育休刑事

著者 :
  • 幻冬舎
3.59
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本棚登録 : 758
感想 : 113
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344034655

作品紹介・あらすじ

Twitterで話題になった「本格ミステリと育児の理想的な融合」の一作!

県警本部捜査一課・秋月春風(あきづきはると)巡査部長。生後三ヶ月になる可愛い息子・蓮(れん)くんのため、刑事としては初めての“育休"に挑戦中——。

母性神話、育児放棄、DV、親権争い、乳幼児突然死症候群……現代社会の育児における様々な歪みや問題点を、軽やかかつ徹底的にミステリとして描ききった著者渾身の代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 初めて読む似鳥鶏さん。
    ブク友のakikobbさんのレビューから知った本。(ブク友さんは電子書籍)
    まず表紙の絵が面白い。事件現場に若いパパと赤ちゃん、育児グッズに拳銃。(文庫本の表紙はまた違う)
    そして一昔前の警察小説ではまず出てこない“育休中の刑事”という題材に興味を持った。

    作者が言うように、本書は「警察小説で本格ミステリであると同時に、“男性の育児”のリアルを伝える類似体験本」である。読む人によって応援歌に、参考書に、思い出に、ガイドブックになればとのことで、色んな楽しい要素が詰まっている。

    内容は、なぜか毎回事件現場に遭遇してしまう、育休中のパパ刑事と赤ちゃんの蓮くんの日常生活と事件を追う話。赤ちゃんとはいえ、なかなかの活躍ぶり。赤ちゃん連れだと容疑者が口を割る傾向にあったり、赤ちゃんの行動から犯人に気づいたりと。
    蓮くんの「あえええええええ」のセリフが多く、赤ちゃんってこんな泣き方するっけ?とおかしくなる。またオムツ替え技術、ベビーカーでの電車乗降の苦労などもリアルで育児日記を読んでいるかのよう。だけどミステリー小説。
    また男性に対する差別問題にも触れており、コミカルな中にも考えさせられる社会問題も盛り込んでいると感じた。
    3話目から雰囲気が変わり面白い。やれやれ事件解決かと思いきや、え!?そういうことなのね!とびっくりした。このようなトリックは好きだ。あと主人公のお姉さんのキャラクターが好き。

    また特に面白いのが、注釈が設けられ、育児用語、警察用語、ほか色々面白おかしく説明があること。
    中でもびっくりしたのは、本文に乙一著「小生物語」の一文が引用されていたこと。もちろん注釈にもしっかり「小生物語」とはなんぞやと説明あり。しばらく乙一小説はお休みするつもりがこんな所で出会ってしまうとは…恐るべし乙一^^;
    似鳥鶏さんもファンなのか?作者あとがきの文は、乙一先生を参考にしているとのこと←ネット調べ

    追記
    2023年4月18日〜ドラマ放映(NHK)

    • akikobbさん
      なおなおさん、読まれたのですね♪

      そうそう、ドラマ化されるんですよね。知らずに読んでいたのでなんだかちょっとラッキーな気分です笑

      初っ端...
      なおなおさん、読まれたのですね♪

      そうそう、ドラマ化されるんですよね。知らずに読んでいたのでなんだかちょっとラッキーな気分です笑

      初っ端から畳み掛けるように付けられた注が私も面白かったです。そんな面白さや育児あるあるだけでなく、ジェンダーや働き方のことなど問題提起もあって、読み応えありましたね!
      2023/03/11
    • なおなおさん
      おはようございます(^^)

      ほん3さん、素敵なパパ刑事ですよね。
      そして突然の乙一登場には嬉しい!?驚きで、もう一度「小生物語」を読みたく...
      おはようございます(^^)

      ほん3さん、素敵なパパ刑事ですよね。
      そして突然の乙一登場には嬉しい!?驚きで、もう一度「小生物語」を読みたくなりました。乙一さんはこんなの読むなと言っていたけれど(笑)、似鳥さんも読んでるじゃん?しかも引用してるし…って思いました^^;側注の文もなんとなく乙一ぽさを感じました。

      あゆみりんさん、面白かったですよ。
      似鳥さんの他の本も読みたいなと思っていたので、ご紹介嬉しいです。ありがとうございます。
      あゆみりんさんからの課題図書「夏休みの空欄探し」、メモしました!タイトルにも惹かれます。面白そう!
      2023/03/11
    • なおなおさん
      akikobbさん、読みました!面白かったです。
      警察小説でもあり育児書でもあり…そして社会問題提起もされていて、書き方が上手いなと思いまし...
      akikobbさん、読みました!面白かったです。
      警察小説でもあり育児書でもあり…そして社会問題提起もされていて、書き方が上手いなと思いました。考えてみればこのような小説は初めてです。

      ドラマ化したらいいなと、例によって妄想キャスティングしようとしたところ、本当にドラマ化するようですね。良いタイミングで読みラッキーです。
      キャストはパパ刑事役は知らない俳優さんですが、お姉さん役(まえあつさん)、妻役(きいさん)でイメージに合います。
      ちなみにお姉さん役は満島ひかりさんがいいなーと勝手に考えておりました。考え出すと止まらなくなりますね…我々は^^;
      ありがとうございました。
      2023/03/11
  • 県警捜査一課の男性刑事が育休を取ったけど、事件からは逃れられなくてという設定だろうと思ったら、その通りだったが、赤ちゃんの行動が3つの事件を解決するきっかけになるというのを上手に組み込んでいる。その行動があるあるということばかりなので面白い。育休中の自分の息子の世話の様子が微に入り細に入り描かれていて、私自身の子育てを思い出した。ちゃんと妻を手伝って、風呂にも入れたし、おしめも替えたし、散歩もさせたからね。夜、寝かしつけるのも大変だった。子育てした者なら、うんうんと頷くこと必定の作品。主人公の姉も面白いし、最後に驚きも待っている。

  • 育児中のことが、あれこれ書かれてて
    共感できた。
    奥さんが職場復帰して旦那さんが育休とった理由が最後に分かりビックリ!!

    旦那さん、子育てにすごい理解しててすごいわぁ。

  • 捜査一課所属のまま、育休中の秋月春風巡査部長。
    ところが係長の無茶ぶりで、捜査の手伝いをすることになり……。

    たのしかった。

    タイトルにつけるだけあって、育児のリアリティが半端ない。
    経験者にしか語れないレベルの詳細さで、「あるある!」とうなずくことばかり。

    脚注という形で入るツッコミや小ネタにも、ユーモアたっぷり。
    「あとがき」を読んでいると、しゃれっ気・茶目っ気のある作家さんのよう。

    蓮くんの愛らしさも格別で、ほのぼの。

    ミステリ的には、どれも推測がつきやすく、意外性にはやや欠ける。

  • 警視庁捜査一課の刑事が、同じく警察官である妻の産休明けから育休を取る。まあまずありえない設定だし、オマケに、その育休中に事件に巻き込まれて、赤ん坊を抱っこしつつ捜査に加わっちゃう。似鳥鶏さんじゃなかったら読まなかったと思う。幻冬舎だしさ。

    しかしこれがもうすごーく良かったのだ!あとがきによると、似鳥さん、少し前に子どもさんが生まれたそうな。なるほどねえ、このリアルさは経験者にしか書けないだろうなあ。あとがきの大部分は、いつも通りふざけてるんだけど、最後にこうある。
    「本作は警察小説で本格ミステリであると同時に、『男性の育児』のリアルを伝える疑似体験本でもあります。今まさに育児中の方には応援歌に、これから子どもができるかもしれない方にはよき参考書に、育児を終えられた方にはあの頃を思い出すきっかけに、それ以外の方には未知の世界をご紹介するガイドブックになればと思います。
    しかしそれ以上に、単に小説として楽しく読んでいただけたなら、著者としてこれ以上の幸福はございません」
    その通り、私は心から楽しみました。

    なにをどうやっても泣きやまない赤ちゃん。万策尽きて一緒に泣きたくなった人は多かろう。秋月も「おっぱい」という最終兵器を持たない身での子育てに苦闘しつつ、それでもこう言うのだ。

    「育児に関して、男でよかったと思うことは山ほどある。(以下、物理的な利点が挙げられるが省略)何よりゴツい男だと、外で赤ちゃんが泣きやまなかったり電車内でベビーカーが人の足にあたっても舌打ちされない。子連れに対してうるさいだの場所を取るなだのとナメた暴言を吐く屑は『相手が女だから』やっているのだ」
    いやー、ほんとそうだよね!これってあんまり言われないけど、真実だと思うよ。反撃してこないだろうという相手だけを攻撃する奴ってサイテーだ。

    日常の育児で何がつらいって、夜寝てくれず泣き続けるのが続くことだ。秋月もある夜、とうとう「何が不満なんだよ!」と怒鳴り、赤ん坊の蓮君の背中を強くつかんで持ち上げてしまう。
    「…俺は今何をしようとしていたのか」「ごまかすことはできない。強く掴んで、たぶん床にたたきつけようとしていた」「子どもができるまでは、テレビで児童虐待のニュースを見るたび、『自分の子どもに対して、どうしてこんなことができるんだろう』と腹を立てていた」「『犯人』は理解不能な、どうしようもない奴なのだろうと思っていた」「今、俺がそうなるところだった。こんなにも簡単に。それはぞっとする発見だった。実際に育児をしてみれば、虐待の可能性はどこにでも、誰にでも存在すると分かる。ちょっとした油断で誰でも交通事故の加害者になったり、ネットに流れるデマの拡散に加担してしまうように」
    もちろん、現実にはもっとずっと悪質な、最低の虐待もあるわけだけど、そういうのと、ワンオペ育児でどうしていいかわからないままに追い詰められてしまった挙げ句、つい子どもを強く揺すってしまった、というような場合とを同じ「虐待」でくくっていいのかと秋月は思う。後者に必要なのは親への支援ではないかと。
    そう思う間にも蓮君は泣いている。ご近所はどう思っていることやら。「変わったお家」と思われているので「虐待じゃないか」と通報されたりして。「警察官が虐待」頭には新聞の見出しまで浮かぶ。このあたり、本当にリアルで身につまされる。

    とまあ、男性育休ものとしても画期的に面白いのだが、似鳥鶏さんなのだからして、当然それだけのわけがない。事件の解決に蓮君が絡んでくるところなんか実にお見事だし、最後の一篇「お外に出たらご挨拶」には、うわ!やられた!と声が出た。もうこれは予備知識なしで読むのが絶対のおすすめ。ハラハラしたあとにスカッとしてやられて、嬉しく降参しました。

  •  息子が誕生したため、1年間の育休を取得した男性刑事の奮闘を描いたライトミステリー。
     2019年発行の作品。この4月18日からは NHK でドラマ放映されることで話題作に。全3話。
             ◇
     秋月春風はとある県警の若手刑事。共働きの妻との間に息子が生まれ、管理職のため育休を取りにくい妻に替わり1年間の育休を取得。息子の蓮の育児と家事に日々奮闘していた。

     ある日、姉の付き添いで訪れた質屋で偶然強盗殺人事件に遭遇したことで、非公式に捜査に駆り出され、以降なし崩し的に捜査協力させられることに。
     こうして赤ん坊連れで捜査に乗り出す春風だったが……。

         * * * * *
     
     第1話は子連れ捜査のイントロダクション的な構成。だから赤ん坊やその世話の描写がやたら長い。共感できるところは多いものの、長すぎて飽きてきます。
     対照的に事件のポイントとなった密室殺人トリックはあっさりしていて平凡。そこをコミカルさで繕う東川篤哉作品のような展開でした。

     第2話も軽めで印象が薄く、まあ子連れ捜査に無理はさせられないから仕方ないかと諦めて読んだ最終話。これがよかった。

     序盤から緊張感漂う場面があり、展開にも次第にハードさが増していく。ページを繰る手がとまらない。
     終盤の仕掛けも素晴らしい。そしてクライマックス後に捜査一課長の正体が明かされるというオマケもよいデザートでした。

     なるほど。こりゃドラマにうってつけだと見直しました。また、随所で挿まれる注釈もマニアックで笑ってしまうほどバカバカしくて味があったと思います。総合評価☆3.5ぐらいです。

  • 凄く丁寧に書かれてて、刑事ものという観点だけじゃなく育児にも本当に詳しく書かれてて、とっても面白かったです。

    基本育休を取ったご主人が主人公だけど、そのお姉さんの活躍も凄いし、最後には奥さんの活躍も。
    そっち~って思うくらいの。奥さんはなんの仕事だろう?ってずっと考えてたんだよね~

    連くんの成長も気になるけど、育休はずっとは続かないからな・・・

  • サクサク読める感じの軽快なミステリー。
    主人公とステークホルダーの関係性がとても良い。

    そして読後感として育児してみたいな!と

  • ベビーカーの荷物を下ろす順番や、赤ちゃんがおもちゃ以外のものに興味を持ちだす時期、平日に子どもを連れて歩いている男性に対する周りの目、子育て経験者か否かによる赤ちゃんに対する態度の違いなどリアル過ぎてニヤニヤした。

    事件自体は格別良かったわけではないが、育児の様子をここまで説得力を持って書かれたものを読んだことがなかったので、新鮮だった。
    シリーズ化してほしい。

  • 図書館で借りたもの。
    殺人現場に赤ちゃん臨場!? 県警捜査一課・秋月春風巡査部長は、生後3ヶ月になる息子・蓮くんのため、男性刑事としては初の“育休”に挑戦中。それでも事件は待ってくれなくて…。

    事件自体はそこまで面白いっていう感じはなかったけど、育児を絡めてるのが良かった。
    育児をしているからこそ、ささいなことがヒントになって…。
    育児についての注釈が付いてるのが面白かった。

    奥さんはなんの仕事の管理職なのかと思いながら読んでいたら、まさかの捜査一課長!ボス!
    伏線あったんだね。

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著者プロフィール

1981年千葉県生まれ。2006年『理由あって冬に出る』で第16回鮎川哲也賞に佳作入選しデビュー。「市立高校」シリーズ、「戦力外捜査官」シリーズ、「楓ヶ丘動物園」シリーズなどの人気シリーズの他に『難事件カフェ』『迫りくる自分』『きみのために青く光る』『シャーロック・ホームズの不均衡』『レジまでの推理~本屋さんの名探偵~』『101教室』『彼女の色に届くまで』『100億人のヨリコさん』『名探偵誕生』『叙述トリック短編集』『そこにいるのに』『目を見て話せない』『生まれつきの花 警視庁花人犯罪対策班』などがある。

「2023年 『育休刑事 (諸事情により育休延長中)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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