- Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344421073
作品紹介・あらすじ
小さな岬の先端にある喫茶店。そこでは美味しいコーヒーとともに、お客さんの人生に寄り添う音楽を選曲してくれる。その店に引き寄せられるように集まる、心に傷を抱えた人人-彼らの人生は、その店との出逢いと女主人の言葉で、大きく変化し始める。疲れた心にやさしさが染み入り、温かな感動で満たされる。癒しの傑作感涙小説。
感想・レビュー・書評
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少し英語の勉強に疲れたので、ホッコリしたものを読みたくって手に取った一冊。
大正解。
高橋敏夫さんの解説もよくって、普通を捉える名手ですって。
カジュアル エンターテイメントというジャンルだそう。
普通の中に人の繋がりがある。
大好きな重松清さんが単行本の帯に「この店に通いたい。コーヒーを飲みたい。僕はどうやら物語の魔法をかけられたらしい。」と書かれたとのこと。
なんともホッコリとするよい小説でした。
大満足。
メモ
p173
間違いを犯す自由が含まれていないのであれば、自由は持つに値しない。
p307
過去を懐かしむことって、自分の生きてきた道のりを受け入れられている証拠でしょ。辛かったことも含めて、これまでの人生の積み重ねをまるごと肯定できているから、あなたたちは「懐かしい」いう気持ちで当時を思い出せるのよ。もっと言えばその積み重ねそのものが、いまのあなたたちなんだから、自分を肯定して受け入れて、大事に出来いるってことになるでしょ。
p308
自分のつみ積み重ねてきたモノを大切に思えて、他人の積み重ねてきたものも大切にしてあげたいと思えたら--- きっとその人は大人になれたってことなんだと思うわ。 -
最後が、ネタバレしていますので、お気をつけください。
大人の哀愁を感じるお話でした。
岬で小さな喫茶店を営む、60代の女性の悦子さんが主人公の連作短編集。
そこを訪れる客との短いひととき、悦子さんはお客さんのために、その人の一曲をBGMに美味しいコーヒーを淹れてくれます。
妻を40歳になったばかりで、亡くした一人娘を育てている男性。
就職活動が上手くいかない大学生。
こっそり入ってきた五十路の泥棒まで。
そして、悦子さんに想いを寄せている寿命の少ない独身男性。
甥っ子の浩司たち。
悦子さんは若くして亡くなった絵描きの夫を生涯、想い続けています。
悦子さんはつぶやきます。
「タニさんの気持ちに応えてしまったら、きっと、もう一生、あの虹とは出会えない」
一人の人を想い続けた人生っていいものなのか正直よくわかりません。
でも、谷さんと再婚していたら悦子さんはあんな幸せな朝焼けを見ることはできなかったのですよね。
犬のコタローの存在も大きかったと思います。
森沢語録
「いつもわくわくする方の道をいく。多少のリスクがあっても、人はわりと大丈夫。一生懸命やっていれば、必ず誰かが手を差しのべてくれる」
「夢を追いかけない人生を選ぶのにも勇気がいる」
「人はいつかこうなりたいと心のなかで祈っているといきは、生きていける。でも夢や希望などの祈るものがなくなると道を誤る」 -
小さな岬の先端にある喫茶店
オーナーの悦子さんは、とびきり美味しい珈琲と共にお客さんに寄り添う音楽を流してくれる♪
第2章目までは、ほっこり癒しの森沢明夫さんで抜群の安定感を感じながら、このペースで進むのかなぁと・・・と思いきや、
来ましたよ!変化球の第3章
何と!岬の喫茶店に忍び込む泥棒目線での展開
ひゃあ〜しかも刃物持ってる〜!
悦子さん逃げて〜!!
実は、この第3章が堪らなく良かった。
挫折を経験した人に悦子さんの言葉が真っ直ぐに沁みる。こんなんされたら、もう間違いなく人生の恩人になるだろう。
そして第4章以降は、章を重ねる毎に悦子さんとの距離が近づいて、読む手が止まらず一気読み。
第6章のラストの余韻も心地よかった。
大人の恋愛がこういう結末になったかぁと切なくも納得だったが、亡き夫を慕い続ける女性の姿は、既婚男性のロマンも投影されているのかもしれない。
全体を通して、もっとホッコリ癒しのイメージを抱いていたが、現実社会の延長線上にある様な話ばかりで、ストレートに心に響いて何度も目頭が熱くなった。これが、高橋敏夫さんの解説で言われる所の「ふつう」の名手なのだろう。
歳を重ねて経験を重ねて来たからこそ、気付いて寄り添える普遍的なものって確かにあるんだと思った。特に悦子さんの生き方、人をみるその姿勢には多くのヒントがあり温かく勇気付けられた。
最後の解説で知ったが、虹の岬の喫茶店のモデルが房総半島の鋸南町の明鐘岬にあるとか・・・
装丁みたいな素敵なお店かしら
行っちゃいますか!聖地巡礼♪
珈琲と一緒にアレもあるかなぁ〜多分あるよね〜
(※第4章から便利な言葉拝借しました笑)
バナナアイス!
今回も森沢語録が沢山あり、その一つ一つを味わいながら出会えたことに感謝したい作品だった。
以下、各章の簡単なあらすじ
1.〈春〉アメイジング・グレイス
妻に先立たれた大沢克彦が、4歳の愛娘と共に虹探しの冒険に出掛けるお話
2.〈夏〉ガールズ・オン・ザ・ビーチ
就職活動に苦戦する今井健が、ほんとうの自分と向き合うお話
3.〈秋〉ザ・プレイヤー
包丁の研ぎ屋だったが借金苦で妻子と別れた末に、岬の喫茶店を狙う泥棒初心者のお話
4.〈冬〉ラヴ・ミー・テンダー
天文と釣りに詳しく独身貴族で建設会社の重役であるタニさんの大人の恋のお話
5.〈春〉サンキュー・フォー・ザ・ミュージック
悦子の甥である浩司が間も無く完成させるバー「ブルームーン」の店名に纏わるお話
6.〈夏〉岬の風と波の音
悦子が愛犬コタローと共に亡き夫 幸太郎を慕い続けた岬の喫茶店のお話
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暖かくハートフルな気持ちになる物語
6編からなる短編連作で一つ一つの物語が暖かい
ストーリとしては、岬の喫茶店を営む60代の未亡人の悦子。美味しいコーヒーと共に、音楽を選曲してくれるという設定。
この店に引き寄せられるように様々な人たちが訪れます。
それぞれのエピソードに癒されます。
■春・アメイジンググレイス
妻を亡くして、娘と二人暮らしになった陶芸家。
娘と「虹さがしの冒険」の旅で訪れた岬カフェ。
そこで流される曲がアメイジンググレイス
もちろん、YouTubeで聴きました。
本田美奈子が歌ってました。
うーん、よかった。
「人間って、生きているうちに色々と大切なものを失うけど、でも、一方では「アメイジング・グレイス」を授かっているのよね。そのことにさえ気づけたら、あとは何とかなるものよ」
■夏・ガールズオンザビーチ
就職活動に悩む学生
岬カフェで出会った人たち、その生き様を感じて自分の道を取り戻します。
グループサウンズ、夏の曲ですね。
■秋・ザプレイヤー
深夜、岬カフェに忍び込んだ泥棒
しかし、そのまま受け入れた悦子との会話、その優しさから生まれ変わることを決意します。
「間違いを犯す自由が含まれていないのであれば、自由は持つに値しない」
「人はね、いつかこうなりたいっていうイメージを持って、それを心のなかで祈っているときは生きていけるの。どんなことがあってもね。でも、夢とか希望とかをなくして、祈るものがなくなっちゃうと、つい道を誤ったりするものなのよ」
この曲は荘厳な曲でした
■冬・ラブミーテンダー
ひそかに悦子に思いを寄せる常連客のタニさん。
想いを伝えることもできず、大阪へ転勤
流れる曲はラブミーテンダー
いいですね。大人の想い
■春・サンキューフォーザミュージック
甥っ子の浩司のエピソード
昔のバンド仲間を集めてのライブでやりたかった事
これまたよかった
やんちゃしていた当時の浩司を叱った言葉
「あなたにも自由に生きる権利は与えられているけど、他人に迷惑をかける自由だけは与えらえれていないのよ」
■夏・岬の風と波の音
そして、悦子の物語
彼女が、岬のカフェで待ち続けた虹
そして、流れるBGMは...
うーん、染みる。これは染みますね。
ということで、とても暖かい気持ちになれるハートフルな物語。
自分がいま、岬のカフェに行ったら、どんな曲をかけてくれるのでしょう...
とってもお勧め -
とても温かな連作短編集。一つひとつのエピソードが素敵でした。父娘、学生さん、常連さんが織り成す物語は時に陽気に、時に切なく胸に刺さります。登場人物の年代ごとのドラマを楽しく共感しつつ読みすすめました。「過去を懐かしめるということは自分の人生を受け入れて大事にできている。」「他人の積み重ねてきたものを大切にしてあげたいと思ったら……大人になれたってこと」一番心に響きました。舞台は自分の生まれ育ったまちの近くです、すてきなロケーションをそのままに、岬のカフェでゆっくり過ごしてみたいとおもいました。
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はじめまして!
いつも素晴らしいレビュー、楽しく読ませていただいてます。
今回、ちゃたさんのレビューを読んでこちらの作品を手に取りました。...はじめまして!
いつも素晴らしいレビュー、楽しく読ませていただいてます。
今回、ちゃたさんのレビューを読んでこちらの作品を手に取りました。
すごーーーーーく素敵な1冊で、涙はボロボロ出るし、心は癒されるしと…
読み始めて気づいたら朝になってました笑
私もちゃたさんがレビューに書かれている「過去を懐かしめる…」の部分、心に刺さって大好きなセリフです!
そしてこんな素敵な場所の近くでお生まれになったんですね!
羨ましい限りです…
私は海に縁のないところに住んでいますが、この本の描写が素晴らしいのか、自分も岬カフェにいる気分で読んでました。
長くなってしまい、すみません。
とても素敵な1冊に出会わせてくださってありがとうございました☆
これからもレビュー楽しみにしています。2022/02/19 -
明鐘岬のカフェ岬、調べさせていただきました!
もうイメージ通りの素敵なカフェですね!!!
景色もやっぱり絶景でいつか行ってみたいと思いました...明鐘岬のカフェ岬、調べさせていただきました!
もうイメージ通りの素敵なカフェですね!!!
景色もやっぱり絶景でいつか行ってみたいと思いました!コロナのバカヤロウ……
【エミリの小さな包丁】も読んでみたいと思います♪
東野圭吾さん、感動的なものだと【赤い指】や【時生】が私は好きです。
私が東野圭吾さん好きになったキッカケは【幻夜】です。長編でスッキリはないですがオススメです☆
こちらこそこれからもどうぞよろしくお願い致します(^^)2022/02/20 -
朝焼け、夕焼け、夜景、たくさんの船が行き交うところ、小説の通りです。コロナおさまってほしいです。
東野圭吾さんの作品、たくさんある中からあ...朝焼け、夕焼け、夜景、たくさんの船が行き交うところ、小説の通りです。コロナおさまってほしいです。
東野圭吾さんの作品、たくさんある中からありがとうございます。とっても楽しみです。
今後もレビュー楽しみにしています(^o^)
2022/02/20
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妻を亡くした陶芸作家が、ふとしたきっかけで、4歳の娘と「虹さがしの冒険」に出ることに。
この「虹さがしの冒険」という言葉にすっかり心を掴まれてしまった。
たどり着いたのは、小さな岬の先端にある喫茶店。
店主の悦子さんが入れるおいしいコーヒーと、優しい音楽が味わえる癒しの場所。
心に傷を持った人たちが、導かれるようにしてここにやって来る。
春・夏・秋・冬と季節が変わり、訪れた人の心も少しずつ変わり始める。
中でも第四章《冬》の十年越しの悦子さんへの想いを心に秘めて、岬カフェを訪ねたタニさんのお話が、いちばん胸にジンときた。
涙の後には虹が見える。何度でも生まれ変われる。そう信じていたいと思う。
それから、美味しいコーヒーを入れるコツは、「一杯のコーヒーをいれるまでの間ずっと、美味しくなれ、美味しくなれって念じ続けること」だそうです。
私も念じ続けてみようかな。自分の人生に。これからのことに。 -
最後は涙を堪えながら読みました。
終わってほしくなくて、けれど悲しいとか暗いような感情は全くなくて、悦子おばちゃんが最後流したような、幸せな感情。
心が折れかける時も、誰かと繋がりがあればまた、一歩乗り越えられる。
巡り巡って出会う奇跡が、誰かの人生の後押しをしてくれる。
一期一会って良いなぁと、心から思えるストーリーでした。
森沢明夫さんの紡ぐ文章もとても素敵で、色彩と透明感が溢れている気がする。
とくに情景描写が秀逸。
「ヴォーカルの甘酸っぱい声が栄養たっぷりな言葉のシャワーとなって、私の胸の芯に注がれていくようだった」
「そもそも夏をこよなく愛するぼくが、コバルトブルーの空に沸騰するバター色の太陽を見上げて、それを「残酷だ」なんて思ったのは、生まれてはじめてのことだった」
「お前は本当に持ってねえのかも知んねえけどよ、夢って、人によっては、持ってるだけで意味があったりもするんだぜ」
「自分の積み重ねてきたモノを大切に思えて、他人の積み重ねてきたものも大切にしてあげたいって思えたら──。きっとその人は大人になれたってことなんだと思うわ」 -
心癒される1冊だった。
季節ごとに色んなお客さんや登場人物の目線で語られる物語。
どれも本当に良かった。泣けた。
現実では変わらずただただ忙しく過ぎる毎日なのに、この本を読んでる間はなんというか、時が止まって自分も岬のカフェにいるようなゆったりとした気持ちになれて、すごく心地よかった。
私も店主の悦子さんのような人になりたいなあ…
というか悦子さんと会って話しがしてみたい!笑
そんな完璧な悦子さん目線の話がまた心に染みた。
そうだよね、物語の中とはいえ悦子さんだって1人の人間だもの。
この素敵な1冊に出会わせてくださったフォロワー様に感謝☆-
みたらし娘さん
はじめまして。こんばんは。
「ちゃた」と申します。コメントありがとうございます。いつもレビュー楽しく読まさせていただいていま...みたらし娘さん
はじめまして。こんばんは。
「ちゃた」と申します。コメントありがとうございます。いつもレビュー楽しく読まさせていただいています。
さて、この喫茶店のモデルですが、千葉県富津市の明鐘岬(みょうがねみさき)「カフェ岬」としてあります。仕事帰りに釣りして帰ったりもするのですが、東京湾の景色はオススメです。
ちなみに、森沢さんの「エミリの小さな包丁」の舞台も、南房総らへんです。釣りの描写や生活のようすが地元感満載です。
すごくあたたかいストーリーでどちらもすきです。
東野圭吾さん、最近私も読みはじめました。
これからもレビュー楽しみにしております。今後ともよろしくお願いいたします2022/02/19
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岬の喫茶店を舞台に様々の事情を抱えた人たちとの出会いと別れの物語で温かい気持ちになれた。
訪れた人が喫茶店に残していった品々は大切に扱われてまた訪れる人を魅了するのだろう。
最後コタローと眺めた海のシーンは目に浮かぶようだった。
悦子さんの煎れた珈琲を飲んでみたい。
音楽の知識があまりないので話に出てきた曲を全て聞いてみたけど、「the player」がとてもよかった。 -
著者の森沢氏は、ご自分の作品間で(出版社をまたがってでも)様々な繋がりの仕掛けを忍ばせている旨、『プロだけが知っている小説の書き方』の中で書かれていた。
ある脇役の人物が他の作品では主役になっていたり、別々の作品の登場人物同士が親戚だったり、共通の小物や共通の舞台が出てきたりするとのこと。
そんなめんどくさいことをするのは、ご自身の自己満足のため、と書いていらっしゃったので、多分私には気づくことができないだろうけれど、本書にもそういう部分がどこかにあるのだなと考えながら読むだけでも、ちょっとワクワクした。
巻末の解説者も、氏の作品の「ふつう」について触れておられたが、私も本書を読みながら正にこの「ふつう」を心地よく享受していた。
自分の周りにシェイクスピア作品しかない時代や場所ではなく、森沢明夫氏と小野寺史宜氏と青山美智子氏のような「ふつう」の作品を読める時代と場所に生きていて良かったと思いながら読んでいたのだ。
(シェイクスピア作品に私は疲れている)
小野寺氏と青山氏のそれぞれの作品間の繋がりには私でも気付けるし、青山氏の作品にはちょっと「ふつう」ではない部分もあるけれど。
今 英語の勉強をしていて、本を読むのが少な目です。
でも、行き詰って本を読むのですが、こんな癒...
今 英語の勉強をしていて、本を読むのが少な目です。
でも、行き詰って本を読むのですが、こんな癒される本がよいですね。
ありがとうございます~
おはようございます。
こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。
おはようございます。
こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。