- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344040618
作品紹介・あらすじ
先に尽きるのは家康の寿命か、豊臣家の命脈か。父であるが故の、母であるが故の苦悩と喜び。親が子に寄せる想いが時代を動かす。まったく新しい「家康像」を描き出した超本格歴史小説!時は「大坂の陣」の数年前――。いまだ盤石でない徳川幕府を案じる老齢の家康は、二代将軍である息子・秀忠を揺るぎない天下人にするための体制づくりを急いでいた。一方、豊臣家の威信凋落を肌身で感じる淀殿は、愛息・秀頼の復権に向けた効果的な打開策を見つけられず、焦燥感を募らせていた。宿命と因縁に翻弄され、矜持と野心の狭間で揺れ動く二人は、やがて雌雄を決する最期の戦いに、それぞれ活路を見出そうとするが……。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
感動作間違い無しの傑作です。
家康、秀吉のお話は過去に何度も読んでいましたが、今回の物語はあらためて考えさせる問題作でした。知ったつもりで読みましたが、これほどまでに深く追求した作品なかったと思います。 -
幾つもの新作を愉しんでいる作者が、また新しい作品を上梓したと知って本を入手した。紐解き始めると、読んだ部分の続きが気に掛り、何か「停められない…」という具合で、細かい時間を設けてドンドン読み進め、素早く読了に至った。そして読後の余韻に些か浸っている。
少し前に同じ作者による『天下大乱』を読了している。『天下大乱』は関ヶ原合戦を描く物語であった。本作はその『天下大乱』の少し後の時代を背景とする物語だ。大坂城で豊臣家が滅びてしまう「大坂の陣」を背景としている。
『天下大乱』では毛利輝元と徳川家康が主要視点人物とされて物語が展開した。本作は、その『天下大乱』で描かれた関ヶ原合戦を戦った徳川家康の「その後?」という雰囲気も少し滲む。本作では徳川家康が一方の主要視点人物となり、大阪城の側で淀殿、または御袋様こと茶々が他方の主要視点人物となっている。徳川家康側の挿話、淀殿側の挿話と交互に現れて物語が進んでいる。
本作の物語は1606年頃から起こる。将軍の座を後継者の徳川秀忠に譲った徳川家康が在り、自身の来し方を振り返りながらも息子の豊臣秀頼が後継者となっている豊臣家の行く末を想う淀殿が在るという情況だ。本作は“前史”というような辺りから「大坂の陣」の様相を説くような物語になっている。
小説や映像作品に登場する“史上の人物”は、結局は「“史上の人物”に着想を得た“劇中人物”」ということになるのだとは思う。が、その“劇中人物”が醸し出すモノによって、“史上の人物”について「こういうような感じ…」という「幅広く人々が抱く感じ」が形成される側面も在るかもしれない。
「大坂の陣」の「攻める側」ということになる徳川家康と、「攻め滅ぼされる側」ということになる淀殿に関しては、実に多くの小説や映像作品に登場している。故に“劇中人物”として「幅広く人々が抱く感じ」が或る程度拡がって、何となく「公約数的なモノ」が在るのかもしれない。
しかし本作では、そういう「公約数的なモノ」が排されていると思う。徳川家康も淀殿の各々に「擁している後継者を見守り、自身の来し方を振り返りながら、次代に想いを巡らせ、動く“事態”に臨む、または動かそうとする」というように造形されていると思う。
本作は「合戦絵巻」的に「大坂の陣」が描写されるというのでもない感じだ。「合戦絵巻」的な感もする物語は、別な作者の作品を比較的最近も何作か読んだが、それらとは明らかに異なる。「大坂の陣」へ至ってしまうまでの、2人の主要人物達の想いの遍歴、そして戦いの真只中での彼らの想いという辺りが主題だと思う。それ故に「長き人生を振り返って…」とでもいうような問いに対する回答例の一つのような「一睡の夢」という語句が題名になったのかもしれない。
更に本作は、織田信長、豊臣秀吉という「天下人」達と徳川家康との「大きな差異」を解き明かすような感も強いかもしれない。「大きな差異」とは「築き上げたモノを後代へ受継いで行く」という事への意識の向け方と活動ということになるであろう。
加えて本作では「“政”?」というようなことを強く感じさせる部分も在ったと思う。徳川陣営の部内の様々な動きや、目的に合わせて事態を動かすというのか、起こった事態に応じて目的を鮮明化することを図るというのか、或いはこういうのは「時代を超えている」という現象かもしれないと思った。
徳川家康による部分と、淀殿による部分とが交互に現れる本作だが、自身の好みとしては「来し方」の部分がより多いような淀殿の部分がより好きかもしれない。少女時代以来、「落城」の中に3回も身を置くこととなった淀殿の波乱の生涯は余りにも劇的だ。
「擁している後継者を見守り、自身の来し方を振り返りながら、次代に想いを巡らせ、動く“事態”に臨む、または動かそうとする」という2人の主要人物による物語なのだが、何か「仄かに現代が投影?」というような気がしないでもない。そういう余韻が深いと思う。広く御薦めしたい作品だ。 -
面白い。家康と茶々の人生観がいいし、こういう捉え方もあるのかなあと思いました
-
史実を元にしたフィクションということだろうが、非常に丁寧でわかりやすい。この種の歴史小説の中では大変レベルが高いものとして評価されるのではないだろうか。これまでの他の小説や教科書で取り上げられる史実が縦糸であるなら、この作品は横糸で、双方を読むことで歴史がリアルに立体的に浮かび上がってくるというイメージがある。あくまでもフィクションではあるにしても。
また日本の歴史に興味が出てきた。 -
歴史小説は史実に基づく妄想をどこまで上手く料理できるかにかかっているが、本作の家康と茶々を対比しながら、時を行ったり来たりしながらの、あったであろう会話や解釈の妙味は流石。家康と秀忠、淀殿と秀頼の関係性がすんなり腹落ちする内容は十分楽しめる。
-
家康は静謐な時代を秀忠に、
茶々は豊臣の時代を秀頼に
それぞれの想いを託す。
ひとつの夢は叶い、
もうひとつは儚く散ってしまう。
老いていく家康、
誇りを持って死を選ぶ淀殿。
贖えない史実は容赦がない。
何ともやるせない小説だ…。
-
どうしても、NHKの大河に引きずられてしまった。
-
大阪の陣を家康と淀殿の両方の視点から描いた作品。クライマックスはスピード感があり、あっという間に読了した。人の器量とは、役割とはに考えさせられた。