はぶらし

著者 :
  • 幻冬舎
3.36
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本棚登録 : 671
感想 : 128
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344022416

感想・レビュー・書評

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  • もしも、、、
    10年前に会ったきり、新しい携帯電話の番号も教えていないので2年くらいは音信不通になっている高校時代の友人から
    「夫から暴力を受けて離婚した。慰謝料も引越しで使いきってしまった。仕事もリストラされ、住む家も失った。頼れる親戚もいない。お願い。次の仕事が決まるまで子供と一緒に1週間だけ泊めて欲しい。」
    と頼まれたらどうしますか?

    私だったら、、、どうするだろ?
    1週間だけ。幼い子供も連れている。
    どうする?どうする?

    独身で自宅マンションと、別に仕事部屋ももっている脚本家の鈴音は、嫌々ながらも水絵と7歳の耕太を受け入れる。

    初日に水絵と耕太に買い置きの歯ブラシを2本渡す。次の日、「新しいの買ってきたの。だからこれ、どうもありがとう。」と水絵が手渡してきたのは、昨日使った歯ブラシの方だった。

    …怖っ!
    ん?どういう神経?

    鈴音もどんどん水絵に対して違和感や嫌悪感を抱いていていくが、なかなか仕事が決まらない水絵に対して「出ていって」と強く言えない。

    読んでいる間 ずっと嫌な気持ちにさせられる。
    自分の良心が試されているような感じ。
    また水絵が『罪悪感』を抱かせるのが上手い!
    水絵と耕太を「これ以上は助けられない」と思うこちら側が悪なのか?と思わせるのが上手い!

    本の紹介を読んだら これは心理サスペンスらしい。
    でもね、最後まで読み切ったとき わたしには水絵の存在がホラーにしか思えなかった。

    最初から最後までずーーーっと水絵にイライラさせられっぱなしだけど、それさえ我慢すれば1日でサクッと読み終えちゃいます。

    『手を差し伸べるのは善意か、偽善か』

  • はぶらし
    近藤史恵

    ✁┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    「はぶらし」、我が家は夫婦で同じの平気で使ってますけどね。お風呂に1本しかない私用の歯ブラシ、勝手に夫が使ってた。他人だと流石に嫌だけど、夫だとどうでも良くなる。夫婦揃ってそれをどうでも良いと思える価値観だから一緒にいられる。だから、価値観が違う他人が一緒に住むって大変だと思う。

    夫と離婚し、更にはリストラされ、住むところもない7歳の息子を持つシングルマザーの水絵。主人公の鈴音は押し切られるように、水絵の居候を1週間限定で許してしまう。

    居候期間を上手に延ばし、鈴音が見つけてくれた求人に良い顔をしなかったりするところは、一体この人はどうしたいんだろう?って不安になった。

    仕事やお金が余裕にあって独身の彼女なら...って鈴音を選んだって言うのは間違ってはいないんだろうな。でも、努力があって今の位置があるのだし、鈴音も彼氏と別れたり、仕事が上手くいかない時もあったりするのに簡単に「羨ましい」というのは違う。

    更に、こういう時に「結婚して子供がいたら制限される」を持ち出すのはずるい。結婚も子供も自分の選択してきたもののはず。「じゃあ、耕太がいなければいいの?」は水絵なら言いそうなセリフだなって思った。

    鈴音には、何上手いこと水絵に丸め込まれてるの!ってイライラ感が。水絵の息子の耕太がとてもいい子なので、彼がいるかどうかで鈴音の判断は違ってたのかも知れないけど。
    2人のそれぞれの気持ちも分かるなぁって思うところもあった。

    水絵の元夫が出てきて、息子の前で母親の悪口を言うのを、鈴音が否定していたのが印象的だった。水絵が辛い思いをしていたのが分かって味方をしたくなったんだよね。この人に耕太預けて大丈夫なのか?って思ったけど、ちゃんと好青年に成長してた。

    水絵が夕食の準備したり美容院行ったりしてた費用は、鈴音以外の人から盗んだものだったのかなぁ。

    ちなみに私は、美容院へ行く回数は半年で1回。前髪2週間に1回くらい自分で切って、ちゃんと整えられてると思ってる。

    2022/10/02 読了(図書館)

  • ☆3.5。
    えー、水絵が怖くて気持ち悪い。
    結果何事もおこらなくてよかった。耕太くんがちゃんとした子で良かった。

  • 人はどこまで他人に手を差し伸べることができるか。
    今回のこの作品は、頼られてしまった鈴音側で物語は語られているけれど、もしも、作者が頼る側の水絵側の立場で描いたとしたら、書き方次第で、それぞれの相手への心証は変わってくるのかもしれない。
    余裕のある者とない者では、見える世界は全く違うし、それぞれに互いに分からないような、譲れないものや言い分がある。
    人助けもどこで線引きするか…はとても難しい。

    家出した義母を引き取り、1年一緒に暮らしたことがある。
    当時、私は病気を抱えて退職、夫の会社もリーマンショックで、金銭的にも収入が四分の一に減り、困窮していた最悪なタイミングで、転がり込んできた義母。

    他に頼る人も行く所もないのに、「好きでここにいるんじゃない。こんなところ出て行きたい」と言い放つくせに、遊んでばかりで仕事も探さず出ていく気配はゼロ。
    援助しているこちらが色々我慢して節約してやりくりしているのに、「外食したい」だの「旅行に連れてけ」だの我が儘放題。
    それどころじゃないのに、気分転換にカーテンを変えたい、庭を変えたいと、どんどん家が義母の物や好みで侵食されていく腹立たしさ。

    歯ブラシに関しては、本当に呆れる事件があった。
    ちゃんと色分けして、義母の歯ブラシを買い与えたのに、それを使わず、私がずっと使っていた歯ブラシを義母も使っていたのだ。
    違和感を感じて問いただすと、「だってピンクの方が可愛いかったから」とか摩訶不思議な答え。

    一緒に暮らすと、自分の生活がどんどん侵食されていく。
    こちらも全てに妥協できないので、「こうして欲しい」と意見すると、「私はこんなに我慢しているのに?」と悲劇のヒロインぶって耳を貸さない。
    言い争いが絶えなくなり、結局義母を追い出す形に。

    人を頼ることは決して悪いことではない。
    もっと人に「助けて」とSOSを出せる社会であって欲しいし、助け合えるような社会であって欲しいと思う。
    でも、人にどう思われようと、自分の人生を守るのは、結局自分しかいないということ。

  • 水絵みたいな女、無理!
    弱さを売りにして、助けないあなたが悪いと、じわじわとほのめかす。
    気が利くようで、デリカシーなし。
    関われば、自分が馬鹿を見ると直感できる。
    最後に成長した耕太が訪ねてきてくれて、やっと安堵のため息をつくことができた。
    スカイエマさんの表紙の画が、じわっとした違和感をうまく表している。

    なんでこんな嫌な話を読むんだろう。好きな本を読んでいるほうが幸せなのに。でも現実で好きでないものに出会い、戸惑い説明のつかない感情がわきおこったときにこういった話を読んでみると、こういうことなの!って、理解者ができたみたいな気持ちになるから、読むのをやめることができないのね。

  • 何か嫌〜な感じが残りました。

  • 私にとって二作めの近藤史恵作品。相変わらずひたひたと漂う不快感と不気味さ。でもなぜかそれが癖になってページをめくる手を止められない。

    それほど仲が良かった訳でもない高校時代の友人が、突然息子を連れて転がり込んでくる。どこまで優しくするべきか、突き放していいのか悩み続ける主人公。
    この友人の不快さが、絶妙の「我慢できるくらいの不快さ」、しかも無理を言ったあとの引き方、間合いの取り方も絶妙すぎて怖い。
    色んな登場人物や細かい出来事が複合的に繋がって何かの事件や最後への伏線になればもっと怖かったかも。
    でもラストにはいい溜め息つけました。

  • 題名にもなっている「はぶらし」のエピソードが、居候を決め込む「友人」の人物像を象徴している。これは・・・・きつい。あらすじから想像はついたけれども、なかなか応える本だった。

  • うーん。なんかいやーな話だった。
    十年ぶりの連絡きた人はやっぱり家には入れないかなー。
    うんうん。

  • やはりこの作家は読みやすい。だらだらくどい描写がないからか。読み終わった後もスッキリで、後味がいい。作者の人柄か?

著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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