- Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334929336
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
若竹七海さんの約3年ぶりの新刊である。失礼ながら、キャリアの割に知名度は高いとは言えず、近年は寡作気味。そんな中、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞短編部門を受賞したとのニュースが流れたのが昨年のこと。
そして今年、「暗い越流」を含む5編を収録した短編集が刊行されたのだった。近年はライト路線が続いていたが、久々に超ビターな若竹節が味わえる。これってコージーの範疇に入るのだろうか。僕はただただ苦笑いするのみであった。
「蠅男」。若竹ファンにはおなじみの女探偵・葉村晶が登場。群馬県は伊香保温泉近くの洋館に遺骨を取りに行くだけのはずが…。彼女には悪いが、コメディにしか思えん。タイトル通りとだけ書いておく。幽霊の正体見たり…よっぽど恐ろしいじゃないかっ!!
「暗い越流」。死刑が確定した男へのファンレター。その意図とは。現実にもよく聞く家庭事情の数々。ちっとも笑えないシチュエーションだが、なぜか顔が引きつる。やや詰め込みすぎだが、よく短編に収めたな。そしてまたこの手に引っかかった…。
「幸せの家」。やり手の雑誌編集長が転落死。殺人を疑い、取材を装って調べてみると、現実にも聞くような聞かないような…。雑誌の休刊・廃刊が相次ぐご時世とはいえ、いつまでもこんなこと続けられるわけがない。オチはちょっと読めたかも。
「酔狂」。途中はどうでもよいと書いたら怒られるか。最後の一文が命の1編と言い切ってしまおう。男のくどくどした独白に飽きてきたところで、嗚呼、こんなネタが炸裂…。笑うべきか笑わないべきか。一応願いが叶ったのかな、これ。
「道楽者の金庫」。再び女探偵・葉村晶が登場。福島県の別荘にこけしを取りに行くだけのはずが…。事件の内容はともかく、こけしがずらりと並んだシチュエーションは想像するだけで怖い。こけしも古書も、マニアの世界はディープですねえ…。
若竹流ミステリの一ファンとしては楽しめたが、一般読者は楽しめるだろうか。これで遂にブレイク!! ということはないだろうなあ、やっぱり…。猫島シリーズ辺りをもっとプッシュしてはどうだろう。しかし、本作こそ若竹七海の真髄なのである。 -
葉村晶を読みたかったので。
短編5編中2作に登場。
日本推理作家協会賞の短編部門受賞作も収録。 -
短編集。
取り急ぎ、葉村晶シリーズの「蝿男」と「道楽者の金庫」のみ読んだ。
葉村晶シリーズ、長編だとじっくり読み込めるし、短編だとキレがよく味が濃いという、稀有なシリーズ。
この二編も晶がかっこよく、また不幸なめにあっていて面白かった。
残りはまたの機会に。 -
若竹七海の短編集。
読み終わって面白かったが、印象には残らなかった。 -
短編集。
最初と最後の話が葉村晶。
「幸せの家」ていねいな生活をうたう女性誌が舞台なんて、イジワルな話。 -
図書館に予約したのはいつか忘れるほど前で、今頃読むくらいの人気作だった。
返却時の延長は認められません、と言うピンクの紙がはさんであった。
このごろ短編集ばかり読んでいる気がする。題名どおり暗い話が5編収まっていた。
「蠅男」
亡くなった祖父の家に置きっぱなしの母親の骨壷を取ってきてほしいと依頼される。葉村晶はフリーで探偵業をしている。群馬の伊香保温泉の奥に建っている寂びた家に行くと、ライターの朝倉が腐乱死体で転がっていた。ということで心霊スポットや、土地開発やらが絡んだ話。
「暗い越流」
これが受賞作。
死刑囚にファンレターが届いた。5年前、犬が吠え掛かかったというだけで犬もろとも飼い主を轢き殺し、通りかかった4人を巻き込んではね、ロータリーデバスと衝突して、運転手と乗客が亡くなり重軽傷者も出たという残虐な事件だった。
手紙の差出人を調べると、犯人の近くに住んでいた山本優子という女性だった。だが彼女は5年前の台風の日に家を出て行方不明だった。私はその捜査をすることになる。
父親は老母の介護で家出した娘を探すどころではなかったと言う。
私のところにも老いた母がいる、口やかましい母のせいで妻と娘は家を出て行った。
優子はどこにいるのか。
手のかかる親がいる家庭の重苦しさが底辺になったところが、現代を反映しているが、短い話なのであまり工夫はない。
死のうとして失敗ばかりしている「死ねない男」の話が利いている。
「幸せの家」
小さな雑誌の編集長がいなくなった。彼女が一人で切り回してきた特集は次号まできちんと企画が出来上がっていた。
女号の企画と言うので、読者から選んだ若い主婦の自慢の鍋料理を取材に行く。老人のいるらしい家庭もある。
編集長失踪の手がかりを探しに借りていた部屋に行くと、通帳に不審な入金があり、どうも恐喝でもしていたらしい。
題名の「幸せの家」というのは「幸せの家?」と言うのがふさわしい話になっている。
「狂酔」
これが一番面白かった。
教会の集会でシスターたちに向かって酔った青年が話し出す。
家庭の話は父親が自殺したことから始まって子供のころ誘拐されたこと。アル中になった経緯。
なぜここで話をしているか、静かに聞いて欲しい。ここにいた中学生の少女が子供を産んで、追い出されただろう。彼女はこの教会のシスターを慕っていて、近くでカレー屋をやっている。貰われた子供を探し出して育てて、仕事を手伝わせている。事件があるとボランティアの食事のために教会の庭でカレーを作るのを楽しみにしている。話は続く。
教会が見えて見晴らしがいいと両親が喜んでいた我が家を買った、家族の息子が行方不明になったね。そのときもカレーの炊き出しをしただろう?
延々と続く話の糸は、教会や、妊娠した少女や、通報してやってきた警官やを巡り、哀切な最後に続いていく。
「道楽者の金庫」
遺品整理業者と一緒に値のつく本の選別を任された葉村晶は今も探偵でアルバイト。古くてもいい本もあるが、見るとこけしの数がハンパではない。その中に、貴重品を入れた金庫を開く手がかりのこけしがあるという。東北の別荘まで探しに行き、てんやわんやの話。
こけしが見つかったことは見つかった、その貴重品はと言うと???なものだった
それぞれ面白い、短い話なので、楽しめた。