同姓同名 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 106
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  • Amazon.co.jp ・本 (428ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344432291

作品紹介・あらすじ

大山正紀はサッカー選手を目指す高校生。いつかスタジアムに自分の名が轟く日を夢見ていた。そんな中、日本中を騒がせた女児惨殺事件の犯人が捕まった。その名は大山正紀。サッカー推薦が消えた大山正紀を始めコンビニで働く大山正紀、アニオタの大山正紀など、名もなき大山正紀たちの人生が狂い出す。登場人物全員同姓同名。大胆不敵ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 『同姓同名』のタイトルどおり、たくさんの「大山正紀」が出てくる。混乱してしまうのだがそれがまた面白い。あっちの「大山正紀」だと思ってたら実はこっちの「大山正紀」だった、なんていうのを繰り返しながら読了。え、じゃああの時の「大山正紀」は?と確認しながら読み返すのも楽しかった。

    叙述トリックあり、現代のSNSへの問題提起ありでなかなかの読み応え。

    「言葉の暴力の残酷さを訴えていた人間も、自分が許せない罪を犯したと感じた相手には、いとも簡単に暴力的な言葉を吐きます」

    「一つの失言で人格を全否定される時代になりました。それまでどれほど善行をしていても、たった一つの発言で悪人として袋叩きに遭うんです」

    ほんとにそう。悲しいよね。

  • 登場人物が全員「大山正紀」同姓同名に潜む、社会問題を提起した、画期的な作品でした。
    もしも、自分と同じ名前の人が、重大な罪を犯してしまったら、自分が置かれている環境が180度変わってしまうのじゃないかなと錯覚してしまいました。フィクションなんだけど、少し現実的に起こりえる問題なんだと、怖くなりました。SNSの怖さをもっと考えるべきだと感じたし、拡散の速さ、誹謗中傷の問題など、闇に隠れている部分を改めて、実感しました。

  • 登場人物全員が同姓同名。着眼点が面白い。凄いものを読んだな、という感想。

    自分は、名前はとてもパーソナルなもので、できるだけ他人に触れられたくないという考えが強い。大学に入る頃には、初見の人に本名は教えないし、下の名前で呼ばれるのも抵抗感を覚えるようになっていた。結婚して名字が変わり、自分のことを新姓で呼ぶ人が増え、「私は〇〇(旧姓の本名)なはずなのに、一体誰になってしまったんだろう」と悩んだこともあった。

    そんな風に自分の名前というものについて愛着とも違う何かを感じている私は、興味と恐怖半々で本書を読み始めたが、やはり名前の持っている力は大きいと改めて感じたのと、名前のことだけでなくSNS(Twitter)の存在感が大きくなっている現代に対する恐怖や学びもあり、とても楽しめた。書き下ろし短編も面白い。

    本書の特設サイトに『同姓同名』メーカーという、本書の前半のダイジェストを”自分の名前”で体験できるページがあった。体験してみたい方はぜひ…。(女性の場合は別シナリオが用意されているのも凄い)

  • 人間が生きるための本能は保身。だから利己的だし都合が悪ければ攻撃する。ここでは同姓同名ってことで。でも、謝れないってのはどうなの?誰もが傷つき、傷つけ合っている社会。非を認め合えたら癒えていくのに。

  • 話題作がようやく文庫で手に入ったので、すぐ読んでみた。
    大山正紀がある事件を起こしたことで、全国の同姓同名の「大山正紀」達の人生が良くない方向に向かってしまい…
    犯罪者の大山正紀と、そうでない大山正紀は別人だと頭では理解しているものの、名前自体を聞いただけで犯罪者のイメージが無意識に浮かんでしまうので、さぞかし辛いだろうと思った。
    一部の情報だけで正義を振りかざすようにインターネットで誹謗中傷する人がいるこの世の中が描かれていて、自分も被害を受けたくないし、知らず知らずのうちに加害者にならないように気をつけようと思いました。
    社会派の面もありますが、しっかりどんでん返しがいくつもあり、最後まで先が読めなくて面白かったです。

  • エンタメ小説として読みましたが、どうでしょうか?設定も変わっているしとてもスリリングな読み心地でした。ただ、SNSの民衆が頭悪すぎませんか?みんな言い過ぎやり過ぎすぎてリアルさがなかったように思います。顔が見えないSNSだからって、そこまで言うかな?そういうところがエンタメ系っぽくみえてしまった所かも知れません。
    本編より、おまけ作品の方がスッキリしていて好みでした。

  • ヒリヒリつらい系かと思いきや(あらすじ読め)段々とミステリー色強くなってきて、ハラハラしながら読み進めました。
    ついフライング読みしがちでw途中で最後辺りを読んでみましたが、カンニングするつもりが逆に謎が深まってしまいましたw
    なんせ登場人物がほぼ全員同じ名前なので。
    どの人がどの人なのか?この人はいつどこから登場したのか?
    見事に作者の仕掛けたトリックにハマってしまった感じです。
    考えさせられるところもあったり面白くもあり、深いお話でした。

    因みに私は昔(旧姓)女優さんの役名と同姓同名でちょっと自慢だったりしましたが、有名な映画でしたがあんまりみんなの記憶に残る役名ではなく、言われることもなかったです。

    しかし、10歳歳上の同僚さんと顔がよく似てると言われていた時は意識しました。周囲の人やそれぞれの身内にも(その人のお子さんにも)間違われていたのでw
    ドッペルゲンガー的な体験なら意識するかもです。というかしてましたw

  • 登場人物がほぼ同じ名前という設定に興味を持ち購入。
    頭を整理しながらしっかり読もうと意気込んでページを捲っていたが、著者さんのしっかりとしたキャラ設定のおかげで中盤まではサクサクと読めた。
    後半になるにつれて二転三転することもあり
    大山正紀迷子になりかけたがなんとか読了。

    設定も奇抜で社会派ミステリ感もあり
    読み応えのあるページ数をさくっと読める

    変わったミステリに挑戦したい方にはおすすめ。

  • 第6回全国中学ビブリオバトルのチャンプ本。未成年の幼女殺害犯の名前が週刊誌に暴露。同じ名前を持つため、人生をことごとく上にされた人々が、被害者の会を結成。
    犯人ではないことを証明するために、犯人の顔2分にさらしてやろう。新たな事件が起きる物語。
    中学生のチャンプに輝いた方のコメントを読んで読んでみたいなーと思いました。
    感想はまた読んだら書きます。

  • とにかく大山正紀だらけなミステリー小説。
    普段何気なく使ってるSNS、その日常生活に溶け込むSNSによる拡散力とデマに踊らされるユーザーの怖さを思い知らされる作品。何が正しいのか、真実とはなにかが読んでいて分からなくなった。
    伏線を理解した上でもう一回読んだらまた面白いだろうなと思う。時間を空けて再読したい。

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著者プロフィール

1981年、京都府生まれ。2014年に『闇に香る噓』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は「週刊文春ミステリーベスト10 2014年」国内部門2位、「このミステリーがすごい! 2015年版」国内編3位と高い評価を受ける。著書に『生還者』『難民調査官』『真実の檻』『失踪者』『告白の余白』『緑の窓口 樹木トラブル解決します』『サハラの薔薇』『法の雨』『黙過』『同姓同名』『ヴィクトリアン・ホテル』『悲願花』『白医』『刑事の慟哭』『アルテミスの涙』『絶声』『情熱の砂を踏む女』『コープス・ハント』『ロスト・スピーシーズ』などがある。

「2023年 『ガウディの遺言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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