思議でした。


    でも、この作品は最後に使われていた大きなトリックがわかってみると、なるほどと思わされることばかりでよくわかりました。


    この作品は今までの天祢涼さんの作品と同じくとある社会問題を取り上げています。

  • ★5 少女時代の友人のため女子大生が立ち向かう、バランス抜群の社会派ミステリ #彼女はひとり闇の中

    ■きっと読みたくなるレビュー
    ★5 バッチシ!
    今のところ今年の国内ミステリーでは、一番バランス取れてる優秀な作品。

    ・謎解きや仕掛け、社会問題性がしっかり組み込まれ、キャラクターも引きが強い
    ・作品としての厚み、読み応えがしっかりあるが、250ページほどで長くもなくシンプル
    ・起承転結も優れエンタメ作品としても面白い
    ・プロットも文章もセリフも必要十分かつ無駄がない上に読みやすい

    ここまでバランスの取れていて、誰にでも紹介できるミステリーは、有りそうで少ないんですよね。素晴らしいです。

    そして天祢涼先生は、若い女性の葛藤や微妙な友人関係を描写させたら、まぁ上手ですよ。本作も玲奈と千弦の距離感の描き方が素晴らしく、最初から最後まで読者の胸を締め付ける。

    また千弦と葛葉准教授との力強い駆け引きや、いびつな関わりあいも読みごたえがあってグッド。
    千弦の前を向き強く人生を歩もうとする姿の中に、それでも挫けそうになってしまう弱々しさも見え隠れする。ただただ見守ってあげるしかなく、つい読む手に力が入ってしまいました。

    そしてなんといっても、本作の読みどころは社会性問題です。
    ここはじっくりと読んでおきたい… 歪んでしまった世の中と犠牲になった人たちの苦悶。かなりHPを持っていかれてしまい、読み終わると同時に、うなだれてしまいました。

    なお本作は謎解き小説としても、今までの仲田シリーズよりも圧倒的に巧妙で仕掛けも増えています。ミステリーファンとして嬉しく、楽しく読ませていただきました。

    ■きっと共感できる書評
    世の中には人生が順調に運ぶ人と、運ばない人がいますが、いったい何処に差があるのでしょうか。

    以前、派遣社員の管理者として仕事をしていたことがありました。
    派遣社員の皆さんは、大卒で優秀、課題に対して積極的に取り組む素晴らしい人たちばかり。しかし一時期病気だったり、良い企業に出会えなかっただけで、止むをえず派遣社員として働いていたのです。

    ちなみに私は大学中退、ニート経験すらある。取り立てて技術や能力もなくて若くもない、今風に言えば無能な人です。それなのに、今は知名度も業績も高い上場企業に正社員として勤めている。

    なんですかね、この差は…
    そりゃ私も努力をしましたが、派遣社員の皆さんも同様もしくはそれ以上に努力をしているはず。時には自らの人間性をも見失うほどのこともあったでしょう… 時代なのか巡りあわせなのか、いったい何が違うんでしょうか。

    物語の序盤、大学のゼミで玲奈が葛葉准教授に出した提案や、千弦が物語が終ったあとの行動を読み直す。この差の理由は分からないけれど、それでも私にできることはないかと考えさせられました。

    • ひまわりめろんさん
      そうそう秋さん
      なんの脈絡もありませんが『魔王の島』読んでみてほしいです
      特別お勧めってわけじゃないんですが、秋さんがどういう評価をするのか...
      そうそう秋さん
      なんの脈絡もありませんが『魔王の島』読んでみてほしいです
      特別お勧めってわけじゃないんですが、秋さんがどういう評価をするのかすごい気になるんです
      めちゃめちゃ押し付けがましいですが、よろしくお願いします
      2023/04/04
    • autumn522akiさん
      ひまわりめろんさん、こんばんわ~

      ありがとうございます。
      ジェローム・ルブリの『魔王の島』ですよね。
      評判は知ってまして、読みたい...
      ひまわりめろんさん、こんばんわ~

      ありがとうございます。
      ジェローム・ルブリの『魔王の島』ですよね。
      評判は知ってまして、読みたいリストには入ってます^^

      でも、まだ手を出せてないんですよね~ 時間見つけてトライします!
      2023/04/04
    • ひまわりめろんさん
      お!さすが秋さん
      チェック済みでしたか
      楽しみに待ってます
      お!さすが秋さん
      チェック済みでしたか
      楽しみに待ってます
      2023/04/05
  • 闇の中に居る彼女は誰?
    女子大生千弦は、幼馴染の女性から、相談したいというLINEを受け取っていた。その後、友人が殺された事を知る。千弦は、友人の為犯人を探し始める。千弦の行動の前に幾つも障害が起きてくる。その一つ一つが、今の日本の社会問題を反映していて、社会問題の折詰。みんな怪しくて、美味しくいただきました。
    闇の中にひとりになってしまうのは、誰でもあり得る事。あまりに深い闇だと、親でも愛情があっても、現実でもなかなか引き出せない問題です。

  • 大学生の千弦は、幼馴染の死の真相を探ろうと動く。
    頼み事をしない彼女から「相談したいことがある」とLINEが送られてきた、その夜に亡くなっていたからだ。

    真相を掴むべく動き回る彼女をよく思わないのは、果たして犯人だからなのか⁇
    読み進めながらも腑に落ちないなと思うところがあり、後半になるとそうでしたか…と。
    そこに隠れていたんですね。となる。
    千弦の兄のこともあり、見え隠れする何かが気になっていた。
    孤独とは耐え難いものである。


  •  主人公は女子大生の千弦…飲み会に参加していたことから、幼なじみの玲奈からの「相談したいことがある」のメッセージに気付かなかった…。玲奈は何者かに殺害され、千弦は真相を暴こうと関係者と接触を図り、教授の葛葉に猜疑を抱くが…。

     気づけば一気読みしてました!!しんどいなぁ…今の社会が抱えている貧困や引きこもり、いじめ、セクハラ…いろんな問題をこの作品に詰め込んで読ませるような、そんな印象を受けました。だからかな…ちょっとまとまりがないというのか…それが気になるかもだけれど、でも最後の最後で驚きました!まさかの展開でした。今回のことでいろんなことを知った千弦ちゃんと、あと辛い思いをいっぱいしてきた彼女にも幸せになってほしいと感じました。

  • 幼馴染が殺された事件の謎を追う女子大生を描いたミステリー。

    主人公のまっすぐで無鉄砲な行動にヒヤヒヤしつつ…
    色々な違和感を感じていたら、やっぱりそうくるか、という感じでした。
    現代社会の闇がたくさん盛り込まれていて、暗い気持ちになりました。
    足を一歩踏み外したら這い上がれない。自分の望み通りに進学したり就職したり働き続けたりすることがこんなにも難しいことだなんて、ひどい世の中だと思います。
    みんな誰でも幸せになりたいのに。

  • まことさん、autumn521akiさんやたくさんの方の本棚から図書館予約
    あまりミステリーは読まないし、初めての作家さん
    でも、読むのをやめられなかった
    ずっとモゾモゾとする不穏なモノ
    登場人物みんなの「闇」
    ラストに明かされる深い深い孤独の「闇」
    文章はちょっとゴツゴツしていたけれど
    設定がうまいのかな
    ハッとさせられる真実があって……
    うん、面白かったです
    ブクログはいいなあ、知らない本に出合えて

    ≪ 道を逸れ 灯り届かぬ 闇の中 ≫

  • この表紙が私を呼んでいた。

    いやー、このタイプのミステリーは初めてだったかもしれない。
    ネタバレしてはまずいので詳しくは書けないが、途中から頭が混乱してページを逆戻り...
    用心深く読み進めなければなりませんよ。

    作者は今の若者の状況をよく捉えている。
    ルッキズム、経済的困窮、社会的階級、マウントの取り合い
    何事もなく過ごしているように見せ、水面下ではもがき苦しんでいる。

    ミステリーでありながら、今の若者の現状を描く社会は小説でもあった。

  • 【ネタバレあり】


    初読みの作家さん。

    早くから犯人の語りが入るが、一人称語りなのに、なんだか下手な書き方だなぁと思って読んでいた。

    それとは別に、助詞の誤字もあるし、ひとつながりの単語が行をまたがっているのが何箇所かあったので、それと同列の下手さなのかと思った。
    結果として、そうではなかったのだが、いまひとつ。

    単語が行をまたぐのを読む気持ち悪さは、他の著者の緻密な文字割り当ての書籍や、小説の書き方についての書籍を読んだばかりなので、本書の場合、元原稿と書籍化した時のマス目が合っていなかったのだろうと推察した。

    自分のこのブクログレビューで、改行を入れていないのに、よく変な所で改行されていることも自分では気持ち悪くて仕方ないのだが、全然修正できないしプロの書籍ではないので、言わせてもらった。



    テーマは、いつなんどき我が身に起きてもおかしくない怖さは感じた。

  •  これはズルい!いわゆるどんでん返しモノなのだが、してやられた感が強い。でも、思い返せば所々にヒントが隠されていたことに気づく。でも、これ途中で犯人わかる人いるのかな?

     幼馴染の玲奈が殺された千弦は、その犯人探しに奔走する。探しているうちに玲奈の交際相手の大学教授の葛葉が怪しいことに気付き、葛葉を探っている千弦は何者かに襲われて・・・。

     物語は犯人探しだけでなく、引きこもりや貧困にも目を向けている。境遇による犯罪。もし一歩間違えていたら誰でも犯罪者になる可能性があるという。自分は絶対に大丈夫と言えるだろうか。

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著者プロフィール

1978年生まれ。メフィスト賞を受賞し、2010年『キョウカンカク』で講談社ノベルスからデビュー。近年は『希望が死んだ夜に』(文春文庫)、『あの子の殺人計画』(文藝春秋)と本格ミステリ的なトリックを駆使し社会的なテーマに取り組む作品を繰り出し、活躍の幅を広げている。

「2021年 『Ghost ぼくの初恋が消えるまで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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