見えないドアと鶴の空

著者 :
  • 光文社
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334924232

感想・レビュー・書評

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  • 三角関係?不倫?
    と思っていたら、なんだか怖い展開に

    最後の最後、本当に最後のところで
    なんだかスッキリしなかったなぁ

  • 半ばまではすごく面白かったけど、超常現象的なことが始まってからちょっと失速したかな・・という感じです。人と人のつながりは、「合う」ということが基本で、一方的ではないという言葉はとてもいいと思った。

  • はじめは普通な物語が進んでいたのだけれど、途中からの展開が衝撃的だった。?というような、非現実(?)な展開で、そのまま終わってしまった。ただ、惹きつけるなにかがこの物語にはあって、途中目が離せなかった。

  • この世の全部を敵に回して と同じテーマだと思うのですが、こちらは優しい着地にしています。それがちょっと物足りなかったけど、万人受けするにはこれしかないのかな。でも、下手な恋愛ものよりは良いけどね。

  • ホラーと超能力と恋愛がまじりあった一冊。
    性描写はエロすぎて、辟易してしまいますが
    全体的には、とても面白かったです。
    さくさく読めて、読了後も余韻が残る
    加えて、ちょっと考えさせられるトコも。

  • P61
    <<・・・
     いま自分がしてきたことは、まるで動物以下の所業だな、
     と思ったのは、最寄りの駅で降りて家に向かう道すがら
     でのことだった。>>

    P75
    <<・・・
     こうして由香里の生活に次第に溶け込んでいくことで、
     否応なく彼女との親密さは増していくに違いない。
     だが、こういうことは誰にも止められないんだよなあ、
     と昴一はぼんやり思った。>>

    ●あまりに欲望に忠実で、絹子を顧みない昴一の行動に
     はじめ呆れ果てたが、現実もそういうものではなかろうか
     と思った。
      人間の三大欲求の中で最も衝動的なものが性欲だと思う。
     多少空腹でも食べ物を我慢することは容易なことだし、
     眠気を抑えながら数日に渡って起き続けることもできる。
     食欲、睡眠欲は理性で制御できる欲求だと言える。
      しかし、性欲だけはどうにも我慢できない。
      頭では倫理に反することが分かっていても、衝動を抑える
     には強い意思が必要になる。日常的には抑えられても、
     性欲を満たすことのできる状況において、自制することは
     困難である。これを回避するには、はじめから対象に性的
     欲求を持たないことしかないのではないか。

    P120
    <<・・・
     昨夜は連絡もしてこなかった。むろん絹子からの電話に
     昴一が出たはずもないが、それでも何度もかけつづけると
     いうやり方もある。そこは難しい局面だが、しかし、ほんとうに
     相手との関係を維持したいと望めば、やはり電話は寄越
     すべきだろうし、留守電にメッセージくらいは残しておく
     べきだろう。親子にしろ夫婦にしろ親友同士にしろ、人間
     関係というのは軽く見はじめると際限なく軽く見られるように
     なってくる。>>

    ●関係を繋ぎ留めておくのに、連絡は不可欠なものだ。昴一の
     言うように絹子から連絡するのは筋違いな気もするが、
     そんなプライドよりも相手への想いが勝っていれば連絡せず
     にはいられないと思う。

    P154
    <<この老子の言葉に触れて、その晩の高木はまさに電撃に
     打たれたような感覚を味わった。自分はいままで丈太郎の
     ことをごく普通の子供らしい子供にしようと躍起になって
     きた。その挙げ句、酔った勢いで誇張めいた言辞に自ら
     溺れただけの老人を殴り倒し、大切にしてきた仕事まで
     棒に振ってしまった。だが、この僧侶の記すように、
     たとえ五体満足に生まれたとしても「匙」のようにしか
     生きられないものばかりのこの世界で、果たして自分は
     丈太郎よりもどれだけ真理に近づくことができていたろうか。
     ・・・
     要するに、自分は丈太郎が不自由な身体の全部を使って
     自分や妻に必死に教えてくれようとしたことを一顧だに
     せず、ないがしろにしつづけてきたのではないか。すぐ
     近くある道を知らず、どこにでもある真理に目を止めず、
     ただ自分は自分の見栄のために、決して肩代わりのできぬ
     苦しい日々を耐えている丈太郎の存在を、実のところ一切
     認めようとしなかったのではないのか。そしてこの十年の
     あいだ、何をなすべきかをほんとうに知っていたのは自分
     ではなく、むしろ丈太郎の方だったのではないか-高木は
     不意にそう悟ったのだそうだ。>>

    P209
    <<結局のところ、昴一は絹子という人間の表層だけを見て、
     その美質にしろ欠点にしろ判別してきただけだった。
     人間同士の相互評価などその程度のものと割り切るしか
     ないのかもしれないが、しかし、とはいっても夫婦の縁を
     結び一度は生涯を伴にすると約束した相手に対しては、
     それ相応の肉薄をすべきが、夫としての義務だったに
     ちがいない。愛することや慈しむこと、また逆に憎み嫌う
     ことであっても、その大前提になるのは可能な限り相手を
     知ろうとする努力だ。だが、大体のところ、親子や夫婦の
     ような緊密な関係になればなるほど、実はその努力を
     怠っているのが世の現実なのではないか。知ろうとする
     意志は、実は、愛したり憎んだりする意志とは相反する
     領域に根を張る性質を持っているのかもしれない。だから
     こそ、愛憎は人間を盲目にし、しかも誰もがそこに人間
     臭さや人間らしさをついつい汲み取ってもしまうのだろう。>>

    P255〜P256
    <<よくよく考えてみれば、
     ・・・
     そもそも絹子には、彼が会社を辞めた真意について深く
     考える姿勢が最初からほとんど見受けられなかった。
     彼女は、事前の相談もなく辞表を出した夫にただ呆れた
     だけで、何故いきなりそんな行動に出たのかを真剣に
     質してもこなかった。
      しかし、あの時の昴一は、八年足らずの会社勤めで実は
     ひどく傷ついていたのだった。
     ・・・
     そうなのだ、会社を辞めたとき、自分は絹子に心から助けて
     貰いたかったのだ。
     ・・・
     ほんとうは、あの苦しかった時期こそ、絹子が昴一のために
     なにふり構わず尽くすべきだったのではないか。自分もまた、
     そのことを強く絹子に求めるべきではなかったのか。

    ●人間関係の真髄である相互理解。互いに理解し合い、慈しむ
     ことができれば、どんな問題も起こり得ないと思う。しかし、
     現実には自分の想いを包み隠さず打ち明けることも、相手の
     告白を受け入れることも容易なことではない。

    P322
    <<・・・
     人は憎むのではなく、憎み合うのだ。人は愛するのではなく、
     愛し合うのだ。そうやって「合う」ことこそが愛と憎しみの
     本体に他ならない。
     魂と魂とが触れるとはそういうことだ。そして目に見えない
     世界では、人と人、人と動物、人と草木、人と水や土や鉱物、
     それらが無限につながり「合い」、絡まり「合い」、重なり
     「合って」いる。「合う」ことがすべての基本であるという
     ことは、つまりはそれら全ての魂はもともと一つのものに
     違いないのだ。>>

    巻末
    <<洒落た会話や思わせぶりな設定で愛や苦しみ、やさしさや
     ジョークをお手軽に書き散らしただけの小説はもう必要
     ありません。
     自分が一体何のために生まれ、生きているのか
     それを真剣に一緒に考えてくれるのが、本当の小説だと
     僕は信じています。
                           白石 一文 >>


    読了日:2010/07/21

  • 村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」を連想させたが、設定も人物も落ちる。主人公の行動は不自然だし、女性達の個性も生きていない。思考ばかりが空回りし、展開にはこじつけみたいな部分が多い。伏線がラストにどう反映されるか期待したが、たいしたことなく肩透かし。いろいろと盛り沢山だけど薄味だなぁ、白石さんにしては失敗作だと思う。

  • 最初読んだ時は、10代の学生だったので、
    性描写や登場人物たちの言動がえげつなく思えて、えーってひいたのを覚えてます。
    ただ、20代になって、
    多少いろんなことに揉まれてから読むと、
    一見身勝手ないろんな描写もすんなり理解できて、へーと思いました。
    私は、スピリチュアルワールドを信じる方なので、
    そのへんもすんなり受けいれられました。

  • 白石さんがSF?!とびっくりした

  • 三角関係の話かと思えば、そんなことは些細な問題でしかなく。
    生と死の対比と、その捉え方についての話だった。
    テーマが一貫してるんだなぁ、と毎回思う。

    断定的な語り口で大きな観念を語るキャラクターが多くて、
    その大きな視点の中で赦されてしまう残酷な思考に反発も覚えて、
    でもそれでも気になる文章だなぁ、と思う。

    懲りずに他の作品も読むと思います。

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著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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