男子観察録 (幻冬舎文庫)

  • 幻冬舎
3.59
  • (5)
  • (14)
  • (12)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 170
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344428386

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ヤマザキマリさんが男性という異性に対して求めてしまうもの…
    「力強さ」や「頼りがい」…みたいな答えでは当然ない(笑)
    ~一見、何の合理性も必然性もないことについて考え込んでおり、空気の読めない行動をとってしまう、それが実は男性の最も魅力的な姿なのではないか~
    なるほど
    何かに夢中になってしまう少年がそのまま大人になっちゃったね…のようなイメージだろうか
    皆さんはいかがですか?
    私は「マニアックさ」かなぁ…

    さて本書は身近な男性から有名人、はたまた二次元の世界まで幅広い男性をご紹介してくださる
    そして鋭い観察力と個性あふれる分析が面白い
    ちなみに身近なところではお祖父様や編集長
    有名どころではスティーブ・ジョブズ、水木しげる、山下達郎、ボッティチェリなど

    ちょっとご紹介
    ■ノッポさん
    ~このようになくても、誰も困らないものであろうものを、いかなる素材からも素晴らしい造形物を作り上げる
    こういう人がいてくれたら、毎日が楽しくなるだろうな。
    どうでもいいことに一生懸命になっている変だけど、かわいい中年男~
    さらに
    ~すばらしい創作物をゴン太が意味不明な動機でつぶし破壊しても、結局寛大に許してしまう白い器の持ち主~

    ということで母性をくすぐられるようだ
    しかしノッポさんなんて思いつきます?
    そりゃみんなノッポさんもゴン太くんも大好きだけど…


    ■トム(トムとジェリーのトムです)
    ~人間でいうと、日常の使命感や義務に疲れたダメなおっさん
    しかし金儲けの手段に結びつかないすぐれたエンジニアである
    マニアックさと頭の良さがなくてはこうはいかない
    またクラッシックピアノの名手(そういえば指揮者もやっていた)
    アヒルの赤ちゃんにママと間違えられたときのトム
    愛情の深さと母性を感じた(うんうん)~

    まさかのトムですよ
    もう目の付けどころが違う!
    トムをこんな目でみて分析したことなんてなかったわ
    言われてみれば納得

    ちなみにトムを演じてもらいたい俳優ニコラスケイジとのことなのだが、
    トムに見立てたニコラスケイジの絵がかなりキモい
    (ファンの方すみません) 
    いえ、決してニコラスケイジが嫌いではないが、あれはトムとニコラスケイジが嫌いになっちゃいそうだよぉ…


    というわけで気軽に読めるエッセイで楽しめた
    チェ・ゲバラの漫画をいつか描いてみたいとあったので実に楽しみである
    空海のことも気になるなあ…

    • kuma0504さん
      ハイジさん、こんにちは。
      なんか、ホントに同じ本を読んだのかなあ(私の場合は電子書籍)と思うくらい感想か違っていて面白いなあと思います。

      ...
      ハイジさん、こんにちは。
      なんか、ホントに同じ本を読んだのかなあ(私の場合は電子書籍)と思うくらい感想か違っていて面白いなあと思います。

      空気を読まないで行動するというのはそのとおりなんですが、その場合ちゃんと合理的に考えているんですが……。
      2023/08/30
    • ハイジさん
      kuma0504さん こんにちは
      コメントありがとうございます!
      レビュー本当に視点が違って面白かったです!
      確かに男性目線から見ると違う見...
      kuma0504さん こんにちは
      コメントありがとうございます!
      レビュー本当に視点が違って面白かったです!
      確かに男性目線から見ると違う見方になるのですね
      ヤマザキマリさんの場合、性別を超えた生物に対する目線に感じるので個人的には男だから…というのは全くなく、男子観察録というタイトルである必要はないんじゃないかな…とも(笑)
      2023/08/30
  •  漫画家ヤマザキマリさんの好きな男たち。ハドリアヌス帝(76年−138年)もいれば、奥村編集長という漫画業界の名物編集者なる人(テルマエロマエの担当者でもあった)もいれば、トムとジェリーのトムまでいる。
     裏表紙の紹介文など読むと「真の男らしさが見えてくる」「新男性論」などとあるので、「男とは…」「男はなぜ…なのか」というような論をぶっちゃうのかなと半ばハラハラ半ば期待したが、あくまで「極私的目線で」(とも書いてあった)の観察録であり、各人への思い入れや、男性に対する個人的な嗜好を熱く語ることこそあれ、傲慢さを感じさせるような“男性論”はなく、良かった。
     ヤマザキマリさんは、テレビでは「舌鋒鋭い」みたいな印象があったが、今回初めて読んだ彼女の文章は硬質ではありながらも攻撃性は一切ない。美術や芸術全般に対する知識や感性が専門的で深いことはもちろんながら、何より惹かれたのは彼女のボーダーレスなものの考え方だ。今後も機会があればこの人の書いた文章を読んでいきたいと思った。漫画も。

     以下、その他備忘メモ。

    ・十八代目中村勘三郎(1955-2012)。この人の魅力を伝える文章はたくさんあるが、ヤマザキマリさんによるこれは至高。しかも無駄がない。

    ・戸田得志郎(1895-1988)。ヤマザキマリさんの母方の祖父。「人生はね、自分がラッキーだと思う程、楽しいもんなんだよ」。ラストの似顔絵、かっこいい。

    ・スティーブ・ジョブズ(1955-2011)。古代ローマ皇帝ハドリアヌスと並べての次のような語りが面白かった。正確な引用ではないが適当に縮めて書く→「男性は本来社会的な適応性を巧みに操れる生き物ではないと思っている私にとって、二人とも、人間関係を上手くやりくりする事よりも、建築やデバイスの開発といった創造に全力を注いだ人。この創造性が、後に単なる捩くれた酷い人という扱いになるのか、捩くれた酷い人だけど天才で凄かった、となるのかを分けるポイントなのかもしれない」。男性論はないと言ったがこれくらいの差し挟みはある。この差し挟み含め、深く納得してしまった。この調子で女子観察録も書いてほしい。

    ・デルス・ウザーラ。「人間は(中略)自然の織りなす掟に逆らう事なく生きていれば、無意識のうちに道理にかなった倫理観や、優しさが備わるものなのだという事を、私はこの老人の生き様によって知った。デルス・ウザーラは地球という惑星に一切の負担も迷惑も掛けず生きている、とても希有な人間なのだ。」→まるで『大江戸リサイクル事情』じゃないか(注・最近読んだ本)。それはともかく、ヤマザキマリさんの名付けエピソードとしても味わい深い。

    ・空海(774-835)。留学したもの同士としての共感、尊敬があるらしい。スーダンのアブディンさんのことも思い出した(『わが盲想』)。空海、って名前もカッコ良すぎるしだいぶ昔の人だし宗教者だし字も上手いし何でもできたスーパーマンみたいで、かなりもやっとした教科書上の人物としか思っていなかったが、これを読んで初めて興味がわいた。確か司馬遼太郎が何か書いていたはず。

    • akikobbさん
      表情で魅せてくれるイメージ、なるほど。
      実は自分で読んだ時はトムは正直「ほーん」程度だったのですが、たださんのコメントのおかげで読み直して、...
      表情で魅せてくれるイメージ、なるほど。
      実は自分で読んだ時はトムは正直「ほーん」程度だったのですが、たださんのコメントのおかげで読み直して、思いが深まりました。こちらこそありがとうございます。
      2023/05/04
    • たださん
      なんというか、私にとっては、見た目冷静なんだけど、どこか憂いをたたえつつ、煮え切らない表情をするのが上手いという印象で、それがトムのように思...
      なんというか、私にとっては、見た目冷静なんだけど、どこか憂いをたたえつつ、煮え切らない表情をするのが上手いという印象で、それがトムのように思えたので、そのように書きました。
      2023/05/04
    • akikobbさん
      なるほど、そうなんですね。
      実を言うと、私ニコラス・ケイジの顔と名前はわかるけれども出演作で何を見たかというと、はて…?という程度にしか存じ...
      なるほど、そうなんですね。
      実を言うと、私ニコラス・ケイジの顔と名前はわかるけれども出演作で何を見たかというと、はて…?という程度にしか存じ上げず、それでもなぜか「憂い」なんて聞くと確かに確かにとか思ってしまう雰囲気は感じます。
      私はなんとなくスルーしてしまったニコラス・ケイジとトムでしたが、両方にハッとできるたださんに届いて&私も間に入って「なるほど」ができて、良かったです^_^
      2023/05/05
  • まず、ヤマザキマリさんって物書きではないよね?って疑うくらい文章がうまい。若くして日本を離れ様々な国で生活し、多量の芸術・文学作品に触れてきた彼女の表現力に引き込まれ、一気読みしてしまった。
    「男子観察録」というタイトルだから、性別としての"女子"からみた"男子"を語るのかと思いきや、実在する人物か否かは関係なく作者の憧れる男性を挙げて、割と偏った見方で力説している。というか挙げる人物(猫もいる)も偏っているのだが、読み終わった時には知らなかった人物でも魅力的に見えて、なんだか世界の広さを感じてしまった。
    ここまでの熱量で憧れる人(猫)に会えることこそ人生の宝物だと思う。
    時々笑いながらサクッと読めて面白かった。


     

  • どうということはないのだけども、とても読みやすくてするする読めた。その文章の素晴らしさについて述べるとりみきさんの解説がまたいい。

    水木しげるやボッティチェリなど偉人たちの知らなかった側面知り、興味深かった。

  • 「テルマエロマエ」に衝撃を受け、それ以来好きな作家さんで、テレビでコメントを語る気風の人だとは思っていましたが、まず、文章の知的さ、カッコよさ、読みやすさに感動しました。ヤマザキマリさんの生き様にも触れられて素敵な時間を過ごすことができました。

  • 著者の愛する、もしくは気になる男性の持つ個性や魅力を解説する本ですが目の付け所がすごかったです。
    二次元三次元問わずですがまさかトムまで登場するとは…。
    驚きつつ読むと「確かにそうだよね」とすとんと納得してしまう、人間(以外も含めて)の新たな見方を教わった気がします。
    そしてトムやマルコ少年を取り上げることに驚きつつ読み進めると空海で著者の思考の深さを感じ、セルジオとピエロでイタリア留学時代に体験した苦労や悲しみ、多くの大人たちの中で受けた影響を知り、ヤマザキマリと言う人の複雑さや深さを覗くことができたような気がします。

  • ふざけたタイトルなのに中身硬派だった
    学校図書館に置きたい
    古代ローマにおける理想の男性像が意外
    過度な筋肉ではなく、バランス やりすぎ感は精神の不健康さに結び付けられる
    イタリアでも上と下では異なるの面白い 知性vs情動みたいな。でもマンマへの愛は上下ともに普遍。

  • 自分の好きな人、気になる人についてこんな風に好き勝手書くのはさぞかし楽しそうだ。
    本書の直接的な感想とはいえないかもしれないが、安部公房とガルシア・マルケス「百年の孤独」を読んでみたくなった。ただの書物がひとりの人間の心をこんなにも動かすとは。

  • 歴史上の人物から創作のキャラクター、そして現代のひとまで脈絡なく、著者ヤマザキマリさんが惹かれるという男たちについての評。祖父や編集者も入っているのがおもしろい。
    世界史を勉強していた高校時代・・・、面白い本を読んでいる時・・・、ニュースを見ている時・・・。
    そこに登場する人について、自分が「どう思うか」なんて、私は正直なところほとんど考えたことがない。だって自分の生活と何の関わりもない人たちだもの。好きか嫌いか?イイ男だと思うか?実在しない人の場合もあるのに!
    それを、これこれこうだから私はこの人が好きだ、と述べられるヤマザキさんがちょっとうらやましい。好奇心旺盛で、アンテナの感度が良いからだと思う。

    ブラジル映画(フィクション)に出てくる少年ジョズエや、「トムとジェリー」のトムなんていう意外すぎる「男」もいいが、ブラジルのサッカー選手ガリンシャの話が心に響いた。ハンディがあり、それを生かした活躍をしてからの、挫折、挑戦・・・そして49歳の若さでの死。アルコールに溺れるなど「良くない」面もありながら、ブラジル国民に広く愛されているという。

  • 男女を分けて性差による特徴を語る考え方には少し抵抗感があるが、この人が魅力を感じる男性像は確かに面白いなと思う。

    役に立たないことを一生懸命やり込む人間の可笑しさ、賢さ、愛らしさ。
    自分は最近の仕事の忙しさから、そういった「役に立たないことの魅力」を評価できていなかったので、はっとさせられた。
    ある意味で自己肯定感が上がる一冊。

全13件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1967年東京生まれ。漫画家。14歳でドイツとフランスに一人旅へ。17歳でフィレンツェの美術学校入学。1994年、一人息子デルスを出産。1996年、漫画家デビュー。帰国し、北海道大学などイタリア語の講師を務めつつ、北海道の放送局でイタリア料理の紹介や旅行のレポーター、ラジオパーソナリティなどを務める。2002年、14歳下のイタリア人ベッピと結婚。エジプト、シリアと日本を往復しながらの生活が続くが、2004年に日本での仕事を整理し、リスボンに家族三人で住むことになる。主な著書に『テルマエ・ロマエ』『モーレツ! イタリア家族』『世界の果てでも漫画描き』『地球恋愛』『ルミとマヤとその周辺』など多数。現在シカゴ在住。

「2012年 『ヤマザキマリのリスボン日記──テルマエは一日にして成らず』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ヤマザキ・マリの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×