- Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344033894
感想・レビュー・書評
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少女が自殺した。
そのことについて同級生6人(と本人)が回想し、なぜ死んだのかを考える話。
いじめがあったと考える子、落ちる瞬間を動画に収めて悦に浸る子、本意を知って行動する子と、あえて行動しない子。
それぞれの視点は、それぞれちょっとずつ歪んでいて、だけどまるでパズルのようにきれいに真実にはまっていく。
彼女の「計画」は成功するのか。
自殺は復讐にはならない。死んでも、いずれ一切なかったかのように周りは日々を過ごす。
「世界は、生きている人のためにあるべきだからだ。」
ミステリーかと思いきや、最後はちょっとホラーだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
高校の屋上から川崎朱音が飛び降りた。幼馴染の純佳の目の前で。飛び降りた瞬間からは動画でネットに拡散され様々な人の目に。彼女が飛び降りた理由は?苛め?それとも?クラスメイトや仲の悪かった人物、友人の友人や恋人、そして純佳の視点で朱音を取り巻く状況が語られ、飛び降りるまでの経緯が見えてくる。ある人物が語る真実が次の人物では解釈が変わっていき、人は他人にはそこまでは興味がない事、だけど周りの視線を気にして足掻いてしまう高校という狭い世界の中で淀む閉塞感がリアルに響いてくる。それぞれの立場からの真実が語られた後、最後の朱音の章で痛感する「世界は君の思い通りにはならない」が鳥肌。ラストページのタイトルに添えられた手書きの文字が全てか。上手い。
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#読了 #その日朱音は空を飛んだ #武田綾乃
学校の屋上から飛び降りた朱音。彼女の自殺の原因は―そもそも本当に自殺だったのか…
学校という閉鎖空間。パーソナルスペースが近い中で、友情や愛情や憧れや嫉妬。色んな感情を粘土のように捏ねて固めた感じ。朱音は一周回ってピュアなのかも… -
読み終わるまで女子高カヌー部の話書いた人だって気が付かないで読みました。まさかあの爽やかの権化のようなお方が、こんなダークサイド学園ミステリーを書くとは。
ある日屋上から投身自殺を遂げた「朱音」を取り巻く生徒たち一人一人を主人公にした、章立てのミステリーになっております。
第一章から投身自殺をたまたま撮影した男子生徒が、SNSに身動画を投稿する辺りからうんざりした気持ちになりました。ああ、また屑どもが跋扈する学園ものか・・・と。
しかし、読み進めていくと先の読めない上に、一人一人のエピソードに痛みとドス黒さがあり、先に進めば進むほど止められない止まらない状態になります。
これは全く情報入れずに読んだ方が楽しい本なので詳しい事は書きませんが、最終的に近本の主人公は誰なのかな?と考えて読むと面白いかもしれません。
重大な鍵を握る少女の存在がこの話の面白さを一段上に引き上げていると思います。
ミスリードっぽい所もありますが、そこはひねくれ尽くしたミステリーミスリード界隈としたら、全くかわいいものです。ちなみにミスリード嫌い派なんで逆に好感持ったくらいです。
個人的に超おススメ。 -
一応は、朱音という1人の少女の自殺理由を明かすストーリーなのですが、ラストまで読めば、「この物語に探偵はいらない」の意味がわかります。
一つ一つのパズルのピースが絶妙にズレあうストーリー展開がすごかった。スクール版「藪の中」とでも言おうか。
印象が何度も何度も塗り替えられてのラストシーンは圧巻です。
1人の女子高生の死をきっかけに、それぞれの登場人物たちの心が明かされていくのですが、読むほどに息がつまるような気がします。
途中、何度もミスリードがあり、最後まで読みきってあれはそういう意味かと理解できる。
叙述トリック的な手法。
結局、世界は自分がどう見るかということか、というところ。朱音のキャラクターがラスト二編で理解できる作りなのも、キャラクター性というのか、周りとの関係性を感じさせる。
解き明かしていい気持ちのする謎ではないけれど、その気持ち悪さは、ラストまでで爽快感に変わるかもしれない。後味の悪さの痛快感。
夏川さんのセリフ、「世界は生きている人のためにある」これがある意味でこの物語のテーマなのかもしれない。この読後感、独特です。
誰も朱音を理解してなかったんだなぁと思うと、いたたまれなくもなるのですが…。
この年頃の女の子の、身勝手さ、人への依存、自分でいっぱいいっぱいなところ、とても繊細に描いていると思います。 -
最後の純佳と朱音の話に体力を使った、、、
青春ならではのスクールカースト、生者と死者の摂理。この物語には自分を中心に世界が回っていると考える人間やそれを傍観者の如く見つめる人間など色んな歪んだ人物が出てくる。そんな誰が上で誰が下とか決めつけられる「クラス」という箱庭を武田先生は見事に描ききっていた。
響けユーフォニアムみたいな爽やかな作品を描いた人と同じ著者とは思えないイガイガした物語。スクールカーストや生死の話題は難しいからこそ心に来るものがある。武田先生、本当に青春を描くのがうまいな。 -
高野澄佳が屋上にたどり着いた時、目の前で川崎朱音の体は宙を舞った。朱音はなぜ飛び降りたのか。自殺だったのか、それとも…。学校はクラスメイトたちにアンケートを書かせ、事件の真相を明らかにしようとする。
章によって語り手が変わり、それぞれの人物が本当の朱音について明かしていく中で、読み手だけがその真相に気づくことになる構造。スクールカーストや、女同士の嫉妬、そしておそらくはパーソナリティ障害を抱えているであろう朱音の心情もどれもよく描かれていて、ぐいぐい引き込まれた。最後のダークさも好み。おもしろかった! -
最後、ゾクっとした。学校という世界の中で、人によってこんなにも見方が変わるのかぁと思った。読み進めるごとに朱音の印象が変わっておもしろかった。
個人的には莉苑の性格、考え方は好きだな。他の子たちと明らかに違う感じ。後味は悪い(笑)。
ラストの「だから何?」は誰の言葉なんだろう。