禅思想史講義

著者 :
  • 春秋社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784393138021

作品紹介・あらすじ

禅の興起から20世紀の鈴木大拙まで、近年の新たな知見を踏まえて、「禅の思想史」を語る画期的な論考。歴史の上で、〈禅〉はどのように変貌して今に至っているのか。禅ファンのみならず、目からウロコの禅の必読書。

感想・レビュー・書評

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  • 「禅宗の思想史の流れを「ざっくり」と」
    入門者向けの解説

    それでも難しいけど、ここまでまとめるのは凄い!
    勉強する手掛かりとさせて頂きます。

  • 禅の体系をわかりやすく説明しながら、現代へとつなげる良書。禅の本来性をとらえ、生身の現実態と結びつけるにはどうすればよいか? ということが、歴史を追ってかなり重点を絞ってまとめられている。

    ある程度の基礎知識がないと、それでも内容は入りにくいかもしれない。でも、禅をもっと知ってみたいと思った初級者にはとてもオススメ。
    禅の考え方も、時代によって変遷しているのだなぁということがよくわかったし、公案をひとつひとつわかりやすく解説してくれているのがありがたかった。公案そのものを読み解こうとしても、一人ではとても歯が立たないので……。

    思うのは、いわゆる禅の「悟り」の体験はまさに日常からの超越的な代物で、それを体得できるのは本当に限られた人間のみなんだなぁ、ということだ。
    万人が万人、禅の教えをきちんと体得できるかというと、たぶんそうではないのだろうと私は思う。
    禅はそんな易しい(優しい)ものではないのだと思う……。むしろ、その教えを「日常に生かす」とか、「自己と向き合う」とか、そういう風に言われることを拒絶しているのが禅なのではないかなぁ、と思った。

  • 雨の日、いつの間にか片手で傘を差し、もう一方の手で本を読んでいた事に気づいたその瞬間、忽然と「手は手にあらず、故に手なり」ということを了知した。あらゆるものにその理が当てはまるという直感故に、世界が膨大な自由と無尽の可能性を内包し、離合集散の中で生滅しているという現事実と、その一部でありそれを体現する一見本である自己がだしぬけに剥き出しにされ、ただ圧倒された。涙さえ滲んだ。
    「空」と「隻手音声」に参じたことも、その無中にあった体験も、そこからの工夫も、ずっと一人だった。
    ただ、これが鈴木大拙の「AはAにあらず故にAなり」という即非の論理と一致するかは検証の機会を得ていないが、彼や西田幾多郎に至るまでの禅自体の変遷を俯瞰できたことは、そのまま自らの内部に起こったことに置き換えられもした。無師故に胸を撫で下ろすような安堵を感じながら、禅という型への信頼と、更なる自己の探求への動機を得ることができた。
    分別を押さえ込みながら、同時にどれだけ現在把握している限りでの剥き出しの自己を分別の実生活に発揮できるか、そのぎりぎり緩まない身体性に根ざした自己の発揮を、最近試みていた。
    その時にはたらいている自己とは何なのか、どのような自己が行為に即して生じているのか、いないのか。ただ自己肯定するのではなく、四六時中、この問題に身心で参ずることに取り組んでいた。
    この本を読んで、今目の前にある工夫のプロセスを踏んで先がまだありそうだと、伸びしろが増えたような気がして、晴れやかな気持ちで読了した。

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著者プロフィール

1961年生まれ。岡山市出身。1983年、駒澤大学仏教学部禅学科卒業。1990年、同大学院仏教学専攻博士課程単位取得退学。現在、駒澤大学総合教育研究部教授。博士(文学)[東京大学、2009年]。
著書に、『神会――敦煌文献と初期の禅宗史』(臨川書店、2007年)、『語録のことば――唐代の禅』(禅文化研究所、2007年)、『臨済録――禅の語録のことばと思想』(岩波書店、2008年)、『続・語録のことば――《碧巌録》と宋代の禅』(禅文化研究所、2010年)、『語録の思想史――中国禅の研究』(岩波書店、2011年/何燕生 訳『語録的思想史――解析中国禅』復旦大学出版社、2015年)、『禅思想史講義』(春秋社、2015年/彭丹 訳・中国語版、復旦大学出版社、2017年/李承妍 訳・韓国語版、藝文書館、2018年)、『「禅の語録」導読』(筑摩書房・禅の語録20、2016年)、『中国禅宗史――「禅の語録」導読』(ちくま学芸文庫、2020年)など。

「2022年 『禅僧たちの生涯 唐代の禅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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