神様のすること

著者 :
  • 幻冬舎
3.54
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344017740

作品紹介・あらすじ

物語を書くことにしか情熱が持てない安寿子が、40歳間近で願ったことを、神様は100パーセント聞いてくれた。願いが叶うまでの、長い長い物語。

感想・レビュー・書評

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  • 両親の看取りの話を中心に、父母それぞれの生い立ち、
    夫婦関係、そして作者自身の子供の頃のエピソードを、
    語りかけるような、おかしみのある口調で綴られた超私小説。

    6年の闘病生活の間、何度も何度も死の淵まで行くものの、
    死にきれずに戻ってくるお母さん。
    看護に疲れ果て、「お母さん、いい加減にして」とうんざりし、
    二人の姉と共に「また復活するんじゃない?」
    と囁き合って笑う場面は、肉親ならではの真実味を感じた。
    義理の関係では、こうはいかないよね。
    ストレスの捌け口として、本音を漏らせる姉らがいた事もラッキーだなぁ。

    小さいときの火傷の跡がケロイドになり、
    心に重くのし掛かって積極的になれなかった子供時代。
    自分の側には付き添い天使がいて、いつも見守ってくれていると信じた少女時代。
    小説家になりたくて、その夢を後押ししてくれる「天の声」を求めて
    スピリチュアルというか、うさん臭い集会を渡り歩いたフリーライター時代。
    道に迷いながらも、どの時代もブレない自分を持っていた作者だからこそ、
    神様が小説家の夢を叶えて下さったんでしょうね。

    普通ならタブーと思われるようなことも、全て曝け出したこのお話は、
    同じ経験をしている(いた)人を励まし、ホッと楽にさせるものがある。
    かくいう私も、顔に傷持つ身。今はまったく気にならないですけどね。
    思春期真っ只中で悩んでる子に、信じられないだろうけど、
    悩みはすぐに消えちゃうよと教えてあげたい。
    いやぁ、すごく面白かった。心がじんわり暖かくなりました。

  • 著者はあけすけでコミカルな恋愛ものを得意としていて、それがまた面白いのですが、本作は少しだけこれまでと風合いが違います。

    私小説です。

    母親が亡くなるまでの、彼女との介護生活をつづります。

    平さんは本当に潔いんです。

    例えば母親をネタにすることの不謹慎は作者が冒頭で語り、でもこれでいいんだ! 私は作家だから! とどでんと開き直っている。この介護がいつまで続くのか、途方もなく逃げ出したくなる気持ち。いつ死ぬんだろう。残虐にも響くかもしれない事実や心の動きを恐れず、ありのままに描いているから強い。「死」がテーマに含まれていても、決して暗くない。きっと、作者が強く逞しい芯を持った人だから。

    私はどこか人によく思われたい、とはいかないまでも悪く思われたくない、という思いが強くて、小説であってもどこかいいこちゃんの文章を書くように計算してしまうところがあります。

    でも、それじゃあ上っ面の腑抜けたものにしかなりません。

    他人の目は関係ない、自分はこう思う、そしてそんな自分自身の行いは、良くも悪くも自分が一番よくわかっている。

    母親との確執、幼少期の思い出、特に夏休みの宿題で書いた作文のくだりは読み応えがありました。

    変な話かもしれませんが前回ご紹介したモブ・ノリオさんの「介護入門」は「入門」というだけあって、介護に関わる全ての人の見本になるような作品です。

    一方で、この平さんの「神様のすること」はがんばりすぎて疲れた人に読んでもらいたい。

    きっと心に溜まった澱がとれて、すっと気持ちが楽になると思います。

  • 小さい頃から小説家になりたかった著者が晴れて小説家になれたとき、神様はただで願いを叶えてはくれなかった。親を見送ることが条件のように付いてきた。介護の日々、看取りのその時まで赤裸々な感情を小説に書き綴る。介護、とりわけその期間が長くなると、綺麗な感情ばかりがあるばかりではない。病んでいる親に「死にそうな感じしない?」と直に聞く。気心知れた親子でさえはばかれるような会話をあらわにする。親子だから許されることかもしれないが、それは心の底に隠し持って人には見られたくない感情でさえある。それを書くのだからやはり、小説家だからこそなのであろう。決して、いやらしくなく重いことだけど重さを感じることなく、むしろ共感めいた気持ちにさえなった。ずうっと小説家になりたかった著者だからこそ書くことができる、そういった胸のすく思いを感じさせてくれた。さすが、小説家。

    私小説のようなエッセイのような文章だからすんなり著者の気持ちが書かれ、読むほうにもするっと入り込んでくるのかも。子どものころの思い出、記憶が回想される「傷跡の必要」が印象に残る。思い出はあくまでもこちらの勝手な、ともすると都合の良い記憶であって、真実とはまた違う。脚色された思い込みとかも重なって、相手の記憶ではないというところなんかなるほどと感心してしまった。金井くんのエピソードも切ない。思うことの半分も表すことができないってよくある。大人になった今でも後悔することなんてしょっちゅうである。

    暗い少女時代の素敵な思い出として、級友が神様はこの世に生命を送り出すとき、必ず、付添い天使を一人、つけてくれる。しかし、その天使は無力でただそばにいて、悲しいときは共に泣き、嬉しいときは共に笑うという、そんな付添い天使がいると信じた著者はかわいらしい。そんな天使がいたらどんなにか心強いだろうか。今からでも遅くはない。わたしにもそんな付添い天使がいるのだろうか。いると思ってもいいかな。

    P254
    終わりが近づいたとき、わたしが懐かしがるのは、戻りたがるのは、どのときの自分だろう。それは、最後の最後にわかること。神様は教えてくれない。ー神様のすることには、かなわない。そういうことなのだ。-

    なにげなく手にして借りた本、思いの外、よかった。肩の荷が軽くなるような、力を抜いてもいいんだなと思える本。

  • 2019.3.15 読了

    小説だと思ったら、エッセイだった。

    でも、この方の アケスケ?セキララ?な
    文体 結構 好きなので、楽しく読めました。

    と言っても、内容が 両親を看取られた話で、
    大変なのに かなり本音やなんかを
    絡められていて、
    勉強になったり、実際は そうなんだろうなぁ。。、と
    思ったり。



  • 四年前に義父を、つい先日義母を看取った。嫁としてなので感情的には淡々と病気である体を観察し、すこしずつ迫る死を迎えた。二人とも癌だったので必ず区切りがあるのがわかっていたし、筆者のような葛藤はなかった。実家の両親の今後の為に参考にしたい一冊でした。

  • 平さんのエッセイ(?)。両親の死・・・人の死にざまはその人の性格に依るってのが興味深かったです★
    自分の親族のときにも「なぜ?」と色々考えましたが、もしもその人なりのあの世へ行く前の闘いなのだとしたら・・・と思うと少し救われた気がします。誰もが経験する肉親の死・・・、そのことについて考えさせられるお話でした。

  • 小説だと思って読んでいましたが、これってエッセイだったんですね。子供の頃の事や、親の介護、最期を看取ったときのことなど赤裸々に書かれていてました。いずれ自分にもやってくるであろう問題だけに、いろいろと覚悟を問われているような気がしました。

  •  文庫裏のあらすじに「私小説」と書いてあったので、どんなかんじだろうと興味津々で読み始めたら、「小説」というより「エッセイ」だな。と。解説には「物語る」ように書かれているから「エッセイ」ではなく「物語」として受け止めたい。と書かれていたけど、私には「エッセイ」としか受け止められなかったのは自分の力不足でしょうか。。。

  • 心も体も病んでしまった母親に寄り添いつつ、起こったことを飲み込みながら、
    進んでいく著者の姿勢に胸を打たれた。
    神様はこの世にいないかもしれない。
    でも、ひょっとするといるかも知れない。
    信じるものは救われるというが、そのように生きていく中で自分の中に
    よすがとなるものがなければ、立っていられないような時、
    自分の心の中にある自分を支える何かを人は神というのかもしれない。
    この方の天使の解釈もすごく好きだし、納得がいくものだった。

  • H25/1/10

  • 特養に母がいて、医療現場で働く私にとってのこの本は特別かも。娘としてうなずけること、医療者として思うこと、いろいろあっておも~い本

  • 母親の介護エッセー

  • 介護した人は介護されずに死ねる

    母に言おう

    読みやすかった

  • 筆者が自分の母を介護し、看取るまでの回顧録。介護について、淡々と、あっけらかんと、記してある。けれどドラマチックで、ぐいぐい引き込まれた。私の母親の世代の人には身につまされる話だろうと思う。つい、両親の老後を思う。老後、というか、彼らがこれから老いていく最中のこと、というか。この筆者のように大らかに、それを私は受け入れられるだろうか、と。

  • 両親を看取るまでのお話。
    母親が亡くなるまでの様子などがリアルに綴られていて、ずしっとくる内容でしたが、母親の半生を振り返った思い出話があったり、文章全体がユーモラスな雰囲気で、暗い気持ちにならずに読めました。

    いずれ、自分にもそういうときが来るんだろうなあ、って考えさせられました。
    両親もだけど、おばあちゃん孝行をさせてもらえるうちにしたいな、って思った一冊でした。

  • 親の介護、ご自身のこと、両親を看取った時のこと、おくりびととなった自分の気持ちの整理の仕方など、決して楽しい話ではないのですがポジティブなイメージが浮かぶ良いエッセイでした。親との別れ、そろそろ心の準備を始めておかなければと思い当たる人は必読です。

  • 物語を書くことにしか情熱が持てない安寿子が、40歳間近で願ったことを、神様は100パーセント聞いてくれた。願いが叶うまでの、長い長い物語

  • 第3話の傷をめぐる話がすきだ
    傷がない人はない。みんな傷をかかえたりのりこえたりして生きている
    お父さんに比べてお母さんのなくなりかたがすごいのだが、みんなこうやって息を引き取るときは納得したように逝けるといい
    死を思う気持ちが少し軽く、明るくなった

  • このほっこりした表紙からは想像もできない めくるめく人生の重みが詰まっていた。親の介護、貧乏、いじめ ずっしりと心に響いた。

  • 親を看取ること…

  • プロの作家は、自分や家族の内面を、ここまで冷徹に、あけすけに描けるものかと感嘆。小説家になれたら他の欲望はもういいです、と神様への切実なお願いが叶っての46歳デビュー、何か自分を追い込むしかできない生き方には共感を持ちます。50歳近くても、未だお嬢さん感覚のどっかのエッセイストとは、全く気概が違います。

  •  看取りの時期はとても辛い。それなのにさらっと面白く書いてあるのでどんどん読んでしまう。お母さんのの人生で母になり、一家を切り回していた頃が黄金期であったというのはわかる。それなら子を持たず、独りを通したらどうなのかなぁ。ここでは詳しく触れなかったけれど、救急病院、老人病院、老健施設、総合病院ぐるぐる回ったあたりが知りたい。娘が三人いて、しかも一人は独身で同居で稼ぎがあるから出来た看病だと思う。とにかくお疲れ様。そしてありがとう。

  • 小説だと思って借りたけれどエッセイだったのね。平さんのお母さん、彼女の小説のどたばたと周りを巻き込む女性のモデルだったのかな。

  • 「83歳で死ぬ」と宣言した母親の看病を通して、人生観を見つめなおす平氏の笑いあり涙ありのエッセイ。傑作でした!

    実の母親に読ませたくなる。でも、どう受け取られるかしら。「あんた、あたしが死ぬ時の準備でもしてんの?」とか言いそう、うちの母上様は笑。でも、何事も心構えは大事だかんなぁ。こと、身内の死に対しては。

    扱ってるテーマがテーマだけに快刀乱麻!的な(なんだそれ)平節はおさえ気味なんだけど、通り一遍ではない、本当に経験してきたひとにしか語れない/型っても全然うそ臭くない人生観の数々に、なんだか励まされる思い。だからと言ってあたし自信の根強い死生観が180度変わった…とかはないけれども、平氏の歩んできた道はとても清清しい光に照らされているようで、そんな境地に立ってみたくなったりならなかったり。

    それにしてもあたしは両親に関して知らないことだらけだなあ。このままでは通夜の挨拶でウケ狙いで話すネタがないぞ笑。

  • 作家の平安寿子が、九年間にわたって続けた母親の介護について語ったエッセイだ。
    歯に衣着せないというか、いっそ露悪的なまでに老いた父母の欠点や欝陶しさを罵るのには驚いた。
    「いい人」に見せよう、という気持ちはさっぱりないらしい。
    実の両親をここまで言うのってなんか嫌だな、と思ったけれど、うつ病の老人介護をいつ終わるともわからないまま長年続ける生活の凄まじさは、建前を取り繕うことを許さなかったんだろうと思った。
    自分の人生の先にあるかもしれない、しかし未だ具体的には感じられない痛みと哀しみについて考えさせられた。

  • 最初は小説なのかと思ってどんどん読んでいたけど、エッセイだった!!!間違えたのってわたしだけ?!
    母親の介護から最後看取る時までをベースに、身内や著者の小さい頃に思いを馳せるエッセイ。とてもよかった。
    特に好きだったのが第2話「すれ違う二人」と第5話「心残りはひとつだけ」。
    ここまで他人の立ち位置に気づかっていけたなら人生は豊かになるだろうなぁと思うけれど、平さんの言うとおり、すべて終わってから気が付くのよね、人間てそうゆうもの。。

  • +++
    物語を書くことにしか情熱が持てない安寿子が、40歳間近で願ったことを、神様は100パーセント聞いてくれた。願いが叶うまでの、長い長い物語。
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    著者の介護体験の実際やときどきの想い、そのときになってみて初めてわかる事々、人それぞれの生き様、死に様。ある程度年齢を重ねている者にとっては、身につまされるようなあれこれが、著者独特の筆致で語られている。ある時は笑い飛ばすように、またある時は自虐的に。変にじめじめと湿っぽくないので、誰にでも受け容れられる一冊だと思うが、詰め込まれている内容は、並大抵ではないのだろうと思わせられもする。

  • 平安寿子の小説は、出ているのを見つけたら、とりあえず図書館へリクエストする。『神様のすること』も、しばらく待っていて、順番がまわってきた。

    タイラ小説は、様々な仕事を転々としてきたという平安寿子自身の「これまで」が書かれてるんかなーと思わせるところがチラりホラりとあるが、今回のこれは、まんま私小説?

    手元の広辞苑6版によれば私小説とは「小説の一体で、作者自身が自己の生活体験を叙しながら、その間の心境を披瀝してゆく作品」だとある。

    死にかけては戻ってくる母を数年にわたり看ていた間の、母と父と自分とを、子どもの頃までさかのぼったり、ときどきの心模様を追求してみたりして、ぐりぐり書いた話。

    ▼記憶は嘘つきだ。でも、大事なのはエッセンスだと、わたしは強弁する。この世とはつまるところ、わたしに見えている世界のことなのだ。わたしは、わたしが作った観念の檻から出られない。けれど、時折、檻の中に光が差し込む。風が吹き込む。
     そして、わたしに思い出させる。この世に生を受け、生きてきたからこそ出会えた人たちのことを。(p.251)

    こんなに疲れていなければいつものようにイッキ読みしたであろう小説だが、金土は1ページも読めず、数日かけて読みおえる。

  • 平安寿子さんが実際に両親を見送ったことや、自分自身の半生について包み隠さず書かれています。分厚い本ではないのに読みごたえたっぷりでした。人間へ視線は実の親に対しても深く冴え渡っているなとホントに感心します。自分の親をこんなに分析する勇気が持てないけれど、そこは平安寿子さん。読み手にきっちりと示してくれる潔さ、さすがです。とにかく読んでいて、生きていると起きること、出会うことへの心の持ちように納得がいくのです。深〜いところの力をもらったようで、自分にとってとてもありがたいと思わせられた一冊でした。この本を読んでさらに又、平安寿子さんのファンになりました。

  • 講演会で直に聞いた内容とほぼ重なる作品。
    年を取ると「ただ思い出すだけでなく、当時は気づかなかった周辺の人の気持ちを忖度できるようになっている」と聞いたとおり、過去の思い出を今の大人の眼で分析してあった。冒頭の万里子さんのあだ名については覚えがあり、なつかしかった。

    介護をとおしてご両親の来し方を思うと同時に、自分の感情もえぐり赤裸々に綴っている。直球の文章なので球が重く、ずしんと来る。

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