絶対正義 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344428256

感想・レビュー・書評

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  • 学生時代仲の良かった5人組その中の一人、範子は不正を決して許さない皆のヒーローであった。
    しかし月日が経ち彼女の絶対的過ぎる正義に人生を狂わされそうになった4人は彼女を殺した。
    、、、、はずだった。
    五年後、各々が日々を送る中、彼女達に決して送られてくるはずが無い招待状が届く。
    それは4人で確かに殺したはずの範子からの便りであった。
    ーーーーーーー

    うーん...秋吉理香子さんを読んだ。
    彼女の作品は現実にありそうな非現実を楽しませてくれる作品が多い。良くいえば創作を全力で楽しませてくれる、悪く言えばリアルさに欠ける...
    リアルさの欠如を補う心理描写が突出している訳でもないので、読了感は「無難に」「普通に」面白かったで終わってしまう。
    ーーーーーーーーーーーーーーー

    ・範子の招待状からの動き 現在
    ・範子を殺した経緯 過去
    の話が交差し、ここが繋がり終章での招待パーティでの真相、そしてエピローグ。と、整備の行き届いた道はなるほど読みやすくストレスフリーだ。
    しかし、どうしても彼女達の行動がファンタジーなのだ。何故そうなる。プログラムにバグが起きているのか。嫌なツッコミが止まらない。
    結果として楽しい読書だったのだが、後半は流し読みとなり着地点も通過点、スラスラと進みスラスラと終わった。

    強いていうなれば、
    「正義の鉈を振り下ろす可能性に胸を震わせる快感」
    この歪みのおぞましさに鳥肌が立った。正義を語る範子の表情はまるでエクスタシーのそれ との表現。承認欲求が増大する一方、他人への無頓着にも拍車が掛かったこの混沌融合をかます現代の象徴たる矛盾を感じた。思い遣り精神カムバックだ。

  • 正義、正論か…
    普通は、正論言うけど、お前言うだけで、自分できてないやろ!ってのが多いけど(今もそんなヤツ近くにおる!ハァ…)、自分自身もちゃんとしてるヤツには、ぐうの音も出んわな…
    私自身が、ええ加減なだけに、こういう人とは付き合えんかも?(なので、私は、そんな正論めいた発言はしないように注意してる。自分出来てないのに言えん…)
    「清濁併せ呑む」って、言葉があるやろ。それを実践して欲しいところ。

    でも、ここまで来ると、法を守った上で、少しでも非がある人を落とし込むというある意味ゲームを楽しんでる感じ。
    正義とか以前に、病んでるやろ〜!

    普通は、こんな人に友達出来んと思うけど…
    正義なんて、解釈も色々ありそうで難しいで!
    まぁ、一人で頭の中で楽しんどいて〜

  • 秋吉理香子ぽい、現実で有り得る話の誇張をミステリ仕立てに、視点の変わっていく構成とオチもしっかりしていて面白かった。ただしずっと胸糞悪くモヤモヤが続き、精神衛生上良いとは思えない。タイトル通り絶対正義が主題で、正義とは何かよく考えてくださいね的、最近のニュースにもぴったりでは。母に続いての娘の名前、出た時ニヤついちゃった。

  • 高校の同級生の範子はいつも正しく、正義感に溢れていた。
    ただ、正しいはずなのに、間違っていないのに、受け入れ難いものがあった。
    仲の良い5人組であり、範子の正義に助けられたこともあった彼女たちだったが、十数年振りに集まってから後に、各々が範子に突きつけられた正義に追い詰められる。
    そして、その限界に4人の想いが殺人へと向いた。
    それなのに、数年後に届いた範子からの招待状に怯える。
    一体、なんの招待状なのか…彼女は死んでなかったのか…
    範子の存在、そして物語の最後にも衝撃。

    2024.1.27

  • うわぁぁぁぁ(最大限に顔をしかめながらニヤニヤしてる)(奇妙な表情ですね)(知ってます)

    秋吉理香子さん2冊目。
    ほんとぉぉぉに、この人の書く嫌ぁな女は一級品ですな!
    実際笑ってるわけではないのにニチャァとしたこの張り付き感。
    『ぁ』や『ぉ』を多用したくなる、ネバァッとドロォっとした違和感ありまくりの女性ですよ!
    いや、女性のドロドロ物語とかではないんですよ。なんというか、執着心というか。
    もはや狂気。

    限りなく4に近い☆3つ。

    もうタイトルの通り、絶対正義を振りかざす狂気の女性の登場です。
    正義が絶対だから痴漢を見逃さないのはもちろんのこと、授業中の手紙の回し読みも見逃さないし、男子生徒の若気の至りの喫煙も見逃さない。なんなら目をつぶろうとした教師と警官まで告発しちゃう。
    彼女の中にあるのは『正義か否か』。正義こそ何においても守るべきことであり、守られないのであれば正しく糾弾されるべき。
    こっわ…。

    またたちが悪いのが、友人たちが彼女がこの信念に則ってやったことを友情・親愛と勘違いし信じてしまうことなんですよね。
    かといって彼女が別にブレてる訳じゃないんだよ…友人たちが勝手に受け入れられたと思い、期待して裏切られたと思い勝手に疎ましく思っただけ。

    正義は正しいこと。確かに間違いない。なのにこの違和感!!!!!!
    そりゃそうだーーーーー!(でかい声)
    人間正しくあろうとすることは大事だけど、絶対に正しくいないといけない訳ではないんだものー!
    だから嘘も方便なんて言葉があるんだよー!

    この方向性の正義はなんかこう現代に通ずるものがありますよね。。。
    正しければそれを振りかざして何をしてもいいみたいな。
    (まさにうちの業界界隈に現れるモンスターを思い浮かべている…確かに正しい行いをしているんだけど、それを振りかざしてSNSで個人を特定できるような形で手酷く糾弾したり…界隈の人捕まえて何時間も糾弾したり…見ていて怖い…)
    (まさに言われたくないなら正しいことをすればいいみたいな精神で怖い…)
    (彼にはぜひこの小説をオススメするよ…)
    (さり気なく愚痴混ぜてくる)

    正義を振りかざすのは楽しいもんね。正々堂々と相手を正すことできる。
    マスク警察を思い浮かべたなぁ。

    まぁ友人たちも勝手ではあるんですけどね。笑
    それだけのことして盛り上がるんかい!みたいな。
    でもこの境遇が違う4人の友人たちの行いに共感する部分はあるはず。

    また最後にもう一度ゾクッとさせてくれます。
    なのに前も思ったけど秋吉理香子の不思議なところは読後感が決して嫌じゃないところ。
    嫌な気持ちが残ってうううう…とか思わないで済む。
    間違いなくイヤミスの部類に入るんだけど、これは前読んだものも今回も不思議です。

    俄然他の作品が気になります!





    @手持ち本

  • 読み終わって、「怒ってる?」と聞かれました。よほど険しい顔をしていたようです。
    怖い。とてつもなく。
    範子を殺す友人たちは、一度ならず範子に助けられ、深く感謝しているんですよね。人は自分に有利な、あるいは自分の利害に関係しない正義しか受け入れられないんだ、と思わされました。
    正義とはなんと恐ろしいものか。わたしはこれからも自分を犯さない正義だけを選び、選ばなかった理由に、情とか、効率とか、状況判断とか、良さげな単語をはめ込んで恐ろしさを減じていきます。
    でも、こっちの道でほんとに合ってるの…?

  • 4人の生活圏にどんどん入ってきて誰もが自然に行っている『悪』の行為を見つけては大騒ぎする範子。
    確かに法的には間違っていないが・・・

    本文の展開も秀逸で4人で範子殺害至った状況がそれぞれの状況で明らかになり、招待状の謎もしっかりと明かされる。ホラーチックな終結かと予想していたが、現実感のあるイヤミスであった。

  • ドキドキ、ざわざわした。
    なんだろう、すっごく嫌な感じ。
    薄いし色んなエピソードが出てきて気になってあっという間に読めた。

    高校時代4人の仲良しグループに、超優等生が加わる。みんな範子が正しいのは認めてて尊敬しつつも、違和感を感じる。
    ノンフィクションライター、主婦、女優、起業家、それぞれ悩みを抱えつつ久々の再会。
    授業中の手紙のやり取りなんてめっちゃしてたけどなぁ。喫煙現場目撃で通報だけでは物足りず、警察までも訴える。働かない友達の旦那。借金癖でもそれは正しいんだ。不妊治療の無理解。自分の子が欲しいは、旦那に対する権利の損害。
    度の過ぎた正義。確かに法的には正しいのかも。正しいことは正義なんだろうか。でも、その正義ってなんだろうって、コロナ禍でのマスク警察でも感じてたこと。

    4人それぞれの違和感エピソードに、何とも言えない理不尽感。なんだけど、それがあくまで本の中だし面白い。物事は視点を変えると真逆になることもあって、こっちからすると悪でも、別の見方をすると正義?!味方だと思ってたのに軽く裏切られてすごく怖い。

    最後の方は、ここまでの絶対正義なら、もしかすると一番身近な家族は同類か反発のどっちかかなとは、予測はついた。それでもぞわっとした。

  • 正しさで息が詰まる。すごいなぁ正義モンスター…言ってることは正しいけど優しさが一欠片も無いので醜く見える。共感性の欠如ってサイコパス気質。
    正義同士がぶつかると戦争に発展する事もあるので、正義は怖いです。
    他人を不幸にしてまで自分の正義を貫きたい欲ってなんだろう。でもこの範子は、私利私欲のために正義を貫くのでなく、単に正しいことが大好きだというのが逆に清々しい。清々しいけど好感は持てる訳がなく、周りに居てほしくないタイプ。
    周りがどうなろうと、たとえそれで死者が出ようとお構いなしなんだろう。範子にとっては、自分の正しさが全てであとはどうでもいい。
    もし誰かが、範子が反論出来ない程に、範子の正義感のおかしさを述べてたら範子はどうなっていたんだろう。自己崩壊するのかな。そんな恐怖もありました。
    律子ちゃんもそんな母親を憎み恐れてたけど、同じ道を歩みそう。受け継がれるのか。。

  • こんな友達いたら怖い。範子の正義を何が何でも貫くって‥ありえないけど、作品として読むにはスリリングで読み応えあります。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ロヨラ・メリーマウント大学院で映画・TV製作の修士号を取得。2008年、短編「雪の花」で第3回「Yahoo!JAPAN文学賞」を受賞、翌年、同作を含む短編集『雪の花』で作家デビューを果たした。ダークミステリー『暗黒女子』は話題となり、映画化もされた。他の作品に『絶対正義』『サイレンス』『ジゼル』『眠れる美女』『婚活中毒』『灼熱』などがある。

「2021年 『息子のボーイフレンド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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