- Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
- / ISBN・EAN: 9784338287128
感想・レビュー・書評
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走はお客さんのことに深く立ち入らないし、自分のことも多くは語らない。両者の事情を知る読み手としては、もどかしさもあるのだが、そこがいいのだろう。踏み込むとしたら、それは覚悟をもって行うときだろう。
最後のハッピーバースデー、無事出産したおかみさんを祝おうとする場面で終わる。その前までの母親との再会の話が重すぎて、気持ちが晴れなかった。
今後、走はどうなっていくのだろう。
「ーー頼んだ。あの声は……。」
「あいつは笑ってた。笑ってオレにたすきをつないだ。信じてくれていたから。」
走の走るフォーム
(つなぐもの)
「観覧車に乗ると、オレは無意識に地上で待ってくれている人を探してしまう。」(ストーカーはお断りします)
「それでも、思いを伝えないよりはいい。いまできることは、それくらいなんだから。効率よくスマートに生きようなんて思わない。生きるということは、余計なことや、くだらないことや、面倒なことばかりで、ムダの連続だ。そのなかでオレたちはたぶん、みっともなくなにかにしがみつきながら生きているんだと思う。」
(幸せのかっぱ)
「あっ、えっと、後悔していることに気づいたら、そこからやり直すチャンスがあるってことじゃないかと思うんです」
「琴枝の手のひらをすり抜けていく花びらは、私が拾いあげればいい。拾いあげて、その手のひらにのせる。」
(願いごと)
なんて嫌なオヤジなんだ。もうすぐ死んでしまうかもしれない妻を怒鳴るなんて。心配するあまりだったのだろうけれど。今までずっとそうしてきたから変わることはできないのかもしれない。でもそんな自分のことを気づいて良かった。花びらを拾えないことを怒るのではなく、自分が花びらを拾って差し出せばいいのだ。そんな簡単なことなのに、難しい。
「でも、あんなふうに年をとって、だれかと笑っていられるってすごいと思うんです」
「ふつうでいるって、いろんなことがあっても、ふつうでいつづけるって、すごいなって思うんです」
(やっかいな人)
車夫1の第一話に登場した中学生だった女の子が高校生になって再登場する。尾行した父と父の恋人は結婚することになっていた。
大丈夫ということばの使い方は難しい。でも走くんの「大丈夫です」は安心できる。
小峰書店
https://www.komineshoten.co.jp/search/info.php?isbn=9784338287128
文春文庫
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167914899
中江有里
https://books.bunshun.jp/articles/-/5466詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「靴ずれの」悠木乃亜、余命宣告を受けた奥さんと乗る成見信忠等心に響くストーリーがいっぱい。