- Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344984738
作品紹介・あらすじ
連日のように耳にする殺人事件。当然ながら犯人には家族がいる。本人は逮捕されれば塀の中だが、犯罪者の家族はそうではない。ネットで名前や住所がさらされ、マンションや会社から追い出されるなど、人生は180度変わる。また犯罪者は「どこにでもいそうな、いい人(子)」であることも少なくない。厳しくしつけた子どもが人を殺したり、おしどり夫婦の夫が性犯罪を犯すことも。突然地獄に突き落とされた家族は、その後どのような人生を送るのか?日本で初めて加害者家族支援のNPO法人を立ち上げた著者が、その実態を赤裸々に語る。
感想・レビュー・書評
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加害者家族を支援するNPO代表の著者が相談された内容などを元に加害者と家族の関係、加害者家族が受ける差別や被害について述べている。また、加害者家族が抑止になるか、支援の現状はどうかと言ったことも語られており、興味深い。
驚くのは、加害者家族に対しては、警察は共謀などの容疑を持ち、加害者につく弁護士は、範疇外で協力せず、収監先すらわからないという状況だった。張り紙や追い出されるなどの行為を受けるのは、何となくわかるが、相談する相手もなく、示談金や接見費用など金額負担もかかっていくという現状が書かれている。
以前「なぜ君は絶望と闘えたのか」を読み、その中で被害者支援の機運が高まり、法改正に結びついたことを知った。加害者へのことを考慮に対して、被害者に対する支援がないことが、その法改正に動く起点となっている。本書の中でも、この法改正には、触れられており、加害者家族支援が、相反するものではないと書かれている。
加害者家族についても、色々なパターンがあることは、本書の中の例示でもわかり、加害者家族と関係なく引き起こされるものも多いし、なぜこれで迫害されなければないのかという事例もあがっている。その中で本書でも加害者支援が被害者を置き去りにし、加害者の支援を強化するように受け止められないかという点を気にしているが、家族がなくなることで、加害者の更生、被害者への賠償が滞るという懸念を述べており、双方の支援の必要性を述べている。
加害者家族の現状と支援の重要性を認識させてくれる内容だが、一件一件についてもう少し深掘りされた内容が見たかった。
特にネットによる被害や報道による被害の側面を知りたかった。本書にもアパートの他の部屋に取材をかけられたことで、追い出されるなどの例はあったが、近隣や同じ会社/学校などで受けた例が多かった。顔も見えない人に対しての攻撃する心理もだが、それが巻き起こす影響を知る必要があると思うためだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あまりにも辛い読書体験だった。加害者家族が置かれた立場はあまりにも過酷だ。
機能不全家族の実例は、人によっては閲覧注意だ。トラウマや心の傷を刺激されるかも知れない。
それでも、この本を読めて良かった。現実である以上、どんなに辛くてもそれを知りたい。本を通じて現実を知り、自分の世界を拡張していく。その結果、少しでも人と世界に優しくなれるかもしれない。それが読書家としての矜持であると思う。
なんとも意味のある読書体験だった。少額ではあるけど、WorldOpenHeartのホームページより寄付を行った。今後も自分にできることを考え続けたい。
(詳しくは書評ブログでもどうぞ)
https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E5%8A%A0%E5%AE%B3%E8%80%85%E5%AE%B6%E6%97%8F%E3%81%AE%E7%9C%9F%E5%AE%9F_%E6%81%AF%E5%AD%90%E3%81%8C%E4%BA%BA%E3%82%92%E6%AE%BA%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F_%E9%98%BF%E9%83%A8%E6%81%AD%E5%AD%90 -
家族が重大な事件を起こしたら、
その家族も罰せられるべきなのか?
この問いにYESかNOかという単純な答えは出せない。
そんなことを考えさせれた本
加害者家族の苦悩やその後の人生は壮絶だ
賠償、贖罪、被害者家族に謝罪ができればいいが全てを拒絶される絶望、そして世間からのバッシングと差別
あらゆるものを背負って生きていかなければならない。
この本はそんな加害者家族の苦悩を綴っている。
それはドラマではなくひたすら残酷な事実
犯罪は誰もを不幸に陥れる
加害者家族に対し
「身内が犯罪を犯したのだから家族も罪人」
「家族が悪かったから身内が犯行を犯した」
などと考える人も多く
ネットなどでの誹謗中傷
住む土地を追われたり、仕事ができなくなったり
結婚をあきらめたり、離婚したり…
という現実がある
この本は苦悩する加害者家族を支えるためのNPO法人「world open heart」を創立した阿部恭子さんのルポ
アメリカでは加害者関係を支える人たちがいますが
日本には今まで加害者家族を支える団体はなかったそう。
阿部さんは、このNPOを作った経緯と苦悩、活動や実態なども書かれていますが、その心と信念と勇気に感動。
と言いつつも私も自問自答する
例えば…
自分の家族が殺されたり残酷な犯罪に巻き込まれた時に
加害者家族を許せるのか?謝罪を受け入れることができるのか?
と言われると、おそらくできそうもない。
頭ではわかったつもりでも
現実問題、心が付いていくかと言われると…
憎しみで何も考えられなくなるような気がする。
いや、もしかしたら逆に私や私の家族が犯罪を犯したら…
被害者の方にどうやってお詫びするのか?
謝罪を受け入れられないとしたら…
ネットで住所を特定され
住居を追われ、仕事を失い…
となると…
死を考えるかもしれない…
犯罪はあってはならないこと
自分には無縁だと思っていても
被害者、加害者、関係者になることはゼロではない。
ただ、この本や阿部さんの活動を知ることで
加害者家族の苦悩を知ることは大きい。
そして、阿部さんの活動によって救われる人も多い。
深い内容でした。 -
犯罪の加害者は罰せられるべきだ。それに異論はない。よくあるのはセンセーショナルな殺人事件の犯人の家族が自殺したという報道。それって当然の報いなのか。犯罪者の家族を守る必要はないのか。
例として登場する加害者家族の多くは住居も仕事も人間関係も捨てて、正体がバレないよう息を潜めて生活している。やがて、彼らは犯罪者本人を家族と思わず、憎悪を向けるか、最初からいなかった者とみなすようになる。それは犯罪被害者を増やすに過ぎない。
犯罪加害者の家族を守ることは、被害者への賠償責任につながるし、将来の加害者の自立や再犯防止の助けにもなる。加害者家族を守ることは社会的な利点があるのだ。なにより、彼らには直接の罪はない。
本書は、こうした考えで加害者家族の支援を目的とするNPO法人を立ち上げた著者によるその活動記録。加えて、なぜ、著者は加害者家族支援を志し、具体的にどのような行動を起こしたのかが語られる。 -
加害者家族を支援するための組織を主宰する著者が、その実態を紹介した本。
加害者自身に比べて、その家族は何か守られるものはない。特に大きな事件になると報道やネットによってさらされることになり、通常の生活が営めなくなり、引っ越しや転職を余儀なくされることもあるという。何かの事件が起きたときに、同じような事件で自分が加害者家族の立場に立たされる可能性を考えたことはあるだろうか。被害者家族の方であれば心情的にも寄り添えるのかもしれないが。
著者は、日本でも例のない加害者家族に対する支援というものにとまどい、ときに焦りを感じ、悩んでいることを隠さない。そして、支援を支援してくれる人への感謝を忘れない。
そういえば、どうしてこの本を手に取ったのだろう。 -
買う前は、事件の加害者の親の手記だと思っていたのですが...実際は日本で初めて加害者家族支援のNPO法人を立ち上げた著者による「加害者家族の実態」です。
ブログにて詳しいレビューしています*
https://happybooks.fun/entry/2021/10/22/173000 -
人は他人に対して、自分が受けてきたような対応しかできないのではないだろうか。
これは私の中では真実に近い言葉でした。
死刑囚の生育歴を読んだことがあるのですが、被害者の事を忘れてしまう程可哀想だと感じてしまいました。
そうしてこちらを見れば、苦しむ加害者家族の姿がありました。因果応報という言葉と、とばっちりという言葉が両方思い浮かびました。
一番印象的なのは、第六章の家族のために父を殺したお兄さんでしょうか。私にもアルコール依存症の似たような父親がいるので、気持ちがわかるような気がします。
殺人は犯罪なので褒められたものではありませんが、家族を守りたかったのですね。辛かったなぁ、と声をかけたくなりました。
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ずいぶん前から、加害者家族について知りたいと思っていた。『少年A この子を生んで』を読んだのも、その思いからだった。
家族が加害者になったという事実だけで大きな傷を負い、徹底的に、「世間」からの容赦ないバッシングと排除を受ける。報道がそれを加速させる。
多くの事例を知ることができた。また、アメリカとの違いも興味深かった。
ただ、具体的にどのような支援がなされるべきなのかについては、まだ手探り状態なのだなと思った。
少なくとも、加害者家族は多くのことを諦め、息を潜め、細々と人生を歩んでいかなければならないことに変わりはない。