極上の孤独 (幻冬舎新書)

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  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344984936

感想・レビュー・書評

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  • 1.著者;下重氏は、元NHKアナウンサー。フリーアナウンサーに転身後、民放キャスターを経て、文筆活動、エッセイ・評論・講演などで活躍。「家族という病」がベストセラーとなる。「親や家族の期待は子供をスポイルしている」「配偶者は他人」等と家族の価値観を否定し、個人の自立を強調。下重批判本が出版され、話題となった。選択的夫婦別姓に賛同し、「下重暁子」として死にたいと言う。
    2.本書;52項目構成。現代は、道を歩いていても、電車に乗っても、スマホを手放せない人が多い。LINEやSNS等で情報把握していないと心配だという依存的社会。そうした中で、下重氏は、一人をこよなく愛し、孤独の効用を語る。「はじめに」で❝孤独❞を語る。①「誰にも煩わされることなく、自分と向き合い、自分自身を知る事は、極上の時間。好きな本を読み、妄想にふける」②「孤独ほど、贅沢な愉楽はない。・・・群れず、媚びず、自分の姿勢を貫く。・・そんな成熟した人間だけが到達する境地が❝孤独❞である」。
    3.個別感想(印象に残った記述を3点に絞り込み、感想を付記);
    (1)『第24項;中年過ぎて何かに狂うと、ろくな事がない』より、「東大を始めとする優秀な学者には、自分の専門以外、何の話題もなく、つまらない人が多かった。若い頃に様々な事を経験している人は、途中から狂うという事があまりない。だいたい若い頃に経験しているから、適切な判断が出来る」「自分というものを客観的に見つめる癖がついていれば、暴走する事はあまりないだろう」
    ●感想⇒本を読んだり、テレビを見たりすると、「自分の専門以外、何の話題もなく、つまらない人」を散見します。大学教授の専門を極めるという生き方には一定の敬意を払います。しかし、著書を読むと外国語を直訳した言葉や一般人に理解できない専門語を羅列したり、自身の考えがあるのかと疑いたくなる人もいます。その人がテレビで話すのを聞くと自分の専門の話題に終始して興味を削がれます。それに反し、「若い頃に様々な事を経験している人は、・・・自分というものを客観的に見つめる癖がついて」いるので、物事の判断が適切で説得力があり、幅の広さと度量の深さに感心します。❝若い頃の苦労は買ってでもしろ❞と言われた事があります。そして、挫折を味わった人の言動には重みを感じます。挫折経験の無い人は、他人の話を聞いたり本を読んだりして、その精神を学ぶのも大切と思います。
    (2)『第28項;一人になれる場所はこうして見つける』より、「図書館は暖かく、一人でいる事に誰も文句を言わない。・・・私の好きな場所は、図書館の食堂である。公園の緑を見下ろしながらカレーライスなど簡単な食事を一人で済ますと、学生時代に戻ったような気になる」
    ●感想⇒私は入社した時に企画部署に配属されました。分からない事があると徹底的に調べたいという性格もあり、専門的な事を調べたかったので、休日には勤労会館の図書室に通いました。一般的な図書館とは違い、企業人や司法試験を目指す学生などがよく利用していました。ここは、国連からの情報も早く入り、学者気分で利用出来ました。著者が言うように、図書館での一人昼食は格別でした。そして、周りが公園だったので、散歩したり小説を読んだり、誰にも煩わされない時間を満喫出来ました。帰りにはダッチという喫茶店で飲むブレンドコーヒーは極上で、嫌な事があってもそれを忘れられ、来週も頑張ろうという気にさせてくれました。人間には一人になって色々な事を考え、模索し自身を振り返る、❝時と場所❞が必要だと思います。何も図書館に限らず、お気に入りの場所で、自分だけの極上の時間を過ごしたいものです。
    (3)『第32項;年を取ると品性が顔に出る』より、「年を取るにつれて、だんだんいい顔になる人と嫌な顔になる人がいるが、その差は品性にあると思う。歳と共にその人の持っている内面が見事に表情に表れてくるからだ」「品とは何か。・・・その人にしかないもの。賑やかなものでなく、静かに感じられる落ち着きである」「自分の生き方さえしっかりしていれば、他人に何と言われようと恥ずかしくないはずだ」
    ●感想⇒人の外見に関する感想を述べるのはあまり感心しませんが、柴田錬三郎氏も「年を取ると品性が顔に出る」と言っていました。辞書で調べると、「品性=道徳的な観点での性格、人柄」とあります。柴田氏は、歳を重ねる中で、人との出会いや読書で様々な経験を積み、人格を磨くが大切だと言っていたように思います。そして、その結果は顔に年輪の如く❝皺❞を刻み、人生を感じさせる容貌になるというです。歳をとって皺が増えるのは勲章なのです。美容のためにそれを隠すことは無いのです。また、「自分の生き方さえしっかりしていれば、他人に何と言われようと恥ずかしくない」とあります。言うのは簡単ですが、❝しっかりした生き方❞は難しいので、行いは難しです。私は、常々自分の納得出来る生き方をしたいと思うのですが、反省しかりの人生です。人それぞれだと思うものの、「恥ずかしくない」即ち人に迷惑をかけず、何らか人のお役にたてる人生を目指したいですね。
    4.まとめ;本書の初回出版は2018年です。当時は「孤独本」がブームで、本書の「極上の孤独」と五木寛之氏の「孤独のすすめ」が共に数十万部を売り上げました。内容的には現役を退いた人向けの本だと思いますが、人生を見詰め直すには良い本です。❝孤独❞とは主観的な感情である自分を見つめ直す時間であり、他者とつながりの少ない❝孤立❞ではありません。人間は誰しも様々な人に育てられ、社会人に成長します。従って、社会への恩返しの為にも、仕事・ボランティア・子育て・・・を通じて、「世の為人の為」にならなければならない、と思います。会社勤めしている人は、組織と人間関係に気を病み、つらい時間に耐えなければならない時もあるでしょう。だから、『上記3.個別感想の(2)』で書いたように、❝孤独❞になって自分を見つめ直す、❝時と場所❞を作り思索する事が大切だと思うのです。人によっては、そんな事は必要ないというかもしれません。私は弱い人間なので、そうして自分を鼓舞してきました。そして、師と仰げる人との出会い、人生観に触れる書物との出会いがあったからこそ、今があると感謝する今日この頃です。(以上)

  • 自分に嘘がつけない方。もっといい加減でもいいのではと感じました。

  • 岡田斗司夫さんが以前“賛否両論大あり”とコメント残した作品。著者 下重暁子さんの今の人生観を知ったうえで、私のもつ『孤独』と世間一般の『孤独』をイメージを対比させながら考えてみた。
     確かに『孤独』のとらえかたが私のものとは違う部分がある。もちろん重なる部分も多い。
     下重さんの孤独は積極的なイメージが強い。“自分と向き合う”とか“自分を見つめる”とかの内省の側面、何かを実現するために時間やエネルギーを集約する磁力のようものや、自分が成長する養分として必須のものといった前向きとして捉える側面だ。
     
     一方で“そんないいもんちゃう。本当の孤独を知らんのや”という思いも過ぎる。それが私と下重さんの『孤独』が重ならない部分。この重ならない部分は何か違う言葉を使って表現した方がほいのかもしれないと思ったりもする。
     でもこの重ならない部分が、小説や映画のなかでは多く重なることがあるから、それを考えると私の『孤独』との相違は世間一般の『孤独』の相違とも重なるのだろうと思う。
     そして、それはなんか運命という背景があってこその『孤独』というグラデーションのようにも思えてきた。
     言い切ったり、拘ったり、突っかかったりするほどのことでもないと。
     

  • いろいろと批判されているようなことを事前に聞きつつ読んだところ、確かに自慢鼻につくところや、結局寂しがりなんじゃないかと思えるところなども多々あって、突っ込みどころは多いものの、全テーマの核心部分では共感できるところもあった。
    人つながり認められていないと不安で仕方がない というのでは人生損をしますよ という話。

  • 孤独に対する心構えを教えてくれる本かと思ったら、単にセレブな著者の自慢話を聞かされているだけで、ほとんど得るものはなかった。

  • テレビなどで紹介されていたので、購入。
    読み終わった後、すぐに「孤独」の意味を調べてみました。というのも本の中で出てくる「孤独」の解釈が自分の想像していたものと違っていたからです。
    自分の解釈では、辞書から引用すると、「仲間や身寄りがなく一人ぼっちであること」と思って読んでいました。ところが、この本では、自分の力で人生を生きていくという姿勢の解釈でした。なので、著者の友人や仕事で知り合った人などが登場しています。
    また、著者と同じ世代向けで、若い世代には不向きかと思います。周りの環境や人、経験によって、人は成長していきます。著者はしっかりと芯のある方だなとは思いましたが、周りの影響力があってこそ、今があるように感じました。様々な経験をしたからこそ語れることで、経験の浅い若い人には、多くの人と出会いが必要かなと思ってしまいました。
    また、色んな著名人の名前をあげて、みんな孤独であると綴られていますが、その背景には、多くの人たちに支えられています。自分の生き方を貫き、周りと連携したからこそ、今があります。周りに流されない生き方では、著者と似ていますが、孤独ではないかなと思いました。
    ただ、この本を読んで思ったことは、人と人との絆というか、繋がりが大切だなと実感しました。
    「極上の孤独」というよりは、「極上の一人の時間」と思いました。

  • 仲間外れになることを恐れて、いつも人に合わせることばかりしていたら
    あっという間に『自分』なんてものは消えてなくなってしまうだろう。
    いいね!やインスタ映えやら他人の評価ばかり気にしていたら、自分の本当の価値観なんていつまでたっても見つからない。
    なぜ人はそんなにも群れたがるのか。
    人と人との関係なんて大切なのは一対一で向き合うことで、空気を読んで人の意見に合わせることなんかじゃないはず。
    著者の下重さんは、常に人と繋がっていないと不安を感じる人の多い現代に
    孤独であることに大切さをわかりやすい言葉で伝えてくれます。
    無理に人と一緒にいなくていいんだ、
    ひとりでいることは決して淋しいことではない。
    そのことを教えてもらうだけで
    救われる人たちがたくさんいるような気がします。

  • 当たり前の、ごく普通のことを、特に工夫も見られないような文章で、自分のことを中心に、ダラダラと書いただけのような気がする。
    どうしてこの本が売れるのか…。
    「私は孤独ではないわよ。寂しくないわよ」ということを確認したいだけなのかもしれない…。

  • 歳をとるとこうした本に目がいく。
    いわゆる「孤独のススメ」だが、「一人の方が周りに自分を合わせて四苦八苦するより何倍も愉しく充実している」という孤高の境地を目指す。そして、「孤独を知らない人には品がない」「素敵な人はみな孤独」だとも力説する。
    まずは、一人の時間を孤独だと捉えず、自分と対面する時間だと思えば、これ程贅沢な愉楽はない。孤独が寂しいと思えばストレスになるが、孤独を楽しめれば人生はより愉しくなる。孤独とは単に物理的に一人でいる状態ではなく、生きる姿勢も内包する。
    例えば、孤独感はグループからの仲間外れや無視によっても生まれる。学校や職場で、対人関係の悩みでドロップアウトしてしまう人も多い。疎外感はいとも簡単に個を破壊する恐ろしいパワーがある。
    そもそも孤立、孤食、孤独死など「孤」の文字には負のイメージが強いのも事実。三木清の「人生論ノート」に「孤独は山にはなく、街にある」と書いたのも、孤独を群衆の中で余計感じるのは、人間関係の為せる技だから。
    つまり、孤独を恐れて、自分を殺し他人に合わせていると孤独感を余計に感じるのもそのため。いつも他人と群れてばかりいては成長するはずもなく、表面的に付き合いのいい人間になるだけで終わる。
    そして、淋しさと孤独は別物、淋しさはいっときの感情だが、孤独とは一人で生きていく覚悟のこと。淋しさは何も生み出さないが、孤独は自分を厳しく見つめることが出来る。従って淋しさを感じるうちは、それを自分で解決しようとする気はなく、誰かがなんとかしてくれないかと他人に頼っている状態でしかない。
    大原麗子、野際陽子、永六輔のエピソードの後、最後に紹介されたのは、105歳で亡くなった越後瞽女(ごぜ)の小林ハルさん、彼女は目の見えない旅芸人でおよそ700種類もの唄と物語を暗記した。目が見えない厳しい逆境の中で生きた彼女の言葉「いい人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修行」こそ、孤独を「生きる覚悟」まで昇華させた達人の凛とした生き様でした。

  • 【読んで思ったこと/感じたこと】
    ・何冊かの「孤独本」を読んできた後にこの本を読むと、内容の薄さに驚く。
    「孤独本」初心者の方にはおすすめ。
    以下は読んでいて私が共感したことである。

    【まとめ】
    ◎孤独を味わえるのは選ばれし人
    ◎スマホが寂しさを助長する
    ◎孤独は人を成長させる
    ◎他人に合わせるくらいなら孤独を選ぶ
    ◎1人好きは自分のペースを崩さないから健康になる
    ◎孤独な人は、いい出会いに敏感になる

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著者プロフィール

1959年、早稲田大学教育学部国語国文科卒業。同年NHKに入局。アナウンサーとして活躍後フリーとなり、民放キャスターを経て文筆活動に入る。公益財団法人JKA(旧・日本自転車振興会)会長、日本ペンクラブ副会長などを歴任。日本旅行作家協会会長。
主な著書にベストセラー『家族という病』『極上の孤独』『年齢は捨てなさい』『明日死んでもいいための44のレッスン』(以上、幻冬舎新書)、『鋼の女――最後のご女・小林ハル』(集英社文庫)、『持たない暮らし』(KADOKAWA)、『夫婦という他人』(講談社+α新書)、『老いも死も、初めてだから面白い』(祥伝社新書)、『自分に正直に生きる』『この一句 108人の俳人たち』(以上、だいわ文庫)他多数。


「2023年 『年をかさねるほど自由に楽しくなった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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