- Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344023376
作品紹介・あらすじ
ひとつの家族となるべく、東京郊外の一軒家に移り住んだ二組の親子。澄生と真澄の兄妹に創太が弟として加わり、さらにその後、千絵が生まれる。それは、幸せな人生作りの、完璧な再出発かと思われた。しかし、落雷とともに訪れた“ある死”をきっかけに、澄川家の姿は一変する。母がアルコール依存症となり、家族は散り散りに行き場を失うが―。突飛で、愉快で、愚かで、たまらなく温かい家族が語りだす。愛惜のモノローグ、傑作長篇小説。
感想・レビュー・書評
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家族の死をそれぞれの視点で描かれててひとつの現象でも置かれた状況や心情で受け取り方もかわし方も変わるよなぁと思いました(^_^;)
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大切な人を亡くしたあと、家族はどうなるのか。まだ生きていることにする人、思い出の中にまだ生きているその人の影響を受ける人、役割が変わってしまった人…どうやっても苦しい時間を、それでももがきながら生きていく人たちの話。「死ぬしかない」状態に追い込む気持ちが辛いけど、読後はエイミーマジックにより爽快。
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夫が浮気をしたために子ども2人を抱えてシングルマザーになった美加と、妻に先立たれ一人息子を抱えたシングルファーザーのマコは恋に落ち、子を成して再婚する。
めでたく家族となった澄川家は、しばらくは取って付けたような幸せな日々を過ごす。
しかし、ある日家族は息子を失ったことで崩壊していく。
丹念に手をかけて作られた幸せの薄ら寒さってなんだか覚えがあって、もしかしたら回りに違う形で努力で家族を保ってる人がいたのかもなあ。
家族って生まれて最初の呪いだと思う。その後の人生で友だちや、学校仕事、恋人を自分で選びとることはできても、親兄弟は選べない。だから最近親ガチャとか言うんだろうけど。
澄生って少しわたしの兄と似ていて、みんなから愛されて、才能もあって、そんな人の兄弟でいるのはけっこう大変。だから兄弟側の気持ちがなんだかリアルに分かったな。 -
初、山田詠美。
始めの一章は、創太に対する母の態度が辛すぎて、なかなか読み進められなかった。
一章毎に、家族の中で語り手が変わっていく。
第一章は、母の実の娘の真澄。
第二章は父の連れ子、創太。
第三章は父母の娘である千絵。
母は美しく苦労知らずに大人になった人のようだ。
よくできた息子だった澄生を亡くしてアルコールに溺れていった母を、冷静で厳しく見つめる真澄の語りは、つらかった。
二章以降はすらすら読めた。
特に後半は一気に読んでしまった。おもしろかった!
お父さんマコパパの母への愛が一貫して冷めなかったのが、澄川家が家族として維持できていた要因だと思う。 -
兄の澄生は再婚同士の澄川家の長男で、誰からも愛されていたが、雷に打たれて急逝してしまう。その日から、母親はお酒で自分を癒やすようになり、アルコール依存症になってしまい、救急車で病院に運ばれる。立ち直れない母親と、残された家族。妹の真澄、義父の連れ子の創太、再婚した父母の間に生まれた千絵。それぞれの立場から、澄川家の再生を描く。
山田詠美は「ベッドタイムアイズ」のようなセクシーな作品もあるけれど「放課後の音符」のような若い子の気持ちを上手く描いた作品が好きだ。この作品は、それらと同じ空気感があって良かった。澄川家の再出発を祝いたい。 -
有名作家なのに、本棚を見直しても1冊も読んだことがなかったな。なんだか、女性向け小説家ということで気が向かなかったのだろうな、今回はブクログかなにかの紹介文を読み手に取る。
息子を亡くした母がアル中になり、子供らが支える話。父はいるが忙しく、残された3人の子供の視点から話は進められ子供もそれぞれ成長していく。
家庭の空気を作るのは母だなと改めて思う。大変な環境下でも育つ子供、同じ兄弟でも違う受け止め方、でもやはりそれぞれの心に落す陰。ラストもあまりピンとこなかったが、希望かあきらめか。
わからなくはないが、やはり女性向けの小説なのだろうね。作者の意図をうまく受け止めきれない感。 -
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中学生の息子が不意の事故で死に、アル中になっていく母親を中心に、しあわせな生き方とは何かを問うて行く家族のはなし。
ステップファミリーです。
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山田詠美さんらしい、結末。
最後の2行、快哉をあげたくなりました。
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ある程度の毒親に育てられたひとだったら、こどもたちの誰にも、感情移入しちゃうと思います。
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登場人物それぞれの恋愛のエッセンスの描き方含めて、詠美さんが描きたかったであろうメッセージを強く感じました。
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【本文より】
早めに手を打つべきだったことって、ずい分と後になってから解るものじゃない?
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自分の内に留めておいた深刻な問題が、どんどん心の中で膨れ上がって行って、どうにも場違いな瞬間に噴き出してしまうことって、あるよ。 -
最後は「そう来たか!」
これがなければただの「なんかちょっといい話」で終わったと思う。