- Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336042033
感想・レビュー・書評
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23歳で世を去った作者19歳の時の作。少年少女たちの織りなす美しい世界。美智子皇后が学生時代に愛読され、後年には作者の父、野村胡堂に手紙を出されてまで探し求められた幻の名作。
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友愛と敬虔な信仰──シュピーリの精神を包み隠すことなく継承しながら、鎌倉を舞台にまるで植田正治の撮る家族が若草物語を地で生きているかのような純粋で暖かな日常が紡がれる。若い著者は時に自らが描く優しく純情な少女達への愛情を押し隠しようもなく行の表へと迸らせながら、また背景に対比的にジェンダーの片鱗を意識的に差し込みながらも、社会の枠組みに押し込まれる前の子供らしさを全霊をかけて肯定する(この辺りもシュピーリの影響を強く感じる)。傾倒する世界名作児童文学の諸作品の翻案のような筋運びながら著者の強い信念が感じられるだけにその早逝が悔やまれる。
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長女百合子、次女梢、長男穣二、三女ナナ、この4人にパパとママの草場家を中心に梢の友人で父が急逝する日高家の黎子、その妹このみ、日高家に預けられる高慢な暴君靖彦、そして梢の叔父の潤叔父、松籟荘の住人の今西家の人々が織りなす1年間の日々。平和で笑いの絶えない草場家、父の急逝により嵐の中の小舟の様な日高家、靖彦がこのみを池に落とし、このみが死期を彷徨い改心する靖彦、そして意外な所にいた孤児だと思われた靖彦の母と最後に行くに従いハッピーエンド。巻末に付されたM・B・Cの子供達による小雑誌に口元はほころぶ。日本版若草物語。