口で歩く (おはなしプレゼント)

著者 :
  • 小峰書店
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (95ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784338170062

感想・レビュー・書評

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  • 小学校の国語教科書(光村図書出版)4年生に紹介されている本。

    これは良い!!何気なく読んでびっくりした。これはぜひとも大人にも子供にも皆さんにも読んでいただきたい!

    ===

    タチバナさんは生まれてから一度も歩いたことがありません。骨の病気で寝たっきりなんです。離れたところのものを取るには1.5メートルくらいの棒を使います。タチバナさんのお母さんは「ナマケモノみたいだね」というので「なまけん棒」って名前にしました。
    でも家で寝っ転がっているだけではありません。今日はいい天気、お友達の上野さんに会いに行こう。
    タチバナさんのお母さんは、車輪と人が押すためのハンドルがついたベッド式乗り物にタチバナさんを寝かせます。
    あとは人任せ、今日はどんな人に出会うかな。あ、きたきた。タチバナさんは通りかかった人に声をかけます。
    「すみませーん!」
    びっくりする人にタチバナさんは言います。
    「このベッドを押してくれませんかねえ」

    何も言わずに立ち去る人、「どんな病気も治るお祈りがあるのよ」って勧めてしてくる人」、「なんの役にもたっていないのに散歩なんて恥ずかしくないのか!」なんて怒る人、「いえいえあなたは十分人の役に立っています。だって私はあなたと話せてとても楽しいんだから」と言う人…。
    人任せの散歩はなかなか進みません。人が全く通らないこともあります。変なところに置き去りにされちゃうこともあります。それでもタチバナさんは人と出会うことをやめません。タチバナさんは色々な人と出会って色々なお話をします。やってもらいたいことははっきり言います。嬉しい出会いがあったらそう伝えます。嫌なことを言われたら嫌だなって顔もします。

    「ぼくは人と出会うために散歩に出るんだ。ぼくは人の手を借りなければ生きていけない。そんな人がいるって認めてくれたっていいじゃないか。」
    そんな生き方を認めないって人もいます。でも「人間は支え合って生きている。これは人間が編み出した人類の知恵なんですよ」って言う人もいます。

    その日は午後になってやっとお友達の上野さんの家に着きました。車椅子の上野さんは言います。
    「はっはー。通りかかった人を呼び止めベッドを押してもらって、きみは口で歩いているようなもんじゃないか。なあに、人の手を借りて生きることだって立派な自立だよ。」

    そろそろ家に帰らなければいけません。
    帰りはどんな人と会うのかな。


    P2、P3 引用

     人は
     ひとりで生きているのではありません
     まわりにいる
     おおぜいの人たちと つながって
     ささえあう輪の中で
     いきているのです。
     だれひとりとして 意味のない人は、いない。
     だれひとりとして 価値のない人は、いない。

     ひとりひとりが なにかの役割をになって
     人のささえあう輪になって
     人のささえあう輪の中に
     生きているのです。

  • 一人でなんでもできるようでも、誰かの助けが必要な時は必ずくる。助けられてばかりいるようでも、人知れず誰かの何かの役に立っている。全て物事は支え合い無しには進まない。当たり前でもわすれがちなことを教えてくれる一冊。

  • 光村国語4年上巻末本の世界を広げよう掲載図書
    タチバナさんは骨が発達しないような障害で起き上がれない。散歩をしようと通りに車付きベッドで母親に出してもらうとじっと待ちます。そう、散歩をお願いして、口で頼んで歩くのです。
    さすが丘修三って感心するのは、押してくれる人が良い人だけでなく、色んなタイプの悪い(面倒な)人が来ること。スゴく現実感。
    短い本なのに(大人なら20分かからない)、色々考えさせられ、感じさせられ、とても良かったです。

  • とても良い作品だと思いました。障がい者になる可能性は誰だってあります。生まれつきハンディを持っている人もいれば、年老いて目が見えなくなったり歩けなくなったりすることで障がいを持つこともあります。弱い立場の人も、肩身を狭くすることなく共に生きられる社会にしていきたいものです。

    作品から抜粋
    人は
    ひとりで生きているのではありません。
    まわりにいる
    おおぜいの人たちと つながって
    ささえあう輪の中で
    生きているのです。
    だれひとりとして 意味のない人は、いない。
    だれひとりとして 価値のない人は、いない。
    ひとりひとりが なにかの役割をになって
    人のささえあう輪の中に
    生きているのです。

    「自分ばかりがびんぼうくじをひいているような気持ちになってさ。ちっぽけになって…。さびしいねえ」

    「だって、人間はささえあって生きているんですもの。そこが他の生き物と違うところですよ」

    「ほかの生きものだったら、弱肉強食、強いものが勝ちですけど、人間はそういう生き方じゃない、みんなで助けあって生きる生き方を発明したんですもの。わたし、これは人類が考え出した一番すばらしい知恵だと思いますよ」

  • 助け合いと言うことを、教えていただいたような気がしました!

  • #口で歩く
    #丘修三
    #立花尚之介
    #小峰書店
    自分では歩くことのできないタチバナさんと町の人々とのお話。美化され過ぎていないリアルな印象。私だって突然タチバナさんに声かけられたら戸惑うと思う。踏み込んでほしくないこと、逆に引いてほしくないライン。答えはないけど考え続けて過ごしたい。

  • 子どもの頃からずっと寝たきりのタチバナさん。散歩には特製の車輪つきのベッドで。しかも道ゆく人に押してもらう。逆ヒッチハイク的な。タチバナさんの手助けをしているつもりがいつしか押す側の人がタチバナさんに話を聞いてもらったりして。障がい者も健常者も大人も子どもも、どんな人だって支えて支えられている。ひとりで生きている人なんていないから。ユーモアがあって飄々としているタチバナさんがよい。とてもおもしろかった。

  • ・私が、この作品を選んだ理由は1つです。ある病気で体を動かせない人が他の人とふれあいながら、友人の家へ行くというお話です。私はそういう人のことを考えたことがなかったので考えてみたいと思いました。

  • 人にも勧めたいなぁ。と思った。
    重度の障害を持ったタチバナさんが、自宅から友人の上野さん宅へ遊びに行くまでのお話。
    タチバナさんの飄々とした人となりが、いい意味で裏切られた。障害者を描いた作品は独特の重さと笑えない雰囲気があるという先入観があったけど、そうではなかった。心無い人の言葉に憤ったり、人を傷つけたのではと反省したり、上品な喋り方につられたり、タチバナさんの心の在りようは、健常者とと何ら変わらない。
    人は誰でも支え合って生きている。だから誰もが生きていることを肯定される存在なんだ。

  • ある天気の良い日の寝たきりの方の散歩。散歩と言っても移動出来るベッドに寝ていますので、散歩自体が人と関わりながら進んで行くのです。著者のあとがきも読んでほしい。読みやすいですが、小学校4年生〜

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著者プロフィール

【丘修三・作】  1941年熊本県生まれ。「ぼくのお姉さん」で児文協新人賞、坪田賞受賞。「少年の日々」で小学館文学賞受賞。

「2015年 『おばけのドロロン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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