車夫2 (Sunnyside Books)

著者 :
  • 小峰書店
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本棚登録 : 199
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784338287128

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  • 走はお客さんのことに深く立ち入らないし、自分のことも多くは語らない。両者の事情を知る読み手としては、もどかしさもあるのだが、そこがいいのだろう。踏み込むとしたら、それは覚悟をもって行うときだろう。
    最後のハッピーバースデー、無事出産したおかみさんを祝おうとする場面で終わる。その前までの母親との再会の話が重すぎて、気持ちが晴れなかった。
    今後、走はどうなっていくのだろう。


    「ーー頼んだ。あの声は……。」
    「あいつは笑ってた。笑ってオレにたすきをつないだ。信じてくれていたから。」
    走の走るフォーム
    (つなぐもの)

    「観覧車に乗ると、オレは無意識に地上で待ってくれている人を探してしまう。」(ストーカーはお断りします)

    「それでも、思いを伝えないよりはいい。いまできることは、それくらいなんだから。効率よくスマートに生きようなんて思わない。生きるということは、余計なことや、くだらないことや、面倒なことばかりで、ムダの連続だ。そのなかでオレたちはたぶん、みっともなくなにかにしがみつきながら生きているんだと思う。」
    (幸せのかっぱ)

    「あっ、えっと、後悔していることに気づいたら、そこからやり直すチャンスがあるってことじゃないかと思うんです」
    「琴枝の手のひらをすり抜けていく花びらは、私が拾いあげればいい。拾いあげて、その手のひらにのせる。」
    (願いごと)
    なんて嫌なオヤジなんだ。もうすぐ死んでしまうかもしれない妻を怒鳴るなんて。心配するあまりだったのだろうけれど。今までずっとそうしてきたから変わることはできないのかもしれない。でもそんな自分のことを気づいて良かった。花びらを拾えないことを怒るのではなく、自分が花びらを拾って差し出せばいいのだ。そんな簡単なことなのに、難しい。

    「でも、あんなふうに年をとって、だれかと笑っていられるってすごいと思うんです」
    「ふつうでいるって、いろんなことがあっても、ふつうでいつづけるって、すごいなって思うんです」
    (やっかいな人)
    車夫1の第一話に登場した中学生だった女の子が高校生になって再登場する。尾行した父と父の恋人は結婚することになっていた。
    大丈夫ということばの使い方は難しい。でも走くんの「大丈夫です」は安心できる。

    小峰書店
    https://www.komineshoten.co.jp/search/info.php?isbn=9784338287128

    文春文庫
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167914899

    中江有里
    https://books.bunshun.jp/articles/-/5466

  • 「靴ずれの」悠木乃亜、余命宣告を受けた奥さんと乗る成見信忠等心に響くストーリーがいっぱい。

著者プロフィール

神奈川県生まれ。『糸子の体重計』で日本児童文学者協会新人賞(2013年)、『空へ』で日本児童文芸家協会賞(2015年)、『羊の告解』でうつのみやこども賞(2019年)『朔と新』で野間児童文芸賞(2020年)、『きみひろくん』でひろすけ童話賞(2021年)、『あしたの幸福』で河合隼雄物語賞(2022年)、『つくしちゃんとおねえちゃん』で産経児童出版文化賞(2022年)を受賞。そのほか、『かあちゃん取扱説明書』『二日月』『チキン!』『カーネーション』『ぼくんちのねこのはなし』『よそんちの子』など、話題作を多数発表している。全国児童文学同人誌連絡会「季節風」同人。

「2022年 『バンピー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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