- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344986237
作品紹介・あらすじ
叩かれても。踏まれても。
世界で活躍する
20人の女性政治家を
ブレイディみかこが
徹底解剖!
近年、世界中で多くの女性指導者が生まれている。アメリカ初の女性副大統領となったカマラ・ハリスに、コロナ禍で指導力を発揮するメルケル(ドイツ)、アーダーン(ニュージーランド)、蔡英文(台湾)ら各国首脳たち。政治という究極の「男社会」で、彼女たちはどのように闘い、上り詰めていったのか。その政治的手腕を激動の世界情勢と共に解き明かす。
また、女性の政治進出を阻む「サイバー暴行」や、女性国会議員比率が世界166位と大幅に遅れる日本の問題にも言及。コロナ禍の社会で女性の生きにくさがより顕在化し、フェミニズムの機運高まる中「女たちのポリティクス」はどう在るべきか。その未来も照らす1冊。
<目次>
・メルケル時代の終焉
EUの「賢母」か「毒親」か
・極右を率いる女たち
新たなマリーヌ・ル・ペンが欧州に
続々と現れている理由
・フェモナショナリズムの罠
小池百合子とフェミニズム
・コロナ対策に成功した指導者に女性が多い
「本当の」理由
・なぜ主婦はサッチャーに熱狂したのか
マーガレット・サッチャー再考 他
感想・レビュー・書評
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ブレディみかこさん初読みです。
誰にも忖度せずに自分の考えをハッキリ言う人のようですね。
1年程前にヤマザキマリ「たちどまって考える」のレビューで、コロナ禍での危機管理能力が優れている政治家を挙げたのですが、同じ名前が本書の裏表紙に書いてありました。
おそらく多くの人がそのように感じたのだと思います。
なぜ、コロナ対応がうまくいっている国のトップに女性が多いのか?
その理由は明確でした。
答えは「政治的能力が優れている」から。
ブレディみかこさんの答えに納得です。
「どうすれば支持を下げないか」という保身のための計算が必要な国はダメです。
政府への信頼がある国、つまりトップが優秀な国が成功しているといえます。
オーストラリアのように男性指導者でも成功している国もあるので、女性だから云々というのは理由になりません。
男女の比較にするとジェンダーのステレオタイプ化に繋がることを避けたとも感じます。
本書は世界の女性政治家に焦点を当てているのですが、ブレディみかこさんが日本の女性議員をどのように捉えているのかも気になっていました。
本書で取り上げられたのは、稲田朋美と小池百合子の二人です。
稲田朋美に関してはあまり評価していないですね。
日本で彼女を支持しているのは右翼ではなく、反左翼(左翼に対して攻撃を行う人達)が多いと分析しています。
稲田さんはマスコミにもバカにされている印象を持っているようでした。
小池百合子に対しては、
女性の地位が低い日本の男性支配的な政界において、日本初の女性首相候補とみなされてきた。
行動を起こすのが遅く、柔軟性に欠け、曖昧な安倍首相とは対照的である。
と、抜け目のない、やり手の政治家だと一目置いているようです。
2017年の衆院選では小池百合子党首に、希望の党公認から「排除いたします」と言われ行き場をなくした民進党の大の男たちがいました。
この様子を見て、快感を覚えた女性たちは小池を支持し続けています。
安倍政権的なもの、自民党政権的なもの、性差別的でセクハラ・パワハラの象徴になっている「おっさん」が時代遅れで野蛮な存在になっています。
稲田朋美が口にした「(党の)おじさん政治をぶっ壊す」は、自民党のおじさんに向けたうっぷん晴らしの言葉でしたが、小池百合子は黙々とおっさん潰しをしているような気もします。
ブレディみかこさんが暮らしている英国の女性政治家といえばサッチャーですが、日本人が持っているイメージとは違う見方をしていました。
何かがうまくいっていない時、うまくいっていない理由としてみんなが納得しそうな敵を設定し、それを激しく叩きまくる。
"福祉国家をぶったたく"とのスローガンでのし上がっていったのがサッチャーだそうです。
「国民は国に頼るのではなく自己責任で生きていかねば国は衰退し経済成長もしなくなる」という新自由主義の弱肉強食的な政策を取れたのは「鉄の女」だったからではなく、彼女の政策に快感を覚えて指示した女性層が一定数存在したからだと言っています。
アメリカはどうか。
アメリカのハリスは初めての女性の副大統領、初の黒人副大統領、初のアジア系副大統領なのだそうです。
では"ハリス大統領"はどうか、というアンケート調査の結果は、なるべきが28%、なるべきではないが44%と支持は得られていません。
2016年の大統領選でクリントンが負けたのは、クリントンが"女性"だったからと言われるほどアメリカは男性社会であるようです。
日本も女性の地位の低さでは世界的に有名な国ですが、コロナ禍で女性の貧困の問題が顕在化し、女性の自殺者が増えてしまいました。
「何とかして欲しい」と言っても、おっさん政治指導者たちからは「お気の毒に」「甘えるな」と言われて終わりです。
ブレディみかこさんは、日本の女性たちの怒りがもっと高まってもいいのでは、と歯がゆさを感じているようです。
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だらだらと長い、まとまりのないレビューになってしまいましたが、最後にグチを一つ。
タイトルの「ポリティクス」もそうだが、カタカナ語が多すぎる!
『ムスリム移民のミソジニー的文化が欧州の女性の自由と権利を台無しにするというナラティヴを極右が広げている』
なんて、意味が分からない!
「フェミニズム」「プラグマティック」「ブレグジット」「ミソジニー」「バックラッシュ」
「ポピュリズム」「レームダック」「エスタブリッシュメント」「プログレッシブ」「レイシズム」
「レペゼン」「レトリック」「プロパガンダ」「イスラモフォビア」「ムスリム」「マチズモ」
「アイコニック」「アイロニック」「アファーマティブ・アクション」「エスタブリッシュメント」
のようなカタカナ語の意味を調べながら読みました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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コロナ禍対応で成功した指導者に女性が多い「本当の」理由|女たちのポリティクス|ブレイディみかこ - 幻冬舎plus
https://www....コロナ禍対応で成功した指導者に女性が多い「本当の」理由|女たちのポリティクス|ブレイディみかこ - 幻冬舎plus
https://www.gentosha.jp/article/18956/2021/06/24 -
「人に迷惑をかけるな」教が蔓延る理由|女たちのポリティクス|武田砂鉄/ブレイディみかこ - 幻冬舎plus
https://www.gent...「人に迷惑をかけるな」教が蔓延る理由|女たちのポリティクス|武田砂鉄/ブレイディみかこ - 幻冬舎plus
https://www.gentosha.jp/article/20028/2021/12/21 -
接戦の仏大統領選。極右ルペン候補が女性に支持される理由|女たちのポリティクス|ブレイディみかこ - 幻冬舎plus
https://www....接戦の仏大統領選。極右ルペン候補が女性に支持される理由|女たちのポリティクス|ブレイディみかこ - 幻冬舎plus
https://www.gentosha.jp/article/20838/2022/04/22
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SNSで毎日のようにジェンダー・フェミニズム(ほかミソジニーとかルッキズムとかまあいろいろ)を見ない日がないので、では日本よりジェンダー教育(社会?)が進んでいる国ではどうなってるのか?と思い読んでみた。
世界で活躍している有名な女性政治家たちがどんな政策を行っているのか。支持率は。政治思想は。ということの紹介本だけど、面白かった。興味を持つ政治家や分野へのきっかけになると思う。 -
なんか小難しい本を読むより、読みやすい!身近に感じられる言葉遣いのおかげかな。ぶち上げるとかぶっ飛んだとか(笑)感覚的なもので理解しやすかった。日本は半世紀から一世紀くらい、他の国から遅れてる気がするな(もっとかな?)政治関連のわかんないと思ってた言葉が理解できた!ムスリムかぁ、フェミニズムとか左派とか右派とかやっと理解できてきた?!と思ってたけど、世界は進んでいてことはやはり複雑なんだな。読んでみたい本も出てきて幸だった。ブレディみかこさんだいすき!
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メルケルの分析がなるほど。ミートゥーに手を挙げず、漬物石のような安定感とな。そして、テリーザメイへの冷たい視線。
物申す女性を増やすには、アファーマティブアクションだけでは不十分。ネットの取り締まりを強化しなければ、わざわざ暴行されにいく女性は増えない。
あと、フェモナショナリズムとはなんたるか。女性たちは、女性だからという理由だけでフェモナショナリストの言動に溜飲をさげているようなら気をつけよう。 -
ブレイディさんの本なので、取り上げられている政治家は欧州の方が多め(UKにいると入ってくる情報が起点となった考察が多め)で、それが面白い。
また、日本ではあまり報じられないアメリカの話もあり、内容が面白い。
過去の内容をそのままにまとめてあるため、Brexitの混乱期の英国政治を、女性政治家を中心に論じていて、ユニークで面白い。
初見の難しい政治用語が多く、調べないと分からなかったため、勉強になった。
女性は生物学的に罵られたり攻撃を受けやすい立場にあるため、女性が政治家という仕事をすることは男性より更に一層厳しいのだろうと想像した。
内容や視点は面白いが、キーセンテンスが埋もれいてる部分が多いため、若干の読みにくさはある。 -
著者自身は以前から一貫して左派の立場を明確にしているが、左派にも右派にも、フェミニストにもアンチにも、リベラルにもナショナリストにも反移民にも、新自由主義にも反緊縮にも、それぞれいろいろあって、いろいろくっついてるのよ、という書きぶりで、そこがクール。2010年代後半の欧米の政治状況が著者の肌感覚で分かりやすく語られている。読んでいて、そうなんだ、と思うことが多々あった。
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現代の政治が、人々のどのような「気分」によって支えられているのかがよく分かった。
「ポピュリズム」や「フェモナショナリズム」など、単体ではわかりにくい用語も文脈の中でしっかりと理解することができた。
本書は様々な女性政治家について書かれているが、特に印象的だったのはメルケル前首相である。派手なパフォーマンスはないものの、どっしりとトップの座に居座り続けて国の進む道を示し続けたその手腕はリーダーのあるべき姿として学ぶものがある。一つ一つの政策がどうなのかといった評価とは別の観点で、もう少し詳しく彼女のことを知りたいと思った。 -
世界の女性政治家にまつわるエッセイ。「小説幻冬」連載。ブレンディみかこさんらしく、スパっとした切り口で、彼女たちのバックボーンや政治信条がよくわかる。
ニコラ・スタージョンやルース・デイヴィッドソン、テリーザ・メイの英国における栄枯盛衰は、背景も複雑で、政治家として生きることの大変さを垣間見た。
サッチャーや小池百合子は、個人主義的フェミニストで、いま若い世代を中心に広がってきているシスターフッド型フェミニズムとは異なる。という分析に納得した。自分にも他人にも甘えるな!という肩パッドいからせフェミニズムが、トップにたつ東京。うーん。 -
ブレグジットに揺れた英国をはじめ、世界の女性政治家の主張と政策を通して、国際政治の今がわかる一冊。
スコットランドのナショナリストがブレグジットで再び勢いづいた理由、欧州の極右に女性指導者が台頭している背景にあるイスラム系移民の問題など、現代のヨーロッパ政治の構図が鮮やかに描かれている。
一方、アジアについては日本以外では台湾の蔡英文大統領にしか言及がなく、日本の女性政治家の分析も欧州のそれに比べて切れ味がもう一つ。対象となる政治家たちの実力に比例しているのかもしれないが、そこは少し残念だった。
とは言え、無理に単純化したりしていないのに、すらすらと読んで理解できる文章のうまさと論旨の明解さは、さすがこの著者。