新編バベルの図書館 第6巻

制作 : ホルヘ・ルイス・ボルヘス 
  • 国書刊行会
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本棚登録 : 83
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (669ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336055323

作品紹介・あらすじ

バベルの図書館シリーズ、ラテンアメリカ・中国・アラビア編。アルゼンチン短篇集、千夜一夜物語ガラン版、千夜一夜物語バートン版、蒲松齢、ルゴーネス、ボルヘスの巻。「イスール」「青い虎」ほか全40編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 《新編バベルの図書館》全巻購読者特典のお知らせ

    《新編バベルの図書館》(全6巻)を全巻購読された方々に、
    特製冊子『バベルの図書館を読む』をもれなく無料で差し上げます。
    http://www.kokusho.co.jp/news/2013/08/201308221510.html

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    「バベルの図書館シリーズ、ラテンアメリカ・中国・アラビア編。アルゼンチン短篇集、千夜一夜物語ガラン版、千夜一夜物語バートン版、蒲松齢、ルゴーネス、ボルヘスの巻。「イスール」「青い虎」ほか全40編を収録。」

    • umitotanpopoさん
      読みたいけど高くてー(笑)
      国書刊行会が自分の居住地に近いところにあると知り、こっそり見に行ってみようかと思っています。
      このご時世に、こん...
      読みたいけど高くてー(笑)
      国書刊行会が自分の居住地に近いところにあると知り、こっそり見に行ってみようかと思っています。
      このご時世に、こんだけ趣味全開で潰れない出版社ってスゴイ気がします。
      2013/08/27
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「こっそり見に行ってみようかと」
      伝説の地下倉庫を覗かせて欲しい~
      http://kokusho40th.info/comics.html
      ...
      「こっそり見に行ってみようかと」
      伝説の地下倉庫を覗かせて欲しい~
      http://kokusho40th.info/comics.html
      「こんだけ趣味全開で」
      ホント不思議ですよね、、、文庫・新書派の私には心苦しい出版社です(図書館で借りて読んだ方が圧倒的に多いので)。。。
      2013/08/28
  • ラテンアメリカ・中国・アラビア編

  • 「ラテンアメリカ・中国・アラビア編」とはなんともバラエティに富んだ『新編バベルの図書館』第六巻。南米の短篇を読みたくなり手にとった。いずれも今まであまり読んでこなかった地域ばかり。
    ルゴーネスの「イスール」が重複して収録されているので首をひねったけれど、訳者が違うのですね。これは胸を突く佳篇。
    アルゼンチンから千夜一夜・聊斎志異と続けて読める縦横無尽さはもちろん堪能したが、最もおもしろく読んだのは最後の「ボルヘス」の章。短篇では「疲れた男のユートピア」の知的で乾いた味に惹かれ、インタビュー「等身大のボルヘス」で彼の創造の泉を垣間見ることができた。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、2階開架 請求記号:908.3//B65//6

  • 『新編バベルの図書館』も、この巻をもって完結する。第六巻は、「ラテンアメリカ・中国・アラビア編」。ラテンアメリカ編にはルゴーネスにはじまる「ラプラタ幻想文学」派を網羅したアルゼンチン短篇集と、そのルゴーネスとボルヘスから数編の短篇を収める。中国編は蒲松齢作『聊斎志異』から十四篇、『紅楼夢』からの抜粋二編を収めている。そして、アラビア編には、なんとも贅沢なことに、『千夜一夜物語』をガラン版とバートン版から長短取り合わせて二編ずつを収録している。

    また、各編に所収の作品についてボルヘスの解題を記した序文がつく。読み巧者ボルヘスが、選んだ作品をどう観ているかを知るだけでも興味深く、このシリーズのお楽しみになっている。因みに評者偏愛のコルタサルについては「フリオ・コルタサルの短篇は、彼の長篇小説ほど有名ではないが、おそらく長篇小説よりいい。『占拠された家』は、幻想の世界が、古めかしい慣例に従ってわれわれが現実の世界と呼んでいるこのもうひとつの世界に徐々に侵入してくるさまがテーマになっている。緩慢な文体が物語の次第に増大してくる恐怖によくマッチしている」と、評する。愛すべき佳篇。

    さて、『千夜一夜物語』である。児童向きの読み物や映画その他で、「アリババと四十人の盗賊」、「船乗りシンドバッドの冒険」、「アラジンと魔法のランプ」と誰もがよく知っている話ながら、実は俗に『アラビアンナイト』と称されるこれらの話は、もともと『千夜一夜物語』の中には入っていなかった。ガラン版の訳者であるアントワーヌ・ガランが他の物語から借り入れて挿入したものだといわれている。

    とはいえ、かのド・クインシーが最高傑作と認めた「アラジンと魔法のランプ」、子ども向けのテクストで読んだつもりになるのはちとさみしい。評者は、当時出版されて間もない大宅壮一が仲間を集めて完訳したバートン版を読んで、その物語世界の豊穣さに驚き呆れた覚えがあるが、その後、大学時代にはマルドリュス版が訳出され、昔読んだ文章との違いにまた驚いた記憶がある。もともとバートン版は英訳からの、マルドリュス版は仏訳からの重訳である。どちらも原訳者の手が入っていることは知られている。ここは、いくつもの翻訳のちがいを知った上で読み比べるにしくはあるまい。

    ガラン版は井上輝夫、バートン版は由良君美訳である。由良の『みみずく偏書記』に次のような文章がある。「わたしは何とかして、その全訳を読みたくなった。つまり児童用の再話や抄話でないものが欲しくなった。幸い日夏耿之介たちの全訳が当時あって、小学生には難しかったが、背のびをすれば読むことができた。この全訳(バートン版)が与えてくれた充実感と満足は忘れられない。以後児童用再話本や抄話本は駄目だと根深く信ずるようになった」。このときの感動が、この訳を生んだのだろう。是非、手元において賞玩されたい。自分の子が、「アラビアン・ナイト」を読みたいと言い出したとき、書棚から取り出し、手渡すことができる。子どものころ読書欲を満たせてもらった子どもは一生本を愛する子どもになるはずだ。なお、長いものでは、ガラン版から「アラジンと奇跡のランプ」が、バートン版からは「蛇の女王」が採られている。

    『聊斎志異』は、漢文脈を生かした簡潔な訳ながら、他の国とは異なるいかにも中国ならではという稀譚が選ばれている。科挙の試験がいかに難しいものであったかを、その話題が頻出することからも窺うことができる。それと、俗に「地獄の沙汰も金次第」というが、獄卒から大王まで賄賂がはばを利かす閻魔の丁というのも畏れ入る。芥川や中島敦が好きな読者なら必読である。

    ルゴーネスのほとんどSFと言ってもよい怪奇譚は、いずれも名編揃いだが、不思議なことにチンパンジーに言葉を教えようと試みた男の回想を語る「イスール」一篇は、短編集の中にも、ルゴーネス個人の選にも重ねて収録されている。ただ、訳が異なり、前者が内田吉彦氏。後者が牛島信明氏である。この企画はイタリアの出版社によるものであり、その場合、邦訳が異なることなど配慮の外である。なぜ、こんなことになったのか一言断り書きがあるとよかったのではないだろうか。

    イタリア版編集者による序が付されたボルヘス本人の近作短篇が四編収録されているのもうれしい。いかにもボルヘス、といった分身譚の「一九八三年八月二十五日」、錬金術師の魔法を描く「パラケルススの薔薇」、理性を崩壊させる増殖する青い小石を描く「青い虎」、そしてボルヘス本人が「最良の一作」と手紙で知らせてきたという「疲れた男のユートピア」と、どれも期待にたがわぬ傑作である。巻末にマリア・エステル・バスケスによるボルヘスのインタビューを付す。お気に入りのモチーフについて気さくに語るボルヘスの肉声が聞こえてくる「等身大のボルヘス」。必読である。

  • 『新編 バベルの図書館』、第6巻。
    思い出してみれば『千夜一夜物語』をちゃんと読んだのは初めてだ。子供向けのダイジェスト版(?)みたいなのの記憶しか無いや……。
    この本にはガラン版とバートン版が収録されていてけっこうお得?

    他作品ではルゴーネス『イスール』、コルタサル『占拠された家』が良かった。
    『聊斎志異』もちゃんと読みたいなぁ。中国の怪異譚はやけに人間味があるので面白い。

  •  ラテンアメリカ・中国・アラビア編。全40編収録。
     『千夜一夜物語』のガラン版とバートン版が、一度に読める嬉しさよ!
     なお、当初の予定ではなかったという「等身大のボルヘス」が所収されているとは。嬉しや嬉し。

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著者プロフィール

1899年ブエノスアイレスに生まれる。教養豊かな家庭に育ち、年少よりヨーロッパ諸国を移り住んだ。六歳の頃から早くも作家を志望し、驚くべき早熟ぶりを示す。アルゼンチンに帰国後、精力的な文学活動を開始。一九六一年国際出版社賞を受賞。その後、著作は全世界で翻訳されている。20世紀を代表する作家の一人。
驚異的な博識に裏打ちされた、迷宮・鏡・円環といったテーマをめぐって展開されるその幻想的な文学世界は、日本でも多くの愛読者を持ち、全作品のほとんどが翻訳出版されている。一九八六年スイスにて死去。
小説に『伝奇集』『ブロディーの報告書』『創造者』『汚辱の世界史』(以上岩波書店)『エル・アレフ』(平凡社)『砂の本』(集英社)、評論に『続審問』『七つの夜』(以上岩波書店)『エバリスト・カリエゴ』『論議』『ボルヘスのイギリス文学史』『ボルヘスの北アメリカ文学史』『ボルヘスの「神曲」講義』(以上国書刊行会)『永遠の歴史』(筑摩書房)、詩に『永遠の薔薇・鉄の貨幣』(国書刊行会)『ブエノスアイレスの熱狂』(水声社)、アンソロジーに『夢の本』(国書刊行会)『天国・地獄百科』(水声社)などがある。

「2021年 『記憶の図書館 ボルヘス対話集成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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