- Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
- / ISBN・EAN: 9784339077971
作品紹介・あらすじ
【書籍の特徴】
エアージャッキを使って,5t近い重量物の設置場所を変える作業をしたことがある。空気を抜いて重量物を床に落とすぞ,と重量物の周囲に取り付いている同僚達に声をかけた。了解という応答を一斉に得た。作業は終わった。しかし,重量物を落とす瞬間,片足が装置に引っかかってぬけなかったという報告を受けた。着座のタイミングがもう少し早ければ,同僚の足首はつぶれていた。重たいものを扱うので注意してください。この指示に反論する人はいない。即座に,わかりました,という返事がえられる。しかし,頭による理解と,体験に基づくそれは明確に異なる。たとえば,半田ごてを使ったやけどという経験をあったとき,数々の注意事項が身にしみて入ってくるものである。
しかし,あらゆる失敗を実地に経験することはできない。そこで,著者自身および指導の学生達がおかした失敗を疑似体験してもらうために本書を執筆した。大いに嗤って欲しい。読者諸兄が自家薬籠中のものとして,失敗を回避してくれることだけを願う。
【各章について】
1章では,なぜ失敗を赤裸々に語る必要があるかについて述べている。2章では,技術の世界の失敗とは無縁とも思われるボキャ貧でさえ,摩訶不思議な連鎖によって失敗を招き寄せるという実例を紹介する。3章では,遅刻,居眠りまでが回り回って事故に結びつく事例を紹介している。4章では,身近にあるプリンタ,半田ごてなどを壊す心理を分析している。結局のところ,ごつい機械であってもひたすら優しく扱うことを推奨している。5章では,半田付け,モータの巻線として使用するエナメル線の取り扱い,そしてアースなどの電気接続に関しておかしがちなトラブル事例を紹介している。6章では,発煙,感電,InとOutの誤認による装置取り扱いミスの事例を紹介している。
【著者からのメッセージ】
危険な薬品を扱うとき事前に安全講習会が開催される。もちろん,講習会に不参加よりも参加の方がこのましい。このような講習会に参加させたにもかかわらず事故をおかした,と立腹する人がいた。講習会では安全に関する知識を仕入れる。知識が無いよりはあった方がよい。しかし,安全の知識があっても失敗はおかしてしまうものなのである。失敗しないためには,現場での視点のあてかたが肝要であって,本書はこのような事例を満載に紹介している。
感想・レビュー・書評
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請求記号 504/W 35
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【電子ブックへのリンク先】
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キャノンで開発経験のある著者による、当時の自信の失敗。それに現在、学生たちを指導する際、学生が引き起こす、おいおい・・という失敗、破損、ヒヤリの数々を紹介。
実に面白い。特に、ボキャブラリーの貧しさにために、不十分だったり多義的な解釈を許してしまうインフォメーションで伝達がなされると、物事がきちんとはこばず、危険ですらありえる、ということがよくわかる。 -
職場にやってきたインターン生の指導教官の著書?ということで入手。主に学生の失敗談をまとめたものと捉えたが、これがつい今しがた自分がやってしまったことなどがふんだんに盛り込まれ、身につまされる内容。基本事項ばっかしなのだが、全然できていない・・・おいおい、というレベルの失態が数多く。
自分もこれくらいの失敗をしているということを認識したので、後輩にはぜひ伝えねばとなぜか強く思うところ(なかなか失敗談は聞けない)。畑村先生失敗学の一歩手前のところで気づきを与える本であった。