見つけたいのは、光。

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344039513

作品紹介・あらすじ

私たち、何を、どこに向かって、頑張ればいいの──?亜希と茗子の唯一の共通点は育児ブログを覗くこと。一人は、親しみを持って。一人は、憎しみを抱えて。ある日、ブログ執筆者が失踪したことをきっかけに、二人の人生は交わり、思いがけない地平へと向かう。自分だけの光が見つかる、心震える物語。「気づいたら、子供の話しかできない人間になっていた」亜希(35) 妊娠を告げた派遣先で雇い止めにあい、現在育休中で求職中。一歳の息子の保育園を探しているが、無職のためハードルは高い。「何かを得たのに、何も失わずにいられると思っているなんて図々しいにも程がある」茗子(37) 過去、後輩にマタハラで訴えられてから「若い女子」が苦手。      妊娠した同僚の仕事のフォローが辛い。

感想・レビュー・書評

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  • 30代後半、既婚女性の現実はとんでもなく忙しい。そして、子育てに追われていると自分というものを見失ってしまうこともある。
    心に余裕もなく、金銭的にゆとりもなく、仕事もなければ日々家事と子育てで、狭い範囲で鬱々としてる。

    かたや、既婚者であっても子どもがいないと妊娠中や育児中の同僚の仕事の皺寄せで、腹立たしい思いをしている。
    遅刻、早退するなら辞めてほしいと…
    その気持ちもわからないわけではないが、昨今では仕事しないと生活できないのが現状。

    その正反対の2人に共通のもの。
    それがブログ。

    亜紀は、1歳の息子の保育園を探しているが無職のためハードルは高い。
    だが就職するのも保育園が決まらないので始まらない。
    茗子は、流産の後から夫との関係も悪化し、会社では後輩にマタハラで訴えられてから妊娠した同僚の仕事のフォローで限界まで働いて疲弊している。
    この2人の共通は、育児ブログを覗くこと。
    亜紀は、このブログに励まされ頑張ることができている。
    茗子は、憎しみを持って『猛省を促したい』と書き込みをする。

    ブログ執筆者が失踪したことをきっかけにこの2人が、それぞれに向かった先には…。

    ブログだけでは、外見はもちろん性格もわからない。
    想像の世界でこんな雰囲気の女性かな?で現実に会ってみると
    あれ⁇なのか(笑)
    話してみないと見えてこないものがある。
    思いを伝えることで見えてきたもの。
    共感できたのは、「見つけたいのは、光。」だったから。

    どちらの女性に共感できるか?
    まったく年齢は違うけど、どちらにも共感できたから楽しく読めたと思う。
    そうか、この年齢になったからわかってきたのかもしれない。




  • 育児ブロガーのHikariと
    ワンオペ育児に限界ギリギリの亜希
    そして
    産休育休社員のフォローで疲弊する茗子
    この3人が出雲で出会い「光」を見つける

    保活と就活、雇い止め、マタハラ
    序盤から息苦しさを覚えるほどでしたが
    出雲での出会い以降
    彼女達がドアを開けるたびに
    光を感じるようでした
    読後感爽快
    尚久には鉄槌を!
    図書館本

  • 正直 3人が会えたのは あまりにも都合がよすぎると思うし その後 腹を割って話し 一件落着するのも ありえない~ んだけど(笑) まぁ そこは薄目で 実際には出来ないけど 面と向かって話し合えば 立場が違えど わかり合えると思う

  • 人の思い込み、気づいていない部分をひりひりする位に表してくれます。
    立場が変わればですが、登場人物は皆結果からすると良い人達です。
    皆余裕が無かったり、勝手に期待したり、ちょっといい気になってしまい人を傷つけてしまう。
    これを乗り越えられる機会は現実には中々なくて難しい。
    互いの思いを理解出来ればみんなが生きやすくなるのに。
    何事も一呼吸おいて、怒らず、焦らずですね。
    良い作者さんに出会えました。

  • 「本の雑誌」の2022年エンターテイメント部門で「八月の母」に次いで2位にランクしてたので読んでみました。
    目を背けたくなる1位に比べて、此方はテーマへの切り込み方や文章と構成力で気がつくとしっかり物語の中に引き込まれてました。
    読了後の感覚は、低予算ながら良質な邦画を観た感じが近いですね。

  • 妊娠、育休の職員をカバーする茗子の葛藤も分かるし、周りに気を遣いながら小さな子どもを育てる亜希の気持ちも分かる。

    女性って、子どもに絡むことが仕事・人生に大きく影響するから、どの立場でもぶつかる壁があるよね。


    光を追いかけて行ってしまう2人にはだいぶ違和感を感じたけれど…
    3人が出会ってからお互いの価値観、胸の内を語り出してからはなかなか面白かった

  • 出たぞ今年のベスト1。飛鳥井千砂『見つけたいのは、光。』は、2022年日本の小説ベスト1だ!【北上ラジオ#47】 - ラジオ本の雑誌
    https://www.webdoku.jp/column/radio/2022/0809103514.html

    agoera
    http://agoera.org/

    見つけたいのは、光。 | 株式会社 幻冬舎
    https://www.gentosha.co.jp/book/b14471.html

  • 妊娠とともに職を失い理解のある夫がいるにもかかわらずワンオペで育児中の亜希。
    職場で年下の女性社員たちの「妊娠、出産」のフォローに振り回される茗子。
    そして二人の子どもを育てるシングルマザーの三津子。

    女として生きていくだけで、どうしてこんなに苦しいのだろう。
    結婚しようがしまいが、仕事を続けようが続けまいが、子どもを産もうが産むまいが、どの道を選んでもそこにあるのは地獄。
    自分の方がまだましだった、ここまでひどくはない、と思ったり、いやいや、自分の時の方が大変だった、もっと苦労してきた、と思ったり。それでも読んでいる間のつらさたるや。苦しい苦しい。

    全く別の場所で別の環境で別の暮らしをしていた三人の女性が、とある理由で顔を合わせる。
    希望の光を求める亜希、光の意味を探す茗子、そして別の角度から光を見ていた三津子。
    それぞれの言葉でそれぞれの苦しさをぶつけ合う三人。
    交わることのない平行線だった、あるいは別の次元で存在する線だった三本の人生は、実は自分の外側にある世界と戦う同じ一本の矢だったのかもしれない。
    理解があり時間さえあれば最大限の協力を惜しまない夫、結婚したとたん暴君と化し妻の人格を認めることさえできない夫。両極端に描かれている二人の夫も、妻にとって助けとならないという点でいてもいなくても同じ。
    結局、女は妻として母として、そして「女」そのものとして一人で世界と向き合って生きていかねばならないのか。
    男は、夫は、父親は、いったい何をしているのだ。「育児を手伝っている」「協力している」そう得意げに話す男たちよ、一字一句読み落とすことなくこの本を読むがいい。深く反省して、そして今まで見えなかった「光」を探してみるがいい。
    世界は一人で生きていくには広すぎるのだから。

  • 贅沢や沢山のこと望んでない
    頑張っても全く状況が良くならない
    真っ暗闇にいるみたい


    30代後半、立場の違う女性の話だけれど、それだけじゃないもっと多くの人の叫びのようだなと思った。

    自分に子どもがいるので、亜希の立場の方がよくわかる。保活就活の同時進行の難しさ。どうしてこんな時に!の熱。

    でも茗子の方が読んでいて辛かった。旦那が全く信頼できないから。

    でもどっちの立場がじゃなくて、属性じゃないというのは納得。女だから、子連れだから、じゃない。

    三人が出会うのは非現実的かもしれないけれど、光を見るにはそれぐらいの跳躍が必要で、ああやって違和感をぶつけ合えたらどんなにいいか。みんなそうできなくて暗いところでもがいてるのがリアルだけど、小説としてはリアルをなぞるより、光を見せてもらえて良かったと思う。

  • 一気に読みました。

    冒頭、亜希の育児閉塞感、わかるーと共感する部分はあるものの、こんなふうに描かれているのを読むのは、正直しんどいな、読むのやめようか、と思いつつも読むのをやめられず、最後まで一気読みしてしまいました。

    「見つけたいのは、光」
    題名のまんまだけど、そうなんですよね。
    子供を産んだだけで、子供を産む女が周りにいるだけで、お先真っ暗、って、おかしすぎる。

    亜希と茗子が、一つずつ、ひとつずつ、違和感を言葉にしていく様が、わたしには、沁みました。

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著者プロフィール

1979年生まれ、愛知県出身。2005年 『はるがいったら』 で第18回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。11年に上梓した 『タイニー・タイニー・ハッピー』 がベストセラーとなり注目を集めた。他の著書に 『君は素知らぬ顔で』(祥伝社文庫) 『女の子は、明日も。』 『砂に泳ぐ彼女』 など多数。

「2021年 『そのバケツでは水がくめない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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