向日葵の迷路 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 111
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344418363

感想・レビュー・書評

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  • なんて救われない話…が第一印象。でも、忘れられず、そんなこともあってしまうのだろうとふとしたときに思い出してしまう「夕立のあと」「ヨーグルトをください」。「向日葵の迷路」と「ビザールラブトライアングル」は植物の生きている感じが懐かしく、また、子供の自分と今の自分のシンクロがとても暖かい。

  • どこかノスタルジックな雰囲気漂う短編集。
    全編に共通するのは親と子がお互いを思う気持ち。


    『向日葵の迷路』
    子供の頃死別した母の墓前に、結婚の報告に来た主人公。
    火葬が終わったあと迷い込んだ向日葵畑で出会った、母とそっくりの女性との思い出が忘れられず、帰り道その向日葵畑を探す。
    ファンタジーテイストなお話。


    『ヨーグルトを下さい』
    主人公はコンビニの深夜アルバイト。
    ある夜、奇妙な女がヨーグルトを買いにやってくる。
    ホラー系。落ちはわかりやすい。少し凡庸。


    『夕立のあと』
    ホラーファンタジー。
    山間にある村を飛び出した主人公が、婚約者を連れて数年ぶりに父に会いに行く。
    父と息子の微妙な関係性が軸となっている。
    綺麗に流れるもののあまり感じ入るものはなかった。


    『紅い実の川』
    こちらは母と娘の話。
    女手一つで育てられた主人公はできちゃった結婚により母と疎遠になっていたが、自身も2人の子供を持って関係が修復されていく。 母が切り盛りしていたレストランを閉めることになり、初めて子供2人を連れて里帰りする。
    『植物は命が消える間際に一段と輝く』、という話がフックになっている。
    主人公が捉える母親の姿がだんだんと変化していく様子を描いていて、とても鮮やかな話。
    前3作から悪い予感がしていたものの、ちゃんと未来に繋がるお話だった。

    『ビザール・ラヴ・トライアングル』
    未婚の母となった同級生と再会し結婚した主人公だったが、結婚直後妻が事故死し、生家へ戻り実母と義理の娘の3人で暮らすことになる。
    物語は、娘が高校生になる直前に実母が死去し2人の生活が始まったところから。
    血の繋がらない父娘であると同時に、男と女であることの複雑な距離感が描かれている。
    うさドロ的展開にはならず、娘を思う父の物語になっている。
    よこしまな結末ではありません。

    単行本ではこれが表題作となっていたようだが向日葵に取って代わられた。なんでだろう。


    相変わらず浅倉さんの文章は綺麗だけど淡々としている。 ストーリーもかなり淡白である。
    そして確かに「どっかで読んだことがあるような」作品が多く、オリジナリティで輝くタイプでもない。
    ただどうしてか、理由もなく心を動かされてしょうがない作品があり、それと出会うために読み続けてしまう。
    他の人の感想にも似たようなことが書かれているのを見たことがあるから、何か心をひっかくものがあるのだろう。

  • 繊細な描写から美しい情景が浮かんできます。
    いや、文章が美しいのかもしれません。
    若干見慣れない漢字が多用されますが悪くは無いと思いました。

    【向日葵の迷路】母を亡くした少女を憐れに思った向日葵達が起こしてくれた奇蹟。

    【ヨーグルトを下さい】お化けなの?お化けでしょ!?で、ヤッパリお化け‼︎?

    【夕立のあと】主人公と一緒に違和感の正体を突き止めましょう。

    【赤い実の川】読んだあとに思ったのは『もう少し泊まっていけば良いのに』でした。

    【ビザール•ラブ•トライアングル】大変な人生なのに心の充実感が登場人物達から滲み出てます。

    全編通して、何か切ないけど何かに満たされていると感じ取れました。

著者プロフィール

作家・翻訳家。東京大学文学部卒。レコード会社洋楽部ディレクター等を経て作家に。
著書に『四日間の奇蹟』、『君の名残を』(以上宝島社)、『黄蝶舞う』(PHP研究所)ほか、訳書に『安アパートのディスコクイーン─トレイシー・ソーン自伝』、『フェイス・イット─デボラ・ハリー自伝』(以上ele-king books)、マット・ヘイグ『ミッドナイト・ライブラリー』(ハーパーコリンズ・ジャパン)、テイラー・ジェンキンス・リード『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』(左右社)など多数。

「2022年 『ボクのクソリプ奮闘記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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