- Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336025722
感想・レビュー・書評
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ボルヘスが大好きな作家の大好きな短編を集めたバベルの図書館シリーズ。イタリアで刊行された青を貴重とした縦長の装丁で出版されています。
今回は『宝島』『ジキル博士とハイド氏』などのイギリス作家スティーブンソン。
ボルヘスの序文で、作家とその作品を「夢見る人とその夢見られた夢」と表現し、スティーブンソンの場合は「いつまでも同じ強烈さを持って存在し続けるであろう」といいます。
魔術師カラマケの娘と結婚したケオラは、義父が金貨を得る仕事を手伝うが、「それなら俺働かなくていいじゃん」と欲をかいたことからカラマケに狙われる(←そりゃーそうだ)。
身を隠したケオラは、「ある島の海岸は、人の姿は見えないが声だけが聞こえる」るという噂を聞く。そう、これこそカラマケたち魔術師による金貨鋳造の仕業だ。
==怠け者ケオラには「いい気なもんだ」という気もしないでもない…
/『声たちの島』
持ち主の願いをすべて叶える壜だが、買った値より安く売らなければ永久に地獄で魂が焼かれる。長年の取引により値が下がり続けているこの壜をなんとしても手放さなければならない夫婦は…。
/『壜の小鬼』
盗みからついに人殺しにまでなったマーカイム。殺人を行った家で悪魔が囁く。「もうひとり殺せばお前の罪は隠される」
/『マーカイム』
牧師館に雇われた女の首は捻れていた。まるで首吊り死体のように。
==前半はジャネットの良くない噂だとか魔女裁判的様相で、後半は本当に悪魔の存在が感じられる。
/『ねじれ首のジャネット』詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
スティーブンソン「声たちの島」
昨夜バベルの図書館シリーズからスティーブンソンの短編を1,02編くらい(笑)読みました。この短編集は4編から成っていて、その選択基準は編者ボルヘスの印象の残り具合からだそう。そのボルヘス曰く、「ジキル…」の話はスコットランドにある、誰かが死ぬ直前に遠くの知り合いのところに分身が現れるという言い伝えの変容で、こういう深層はジョイスやオブライエンのアイルランドとも共通している…南洋もの2編。都市もの?2編。
前者からの標題作は魔術師とその婿という幻想話を構造的にはきれいにぱたぱた織り込んだような話。魔術師の家がかなり西洋化されてたり、紙幣制作浜辺?が出てきたりと単なる南洋幻想ものだけではない近代批判もあるような短編ですが、そこについてはやはり?ボルヘスは沈黙…
(2015 08/25)
2つのハッピーエンドの比較
スティーブンソンの2つの「南洋」ものを読んだ。2つとも最後は主人公たちが苦境を脱して終わるのだけれど、一昨日読んだ話は魔術師がいつまた戻ってくるかもしれないという保留付きだったのに対し、昨日読んだ壜の話はもっと明らかな脱し方。これは主人公の性格の違いによるところなのかもしれないけれど、最後に出てきた水夫長はひょっとしたら壜の小鬼の親分かなんかで、人間界から壜を取り返しただけなのかも(そっち側から読み返す或いは書き直すのも楽しそう?)。
この話の核は、死ぬまで持っていると地獄落ちのこの壜を他人に売り付けるのは買った時より安く売らなければならない、というルールで、ナポレオンやクック船長から最後の水夫長に向かって安くなるに従って、人物像や背景がだんだん細かく惨めになっていく…というのが読みどころ。
(2015 08/26)
マーカイム
昨夜のスティーブンソンは「マーカイム」。序文でボルヘスが二重人格或いは分身的な短編が含まれるとしていたのは、まあこの作品だろうけど、読みどころはそれより?前の殺人者の心理描写にある。
…こういう名前のお菓子屋ありませんでしたっけ…
(2015 08/27)
スティーブンソン終了
スティーブンソン短編4つ目終了でこれも読み終わり。「ねじれ首のジャネット」…イギリス短編集か怪奇小説集かなんかに入っていたかも…は死骸?にとりついた悪霊の話。黒い男が悪霊だというのはスコットランドの古くからの伝統だという。
まあ、とにかく、(大)男が立ち去るイメージが最初と最後にあるのね、この短編集は。表紙も合わせて…
(2015 08/28) -
[ 内容 ]
[ 目次 ]
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ] -
第17冊/全30冊
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全く恥ずかしい話だが『ジキル博士とハイド氏』と『宝島』を同じ人が書いた、ってことに今日まで気がつかなかった。
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収録作品/原題 リンク先は英Wikiから飛べる全文掲載。
『声たちの島』The Isle of Voices(1893)
『壜の小鬼』The Bottle Imp(1891)
http://en.wikisource.org/wiki/The_Bottle_Imp
『マーカイム』Markheim(1884)
http://en.wikisource.org/wiki/Markheim
『ねじれ首のジャネット』Thrawn Janet(1881)
http://en.wikisource.org/wiki/Thrawn_Janet