堤鯛之進 包丁録 極楽長屋編 (バーズコミックス スペシャル)
- 幻冬舎コミックス (2019年11月22日発売)
- Amazon.co.jp ・マンガ (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344845572
作品紹介・あらすじ
江戸の片隅、ワケあり者の吹き溜まり〈極楽長屋〉に住まう牢人・堤鯛之進は、包丁の磨屋を営む者なり。鍛錬された身体は長屋でも秘かな人気だ。ただ、そのむさ苦しい見かけとは裏腹に、料理の腕はピカイチ──。
目立たぬように生活をしていた鯛之進は、ある日、母子を狙う辻斬り事件に巻き込まれる。母親の命を救うことはできなったが、危機一髪で助けた男の子を長屋へ連れ帰った。しかし、男の子は惨殺を目撃したショックから記憶喪失となっていたため、鯛之進は仕方なく子供を引き取り、「親子」のような生活を始めるのだった……
感想・レビュー・書評
-
第一巻(一話から七話を収録)。
故郷を離れ、江戸で磨屋を営む牢人 堤 鯛之進。
ある晩、辻斬りに襲われ母親を斬殺され その衝撃で記憶を失った子供を連れ帰る。
やがて辻斬りは仕組まれたものと判る。
誰が何の為に親子を狙ったのか?
鯛之進は残された子供に鯉太郎の名を付け身の安全の為一緒に暮らす事となる。
というのが大まかな粗筋。
これだけだと普通の時代劇物のようにも思えるが、掲載されたのはコンビニで売られているグルメアンソロジー「たそがれ食堂」。
そして題名が示す通り、実はグルメ漫画。
と言っても、純然たるグルメ漫画ではなく、グルメ×時代劇×ミステリーといった池波正太郎の小説を彷彿とさせる作品。
こういった作品の場合、それも掲載誌がグルメコミックとなればグルメ要素をしっかり描かなければならない。
そうなるとストーリー面が疎かになりかねないのだが、作者 崗田屋愉一の卓越した構成力によって両方が見事に合わさってグルメ物としても時代劇物としても読み応えのある作品となっている。
出てくる料理は
・煎り酒、削り節で食べる卵かけご飯。
・鰯の煮付け。
・味付けは塩のみの湯豆腐。
・玉子いり出し(揚げた玉子に大根おろしをのせ七味、煎り酒をかけた物)
・ひじきの煮物を入れた大根餅。
・猪鍋。
・白玉(餡子と醤油黄粉)。
と江戸の庶民的な物ばかりだが作者の画力も手伝って 美味そうな事この上ない。
個人的には湯豆腐、玉子いり出し、軽く炙った鰹の刺身に柿を細かく刻み醤油、みりん、酢、おろし生姜、胡麻と混ぜ合わせかけた物(これは鯛之進の説明のみ)にそそられた。
そして、その料理に舌鼓を打つ登場人物達。
先ず、主人公の堤 鯛之進。
何らかの理由で追われるように故郷を出て来たという過去を持ちながらも 暗さ(影)を感じさせず、だからといってやたらと明るく振る舞う事もなく武士としての落ち着きがあり義理人情に厚い正義漢。
そして剣はかなりの腕前。
料理の腕前も玄人並み。
稼ぎの全部を食材につぎ込む程の食道楽。
と、いう設定なのだが、これは小説「仕掛人梅安」シリーズの小杉十五郎と梅安を合わせたものではないだろうか.........
これまでの作者の描いてきたアクの強いキャラクターに比べるとかなりおとなし目ではあるが、こういうのも新鮮味があって良い。(掲載誌を考えたらそうならざる得ないのかもしれない)
母を目の前で斬殺され、記憶を失うも鯛之進に引き取られ暮らす事となる鯉太郎。
人懐こい子どもで誰からも可愛がられるキャラクターに癒された読者も少なくないのでは?
そして二人の手助けをするのが鯛之進も住んでいる『極楽長屋』の住人達。
なんと! 作者が岡田屋鉄蔵 名義で描いた「極楽長屋」の面々がレギュラーとして登場するのだ!!(実は単行本は以前に処分したのだが 本書のレビューを書くに辺り新たに新装版を購入)
一蝶姐さん(今回は人の頭の中を読むという特殊能力を披露)と六助夫婦。
第二話のゲスト主役だった熊谷晋之介と女形の金太郎。
そして大家の正治とお馴染みの面々。
しかも熊谷が作中(極楽長屋 第二話 怪童子と熊)で受けた傷が古傷となって跡を残しているところから「極楽長屋」本編から数年経っているという設定が良い。
ある作品の登場人物が他の作品に登場するというのはアメコミでよくあるがそれを日本の漫画、それも時代劇でやるとは!!
崗田屋愉一のその発想力 まさに非凡としか言い様がない。
魅力的な登場人物、食欲を刺激する料理、読み応えのある物語。
本書もまた自分の心を掴んで離さない一冊である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
グルメ×子連れ狼といった感じの話
-
包丁を研ぐ行商人の鯛之進、たまたま遭遇した辻斬りで、少年を保護することになる。なぜ、少年がこのような事件に巻き込まれたか、危険な状況かも。