ビートルズ都市論: リヴァプール、ハンブルグ、ロンドン、東京 (幻冬舎新書 ふ 6-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344981874

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  • 第1章では、「ビートルズというロック史上最高にして最強のグループがイングランド辺境のリヴァプールから世界に羽ばたいたのは、単なる偶然ではなく、根拠を有する必然であった」ことを論証している。とても興味深い。
    ビートルズの出身地リヴァプールは、17世紀に始まった奴隷貿易によって歴史の表舞台に登場する。奴隷は、西アフリカからリヴァプールに送られ、やがてカリブ海沿岸・アメリカ南部へと運ばれる。アメリカ南部はもとともとフランスが植民地化した土地。西洋音楽と黒人音楽である「ブルース」が融合し「ジャズ」に発展する。一方、アパラチア山脈の谷間に入植したアイルランド系やスコットランド系移民の音楽(ケルト音楽)は「カントリーミュージック」へと成長していく。「ブルース」と「ケルト音楽」の絡みから、「リズム&ブルース」が産み落とされる。この「リズム&ブルース」は、「カントリーミュージック」を体得した白人にも演奏され、「ロックンロール」へと名前を変えるのだ。そして、リヴァプールとニューオリンズは共に港町であり、定期船によりアメリカの新しい音楽がリヴァプールに運ばれる。港町リヴァプールの異文化受容の柔軟性も忘れてはならない。
    興味深いことは、ロックンロールの形成に深い関りがあるのがケルト音楽で、ビートルズの4人は全員ケルト系(ジョン、ポール、ジョージはアイルランド系、リンゴはスコットランド系)だということ。そして、リバプールに住むアイルランド系の人々は、アメリカに移住したくてもできない人が多かったことも、ビートルズのアメリカへの憧れを、より強靭なものにしたのではないだろうか。
    ほかの章では、ハンブルグ、ロンドン、東京を取り上げ、ビートルズという大衆音楽の成功の背景や各都市民の反応を、経済及び歴史・文化・社会、そして人間関係から論証している。読み進めていくと、あたかもビートルズの時代のその町に引き込まれれていくような錯覚すら覚える。ビートルズマニアでなくても読めるのが嬉しい。

  • ビートルズの爆発的人気を、当時の文化や時代背景からうまく関連づけている。
    残念なのが裏表紙の簡易解説。
    「惨めなハンブルグ時代…」云々。
    編集者はまともに本書を読んでいないのか?

  • ビートルズの変遷を過ごした町の視点から考察した本(東京は別だけど)。ビートルズは片田舎の港町リヴァプールで生まれ、大歓楽街を擁したドイツ・ハンブルクでバンドとしての実力を身につけ、スターダムにのし上がったロンドンでイギリス階級社会の壁にぶつかった。彼らにとって、これらの町は単に住んだ以上の影響を与えたようだ。途中ハンブルクでは、ビートルズを去ったメンバーである、スチュアート・サトクリフとピート・ベストについて、ロンドンでは4人の前妻であるシンシア・レノンやパティ(のちのエリック・クラプトンの妻)についての記述が詳しい。皆、ビートルズが町から街を転々とし、価値観やスタイルを変化させていくなかで、彼らを見送らざるを得なかった人々である。ビートルズを聴くだけでは飽き足らない人にお勧めの一冊(あわせてアンソロジーDVDを観るとなおいいかもね)。

  • 都市社会学からビートルズをみる内容はさることながら
    筆者が学生時代のビートルズ/エレキギターを取り巻く熱気が感じられるあとがきが素晴らしい

著者プロフィール

1951 年、山口県生まれ。博士(文学)。元山口大学教授、現山口学芸大学客員教授、現在は研究のフィールドを社会学に移している。
主な著書
『ビートルズ都市論』『ギャツビー&レノン:アイリッシュソウルの系譜』、『植民地時代から少女時代へ』『台湾の表層と深層』『音楽社会学でJ‒POP!!!』『大学教授よ、書を捨てよ、街へでよう:プロジェクト型課題解決研究(PBL)進化論』

「2022年 『海峡から聞こえてきたブルース』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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