廉恥

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344025691

作品紹介・あらすじ

警視庁強行犯係・樋口顕のもとに殺人事件発生の一報が入った。被害者は、キャバクラ嬢の南田麻里。麻里は、警察にストーカー被害の相談をしていた。ストーカーによる犯行だとしたら、マスコミの追及は避けられない。浮き足立つ捜査本部は、被疑者の身柄確保に奔走する。そんな中、捜査の最前線に立つ樋口に入った情報-公立中学や高校に送られた脅迫メールの発信源リストの中に、樋口の娘・照美の名前があったという。警察官の自宅に強制捜査が入れば、マスコミの餌食になることは確実で、処分も免れない。樋口は更なる窮地に立たされた-。組織と家庭の間で揺れ動く刑事は、その時何を思うのか。

感想・レビュー・書評

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  • 世田谷署に捜査本部が出来た殺人事件は、
    殺されたキャバクラ勤めの南田麻里が、
    ストーカーに、痴漢に遇い、そのうえ殺されました。

    警視庁捜査一課殺人犯捜査第三係、通称「樋口班」係長・樋口顕の活躍の物語です。

    警視庁強行犯第3係・樋口顕係長は、世田谷署にストーカーの相談をしていた麻里が、殺されたことで、警察への非難が及ぶ事を心配しつつ、通常の地道な捜査でなくストーカー犯を探す事に集中して行きました。
    1人目のストーカー犯が容疑者から外れると、2人目のストーカー犯を追い求め、次には、現在第1審で有罪の判決を受け上告中の痴漢犯・楢崎公平をと捜査して行きますが、全て容疑者から外れます。

    その捜査の過程で、警視庁刑事局刑事企画課の刑事指導官・小泉蘭子の活躍で麻里の性格が解って来ると、麻里に対して怒りが湧いて来ました。麻里は、ストーカーや痴漢に遇うのをさも誇っているような、そして、気にくわない人間は警察に告げて人生を潰して楽しんでいるような……。
    指導官・小泉蘭子の意見を樋口係長が、聞き捜査方針を修正して行き……犯人が……出頭してきます。

    【読後】
    樋口係長は、競争の激しい警官としては異色です。常に一歩引き、人の意見を聞きと謙虚に見えます。周りから信頼され、新しく登場したキャリアの小泉蘭子にも信頼されと……。しかし本人は、間違って警察官になったかなと思いつつ……。家族も大切にしています。
    「隠蔽捜査」の竜崎伸也と違った、キャラクターがいい味を出している樋口顕が楽しみでなりません。
    小泉蘭子は、今後も出て来るのか楽しみです。

    なお、警視庁強行犯係・樋口顕シリーズの1作目から3作目までは、字が小さくて読めません、4作目(廉恥)から読んでいます。
    今野敏さんの本は、「隠蔽捜査」以外に字の大きさから読む本がなく、残念に思っていましたが、警視庁強行犯係・樋口顕シリーズの最新作の6作目(焦眉)を書店で見て、この字の大きさなら読めると喜んでバックナンバーを調べたら第4、5作目が読める字の大きさでした。嬉しいです。

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    【豆知識】
    「廉恥(れんち)」とは、心が清らかで、恥を知る心が強いこと。「破廉恥」
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    【記録】
    警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ
    《単行本》
    「リオ」1996.07発行、「 朱夏」1998.04発行、「ビート」2000.10発行は、字が小さくて読めません。
    《文庫本》
    「リオ」2007.07 発行、「 朱夏」2007.10発行、「ビート」2008.05発行、「廉恥」2016.08 発行は、字が小さくて読めません。
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    廉恥 ー 警視庁強行犯係・樋口顕シリーズの4作目
    2016.11発行。字の大きさは…小。2020.10.06読了。★★★☆☆
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    2022.08.17修正

  • 不器用で慎重派の樋口係長はもちろん、彼を取り巻く登場人物たちがそれぞれ魅力的でした。田端課長の切れ味も見事ですね。

  • <悟>
    今敏先生の作品は しばしば家庭のシーンから始まる。警察小説なのだからまずは事件現場から始まったりすると それらしいのだが,今敏先生の場合は家での妻との会話から始まったりする。が,違和感は無い。なんなら かの『隠蔽捜査』シリーズもしばしば竜崎部長の家庭的話題が物語の一部分を占めてしまう様な展開もあった。そこがまた面白いし読者の心を上手くつかむ。親近感の沸く警察幹部って感じか。読者諸兄姉の皆さま方がどうだかは分からんが。

    さて本書固有の話題へ。本題名の「廉恥」。僕はその意味を全く知らなかった。なのでググった。「廉恥」とは恥を知ること を云うらしい。読み れんち 。するとすぐに思い浮かぶ言葉がある。「ハレンチ」だ。恥を知らない事を云うらしい。漢字ではもちろん「破廉恥」 。目からうろこだった。でもこういう事例は結構多いのではなかろうか。

    沢山本を読めばこういう長い人生の間で知らなかった事が少し分かってきたりする。まあ良い事だ。残念なのは歳も60をかなり過ぎてしまうと短期間で「廉恥」は忘れてしまう事。まぁ でもそれも悪くない。いいも悪いも 忘れると云う事は知ってたことすら忘れるのだから 何も起こらなかったのと同じ事で日常は変わりなく進むのだから。

  • 警視庁強行犯係・樋口顕
    『恥ずかしい』ことはしない
    決して理念や行動規範のようなものではなくただただそういう人なんだと思う
    本質というか
    しかも本人は全然出来ていないと本心で思っているとても魅力的なキャラだ
    そんな人になりたい

  • 日本の警察小説に登場する刑事で、これほど刑事らしくない刑事はいないのでは。
    いつも家族のことを思い、刑事の矜持との間で揺れ動き、自分は警察官には向いていないのでは、と思い悩む。
    刑事の資質ともいうべき、他人を疑うこと、それすらも嫌いだという。
    本人の思惑にもかかわらず、上司、仲間からは、全幅の信頼を得ている。
    「隠蔽捜査」の署長竜崎伸也とともに、まことに愛すべき警視庁強行犯係・樋口顕。
    この作品では、新たに魅力的なキャラクターが登場した。警察庁刑事局刑事企画課・小泉蘭子。今後、このシリーズで、樋口刑事とともに活躍するのではないかとの、予感がする。期待したい。

  • 仕事帰りの地下鉄で読み始めて、帰宅して1時間もせずに読了。
    こんな勢いで本を一気読みしたのは久し振り。

    樋口顕シリーズは初めてじゃない筈なのに
    内容やらキャラ造形の記憶がないのは何故だ(;´・ω・)
    と思って調べてみたらブクログの本棚に入ってなかった。
    …ということは読んだのは2010年以前だな。覚えてないのも無理ないか。
    この樋口さん、今野作品の主人公たちのいいとこ取りというか
    いろいろと共通項が多いな、という印象。
    安積ハンチョウに通じる自己評価が微妙に低いところ、
    竜崎さんの持つ生真面目さ、頑なさ。
    このふたつが特に際立っているものの
    全シリーズ(特に部下を持った立場)の主人公たちに共通するのが
    部下だったり他部署の人間の意見に耳を傾けようとする姿勢なんだということが
    樋口さんを見ていて改めて感じたことだった。
    警察庁キャリアの小泉さんに意見を求めるシーンや
    参考人を聴取するときの言葉の選び方や話の聞き方は
    こういう警察官がホントに居たらいいなと思わされた。

    最初はストーカー殺人と思われていたのが
    被害者の周りを調べるうちにひっくり返る。
    被害者、被疑者、捜査する人、報道する人、
    それぞれの立場で見方が変わるということ、
    更に言うと事件解決のプロである警察官でも
    目が曇ってしまうこともあるということ。
    その辺りが目から鱗が落ちたような心持ちだった。
    娘さんとの遣り取り(この辺はちょっと竜崎さんぽい)は蛇足じゃないのかと思っていたが
    のちのちちゃんとヒントになってくる辺りは流石今野氏だなと。

    読み終えた印象では、キャラ造形やら話運びやらが
    今野作品の王道といえる作品なのではないかと思った。
    ハンチョウでも隠蔽捜査でもSTでも
    どのシリーズが好きな人でもにやりとできるんじゃないか
    という気がする。

  • 2021年12月9日
    同じパターンと思うも、好きなんだなぁ
    階級や男社会や管轄やいろんなしがらみの中で忙しい毎日を過ごす警察官。
    眠る時間もわずかだ。
    そういう人たちに国民、私たちは守られているんだ。
    地道な捜査、推理が外れたときの虚無感、つらいことばかりだが、やりきる達成感は樋口警官と共に味わうことができた。

  • 約10年ぶりの樋口 顕シリーズ
    『朱夏』の最後のところが非常に良かったこともあり、久々に本を手に取った。
    主人公の性格が刑事らしくないことに対して、逆に好感が持てる一方印象が薄いこともあり、主人公以外の登場人物を思い出せなかった。
    今回の話は、途中で犯人が分かってしまったのは残念だが、『隠蔽捜査』シリーズ同様、読み易く今後も読み続けたいと思う。

  • 今野敏氏の作品では初めて読んだシリーズとなる。「警視庁強行犯係・樋口顕」。超人気警察小説シリーズらしい。警視庁捜査一課第三係の係長樋口顕が主人公だ。がしかし、彼の部下は一切個人名では登場しない。彼の上司の天童管理官と捜査一課長が主なシリーズ上のメインとなりそうだ。シリーズ上の話は。今回は「ストーカー」がキーとなっており、その専門家として「警察庁刑事局刑事企画課」のキャリア小泉蘭子刑事指導官が登場する。二人で、事件を追う形が主となっている。なかなか面白い。と思う。

  • 待望の樋口シリーズ。間が空きすぎて、前作までの良さが分からなくなってしまった。
    文章も竜崎シリーズと似ていて、久しぶりの感動はなかった。

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著者プロフィール

1955年北海道生まれ。上智大学在学中の78年に『怪物が街にやってくる』で問題小説新人賞を受賞。2006年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を、08年『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。

「2023年 『脈動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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