最後の家族 (幻冬舎文庫 む 1-20)

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  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344403574

作品紹介・あらすじ

引きこもりを続け家族に暴力を振るう二十一歳の秀樹。援助交際で男と出会う女子高生の知美。若い男と不倫をする昭子。会社からリストラされる秀吉。過酷な現実にさらされ崩壊へと向かう内山家。一人ひとりはどうやって生き延びていくのか?家族について書かれた残酷で幸福な最後の物語。テレビドラマ化もされたベストセラー、ついに文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 村上さんの作品を読んだのはこれで2冊目ですが、独特の緊張感があると感じました。その緊張感が私には合わない…

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/682614

  • 感想
    家族が失われるきっかけ。案外どこにでもある。もし崩れてしまっても。個人の人生は続く。どこかで誰かと新しい家族を作りながら。

  • 家族は些細なことで崩壊するし、些細なことで再生もする。

  • 家族を守るため、業績不振の会社にしがみつく父親。
    朝は自分の淹れたコーヒーを家族にふるまい、晩は家族そろって食事をとる、ことを家族に強要する。

    息子はそんな父に反発し、暴力を振るう。
    本当は世間に出ていくのが怖い引きこもりなのに。

    そんな二人の間で母親は、父を立て、長男の気持を推し量ることに疲れ果てている。
    娘は家族を嫌いなわけではないが、顔色を窺いながら暮らす生活は嫌だと思う。

    一つ屋根に住んでいながら、家族の気持はばらばらだ。
    そもそも父親である秀吉の家族のイメージが、笑えるくらい独りよがりだ。
    しかし秀吉は家族のため、リストラの不安におびえながら、そんな素振りを家族には一切見せない(つもりでいる。実際は、家族は秀吉の気分に相当振り回される)。
    家族を守るのは自分しかいないのだから。

    「○○のためだから××をする」という言葉は「○○のせいで××をしなければならない」と同じ意味になってしまうことはよくある。
    「○○のために」は、本当に○○のためになっているのか。

    息子・秀樹は、ひょんなことからある人を救うために少しずつ生活を変えていく。
    夜型の生活を朝型に変え、コンビニや本屋に出かけることができるようになり、ある人を救えるだろう人たちへ電話をかける。
    自分の意見を述べる。相手の言うことを聞く。必要な行動を起こす。
    彼の世界は広がってきた。ある人を救うために。
    そんな時に言われたひとこと。

    「親しい人の自立は、その近くにいる人を救うんです。一人で生きていけるようになること。それだけが、誰か親しい人を結果的に救うんです」

    家族のために生きることが、母である昭子の存在意義だったのかもしれない。
    夫の世話をし、子どもたちの面倒を見る。
    しかし夫は最近いつも不機嫌で、思春期を迎えた子どもたちの考えていることなど、もはやわからない。

    昭子はひきこもりの息子のことを相談するために、精神科医やカウンセラーに通っていた。
    そこで知り合った大工の延江と親しくなる。
    とはいっても、たまにランチを一緒に食べるくらいなのだが。
    それでも、自分の仕事に迷いがなく、ひいては自分自身に揺らぎのない延江と話すのは、秋絵にとっていい気晴らしになったことは間違いない。
    ただ、28歳の大工が、家族との関係に疲れ切った41歳の人妻の、どこに惹かれたのかが不明。
    さらにこれがプラトニックな恋愛であることにも、驚く。

    娘の知美は、友だちの紹介で29歳の宝石デザイナーと付き合っている。
    といっても、こちらもまたプラトニックなのである。
    彼氏である近藤は、勉強のためにイタリアへ行くことにしたが、知美も一緒にどうか、という。
    結婚をするわけではない。
    ただ、一緒に暮らして、互いにイタリアで何かを学ぶ生活をしないか?と。
    これもまた不可解。
    「うん、行く」と簡単に言える話じゃないよね、普通。
    お金のこと、親を説得すること、高校生にはハードルが高すぎる。

    でも、彼ら家族は、共に暮らすことをやめた。やめることを選んだ。自分達で。
    けれどその選択は、彼らに家族というものを考えさせ、互いを思いやり、そのためにそれぞれが自立することになった。

    昭子は離婚しないまま実家に戻り、延江と交際を続けつつ、夫との絆を今まで以上に感じるのだけど、だったら延江の存在は特に必要なかったような気もする。
    この辺りがちょっと出来過ぎかなあ、と思った部分。

    家族がバラバラになったことは残念、という感想が結構多いようだけど、別居することがバラバラになったことなのだろうか。
    一緒に暮らさなくなったけれども、同居していた頃よりはるかに家族の心は繋がっているんじゃないかなあ。

    もたれ合うのではなく、依存するのではなく、ひとりで立ち、家族が必要なときは支えられるだけの力を持つ。
    家族は割り当てられた役割を演じる場所なのではなく、自分自身であるための基本であるべきだ。
    そのための一つのケースを、村上龍が書いたのだと思う。

  • 家族から主婦が自立する話だと、
    どこかの文芸欄に紹介があったので、
    手に取ってみたところ、
    閉じこもりの長男の話から始まりました。

    引きこもりの主人公がふとしたことから「人の役に立ちたい」という思いを抱いて、
    ある支援者から、
    「親しい人の自立は、その近くにいる人を救うんです。一人で生きていけるようになること。それだけが、だれか親しい人を結果的に救うんです」
    と助言をもらう。

    家族って、そもそも親に依存しなくては生きていけない
    「子ども」が存在して初めて「家族」という形態になる。
    家族で問題を抱えきれなくなると、家族という形がいびつになる。それは、きっと、家族の各々が自分と向き合い解決していかなくてはならなくなるからですね。

    気が付けた家族は救われるんだね。
    重い題材なのに軽快に読み進められたのはなぜかな。
    一歩踏み出すって、小説みたいに簡単にはいかないけど。読了感は、いいな。

  • 頑張って美談。文体変わったのかな

  • なぜか惹きつけられる作品です。
    面白かった

  • 誰かを救うことでは自分は救われない。自分が救われるのは、他者が自分に拠らず自立することで、共依存から解放されることだったり。家族は依存から始まるが、やがて各自が自立していく暫定的なもの。最後は緩やかな信頼関係で担保されていれば、一見バラバラだって良い。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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