弦と響

著者 :
  • 光文社
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本棚登録 : 184
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334927448

作品紹介・あらすじ

30年続いた鹿間四重奏団は、最高のメンバーで円熟期という名の終焉を迎えていた。静かな包容力でカルテットを支えるチェロの伊井山。奔放な紅一点・ビオラの遼子。妖しげな美貌を誇るセカンドバイオリン文字相馬。老いてなお、禍々しいまでのエネルギーに満ちるファーストバイオリン鹿間五郎-。その鹿間四重奏団最後の日。違う場所、交わることのない世界でそれぞれの日々を生きる人々が、同じホールに向かう。ばらばらに生きる人々の人生が鹿間カルテットの音楽という横糸を得て、繊細なレース模様のような物語を紡ぎだす。胸をうつ語りと調べに彩られた、人生模様。

感想・レビュー・書評

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  • 読後、心に雪のように降り積もる、残響。

  • 初めて読んだ作家さん。詩人でもあるそう。
    カルテットの最後のコンサートに臨む、さまざまな立場の人のこれまでが語られていく。登場人物のほとんどが、中年から老いを迎える年代であるため、語られることに厚みがある。厚みはあるが、重くはないところが、交響曲ではなく四重奏の粋なところと言うべきか。

  • 一人ひとりのキャラクターは必ずしも枯れた印象を持ち合わせないのだけど、深々と降り積もる寂しさに凍えそうになる。人それぞれの越し方や想い、そんな交々の錯綜に紛れて繊細な余韻が聴こえてくるよう。

  • 2020年7月5日
    音楽の重さという表現が気に入った。
    このカルテットを聞いてみたい。
    いろいろな立場の人がこのラストコンサートに関わっていた。
    その特別な日を迎えて自分の来し方行く末についてしみじみ想いを馳せる。
    後悔なく、自分の来し方を受け入れている。
    でも、はたからみると、離婚したり、独り身だったり、子どもに恵まれなかったり不幸せな人が集まっている。
    芸術に身を置くと、自分が大事で自分の感性で動くからそうなるのかもしれない。
    ラストコンサートのプログラムはネットで聞いてみようと思う。

  • ホール専属の鹿間四重奏団。30年の歴史を閉じるラストコンサートに向けた、カルテットの人間模様を描いた作品。さざなみのような静かな波動が、読者の胸を打つ。

  • カルテット最終公演から振り返る過去。音楽家の孤独を想う。

  • 30年続いた男女4人からなる鹿間四重奏団の最後のコンサート。
    それに関わってきた人々の回想や思いが綴られる。
    チェリスト伊井山の衰えが身にしみた。

  • 20121008読了
    #音楽

  • ラストコンサートをむかえた弦楽四重奏団の物語り。
    団員だけでなく、コンサートホールの従業員や四重奏団のマネージャー、地域紙の記者など、四重奏団にかかわる様々な人々の視点から語られる点が興味深い。

  • 鹿間四重奏団のラストコンサート。読後、まるでコンサートに足を運んだような気分になる。☆5にしてもいいかな?と思うぐらい私は好き。このカルテットに関わる(多かれ少なかれ)人たちの、それぞれの思いが1章ごとにつづられている。いわゆる、「幸せな人」はいない。しかし、決して重い雰囲気になることなく、ラストコンサートへ。なぜだろう、キラキラした素敵な夜を過ごした気持ちになった。

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著者プロフィール

小池 昌代(こいけ まさよ)
詩人、小説家。
1959年東京都江東区生まれ。
津田塾大学国際関係学科卒業。
詩集に『永遠に来ないバス』(現代詩花椿賞)、『もっとも官能的な部屋』(高見順賞)、『夜明け前十分』、『ババ、バサラ、サラバ』(小野十三郎賞)、『コルカタ』(萩原朔太郎賞)、『野笑 Noemi』、『赤牛と質量』など。
小説集に『感光生活』、『裁縫師』、『タタド』(表題作で川端康成文学賞)、『ことば汁』、『怪訝山』、『黒蜜』、『弦と響』、『自虐蒲団』、『悪事』、『厩橋』、『たまもの』(泉鏡花文学賞)、『幼年 水の町』、『影を歩く』、『かきがら』など。
エッセイ集に『屋上への誘惑』(講談社エッセイ賞)、『産屋』、『井戸の底に落ちた星』、『詩についての小さなスケッチ』、『黒雲の下で卵をあたためる』など。
絵本に『あの子 THAT BOY』など。
編者として詩のアンソロジー『通勤電車でよむ詩集』、『おめでとう』、『恋愛詩集』など。
『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集02』「百人一首」の現代語訳と解説、『ときめき百人一首』なども。

「2023年 『くたかけ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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