ストーリー・セラー (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 10300
感想 : 665
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344424135

作品紹介・あらすじ

妻の病名は、致死性脳劣化症候群。複雑な思考をすればするほど脳が劣化し、やがて死に至る不治の病。生きたければ、作家という仕事を辞めるしかない。医師に宣告された夫は妻に言った。「どんなひどいことになっても俺がいる。だから家に帰ろう」。妻は小説を書かない人生を選べるのか。極限に追い詰められた夫婦を描く、心震えるストーリー。

感想・レビュー・書評

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  • 女性作家と同じ会社に勤める男性との結婚生活の話しが2つ。side:Aでは女性が亡くなり、side:Bでは男性が亡くなる。side:Aの「思考に脳を使えば使うほど、脳は劣化する」という設定に馴染めない。奇病過ぎて入り込めない。なのでside:Bの方が良かった。死に臨んでの妻と夫のやり取りが身につまされる。ただ、side:Bの冒頭にネタバレのような記述と、エンディングのところでも作家の実話であるような、無いような記述があり、チョッと引いてしまう。フィクションらしいのだが・・

  • Side:Aが好みだった。
    Bは単行本化にあたり書き下ろされているから
    もちろんAあってのBなんだけど
    Bから読んでもいいかもとも思った。

    恋愛小説とも言われるけど、
    単純な恋愛小説ではなかったです。

  • 奇病にかかった妻と、その夫の話かな?
    …出だしで話の結末が分かった気でいたが、どうやら様子が違うらしい。

    はじめは2人の馴れ初めだったり、強引な恋愛の様子に気後れするまま読み進めていたが、
    話の転換で「そうだったのか!」と横ツラを叩かれたような大きな発見があった。

    Side:A は感情の起伏が激しく、急降下するジェットコースターのような終わり方。
    個人的にはSide:B の穏やかな恋愛の方が落ち着いていて好きだった。

    有川さんの小説には恋愛要素はつきものだが、特に
    ストーリー・セラーはその傾向が顕著だと思う。

    流れるように読める文章は、いつ見ても素敵だ。
    そんなに長くない小説なので、休日の一気読みにもお勧めです。

    • りまのさん
      Danielさん、フォロー、ありがとうございます♪ りまの8月23日pm
      Danielさん、フォロー、ありがとうございます♪ りまの8月23日pm
      2020/08/23
  • 2023/10/30読了
    #有川浩作品

    純愛小説。
    複雑な思考により死期を早める病に
    かかった小説家の妻とファンの夫。
    妻は小説を書かない人生を選べるか。
    2つの世界線から描かれるストーリー。
    いい話ではあったけれど、
    ちょっと作品として奇を衒ってて
    スッ話が入ってこなかった。

  • 入れ子の構造のお話が二つ重なるマトリョーシカなストーリーに
    ?マークが頭の中でぐるぐると渦巻いてしまって、どこでどう繋がっていくのか
    とっても気になるのだけれど、気にしだすと余計こんがらがってしまうので
    考えるのはやめにしました。(笑)

    "side A"と"side B"の二つは登場人物の立場がまるきり逆になった対のお話で
    AとBのお話は、二つ合わせて一つのお話(?)でした。ん~やっぱりわかりづらい...。

    余命のある残りの人生をどう生きるかを決めるのは
    誰でもない、この自分自身でありたいと思う。力強く切にそう願う。
    それが家族の誰かであっても、そうして欲しいしそうさせてあげたいと思う。
    そしてそれがどんな道になろうとも、最後まで寄り添える家族でありたいと思う..。

    そんなことを心強く思いかみしめながら読み終えました。

  • 2組の作家の夫婦の話し。
    互いに本を通じて書く側、読む側として惹かれ合う。夫婦としてだけではなく、作家と読者としても繋がり合う。相手の才能に惚れ、相手が自分を認めて支えてくれる関係。本を出版するたびにお互いが相手を更に好きになれるなんてとても幸せなんだろうな。結婚してからも相手に恋をし続けられる素敵なお話でした。

  • 「致死性脳劣化症候群」と名付けられることとなった、世界でひとつしかない奇病であり難病に患う妻。その妻は作家です。妻とのなれそめから語られていく、夫婦の物語でした。一人称にとても近い三人称視点での語りで、小説としてはどことなくくだけた感覚を覚えました。

    というのが、本書のSide-A。もうひとつ、Side-Aと対になる、ほぼ同分量の物語Side-Bも収録されています。

    著者の有川さんはラノベ出身のためか、軽めの文章なのですが、どことなく空虚なようでいて人肌の温度のしっかりある質感がよかったです。そして、ぐっと引き込まれるエモさもあります。

    では、ここからは引用しながらになります。ネタバレにもなりますので、ご注意を。


    __________

    「何も起こってないときに普通に付き合ってる分には普通の善良な人たちだよ、って前に言ったよね」
     彼女はそう前置きして話し出した。
     うちの家族はね、私以外の皆が皆、現実に向き合う能力のない人たちなの。困ったことや悪いことが起きても、じっと我慢してたら、無視してたら、いつか何とかなるって思ってて、誰かがどうにか片付けなきゃどうにもならないことをいつまでもいつまでも先送りにする人たちなの。父は強がってるけどその筆頭で、しかも王様なの。たとえば母が「これは何とかしなきゃまずいんじゃない?」って言っても怒鳴りつけて黙らせる人なの。
     父には何を言っても無駄なの。だから家族は昔から父には何も言えなかったし、今更もう何も言わない。そのくせ父は、自分で引っ張って引っ張ってこじれきってから「どうにかしろ」って家族の誰かに問題をなすりつけるのよ(p101)
    __________

    →Side-Aより。これってうまく言えてるなあ、と思いました。たとえば僕自身の、ごく近くの周囲、そしてちょっと遠めの周囲までの範囲なんかはたいていこのように「何も起こってないときに普通に付き合ってる分には普通の善良な人たち」だったりするんですよ。世間的にはどうなんでしょう? やっぱりありふれていたりしますでしょうか。……というか、かつての自分もそうでした(忘れるところでした)。とくにコミットせずとも、自然と解消していくのが、周囲のこじれやちょっとした問題だと思っていました。でも、解消しきれていないでうっちゃられるそういった問題が、水面下で積もりに積もっていって、目の前に顕れたときには横綱級になっていたりもするんです。うちの母親は先送りのこういうタイプだし、父親もごく家庭内のこと、介護の一コマだとかではこじれきってから「どうにかしろ」となります。肌感覚でわかるところでした。


    __________

    日曜日の夕方、彼女は一時間近くも病院をたらいまわしにされた。理由は後に詳しい友人が教えてくれたが、精神科や心療内科に通っている患者は、それだけで受け入れを拒否されるのだと言う。たとえ倒れた原因が脳卒中かもしれなくても、心筋梗塞かもしれなくても、精神病による通院歴があるだけで「精神病で緊急を要する症状は出ないので、受け入れはできない」と一まとめに蹴られる。彼はそんなことを知らなかったので、一一九番のオペレーターの指示のまま彼女の現在の通院状況と病歴や投薬内容を告げた。(p115-116)
    __________

    →Side-Aより。まず二点ほど指摘したいです。ひとつは、精神科や心療内科に通っていない患者でも、受け入れに1時間やそこらのかなりの時間を要することは珍しくないこと。もうひとつは、精神科や心療内科に通っている人はひとくくりに「精神病」ではないこと。精神病となると重いほうなのでしょうけれど、○○障害、○○症候群、など、精神病とまで呼ばれない疾患が多くあるものです。それを踏まえて言うのですけれど、さいきんは、精神科や心療内科には、もっと気軽にかかるべきだ、というもっともな論調がありますし、実際アメリカなどのように軽く来院できたほうが苦しみが軽くなると思います。でも、引用にあるように、救急時に受け入れを拒否されるなどの「選別」対象になってしまう。薬の管理が病院側でできないから入院はお断りなんて言われて拒否さることもあります。このあたりが社会的かつ世間的に解消されないと、精神科や心療内科に通うことへの障壁は低くならないです。また、そういった診療科へかかる人への差別も少なくなりません。気軽な感じで行けるというアメリカなんかは、救急時の扱いはどうなってるんでしょう?


    __________

     それを訊いたら、正気に戻ってしまうような気がした。誰かを好きになる瞬間は、正気じゃない。(p185)
    __________

    →Side-Bより。人を好きになるときって、頭がヘンになっている状態だなんて聞いたり読んだりしましたけど、この作品の著者もそう思うんだなあと。というか、そういう認識でいて欲しいです、大前提としてみんなが踏まえていること、みたいに。「ああ、頭がちょっとヘンになってるんだね」とくすくす笑われながらも微笑ましいと思われて許容されるっていうようにです。


    __________

    あたしたちを助けてくれない世間体など知るか。あんたたちも含めて。(p212)
    __________

    →Side-Bより。あんたたち、というのは、こまごまと干渉してくる両家の親のことです。そうなんですよね、すごく困っていて、誰かに助けてもらえるならありがたいのに、助けてもらえることなんかまずなくて、でも、そんな周囲の世間体は守らないといけない、みたいな不文律というか、暗黙の常識みたいなものってあるなあといつも感じています。そう感じているからこそ、この一文に小気味の良さを感じて共感が芽生える、という。


    というところでしたが、最後にひとつ。事後論理と事前論理について、さいきんぼんやり考えているのですけど、この小説は、…というか本作に限らず他の多くの小説がそうだったりすると思うのですが、事後論理でつくられている作品といった感じでした。つまり世界のいまの在り方をまず肯定して、そこから構築している、というような。カフカの「世界と君との戦いにおいては、世界の側につきたまえ」という言葉のその通りの実践という感じがします。そればかりか、ほんとうに常識というか、定石なのかもしれないなとも思えてしまいます。世界をひっくり返したいと思っても、まずは肯定から入れという意味かな、なんて、考えてしまうところです。そして、本作は、そういう意味では、世界の前提を疑って、そこに挑むというよりは、世界の盤上は揺るぎないものだ、とそこは疑わずに、その盤上で生きづらさを言語化し、その世界をひっくり返さない範囲で、つまり世界のルールを変えることなく(ときにルールが失われているための生きづらさもあったりするので、失われたルールを再登場させるなどもありますが)、格闘する、言い返してみる、モヤを取り払ってみる、今一度そのあたり常識のもともとのところに立ち帰ってみる、などしている感じがします(……と考えましたが、世界の側につく、というところはもっと考える余地があり、ちょっと怪しい論述になっていることを認めます)。

  • 付き合うまでの過程はすごくキュンで好みでした。
    お互いに理想とする人に出会えて結婚できて幸せに年を重ねて行くはずだったのに…
    やっぱり愛する人が亡くなってしまうのは悲しいですね。
    感動というよりはただただ悲しくなってしまいました。

  • sideAとsideB。どちらもとことん過ぎるほどとことん妻に寄り添う夫。
    sideAは妻に、sideBは夫に不幸が訪れる。
    しかし、妻側もとことん夫に寄り添っている。
    ある意味理想的な夫婦だけど、実際にはこういう状況にはなりたくないなぁ。

    ところで、この本、図書館で借りたのだけれど、開いてみたらなんと!有川浩さんのサインが!
    サイン本でした!ということは、これ、有川さん本人が一度触れたってことだよねぇ。なんか幸せ。

    • shokomamaさん
      いいねありがとうございます。昨日まさにこの本をBOOKOFFで手に取ったのですが、買わなかったので今度行ったら買ってみようと思います。この作...
      いいねありがとうございます。昨日まさにこの本をBOOKOFFで手に取ったのですが、買わなかったので今度行ったら買ってみようと思います。この作家は初めて読むので少し躊躇してしまいました。
      2023/05/07
    • 山賊パスタさん
      shokomamaさん、コメントありがとうございます!
      有川浩さんの初読みでしたら、『植物図鑑』あたりがお勧めです。私もこの本から入って有川...
      shokomamaさん、コメントありがとうございます!
      有川浩さんの初読みでしたら、『植物図鑑』あたりがお勧めです。私もこの本から入って有川さんにハマりました!
      『ストーリーセラー』は何冊か読んで有川さんの世界が少し分かってからの方が良いかと。あくまで私の考えですけどね。
      2023/05/07
  • 結婚式でよくある誓いの言葉。
    「その健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しきときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
    主人公は小説家である妻とその夫。
    SideAでは妻が病気となり、SideBでは夫が病気となる。
    ともに死を覚悟しなければならない病で、彼らは悩み、苦しみ、互いを気遣い、労わりあう。
    そしてひとつの結論をだすのだけれど・・・。
    まったく違う人生を歩んできた二人が出会い、愛し合い、結婚する。
    親よりも、友人よりも、ありのままの自分を理解してくれる存在。
    大きな幸せを感じる必要はない。
    ほんのちょっとしたことが幸せだと感じられる日々を過ごせるなら・・・。
    一緒に笑える人がいる。
    一緒に泣ける人がいる。
    それって奇跡のような出逢いなのだと思う。
    この物語には哀しみや切なさ、苦しみや辛さが詰まっている。
    でも、根底に流れていたのは優しさとあたたかさだった。

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著者プロフィール

高知県生まれ。2004年『塩の街』で「電撃小説大賞」大賞を受賞し、デビュー。同作と『空の中』『海の底』の「自衛隊』3部作、その他、「図書館戦争」シリーズをはじめ、『阪急電車』『旅猫リポート』『明日の子供たち』『アンマーとぼくら』等がある。

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